「生産性」とは、企業などの組織が保有するリソースを最大限に活用できるかどうかが問われる業務効率性の指標です。
その生産性を上げる方法について書いていきます。個人でもできる生産性を向上させるための考え方や具体的方法について解説します。
- 生産性向上とは
- 生産性向上のメリット3つ
- 国際的にみて日本は生産性が低い
- 生産性向上のためのマインドセットとは?
- 3つの具体的施策
- 生産性向上の成功事例
- テレワークで生産性向上
- 生産性向上のカギは人的資源
- 生産性向上のまとめ
生産性向上とは
日本は世界的な少子高齢社会なので、労働人口はこれから減ってしまうことが予想されます。人手不足や日々競争にさらされる企業経営の現場では「生産性向上」は最も力を入れて取り組むべきテーマです。
また同時に、会社で働く従業員にとっても生産性が向上すれば、さまざまな副次的効果が得られます。AIやデジタルツールを使って業務を効率化することで、同じ作業が短時間で終われば、時間に余裕が生まれるからです。
具体的には、組織の3大リソースである「人・モノ・金」について、最小限の投資で最大限のリターンを生じる仕組みを持っているかどうかが問われます。
近年、生産性については数多くの研究がなされており、組織のどの部分にフォーカスするかによって、一般的に「労働生産性」「資本生産性」「全要素生産性」に分類されます。簡単にまとめると以下のようになります。
- 労働生産性は、労働者一人あたりが生み出す価値についての指標
- 資本生産性は、投下された資本の大きさに対しての創造された価値について考える
- 全要素生産性は、組織の活動に必要なすべての要素を勘案して、生産性を総合的にとらえる
いずれにせよ、生産性を定量的にとらえるには、アウトプットとインプットの比率で表現します。つまり、最終的に得られた「成果価値」をそれまでに使った「投入資源」で割ることで数値化できます。
生産性向上のメリット3つ
このような生産性を向上させると、主に3つのメリットが得られます。
1つめは、企業が効率的に利益を追求できる点です。すでに紹介した生産性の数式の関係から、生産性が高いときには、小さなインプットで大きなアウトプットが達成されている状態になっています。 生産性が向上すれば、企業にとっては投資の無駄が少なく、効率的な収益が得られるわけです。
2つめは、研究開発投資が可能になる点です。同じ価値を生み出すのに、短い時間や少ない材料で可能になれば、その時間や材料を新製品や新サービスの開発に向けることができます。お客さまに付加価値を届けられます。つまり、生産性向上は企業の長期戦略の策定を可能にするのです。
3つめは、ワークライフバランスが実現できる点です。働き方についての意識は時代とともに変わってきています。仕事とプライベートな生活が両立できるワークライフバランスという観点は、就労環境を選ぶ際のポイントになっているのです。残業による長時間労働を解消し、労働時間を削減することは生産性の向上につながります。
生産性が向上して、余裕ができた時間や資金を労働者に還元すると、仕事へのモチベーションが活性化されます。一方で、モチベーションが上がれば、さらなる生産性向上に結びつき、企業の収益も向上するのです。
つまり、生産性の向上によって、経営側と労働者側の双方にメリットがある関係を構築できる可能性があります。効果的な仕組み作りと施策を企業は求められるのです。
国際的にみて日本は生産性が低い
公益財団法人日本生産性本部が発表したデータによると 、2018年の日本の時間当たり労働生産性は46.8ドルで、OECD(経済協力開発機構)加盟36カ国中21位でした。
1位のアイルランドは税制上の関係もありますが、時間当たり労働生産性は102.3ドルなので倍以上の差があります。主要先進7カ国で見ると50年近く最下位の状況が続いている状況です。
データで見ても、これからの日本は業務効率化の施策をおこない、生産性・国際競争力を高める必要があるとわかります。
生産性向上のためのマインドセットとは?
