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職場のランチがサラダバーのみだった。上司が気づければ、部下の不満は減らせる

 

職場のランチがサラダバーのみだった。上司が気づれば、部下の不満は減らせる

 

もうサラダバーに行きたくない。心の底から行きたくない。

 

ブラック企業やライター業を経た僕は現在、業務委託なども含め複数の会社で働いている。

問題は月1で出社している会社の1つ、A社のランチである。

 

なぜ月1か? 僕はある1社が好きなので週4で働かせてもらっており、A社を含めた残りの会社には月1しか出ないという贔屓をしているからだ。毎月しっかり気まずく働いている。

 

このA社では朝の会議から始まり、そのまま昼におじさん5人でランチミーティングすることがほぼルーティンとして確定している。

少々ダルいが、月1しか行かない僕に合わせてこうなってるので絶対に断れる空気ではない。人とご飯を食べるのは好きなのでそれ自体は問題が無かった。

職場での異変に気づく

異変に気づいたのは3ヶ月目だった。

 

ろくな発言をせずに数時間耐え、「やったんですけどノートパソコンを家に忘れました」という小学生みたいな理由で会議をなんとか乗り切った頃、シャランシャランとベルのような音が会議室に響いた。

 

お昼の合図として、12時になると会議室の時計から音がなる仕組みになっているのだ。

 

1番偉い坂田さんが口を開く。

「12時ですね。続きは、いつものサラダバーで」

 

またか。

先月も、先々月もそうだった。

 

先々月は初出社ということもあり、野菜はあまり好きではないがまあこういう日もあるかと飲み込めた。

先月は特に話し合いとかもせずみんなが粛々とサラダバーに向かったので、そこで薄ぼんやりとした不安に包まれた。

 

今月で確信した。坂田さんは今「いつもの」と言った。僕がジョインするずっと前から、会議の日はサラダバーしか行ってなかったんだ。

なぜだ。どうしておっさん5人ランチの選択肢にサラダが最有力候補として躍り出るんだ。絶対とんかつとかのはずだろ。

 

東京のオシャレなオフィス街だ。会社の近くには有名な中華料理屋や、ランチだけ安く食べられる高級料亭、芸能人に人気のカレー屋さんなど気になるお店がたくさんある。

 

そういった素敵なお店を全て無視し、「ランチタイム! サラダバーのみ営業中」と書いてある汚いステーキハウスに入る。

 

ランチタイム! サラダバーのみ営業中

 

サラダ&ドリンクバーで750円。同僚が「ここのランチ安いですよね」とか言ってる。よく考えろ。安くない。値段だけ見るな。サラダだぞ。サラダしかもらえないんだぞ。

 

あとクオリティも良くない。サラダは野菜の数が少なく、ドリンクバーもウーロン茶とコーヒーがピッチャーで置いてあるだけ。何よりオリジナルドレッシングがすげー酸っぱくてどの野菜にも合わない。妥当の食べログ3.1。

 

僕があまり打ち解けられないのもこのランチのせいな気がする。おいしい料理をみんなで食べた経験を通ればちょっとは仲良くなれそうじゃないか。

「これめっちゃ美味しい!」みたいなキッカケで会話が生まれたりするじゃないか。

 

今日なんて「このブロッコリーの色、変じゃないですか?」しか言ってない。「こっちのほうは緑です」「ほんとだ」で会話は終了してる。もう嫌だ。なんでなんだ。なんでこの店しか行けないんだ僕たちは。

 

お通夜みたいに5人で野菜を食べていたら、同僚が1番偉い坂田さんに質問をした。

 

「坂田さんって、チーズは大丈夫なんでしたっけ」

「ああ、俺はオボラクト・ベジタリアンだからチーズは大丈夫」

 

コイツのせいだ。なんか知らない単語だったけどコイツのせいだってわかった。

 

どうすればいい。どうすれば回避できる。帰りにセブンで揚げ鶏とか買ってる僕の些細な反抗は意味を成していないようだ。

 

連動するように週4で行ってるほうの会社でもサラダバーが流行りだしている。何故だ。狂ってしまいそうだ。

どうすれば回避できるだろうか。主義は好みよりも強い。色々考えてみたのだが、このシステムを変える方法は思いつかない。

 

ここで働く以上、サラダを食べ続ける運命なのだろうか。

 

4ヶ月目

4ヶ月目

 

「今日もサラダか」の憂鬱は杞憂に終わり、出社したら坂田さんが出張でいなかった。

歓喜した。今日は、今日だけは好きなものが食べれる。何が運命だ、そうだ、出張みたいなこういう外の力があるじゃないか。

 

何にしようか。そもそもランチミーティングなんだろうか。各々勝手に食べるとかなら最高だけどまあミーティングでもいいよ、みんなとんかつとか本当は食べたいんだろう。

 

会議自体は、僕の業務は坂田さんと連動してるので発言する必要も内容もあまりない。「いいですね」「それはいいですね」とか言ってたら12時になってた。

シャランシャランとベルが鳴る。2番目に地位が高い人が口を開く。

 

「じゃ、いつものサラダバーですかね?」

 

なんっでっだよ!!

