元さくらインターネット所属、デザインエンジニアの小木曽(こぎそ)です。
現在は六本木辺りの某企業で、主にSaaSのUI設計に携わっていますが、同時にフリーランスのWebエンジニア、デザイナー、アドバイザー、たまにライターなど、パラレルにキャリアを積んでいます。
なんで元社員?
え? なんで退職した元社員がさくらインターネットのオウンドメディアで記事を書いてるの..? と思われるかもしれません。
はい、ぶっちゃけ自分もそう思います。
きっかけは退職前、社内の知見共有会で、ネタの意味で発表したとある資料がそこそこ好評(思い込みかもしれません)だったので、退職前ギリギリに冗談半分で「意外と受け良かったんですけど記事化しませんか?」と、さくマガ編集部に持ちかけたら、「面白いですね!!!」の一言でゴーサインが。まじかよ。
僕:「あ、、でも来週辞めちゃうんですよね、、大丈夫ですか??」
編:「あ、、そうなんですね、じゃあ今後はDMでやり取りしましょうか!」
こんな経緯で退職後の連絡手法も確定。無事執筆の運びとなりました。
世の中には 奇特な 器の広いメディアがあるんですね、ありがとうございます。
この記事で伝えたいこと
さくマガのあまりの器の広さに前置きが長くなりました。
本題に入ると、この記事で語りたいことは次の4点になります。
- 料理は開発サイクルと見立てて遂行できるよ?
- 目標設定して、経緯と結果をまとめると改善手段が目に見えてわかるよ?
- 料理の腕も上がるよ、パートナーや友達の胃袋もつかめるよ?
- 仕事もカレーもサイクルを回すことで強くできるよ?
要約すれば、カレーを作ると仕事もプライベートも美味しく改善できる話になります。
さらに雑にまとめると、仕事でもプライベートでも改善に迷ったら、とりあえずカレー作ればすべて解決するよ!! って記事です?
異論は認めます。
なぜカレーなのか?
もともと、さくらインターネットは柔軟に在宅勤務が可能な制度を持っていましたが、コロナウィルスの影響から、2月末から原則リモートワークの企業に切り替わりました。
新型コロナウイルス感染症に関する当社対応について(2020年5月27日18:00更新) | さくらインターネット
緊急事態宣言発令時は、原則出社禁止、退職前の6月はリモート推奨でした、ほんと柔軟で良い会社ですね。
最初1週目はマジかフルリモートか理解あって助かるわ、などと思ってました。しかし2週間後、
「飽きた、、、」
こんなに恵まれた環境なのに愚痴っている僕。
感染リスクが大きく減り、移動時間もなくなり、使える時間が増えたのは良かったのですが、世間は戒厳令ムードで、休みを取ったって何をしていいやら状態。
もちろん勉強や副業はするんですけど、それだけだとルーチン化してつまらない、 休みや有給休暇を取得しても、外食や旅行ができないとこんなに余裕時間ができてしまうとは。。。
ゲームもすぐに飽きそう、 運動って言ってもそんなにモチベーションがない…副業もあるし、ぐぎぎぎ。
世間的に外にも出にくい…紆余曲折の末に、唐突にあるテーマが降臨しました。
「”インドカレー”を極めよう」
もともとカレーは大好きで、インドにも行ったことあるしいつか作ってみたいなぁ、と考えていました、心の奥底に眠っていた願望の発現です。
もちろん今まで全く作ったことはないです、カレーライスはありますが。
他に思いつかないし、勢いがあればまぁなんとかなるでしょ!精神で決定しました、この辺りの進め方はほんと雑です。
目標・成果を決める
ただインドカレーを作るだけだと、そもそも成果がわからないし、仕事も目標を立てることから始めるのが定石です。何を目指してインドカレーを作るのか? なんのために作るのかを考えます。
今回設定した目標(成果)は以下のとおりです。
自分にとって最高のインドカレーを作る
なんだか急に仕事感が出てきましたね。しかし、何かを成し遂げるためには、手を動かす前に、何を目指すのかを明確にしないといけません。
各工程で何が必要かを考え、サイクルに当てはめて計画してみる
目的を達成するために、まずは何が必要かと言われれば計画です。
海外旅行するのに未計画で行く人は、何が起きるかわからないことを楽しめる人で、大概は計画を立てて行きます。未知のインドカレーを作るにも、もちろん計画設計が必要です。
加えて設定した目標は、始める前からわかっていましたが、とても一度で達成できるものではないです。試行錯誤が必要です。
何度もトライして改善することを前提にすると、いきなり豪華なインドカレーを作るところから始めても、うまく行かない可能性が非常に高いです。
計画を立てて、何度も作ることは確定しているので、まず何を学ぶ必要があるのかを考える必要があります。考えていく順番としては以下の通りです。
- 仮説(アイデア)を用意する
- アイデアを実証するために何を学ぶか?
