西山 直樹(にしやま なおき)さん
ベルフェイス株式会社取締役。2007年に営業支援会社に入社。延べ80プロジェクトの新規セールス部隊を立ち上げ、200名を超える営業マンの採用やマネジメントに従事。2015年同社を退職し、ベルフェイスの立ち上げに参画。セールス・インサイドセールス・マーケティング・カスタマーサクセスなどのレベニュー部門の全体を統括。現在はエンタープライズグループと事業企画室を管掌。
Twitter:@nishiyama620
各業界の著名人にインタビューをしていく、この企画。今回はベルフェイス株式会社取締役の西山 直樹さんにお話をうかがいました。
営業に特化したWeb会議システム
ーー本日はよろしくお願いいたします。まずはじめに、ベルフェイス株式会社の事業内容について教えてください。
コンセプトとしては、チームで売上を最大化させるオンライン営業システム「ベルフェイス(bellFace)」を開発・提供している会社です。オンライン営業システムというのは、わかりやすく言うと、営業に特化しているWeb会議システムですね。
Web会議システムには、すでに一般的によく知られているサービスがいくつかあります。ただそれらは基本的に、社内の打ち合わせや友達との会話などの用途のために開発設計されています。それに対して、ベルフェイスは社外の方との商談用に特化しているのが大きな特徴です。
競合サービスとの差別化のポイントは、2点あります。ひとつは、とても簡単に接続できることです。ソフトウェアのインストール、IDの取得、メールアドレスを聞きとって接続用URLを送るといった手間さえも必要ありません。
お客様と電話で話しながら、お手元のPCかスマホで「ベルフェイス」と検索すれば、5秒で瞬時につながれるというのが一番の特長です。これが他のサービスとの大きな違いです。
編集部記:顧客がベルフェイスに接続して使用するまでの流れ
1.営業担当者がお客様に電話
2.お客様が「ベルフェイスと検索」
3.接続ナンバーを発行
4.接続開始
もうひとつが、営業に特化しているからこそ、我々はオンラインでおこなわれる商談のデータを蓄積・解析して、マネジメントの効率化、人材育成の効率化といったことに役立てることができるという点です。
もう少し詳しく説明すると、商談中の会話を自動的にテキスト化ができます。それをライブラリにして、自由に検索することができるのです。
例えば弊社の営業が、お客様に「Zoomと何が違うの?」と聞かれたとします。そうすると「Zoom」という言葉を検索すれば、それを発した瞬間の動画だけピックアップすることができます。
ワンクリックで、ベルフェイスとZoomの違いを説明しているシーンを確認することができるんですね。
これを、移動の合間にチェックすることができてしまうわけです。なので、マネジメントの効率化、人材育成の効率化がデジタルの仕組みで実施できます。これがベルフェイスの特長であり、我々がやっている事業の内容です。
ベルフェイスが業界シェアナンバー1になった理由
ーー事業内容のご説明ありがとうございます。ホームページを見ましたが、トークスクリプトを表示できる機能もオンラインならではで素晴らしいと思いました。ベルフェイスは設立からまだ5年ほどにも関わらず、オンライン商談システムで業界シェアナンバー1ですが、どうしてここまでの認知を獲得できたのか教えてください。
いくつか要素はあると思うのですが、まずひとつは我々がパイオニアとしてまだない市場を作ったというのが大きいと思います。
営業といえば、実際に訪問するのが当たり前だった5年前から、できる限り無駄な訪問ってするべきじゃないだろう、非対面の営業がこれから当たり前になっていくだろう、というところにビジネスチャンスがあると考えました。そのパイオニアとしてやってきたということがまずひとつですね。
もうひとつは、使えば使うほど広がっていくようなビジネスモデルになっている点です。ベルフェイスを使えば使うほど、その先のお客様がサービスを認知してくれます。
そして興味をもって、我々にお問い合わせをしてきてくれて、我々がベルフェイスを使って営業して……という形ですね。他のサービスにはない勝手に広がっていく仕組みが、たった5年で認知があがっていったポイントだったのかなと思います。
もうひとつあげるとすれば、B to Bとはいえ、サービスを知ってもらう重要性はよく感じていたので、照英さんを起用した「ヒラメ筋」のCMの影響も大きいと思います。
ーーコロナの影響で需要は相当増えたのではないでしょうか。