ちょっと不思議そうに聞くってことは回避できるはず、僕はゆっくりと発言した。

 

「今日は坂田さんいないんで、野菜じゃなくても大丈夫なのではないでしょうか?」

僕は会議開始からカウントして1番長いセリフを吐いた。

 

「そうですけど、まあ、いつものところでいいんじゃないでしょうか」

 

何でだ、今日は諸悪の根源が居ないんだぞ? 好きなもの食べていいんだぞ?

 

シャランシャラン シャランシャラン

「なんかこの音聞くと、サラダの気分になっちゃうんだよね」

「そうですねえ」

「サラダの口ってやつですかね」

 

もうパブロフの犬じゃん。肉あげる時にベル鳴らしたらベルだけでヨダレ垂らしまくったあの犬じゃんあなた方は。その牙で野菜を食べるな。

なんだよサラダの口って。初めて聞いたよ。空腹時になりにくいだろその口。

 

運命は変えられないのかもしれないと思いつつ不本意サラダを食べ、まだ抗ってみせると、次は別の店を僕が提案することに決めた。

5ヶ月目

「今日はサラダの運命を回避してみせる」と決意の出社したら、坂田さんがサラダボウルみたいなのを食べていた。

 

「もうサラダですか」とめちゃくちゃ皮肉みたいなのを言ってしまったが、続けて聞いてみることにした。

 

「ランチミーティング、いつも同じ店なんですか?」

 

明らかな不満を含んだ質問に、坂田さんはにこやかに答える。

 

「んーたしかに、今日は違うとこにするかー」

 

嬉しかった。めちゃくちゃ嬉しかった。

とんかつとか食べたい。カレーとか食べたい。別にファミレスでもいい。 そうだよ、サラダバーしか扱ってない特異な店に行ってるからわけがわかんないんだよ。色んなメニューがある店で、コイツだけサラダ食えばいいんだよ。上に立つ人はそうするべきだよ。

 

会議中も僕は、坂田さんの意見に「完全にその通りですね」「間違いないと思います」「やっぱり坂田さんの視点ってすごいですよね」など合いの手を入れることで心証を良くしていた。これで運命は変わる。

 

シャランシャランとサラダの音が鳴り、僕はうやうやしく立ち上がる。

「ちょっと行ったところの大きなビル、地下がレストラン街になってて、30店舗くらいあるんだよ」

 

素敵な知識を教えてくれた。何故それなのに毎月寂れたサラダバーにしか行かせてもらえなかったのか。

 

エレベーターを下り、ビルから外へ。開放感。空もいつもより青く見える。 レストラン街に入る。色とりどりのお店が歓迎してくれているようだった。

 

違うサラダバーに連れて行かれました。

 

CUBEという映画がある。密室系ホラー映画の名作と言われている作品だ。

 

殺人装置のある箱に閉じ込められた男女が脱出するも、また次の新しい箱の中に閉じ込められていく。

死ぬ気で脱出してもまだ箱の中。その絶望は計り知れないだろう。

違うサラダバーに連れて行かれました。

 

11ヶ月目

僕は諦めた。

 

1回仕事でめでたいことがあって、サラダさんに「今日はお祝いだ!」と高級サラダバーに連れていかれた時に諦めた。

 

この半年で色んなサラダを食べた。相変わらず全然昼食という気がしないし、15時にはお腹が空きだすけど、僕は月1で粛々とサラダを食べる。

 

出来上がった仕組みを下から変えることは、相当難しい。

出来上がった仕組みを下から変えることは、相当難しい。

上がちゃんと気づいてあげられれば、下の不満は減らせるはずだ。

立場は関係なく、なるべく気づいていきたいなと思った。

 

チャレンジした結果で諦めるほうが、スッキリすることもある。

不満に合わせて自分が変わることもあるかもしれない。

別にそれは必ずしも悪いことではない。

 

普段の昼食が野菜になることは無いが、シャランシャランとベルが鳴ると、「サラダでいいか」と思ってしまう。

 

今日も犬たちはヨダレを垂らしてサラダに向かう。秋のトマトは旬らしいので楽しみだ。

 

 

執筆

マキヤ

29歳。会社で編集などの仕事をしながら、違う会社の執行役員になっている。先月、実家の牛乳を新しい方から使ったことで親からひどく怒られた。

編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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