- 学ぶために必要なデータは?
- どうやって計測するか?
- 必要な成果物は?
- どう構築するか?
これらを網羅して実行していけば、素敵なカレーが出来上がるはずです。
仮説を立てる
- 最高のインドカレーに必要な条件
- スパイスの配合比
- 皿上の適切なレイアウト
- 装飾
- 写真映え
- ライティング
- カメラの性能?
- 撮影角度・位置?
何を学ぶか
設定した仮説を検証するためには、何を学ぶ必要があるかを考えます。
必要なデータは?
次に、学ぶためになんのデータが必要かを考えます。ここで考えるのは、学ぶために必要なデータ、フィードバックの情報です。
自分にとっての最高のカレーとはいえ、味へのフィードバックは欲しい、あと見た目はSNSや社内チャットにとりあえずアップしてみる…などを欲しいデータを決めていきます。
-
味のフィードバック
- 美味しい、まずい、酸っぱい、辛い
- 別のカレーと比較してみたい
- 自分にとってだから、ひとまず自分が美味しいと感じることが重要
-
見た目のフィードバック
- アップした写真への反応
- SNSの反応数
どうやって計測するか?
データを得るために必要な計測方法を考えます。本当はもっと色々な選択肢があると思いますが、外出自粛下という条件のもと設定した計測法は以下です。
- 妻に食べてもらう
- 出来合いのレトルトや弁当を試してみる
- 外食して比較する
- 外出自粛で外食がほぼ無理だったのでUberEatsを使う
- 各SNSに写真をアップして反応を見る
必要な成果物は?
ここでようやく何を作るかを決めていきます。今回のテーマはカレーなので、作るものはもちろん決まっていますが、一口にカレーと言っても様々あります。
一度に全てを作るのは不可能なので、1つのサイクルで何が作れるかを洗い出します。ここで洗い出したものは以下のとおりです。
- カレールー
- 南インド風
- 北インド風
- タイ風、和風…
- 主食
- ナン
- チャパティ
- ライス
- 日本米
- タイ米
- バスティマスライス
- 付け合せ
- アチャール
- サプジ
- ライタ
- etc…
どう構築するか?
作るものは決まりました。あとは1サイクルで作るカレーに必要な材料と調理器具を用意します。
- 調理器具
- 鉄フライパン
- スパイスグラインダー
- ミキサー
- 包丁
- めん棒
- レシピ
- ネット
- 書籍
- 口伝
- 各種材料
- スパイス
- 調味料
- 野菜
- 肉
- 粉
とにかくスパイスは、どの記事や本を見ても種類が必要そうだったので、専門店に小分けで何回も注文しました。最終的に、部屋がスパイスの香りで充満したのを覚えています。
サイクルごとの経過
計画を立てたので、早速サイクルを回していきます。
高速にサイクルを回したかったので、毎日カレーを作るぐらいの勢いが欲しかったのですが、やる気のある妻の料理機会を奪うのと、毎回作ると流石に飽きそうだったので、最大週2回ぐらいのペースで作る、と決めてサイクルを回しました。
1サイクルは自分基準で2週間(最大4食分)区切りにしています。
なお、サイクルの区切り目に雑なふりかえりと、サイクル自体を更新したりもします。
1サイクル:0.5ヶ月経過
まだこの時は特に写真には手が回らず、スパイスカレーとはなんぞやから入っていました。
そもそもルーやカレー粉を入れずに、カレーなんて本当に作れるのか? ぐらいの知識しかなかったので、クミンシードの香りを嗅いだだけで「これカレーじゃん!!」などといっているフェーズです。
このとき学んだのは、クミンシードとガラムマサラのみで、北インドカレーっぽいものは作れるということでした。
2サイクル:1ヶ月経過
味にようやく慣れてきた段階に入って、すこしずつ他のスパイスやカメラアングルに気を使い始めていました。ホールスパイスをさらに買い足し、カルダモンとシナモンスティックなども使い始めました。
そういえばインド行ったら結構な頻度で食べていたチャパティが、日本で食べれないのおかしくね? と思ってチャパティの粉を買って作り出したのもこのサイクルからです。
味は向上してきた一方で、まだ写真、絵力UPには手が回っておらず、撮影手法も定まっていません。撮影角度や色補正を変えつつ、最適な撮影パターンを探っていました。
3サイクル:1.5ヶ月経過
このサイクルになると、北インドカレーの味や雰囲気が何となくわかってきたので、南インドカレーにシフトしつつありました。
ヒング(悪魔の糞と呼ばれる強い香りの香辛料)やギー(インドのバターオイル)など、普段使わないであろう香辛料も購入し、味の変化を試しています。
写真はというと、ライティングを蛍光灯からオレンジ電灯に変更にして、見た目の美味しさUP、決められたアングルで撮ることで比較しやすいことがわかり、真上からカレーを取るようにしたり。
