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『ネットビジネス進化論』について著者の尾原和啓さんと学ぶ

「ネットビジネス進化論」を著者・尾原さんと学ぶ

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先日、さくらインターネットの社内向けイベントとして、とある勉強会が開催されました。今回はその模様についてレポートいたします。

どんなイベント?

『ネットビジネス進化論』の著者である尾原和啓さんをゲストとしてお招きし、弊社社員とリモートで対談していただくという内容です。

なお、この勉強会にはあらかじめ「課題」が設定されており、挑戦者を募っていました。 課題の内容はこちら。

【クラウドビジネス進化論を披露せよ!】

『ネットビジネス進化論』の最終章後半に、以下3つのネットビジネスの未来(力学)が登場します。

1.点から線へ

2.機能価値から感情価値へ

3.問題解決から自己実現へ

これらの力学を自分なりに分析しつつ、さくらインターネットがクラウド市場の特定のセグメントにおいて、トッププレイヤーの立場を獲得できるような面白いビジネス案を、「クラウドビジネス進化論」と銘打ってスライド5枚以内で披露してください!

この課題に挑戦した2人の社員が自身のアイディアを発表した後、尾原さんより直接コメントしていただくという形で進められました。課題の挑戦者にとってはもちろん、視聴している社員にとっても大変貴重な機会となりました。

『ネットビジネス進化論』について

尾原和啓さん(以下、尾原): これまでプラットフォーマー側で多くの仕事をしてきましたが、もう自分でプラットフォームを立ち上げるというよりは、何か次の世代に貢献できればと思って、ずっと本を書かせていただいています。

『ネットビジネス進化論』は、インターネットが現れてちょうど今年で30年目ということもあって、どのようにネットビジネスというものが生まれ、どう進化してきたかということをまとめました。

今日は課題を用意してくださっていると聞いています。とても楽しみです。

1人目の発表:「SaaS型カイシャのちょっとした情報共有公開プラットフォーム」

まずは1人目、さくらインターネット インキュベーション推進部 鎌田達也が考えたサービスは以下の通りです。

カイシャの本棚(仮)

カイシャの本棚(仮)

  • カイシャ内で散らばっている書籍情報をクラウド上で管理して社内の情報管理の効率化と社員満足度の上昇を促す。
  • 本棚(書籍)情報を外部公開することにより、既存資産(情報)を利用して手軽に自社の露出を増やす。

鎌田達也(以下、鎌田):社内にある参考書などの情報がシステム化されれば、欲しい本があったときに、自分で買わなくても社内で誰かが持っている、社内の本棚にあるといった情報が分かります。そうすれば、買わずに借りることができます。

また、自分で本を買う場合に、おすすめ本のまとめサイトを見ると、本を売りたい! という感じを受けてしまうので…(笑)。

もっと信頼できるおすすめ情報があればいいなと思いました。社内の人がおすすめする本などの情報がまとまっていれば、勉強効率も上がりますし、社外の人にとっても有用かもしれないと考えました。

尾原さんのコメント

尾原さんのコメント

尾原:インターネットビジネスの本質が含まれていますね。インターネットの歴史上では、情報の粒度を細かくしていくことで、当初はウェブサイト単位での情報でしたけど、検索サイトの登場により、ページ単位で情報を探すことができるようになった。

また、TwitterとかRSSなどが現れるとフィード単位……と、情報をピンポイントでやりとりできるようになった。そうなると、今度はまとめサイトがでてくるようになりました。

情報というものをいかに細かくしていくか、でも細かくするとマッチングするのが大変になる。そこで、どうやってマッチングしていくかを考えるのは大事なことです。そういう意味では、鎌田さんのアイデアは非常にインターネットらしいツールと言えると思います。

ただ、このツールに対してお金を払ってもらえるのか、というところと、ユーザが本当におすすめの本などの情報を溜めていってくれるのかというところが課題ですね。ユーザって何が楽しくて情報を溜めていってくれるんでしょうか。どう考えますか?

鎌田:そうですね。もともと社内の書籍情報は社内で共有される ”べき” もので……というと動機付けがイマイチ良くないんですが、”外に出すために情報を溜める” というよりも、 ”仕事の一環として” やったことが、外に出しても使えるのではないかというイメージです。

尾原:答えを言いながら、言い淀んでいる感じですね(笑)。おっしゃるとおり、”べき” だと人は動かないんですよね。もちろん、業務としてやることで評価に加えるとか、義務という形をとってもいいんだけど、本当にそれでみんな動いてくれるのかという問題ですね。

クリエイティブコモンズを提唱したローレンス・レッシグ先生が、人を望ましい行動に導くために、4つのやり方があると言っています。

1つは罰則。2つ目は美学。3つ目は市場原理。最後がアーキテクチャーと呼ばれるもので、これは、心理的・経済的な圧力を加えなくても、なんとなくそれをしてしまうというような行動経済的な環境を作ることです。この4つをうまく組み合わせて、ユーザが自然と情報を溜めていってくれることを考えるのが大事ですね。

こんな感じで延々としゃべれそうなんですが(笑)。つまり、アイデア自体は非常にインターネットっぽくて、私はとても好きです。このアイデアが ”自走するためのしかけ” を考えると良いですね。

人を動かす4つの方法について詳しく知りたいのであれば、レッシグさんが書いた『CODEインターネットの合法・違法・プライバシー』という分厚い本があります(笑)。または、濱野智史さんの『アーキテクチャの生態系: 情報環境はいかに設計されてきたか』という本がとても良くできていますので、読んでみると良いですよ。

鎌田:ありがとうございます!