そうですね。コロナ流行前は、ご契約社数が1,300社ぐらいだったんです。今年3月から5月の3か月間は、サービスを無償で提供させていただいていました。この間にいただいたお申し込み数は12,000社です。
創業から5年かけて1,300社だったのが、無償とはいえ3か月間で約10倍のお申し込みをいただいたことになります。そこから多くの会社に正式契約していただきましたし、ベルフェイスのWebサイトのアクセス数や契約窓口数、「ベルフェイス」という指名ワードの検索数も飛躍的に増えました。
ビジネスの可能性の”芽”を広げてほしい
ーー3か月で約10倍の申し込みは驚きです。ベルフェイス株式会社のビジョンが「世界数十ヵ国で新たなビジネスを生み出すセールスプラットフォームをつくる」。ミッションが「勘と根性の営業をテクノロジーで解放し企業に新たなビジネス機会をもたらす」、ということですが、ビジョンとミッションに込められた想いを教えてください。
ビジョンについては、代表の中島の起業家としての想いですね。起業家としてやっていく以上は、世界で勝負できるようになりたい。海外に行ったときに、そこで自分が作ったサービスが当たり前のように使われている世界観を目指していきたい、ということです。世界中で使ってもらえるようなセールスプラットフォームを作っていきたい想いを掲げています。
ミッションについてですが、我々はテクノロジー系の会社なので、オンラインでのコミュニケーションというものを軸にいろいろな事業を展開できます。
ただ、我々は”営業”という領域の中で勝負していこうと決めています。その意思の表れで、ミッションとして宣言しています。
「新たなビジネス機会をもたらす」という部分も大事にしていますね。
例えばベルフェイスの場合「営業代行をやってくれないか」とか「オンライン営業の人材紹介やっていないか」などとよく聞かれるんです。
もしやろうと思ったら、音声がすべてテキスト化されているので、ベルフェイスの商談の中で「営業代行」と検索すれば、お客様がそうおっしゃった商談が山ほどでてくるんです。
なので、営業代行を始めようと思えば、営業代行の相談をもらっていた会社にあたっていけば、瞬時に事業を立ち上げられると思います。
このようにデータさえもっていれば、あらゆる領域に対して新しいビジネス機会に生かすことができるんです。同じようにお客様にもビジネスの可能性の”芽”を広げてもらいたい。そういう想いもあって、ミッションの中にいれています。
ベルフェイス株式会社 7つのバリュー
ーービジョン・ミッションに続いて、バリューについてお聞きします。これまで6つだったバリューが、10月に新しく7つのバリューとして生まれ変わっています。7つのバリューについて込められた想いを教えてください。
これまでの6つのうち残ったものもありますが、基本的にほぼ刷新されました。 ベルフェイスはいま社員数320人ぐらいの会社ですが、今年の1月まで100人ぐらいだったんですね。
それまでは、役員陣が手綱を引いてグイグイやっていくという感じでした。ところが、さすがに300人以上となると未知の領域なんです。
そうなると、どんどん権限委譲してマネージャーがひとつの組織の「社長」としてそれぞれが意識をもってやっていく必要があると思っています。そういった節目を迎え、バリューを刷新しました。
社員それぞれが、自分で考えて自分で組織を動かしていくということができないと、会社は衰退していくと考えています。
例えばバリューのひとつ「Think Diffrent(その手があったか!!を捻りだす)」。以前は、代表の中島や私が考えればよかったんですが、これからはそうはいかないんです。一つひとつのチームがこれまで思いもよらなかった新しいやり方を捻りださなければならないと思います。
「Focus(的を絞って一点突破)」もそうですね。いろいろな問題が起きているとして、どれかひとつをテコ入れして改善すれば、7割は解決するような重要な1点って必ずあると思うんです。
それを正しく見極めて、そこに対してリソースを注ぎ込む、ということを繰り返し日々の活動の中でやっていかないといけない。
どの1点に集中するべきなのかというのは、間違いなく役員がやることではなく、それぞれのチームができるようにならないといけない。そういった形で、役員たちがやってきたことを自覚もってやりましょう、というメッセージを込めて、7つのバリューを設定しています。
これからの営業に必要なスキルとは?
ーー新型コロナの影響で営業のスタイルは大きく変化したと思います。これからの営業職に必要なスキルはなんだと思いますか?
