消去法でフリーランスになった経緯と、5年間やって感じたこと

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私は 2018年からフリーライターをしている。一人暮らしのため生活費はすべて自分で稼いでいて、贅沢はできないが、たまには旅行に行けるくらいの経済状況。一応、フリーランスとして「食えている」と言えるだろう。

とはいえ、私は「フリーランス最高! みんなもやればいいよ!」と思ったことはない。人によって最適な働き方は違うだろうし、私はフリーランスになりたくてなったわけではないのだ。詳しくは後述するが、会社員になれなかったので仕方なくフリーで活動を始め、いまに至る。

今回は、そんな私がフリーライターとして食べていけるようになるまでの経緯と、実際フリーランスになって感じたことを書いていきたい。

未経験の 34歳、消去法でフリーランスを選択

ざっくりと経歴を説明すると、私は高校生のときから小説家になりたくて、専門学校で文芸創作を学んだ。在学中から新人賞に応募していたがデビューは叶わず、卒業後は求人広告を扱う代理店に入社。原稿担当での採用だったはずが、いざ入社してみると営業に配属され、メンタルの調子を崩して数ヶ月で退職してしまう。次の仕事を見つけるまでのつなぎとして北アルプスの山小屋(登山者向けの宿泊施設)で住み込みで働いたところ、その仕事が意外と性に合い 10年ほど続けた。

文章は趣味で書きつづけていたのだが、あるときWebライターという職業を知った。小説家にはなれなかったけれど、ライターにはなれるかもしれない。そう思うと、自分の中にあった「書くことを仕事にしたい」という気持ちが再燃した。いま挑戦しなかったら後悔するかもしれない。私は山小屋を辞め、Webライターを目指すことにした。

さて、目指すと決めたものの、どうしたらライターになれるのだろう。

まずは正社員での求人を探した。しかし、当時の私はすでに 34歳。ライターとして未経験どころか、正社員として働いた経験すらほとんどない。そんな私をライターとして雇ってくれそうな会社は見つからなかった。

就職ができないなら、フリーランスでやるしかない。世間知らずなフリーターの私は「フリーランス」という言葉すら知らなかったが、消去法でその働き方にたどり着いた。

 

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人からは「順風満帆」と言われるものの……

私は「ライター募集」などで検索し、クラウドソーシングサイトに登録。文字単価0.5円の無記名記事の執筆を請け負った。「夏におすすめのスニーカーコーデ3選」みたいな、ネット上で集めた情報で記事を作成する、いわゆるこたつ記事だ。

そういう仕事がしたいわけではない。本当は取材をしたり、コラムやエッセイを書いたりしたい。けれど、そのための入口がどこにあるのかわからなかった。書いてみたいWebメディアがライターを募集していたので要項を見たら、「執筆実績を送ってください(クラウドソーシングは不可)」とある。いったいどうやって執筆実績を作ればいいのだろう?

私はクラウドソーシングで記事を書くかたわら、毎日 note でエッセイを書いた。それが執筆実績の代わりになるかもしれないと思ったのだ。

毎日更新を 4ヶ月近く続けたある日、書きたいと思っていたメディアの編集者から「うちでエッセイを書きませんか」とメールが来た(あの、執筆実績にクラウドソーシングは不可と書いていたメディアだ)。

そうして私は、ある Webメディアに不定期でエッセイを書くようになった。同時期に、「cakes」という Webメディア(現在はサービスを終了している)が開催していたコンテストに入賞し、山小屋エッセイの週間連載も始まった。

いったん Webメディアで記事を書くと、それを見た別の媒体の編集者から声がかかり、仕事が入ってくるようになった。自分から書きたいメディアに応募するときも、執筆実績があるためすぐに採用される。 cakes での連載を始めて 11ヶ月後には、連載をまとめた書籍『山小屋ガールの癒されない日々(平凡社)』が出版された。

ライターになったのが 2018年で、初の書籍を出版したのが 2019年。人からは「順風満帆ですね」と言われたが、実はこの時期、収入はかなり少なかった。当時は新人だったため、原稿料が安かったのだ。また、 cakes はページビューと原稿料が連動制だったため、人気がない私の連載はあまり稼げなかった。

生活はどうしていたかというと、山小屋時代の貯金を切り崩していた。不安だったが、もともとフリーターだから貧乏には慣れているし、いざとなれば山小屋に戻れるのでそこまで切羽詰まってはいない。ただ、実際は稼げていないのに、本を出しているというだけで稼いでいるように見られるのが嫌だった。