2人目の発表:「まだ間に合う!? 法人最強Platform」

2人目のさくらインターネット CS戦略部 眞崎さゆりの発表内容は以下の通りです。

最強法人アカウントPlatform

最強法人アカウントPlatform

  • さまざまな企業活動がこれ1つでできる、という法人アカウントを作る
  • Platformを作り、そこにあるコンテンツ(電子契約、e-TAX、その他各種申請など、現在バラバラになっているもの)を1つのアカウントで連携して使える
  • このようなPlatformを持っていることで、利用者のデータも集まる
  • 利用者が増えればサービスを提供してくれる企業も集まってくる

眞崎さゆり:個人だと、1つのアカウントで複数のサービスにログインできて、クレジットカードなどの情報を引き継いで、いろんなサービスを利用できるものがあります。しかし、法人だとそういう風になっていないのが現状だと思います。法人も個人と同じように1つアカウントをもっていれば、あれもこれもできて絶対便利なのになと思って考えました。

実現方法について、具体的にアイディアがあるわけではないのですが(笑).。例えば、英国だと、政府がデジタルサービスをやるということで構築したものがあります。そういった形で、やはり国がちゃんと “人のために” という視点でやることによって、横断的にそれぞれバラバラになっていたものが集まり、いままでなかったサービスが追加でできあがるという循環が生まれたのかなと。

そういうものが日本でもできると素晴らしいと思います。そして、日本でやるならぜひその基盤はさくらインターネットに置いてほしいなと思います(笑)。

尾原さんのコメント

尾原さんのコメント

尾原:これはずっと議論されていて、非常に当たり前であるがゆえに難しい問題ですね。インターネットって、どこにでも繋がる分、中心を握った人間が権力も握ってしまうという問題があります。

皆さんはFacebookログインって利用されていますか? 今使っているZoomもFacebookログインできますよね。例えば、あるゲームをするのにFacebookログインを使ったとして、そのゲームを何時間プレイしていたかなどの情報がFacebookに送られて、その情報が広告に使われていることは知っていますか? 実は利用規約をよく見るとちゃんと書いてあるんです。

Facebookは他のサービスにもログインできるという便利さを提供する代わりに、ユーザはログイン先でどういうことをしているかという情報を広告に使ってもOKだよ、という取引をしていることになるんですね。その結果、現在ではFacebookは広告のシェアがGoogleに次いで世界2位になっています。

つまり、IDって権力なんですよ。なので、いろんな業界を横断してIDを作りましょうという話になったときに、じゃあそのIDの権利は誰が握るんだという話になって、結局動かないということがあります。

実は英国がやった素晴らしいことは、眞崎さんの資料の中にもあったGDSのデザイン原則、この中の2番「最小限にせよ(政府は政府しかできないことだけをする)」をちゃんと決められたということ。これが革命的なんですよ。

これをちゃんと言い切れるかというと難しい。もともと、英国では政府は最小限の役割をすればいいという考え方が長く影響しているということはあります。でも、権力を持っている人間が、権力を手放すことを最初に宣言するというのは大いなる矛盾ですよね(笑)。

ではなぜできたかというと、英国は法律よりも先に “コモンセンス” を優先するという、先進諸国の中で非常に珍しい国なんです。みんなが美しいと思うことをやるべきだ、という国なんですよ。だから、GDSのデザイン原則みたいなものができたんですね。

今回の新型コロナの流行ということがあると、やはりマイナンバーのようなものがあった国の方が明らかに初動が早くて、経済的に助けるべき人を助けるべきタイミングで助けられた。今後は日本でもこのような流れは加速するでしょう。これまでの歴史とかも含め勉強しておくことは大事だと思いますよ。

まとめ

尾原さんからは本当にたくさんのお話をしていただきました。視聴していた社員にとっても大変有意義な時間となったと思います。尾原さん、ありがとうございました。

さくらインターネット インキュベーション推進部 山田修司

この勉強会は、さくらインターネット インキュベーション推進部 山田修司が主催しており、弊社内で「あきんど大学」と呼ばれています。国内外で活躍しているビジネスパーソンをゲストとしてお招きし、経営・営業・マーケティングなどをテーマにさまざまな知識やノウハウを学んでいくというこの企画は、今後も定期的に開催される予定です。

次回はどんな方のお話をうかがうことができるのでしょうか、今からとても楽しみです!

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編集

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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