Apple共同創業者 スティーブ・ウォズニアック氏が語る未来とは

新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、私たちの働き方は大きく変化しました。先行きの見えない中、「ちょっと未来の働き方」はどう変わっていくのでしょうか?

スティーブ・ジョブズ氏とともにAppleを創業した経歴のスティーブ・ウォズニアック氏が、Sansan株式会社が開催した「Sansan Innovation Project 2021」に登壇。Sansanの代表取締役社長 寺田 親弘氏と対談しました。

新型コロナウイルスが与えた影響についてスティーブ・ウォズニアック氏に聞く

コンピューター技術者 Apple創業者 スティーブ・ウォズニアック 氏(左)、Sansan株式会社 代表取締役社長/CEO/共同創業者 寺田 親弘氏(右)

コンピューター技術者 Apple創業者 スティーブ・ウォズニアック 氏(左)、Sansan株式会社 代表取締役社長/CEO/共同創業者 寺田 親弘氏(右)

 

寺田 親弘氏(以下、寺田):「ちょっと未来の働き方」をテーマにお聞きしていきます。世界に大きなインパクトを与えたウォズニアックさんですが、新型コロナウイルスの影響についてどうお考えかお聞かせください。

スティーブ・ウォズニアック氏(以下、ウォズ):アメリカもそうですが、日本も新型コロナウイルスの影響を大きく受けていると思います。少し秘密を話したいと思いますが、じつは私の娘はアメリカのオリンピック委員会で仕事をしていて、オリンピックにも行きました。

私の息子はプログラマーで、仕事の都合でオーストラリアからアメリカに戻ってきました。自宅でリモートワークできるのは彼にとっては良かったことです。コロナの影響で、多くの人々は家から仕事ができることがわかりました。リラックスして、バスローブを着ながら仕事ができます。多くの人は、コロナがなければそんな考え方はしませんでした。

組織図も変わっていく

寺田:コロナによって、そうしたチャンスも生まれたというわけですね。コロナによってイノベーションのチャンスも起こったと考えていますか?

ウォズ:その通りです。家からでも仕事ができるようになり、毎日オフィスに行かなくてもよくなりました。時には対面で打ち合わせをすることもあるでしょうが、毎日ではありません。ハイブリッドなシステムです。

そうなると、組織図も変わると思います。これまでは経営層だけがパワーを持っていましたが、対面の機会が減ることでそれも変わるでしょう。経営層はパワーを維持したいでしょうが…。

これだけの変化は、人生においてなかなかありません。これはコロナが変えてくれたともいえます。会社にとって、従業員にとって、世界にとって、何が将来ベストなのかを考える機会になりました。今後、かなり大きな変化が起こると思います。

スティーブ・ウォズニアック氏が現在力を入れている宇宙事業

スティーブ・ウォズニアック氏の宇宙事業

寺田:つい先日、宇宙事業についての発表がありましたが、何かお話できることはありますか?

ウォズ:あまりお話しできることはありません。ステルスモードです。でも少しだけお話すると、スペースデブリ(宇宙ゴミ)をきれいにしたいと考えています。これまで誰もやっていないような新しいことをしたいですね。私の会社がやろうとしていることは、「より宇宙をみんなにとって使える場所にしたい」。いまは、それくらいしか言えません。

スティーブ・ウォズニアック氏が考える働き方を変えるトレンドとは

寺田:私たちの働き方を変えるトレンドはなんでしょうか?

ウォズ:すでに起こっていることですが、「家から仕事をすること」ですね。会社によって、人によっては、家でメインで仕事をすることが増えるでしょう。オフィスに戻る人もいるでしょう。分散していきます。

SFのライターではない限り将来どうなるかはわからないと思いますが、どのようなトレンドが長期的にあったかを考えると、「デジタル化」です。

デジタル化したい、とすべての企業が考えていると思います。私の考えでは、受け入れなければならない変化がすべての企業で起こっています。間違ってしまう変化も起きるかもしれませんが。

典型的なデジタルのビジネスモデルは変わる

典型的なデジタルのビジネスモデルは変わる

寺田:日本は、ハードウェアからソフトウェアへのシフトに、なかなかついていけなかったと思います。日本のテクノロジーの現状について、どのように見ていますか? 私を含めて日本のビジネスリーダーは、新しい未来を築くために何をすべきだと思いますか?

ウォズ:私はハードウェアがたくさんあった世界で育ちました。素晴らしいハードウェアが日本からも来ていました。

いまはソフトウェアによって生活が変わっています。インターネットへのアクセスが非常に安価になり、インターネットによってビジネスモデルが変わりました。

以前は自分でサーバーを持つ必要がありましたが、いまは多くの企業がクラウドにサーバーを置いています。そこを経由してサブスクリプションで課金するビジネスモデルになっているわけです。シリコンバレーにある、多くのスタートアップ企業もこのモデルです。

会社の利益は上がりますが、ユーザーにとっては、毎月利用料金を支払っていて、これが正しい価格なのかわかりません。さらにユーザーは、プライバシーもコントロールできません。たとえば、私の家族にだけ渡したい情報でも、自分ではコントロールできないのです。これがハードウェアなら、自分でコントロールできます。

私は将来、いまの典型的なデジタルのビジネスモデルは変わると思います。

企業の倫理も重要になります。「私たちはあなたをこういう風に扱います」ということを示さなければなりません。企業は大きくなりたいので、売上・利益を伸ばしていこうと考えます。そうして、「質」よりも「量」にプライオリティをおいてしまうと、ユーザーの利益よりもお金のことを考えてしまいがちです。このプライオリティをしっかりと考えてほしいです。

スティーブ・ウォズニアック氏からビジネスリーダーへのメッセージ

ビジネスリーダーへのメッセージ

寺田:最後になりますが、ビジネスリーダーへヒントとなるようなメッセージをください。

ウォズ:コンピューターテクノロジーの成長は続きます。テクノロジーは私たちの手助けをしてくれるでしょう。

ただ、私は「AI(Artificial Intelligence)」という言葉はあまり好きではありません。AIに何万枚もの犬の画像を見せれば、犬を判断できるようになります。ですが、AIは画像としては判断できますが、犬が何なのかはわからないですよね。人間だったら1歳の子どもでも、犬はどこに目が合って、どのような生き物なのかがわかるわけです。

自律走行車でもそうです。アルゴリズムを使って何かタスクをやってくれる。でも実際の世界は、AIにはわからないわけです。そうなると、いろいろな問題も起こり得ると思います。

あまりにもAIに慣れてしまうと、アルゴリズムによって非効率が生まれてしまいます。AIが「私は世界にとって何ができるだろうか」と想像力を働かせることはありません。これはIntelligence(インテリジェンス:知能)ではないと思うんです。そこは注意してもらえればと思います。

寺田:非常に新鮮な洞察でした。本当に貴重なお話をありがとうございました。ちょっと未来に実際にお会いできればと思います。

ウォズ:より良い形で問題を解決していきましょう。



 

 

さくらインターネットお役立ち資料ダウンロード

≫ 【導入事例やサービス紹介も】さくらインターネット お役立ち資料ダウンロードページ