ある課題を解決する際に持っておくべき思考のパターンを「マインドセット」といいます。生産性を向上させるときのマインドセットの基本は2つあります。
- インプットを少なくすること
- アウトプットを増やすこと
さらに、このバリエーションとして、インプットを極限まで減らしつつも、アウトプットの減少をなるべく抑えるようにする戦略があります。この場合、インプットもアウトプットも減少するのですが、インプットの減少率よりも、アウトプットの減少率を低く抑えることで、結果として利益が生まれるわけです。
同じように、インプットを増加させることによって、それを上回る効率でアウトプットを生み出す戦略もあります。いずれにせよ、全体的な増加や減少傾向が問題なのではなく、その差に着目するという思考が生産性向上のポイントです。
3つの具体的施策
ここからは実際に生産性向上を実現するために大切な具体的施策について紹介します。個人でもできることなので、業務の見直しを考えるうえで参考にしてください。
生産性向上の方法 施策1:業務の見える化
生産性向上の基本中の基本は、業務の「見える化」です。見える化は「カイゼン /kaizen」とよばれる、トヨタ自動車が起源で世界的に広まった工業製品の品質管理手法の中で繰り返し出てくる言葉です。
これは物事のプロセスを言語化・図像化することで、社員間で情報を共有する手法といえます。たとえば、ある社員が担当する業務を「見える化」すると、その社員以外の人にも業務が可視化されます。具体的には業務フローやマニュアルをしっかりと作成しておく対策が必要です。当社でも、「Confluence(コンフルエンス)」というクラウドサービスを活用して、業務内容やマニュアルをクラウド上にまとめています。
業務の見える化をすると、異なる観点からの意見や指摘をもらえるため、無駄の発見につながります。無駄が判明した時点で、無駄な業務をなくして業務効率化をおこなえば、成果として生産性が向上するわけです。
生産性向上の方法 施策2:デジタルツールの導入
インターネットやコンピューターの発達で、デジタル化は企業の生産性向上にとって不可欠な存在になってきています。IT技術を応用したさまざまなツールを活用することは、社員の業務効率・労働生産性を劇的に改善する可能性があるのです。
最近は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進が必要だと多くの企業でいわれています。
RPA(Robotic Process Automation)といわれる業務を自動化する技術があります。たとえば、RPAを使ってExcelの定型業務を自動化すれば、入力の手間が省けて生産性が向上します。
製造業では、工場といった生産ラインの管理業務にIoTデバイスを投入する方法があります。IoTとは「モノのインターネット」と訳されます。さまざまなセンサーを生産ラインの各所に配置して、作業環境の変化を詳細にモニターしてフィードバックをおこないます。これにより、通常は見過ごされるような細かな無駄を管理することが可能になるため、成果として生産性の向上が期待できるのです。
そのほかにも、多くの企業が、SFA(Sales Force Automation)といわれる営業支援システムやオンライン会議ツールを活用して生産性向上を達成しています。RPAやSFAなどのデジタルツールを活用することは、これからの企業にとって重要です。
生産性向上の方法 施策3:従業員のモチベーション向上
どのようなデジタルツールを導入しても、業務をおこなう従業員のモチベーションが低ければ、その効果は十分なものにはなりません。モチベーションの高い社員がいることで、すべてのデジタルツールが生きてきます。
職場でのモチベーション向上の基本は、公平かつ合理的な人事評価制度です。成果が出ていれば、適切に評価する必要があります。また、既存の業務だけではなく、新しいプロジェクトへの挑戦など、やりたいことができる環境を作ることも社員のモチベーションを高めます。
ここで有効なのが「1on1ミーティング」です。マネジメント層が部下と1対1で話す時間を確保し、その人のためだけに時間を使ってください。部下の話をしっかりと聞いて、不満に思っていることや、業務上のストレスを把握し、サポートすることで部下のモチベーション低下を防げます。結果的に、社員の定着化も図れるでしょう。
生産性向上の成功事例
ここからは、実際に業務効率を改善し、生産性向上を実現した日本企業の成功事例を紹介します。
トヨタ自動車
世界でも多くの企業が取り入れている「カイゼン /kaizen」は手法というより考え方です。常に今より良い方法はないかを考え、業務効率をあげる取り組みを社員全員が実行することによって、短い時間で多くの自動車を製造することができているのです。 「カイゼン /kaizen」による生産性向上の成果もあり、トヨタ自動車は2019年度の売上が30兆円を超えています。
三菱東京UFJ銀行
RPAの導入により業務効率をあげて生産性向上を実現しています。約20の業務において累計で2万時間の作業を効率化しています。生産性向上という目的を明確化して事務作業の効率化だけではなく、単純作業もルール通り実行できるRPAを導入しました。
これにより明らかにミスが減ったそうです。コンピューターができることはコンピューターに任せて社員は人間でしかできないコア業務にあたることができます。
テレワークで生産性向上
2020年に入り、新型コロナウイルスの影響で多くの企業で労働環境の変更が迫られ、テレワークに取り組んでいます。社員個人の意識も大きく変わったと思います。業務内容によっては、テレワークが難しい方も当然いるとは思いますが、これをきっかけに今後はテレワークを中心に働く方も増えていくでしょう。
さくらインターネットでも、約9割の社員がテレワーク中です。SlackやZoomといったデジタルツールを有効活用し、チーム間でのコミュニケーションが取れています。仕事のパフォーマンスを落とさずに、力を発揮できています。
テレワークをおこなうことで、通勤時間がなくなり業務に集中できるので生産性向上につながるのでおすすめです。必要な制度や仕組み作りの施策もありますが、企業が積極的に取り組むことで実現可能だと思います。
生産性向上のカギは人的資源
企業が生産性向上を達成するためには、さまざまな考え方やこの記事で紹介したような具体的な方法があります。しかしながら、最終的に生産性向上は企業で働く社員一人ひとりの能力にかかっています。
自分の責務を理解し、生産性を意識して行動する人的資源がなければ、どのようなデジタルツールも意味をなさないのです。仕事の成果を求めるうえでは社員のモチベーションをいかに高められるかが課題となります。
会社は社員のことを考えて人材育成を実行し、長時間労働を削減する働き方改革や業務改善をおこなうことが生産性向上の第一歩といえるでしょう。
生産性向上のまとめ
- 生産性向上には3つのメリットがある。 1.企業が効率的に利益を追求できる、2.研究開発投資が可能になる、3.ワークライフバランスが実現できる
- OECD(経済協力開発機構)加盟主要先進7カ国で見ると、日本の生産性は50年近く最下位の状況が続いている
- 生産性向上の方法は3つある。 1.業務の見える化、2.デジタルツールの導入、3.従業員のモチベーション向上
- 生産性向上の成功事例としてトヨタ自動車と三菱東京UFJ銀行の事例がある。トヨタ自動車は「カイゼン /kaizen」によって、三菱東京UFJ銀行は「RPA」によって生産性向上を実現している
- テレワークを企業が積極的に推進することで生産性向上につながる
- 生産性向上のカギは実際に業務をおこなう「人」
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