貧乏に耐えながらフリーライターを続けていると、3年目くらいから、徐々に売上が上がってきた。新人の頃よりも単価の高い仕事が入ってくるようになったのだ。エッセイよりもインタビューやイベントレポの仕事が増え、企業のサイトなど、名前が出ない仕事ももらえるようになった。お金持ちではないものの、旬の果物や、部屋に飾るお花を買えるようになった。

そしてフリーライター 6年目のいまでは、病気になって働けなくなったとしてもしばらくは困らないくらいの貯金ができた。

よくあるフリーランスの誤解と実際のところ

では、実際フリーランスになってみてどうだったか。人からよく言われるセリフとともに紹介しようと思う。

 

①「働く時間と場所が自由でいいね」

たしかに、働く場所については自由だと思う。私は取材に出かけることはあるものの、基本的に家で仕事をしている。人混みに行くと頭痛や吐き気がする体質なので、家で働けるのはありがたい。

働く時間に関しては、締切があるのでそこまで自由になる感覚はない。体調が悪い中取材に行くこともあるし、それは会社員が「会社休めないよ~」と言うのと同じではないだろうか。ただ、調子が悪いときは昼間に寝て夜に仕事することもできるので、出勤時間が決まっていないのはメリットかもしれない。

 

②「どうやって仕事をもらっているの?」

私の場合は、書いた記事を見た編集者からご依頼をいただくことが多い。X(旧Twitter)や note に連絡先を掲載しているので、そこから問い合わせが来るのだ。一度仕事をすると、その後も同じ方から継続的に仕事をいただける。また、ご一緒したことのある編集者が他の編集者に私を紹介するパターンもある。

スケジュールが空いているときは、自分から知り合いの編集者に「仕事ください」とメールするし、SNS でも募る。たまに「ガツガツしてると思われたくない」というフリーランスもいるが、私はかなりガツガツしているほうだ。もともとプライドがないというか、「人からこう思われたくない」みたいな意識が薄いせいかもしれない。

ちなみに、飲み会や交流会で知り合った人から仕事をもらうことはない。そもそも、(コロナ禍前から)そういう集まりに参加することがほとんどないのだ。人と会うのは好きだけれど、なんとなく機会を逃しつづけている。

 

③「好きなことを仕事にできていいね」

たしかに、私は文章を書くことが好きで、書くことを仕事にできている。とはいえ、仕事では「書きたいこと」だけを書けるわけではない。仕事を選び放題の売れっ子じゃない限り、食べていくためには興味がないテーマについても書かなければいけないのだ。

ただ、私は文章で表現すること自体が好きなので、興味がないテーマでもそれなりに楽しめる。反対に「自分が書きたいテーマでしか書きたくない」という人は、仕事を選べるようにならないと辛いかもしれない。

 

④「人間関係のしがらみがなさそう」

家で一人で仕事をしているので、「嫌いな上司と毎日顔を会わせる」みたいなことはない。ただ、編集者やクライアント、取材対象者とのコミュニケーションはもちろん発生する。ときには意見が食い違うことも、折り合いをつけるために話し合うこともある。以前「コミュニケーションが苦手だからフリーランスになりたい」という人をネット上で見かけて、「いや、フリーランスもけっこうコミュニケーションが必要よ」と思った。

フリーランスは同僚も上司もいないので、すべてを自分で判断し、行動しなければいけない。たとえどんなに調子が悪くても、自分が書かないことには仕事が終わらないのだ。また、案件のことは編集者に相談できるが、キャリアについて相談できる人はいない。この孤独とプレッシャーが、フリーランスの一番のデメリットだと思う。

たとえどんな働き方を選んだとしても

なりゆきでフリーランスという働き方を始め、もう 5年が経った。

この働き方に不満はないが、こだわりがあるわけでもない。チャンスさえあれば、いまからでもライターとして編集プロダクションなどに就職したいと思っている。だって、毎月決まったお給料がもらえるのは魅力的だ。毎日通勤するのは体質的に難しいが、フルリモートなら会社員もできると思う。

そんなわけで、いつまでフリーランスを続けるかは私自身わからない。

けれど、どんな働き方をしたとしても、なにかしら悩みはあるだろう。「この働き方なら嫌なことは絶対にない」とか「100% 幸せ」ということはない。何を選んでも、メリットもあればデメリットもある。

それならデメリットにばかり目を向けず、いまある仕事に感謝して働きたい。というわけで、私は今日も自宅でパソコンに向かう。

 

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