ただし、まだトリミングや調整方法にブレがありますね。
(カレー以外の調理に手を出し始めていたり。上の写真は上記はジャガイモのサブジ(野菜の炒め煮))
ちなみに、さくらには #ouchi_gohan という社内Slackチャンネルがあり、日々の作った食事を社員がアップしています。カレーを作る度にこのチャンネルに投稿していった結果、別に毎日作っていないのにさくら社内でひたすらインドカレーを作ってる人という認知が生まれました。
4サイクル:2ヶ月経過
写真の位置と撮影方法にムラがなくなってきました。副菜も充実してきており、新しく買ったカレー用銀皿もいい感じに収まっています。
スパイスはだいぶ揃いつつあり、さらなる味を追求するため、タマリンド(強い酸味をもつ甘酸っぱいペースト)なども使い始めます。
このサイクルになると、南インドカレーを作り始めて、米食の日本人に合うカレーは南インドカレーなんじゃないか、と考えるに至りました。南インド風はそれほど米にマッチした味付けなんですよ。
そもそも米食が主流の日本人のカレー文化からして、南インドカレーが源流なんじゃないか、そうか我々はムンバイのほとりから目覚めたのか…!!(ry
しかし、カレーを撮影し始めてそろそろ二ヶ月経つのですが、いよいよスマホのカメラに限界を感じ始めていました。
ひとまず良さげなコンパクトデジタルカメラを買おうか悩んでいたら、一眼で撮影したほうがカレーを美味しく撮れるということを、怪文書を通して友人がプレゼンしてきました。
何だそのやる気は。
しかし、撮影されているサンプル写真を見るとたしかに、たしかに良いんですよね、とはいえ高い、レンズ込みで約10万円…。カレーのためだけに10万円使えるか悩んでました。
5サイクル〜:3ヶ月以降
突如降ってきた給付金10万円で購入した一眼カメラで、満足できる絵力を得ることができました。結論がぶれますがお金の力は偉大でした?
得られた価値
一通りやってみて、結果として得られたものは、以下のとおりです。
- スパイスカレーの基本を知ることができた?
- 南インドカレーと北インドカレーの差を知ることができた?
- 己のカレー嗜好を知ることができた?
- カレーを自己表現のひとつに消化できた?
- 暫定最高のカレーレシピを作ることができた
- (想定外)アイデンティティを確立した
スパイスカレーとはなんぞや、という地点から始めましたが、目標を設定して、何度も作ることで、今ではどのスパイスがどんな役割なのか、わかるまでになりました。
想定を超えた価値として、個人のアイデンティティに昇華してしまいました。今では自己紹介のアクセントとしても使っています。
ちなみに、今回作成したカレーの中で最もうまくいったカレーレシピは以下のnoteに投稿していきます。ぜひ作ってみてください!!
振り返り
10万円分の投資を最大限まで高めるために、サイクルはこれからも回していきますが、最後に始めてから今までの2ヶ月ちょっとを振り返ってみます。
良かったこと
- 自分が好きなカレーが、どちらかというと南インドカレーだとわかった
- チャパティを作ることで心を保つことができた
- 調理の楽しさを実感できた
- 自分のアイデンティティに昇華できた
失敗したこと
- 調査不足で、チャパティの膨らませ方が安定しなかった
- 材料不足で、自作ナンが作れなかった
- 付け合せがあまり作れなかった
- 外出自粛の影響で、外食による比較ができなかった
次にやること
- ナンの材料を買い、ナンを作る
- チャパティの作り方を変えてみる
- 自粛解除されたので外食でカレーを食べに行く
- 付け合せのレパートリーを増やす
- 南インドに行く(コロナが収束したら…)
終わりに
以上がカレー調理サイクルを回すことで筆者が強くなった軌跡です。すでに10万以上投入してるので、とにかくどうやってその10万の価値を最大化できるのかが目下の課題です、だれか10万円ください。
ちなみに今回使ってみた改善サイクルはBML(Build-Measure-Learn)ループをアレンジしたもので、サイクルもスプリントの要素を取り入れています。ふりかえりもKPTというふりかえりフレームワークを使っています。
この記事の本題に戻りますが、何が言いたいかといえば、改善の思考方法は仕事にもプライベートにも?にも使えるよ! ってことです。
目標を設定、計画を立てて、一度に詰め込みすぎず無駄なものを作らず、小さく早く改善していく….プライベートも仕事も、根気よくサイクルを回していけると、きっとハッピーな結果が待ってます。
カレー皿のように器が広いさくらインターネット、さくマガをこれからもよろしくお願いします。機会があればまた!