今後はひたすらテレアポしたり、飛び込み営業したりできなくなりますよね。オフィスにいない人が増えてきていると思うので、そういう方法が通用しなくなります。
なので「自分で考えて効率よくリードを取れる営業」にならないといけないのではないでしょうか。
人によってやり方はいろいろあるでしょうし、必ずしも答えはひとつではありません。ただ少なくともいえるのは、マーケティングを理解して、マーケティングの観点でどうやってターゲットに対してアプローチしていくのか、を考えられるような人にならないと通用しなくなっていくと思います。
例えば、SNSなどを使って強力な影響力を発揮する存在になり、そこからリードを集めるということもやり方のひとつですし、そういうことが得意な人を巻き込んで、一緒に考えていくことも解決策のひとつです。
自分で設計して考えてやれるということが、営業職にとって必要なスキルになってくると思います。
ーー確かにテレアポや飛び込み営業はできなくなりますよね。ベルフェイスのようなオンライン商談ツールを利用して、営業活動をすることが今後も増えていくと思いますが、オンライン営業のコツのようなものがあれば教えてください。
まずひとつは、マインドの部分ですね。オンライン営業が「訪問の劣化版」のように、訪問できないから致し方なくやる、と考えている時点でうまくいかないんです。
もっと前向きに取り組んで「仕組み」としてうまく使える人たちが、一度も会うことなくオンライン営業でばんばん契約をとってきています。
ベルフェイスも、本当に無名だったときから今までの受注の95%は、お客様と一度も会うことなく売ってきています。サービス利用料が年間100万円以上するものを、一度も会わずにですよ。
訪問営業じゃないと売れないとか、オンライン営業はお客様が嫌がる、などと言い訳をせずに、新しい営業の手段として、当たり前のように、訪問と同じようにやれる、と自分自身を腹落ちさせることがまず第一です。
ただ、我々も必要に応じて訪問営業をしています。この場合は訪問する、この場合はたとえコロナがなくなってもオンラインにする、という業務の設計についてもきちんと考えないと、いきあたりばったりの営業戦略になってしまいます。
なんとなくコロナが落ち着いたし、とりあえず訪問をする、感染者がまた増えてきたからとりあえずオンラインに切り換える、ということをやっていると仕組みとして機能しないし、戦略性もないですよね。
こういうことをしていると失敗するので、すみわけや設計を最初にやること。成功するためには、これが7~8割を占めると思います。
土壌が整ったら、例えばプラスαでオンライン営業用の資料をちゃんと作り変えるとか。文字が細かくしきつめられたパンフレットを画面に写しても伝わりにくいですよね。画面に写したときに、視覚的に誰が見てもパッと理解できるような、ワンスライド・ワンメッセージのスライドをきちんと作りこむなどです。
ただ、スキルの部分はやはり全体の2~3割の要素でしょう。マインドの部分、初期設計、戦略設計の部分、ここが重要なウェイトを占めていると思います。
お客様の成功を第一に考える
ーーメディアのコンセプトが「やりたいことをできるに変える」なのですが、今後やりたいことについて語っていただきたいです。また、それをできるに変えるためにおこなっていることがあれば教えてください。
前職時代から、営業のコンサルやアウトソーシングなどの営業支援をやってきています。ベルフェイス創業のときに、中島が声をかけてくれて、テクノロジーを使って営業を変えていくことをしていますが「営業支援をする」ことは、ずっと一貫しています。
こういう時代になって、営業のありかたは劇的に変わってきているし、営業の人口が減ったり、価値が下がったりということも当然あります。
でも、一貫して世の中の営業を効率化するために、自分にできることをその時代に合わせてやっていきたいなと思っています。
この5年間、インサイドセールスやオンラインセールスと言われる、相手先に行かずにおこなえる営業を広めてきましたが、状況によってどんどん変わっていきます。
ある意味、オンライン営業はもう当たり前の世の中になりました。なので、次に求められることってどんなことなんだろう? と考えながら、最終的には営業の効率化を図っていくための支援を自分のライフワークとして今後もやっていくと思います。
そのために今やっていることは、支援させていただいているお客様の成功を何よりも第一に考えて、目の前にいるお客様に成功してもらい喜んでもらうことです。
取引しているお客様が、営業のデジタル化をどんどん進めていくことで、どんどん出世していくのを目の当たりにしています。たとえば、ある大手通信会社さんは3年前に当時の担当者の方が「この会社は営業のデジタル化を進めないと取り残される」と言って、1週間たたずに社内の稟議を通してベルフェイスを導入してくださいました。
今では、この会社の社員さん数千人がベルフェイスを使ってくれています。
その担当者の方が、最近取締役に就任されたんです。すごくうれしかったですね。この会社はコロナ禍でも営業を止めることなく業務を続けることができて、それはその方が先を見越して行動した結果です。
実績を認められて役員にまでなったという出来事は、大げさな言い方ではなく最高の喜びですね。
このような仕事を繰り返していければ、必然的に必要とされる営業支援、そのときのお客様を支援できる力が身についていくはずだと思っています。
ーー西山さんありがとうございました。
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