さくらインターネット代表の田中です。この連載は「働くすべてのビジネスパーソン」に向けて書いていきます。
2021年におこなわれた、株式会社リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、新入社員の方が入社する際に一番不安なことは「仕事についていけるかどうか」だそうです。
10年前でも20年前でも、新入社員の方は同じような悩みを持っていたと思います。いまの若い方たちに限った話ではありません。誰もがみんな不安に思っています。私だって新しいところで働くのは不安です。経営者が集まるコミュニティに新しく参加することがありますが「うまく発言できるだろうか」「やっていけるだろうか」といった不安は毎回あります。
しかし自分が思うほど、周りは自分のことを見ていません。それに自分が思うよりも、他人は優しく手を差し伸べてくれると思えば、気持ちが楽になります。新入社員の方は年月が経てば会社の期待に応えないといけないのかもしれませんが、入社する前から漠然と悩むのはやめたほうがよいと思います。
新入社員とは違う立場のマネジメント層が悩んでいるのは「メンバーの育成」だそうです。私もメンバーの育成をうまくできているかわかりませんが、育成で大事なのは「チャレンジさせること」ではないでしょうか。いまの若い人にしても、優秀な方が多いのでチャレンジさせてみたらできるケースが多いです。
もしかしたらマネージャーの立場だと、若い人や部下に失敗させてしまうことを可哀想だと思ってしまうのかもしれません。昔よりも社会全体が、失敗が許されない環境になっているような気がしています。
そう考えると部下を育成するポイントは「失敗してもいいんだ」と、全力で保証することだといえます。
チャレンジしたときに起こる社内の反発
新しいことにチャレンジすると、社内で反発が起きる場合もあります。この対処法としてわかりやすいのは「味方をつくること」です。「共感してくれる人を増やす」ともいえます。
部下にチャレンジしてほしければ、上司がチャレンジできる環境を守らなければなりません。いまの時代は、戦って何かを進めるものではないと思います。共感を得て、広げていくことが大切です。
だいたいの場合は、知らず知らずのうちに他人の足を引っ張ってしまうことが多いです。誰かのチャレンジを、みんなが応援できる環境になれば会社もうまくいきます。そういう風土を作りたいです。
さくらインターネットのバリューには「リード&フォロー」があります。これはリーダーシップも大事だけど、フォロワーシップも大事だよという考えです。
リーダーのように前へ出て引っ張っていくのは重要だけど、まわりで支える人(フォロワー)が増えれば、成功確率はぐっと上がります。協力してくれる人が増えれば、うまくいくというシンプルな話です。自分も応援されるとうまくいくから、他人も応援しようと心がけてほしいです。
部下の育成に困っているなら、まずは上司が部下にとってのフォロワーになるよう徹底することからはじめてみてはいかがでしょうか。上司は部下をリードするものと考えがちかもしれませんが、上司が部下をフォローするのです。
自分に自信を持つためには?
最近、自分に自信を持てないビジネスパーソンが増えているのかもしれません。とはいえ自分に自信がない人に「自分に自信を持て!」といっても伝わらないと思います。
私が部下に「自信が持てない」と相談されたら、”うまくいったこと”を話すようにします。不安なことに目を向けずに、うまくいったことに目を向ける。これがひとつの手段です。
もうひとつの手段は、早いうちに自分の強みや良いところを探すことです。自分で自分の姿は見えないので、メンターやまわりの人に自分の強みや良さを聞いてみてください。それと同じで、もし仕事で不安になるなら上司や同僚など、まわりの人に不安だと話せばいいと思います。
率直に打ち明ければ、まわりの人がフォローしてくれるはずです。自分が思うよりも、他人は優しく手を差し伸べてくれます。
年齢関係なく謙虚でいる
仕事を続けるうちに、ライフステージの変化が訪れます。結婚して家庭を持ったり、昇進して部下ができることもあるでしょう。年齢を意識する方もいますが、年齢は関係ない気がします。つねに謙虚でいることが大切です。若くても、年齢を重ねても、謙虚でいれば大きな問題は起きないと思います。
会社で働いていても、同僚同士がお互いの年齢も知らないことも多いのではないでしょうか。私は社長ですが、社内には自分より年上の人もたくさんいます。会社では部下が年上のケースもたくさんあります。年齢はあまり気にせずに、何歳の人に対しても謙虚でいることを意識してはいかがでしょうか。
私は新入社員の方にも「○○さん」と、さん付けで呼んでいます。距離を取っていると感じられてしまうこともあるようなので悩ましいところですが、あえてそうしています。中には呼び捨てで呼ばれることに嫌悪感を抱く方もいますから、嫌な思いをする方を減らす意味でも良いのではないでしょうか。
SDGsやESGを意識することの重要性
経営者は、世の中の流れをしっかりと見なければなりません。いまの時代、多様性を重視する必要があります。さくらインターネットが潰れず、社名も変えずに25年も継続できているのは、世の中の流れを見られているからではないでしょうか。
働き方改革への取り組みも、他社と比べて少し先行しました。機をとらえて世の中の流れる方向を見極めています。
SDGsのような、統治構造をも超えてみんなで成し遂げようという目標はなかなかありません。逆説的にいうと、それに反してビジネスをしてもうまくいくはずがありません。自分が共感できるかどうかと同時に、流れに乗ることは大事です。そうしないと、人材の確保ができませんし、投資されないといった問題が起きてしまいます。
ビジネスパーソンがSDGsを意識するうえで、大事なことは2つだけです。「自分ごと」にする。「儲けのタネを探す」です。
たとえば子育て世代の方が働くことが増えていくと想定して、人材紹介業が儲かると思ってはじめた人がいます。また、おむつや子ども服など子育て世代向けのサブスクサービスも流行っています。
ほかにも、ビニールの業界は厳しいけど、エコバックの業界はうまくいくかもしれません。このように儲けのタネはいろいろなところにあります。
恵まれない人たちのために、自分たちが犠牲になると考える必要はありません。
リモートワークが進んで仕事とプライベートの切り替えが難しくなった方へ
リモートワークの環境下で、仕事とプライベートの切り替えがうまくできずに悩んでいるビジネスパーソンが多いそうです。
私の場合は「○時以降は働かない」と決めています。いつまでも仕事をしているとキリがないので、途中で切り上げることを考えてはいかがでしょうか。自己責任にしてしまうと改善しないので、まわりの人が指摘してあげることが大事です。
いろいろな仕事を兼任している人もいますが、兼任が悪いのではなく、無理なものは無理と言ったほうがいいです。仕事を受けるにしても、お互いに期待値と条件をすり合わせてください。引き受けながらも、自分の状況に応じて締め切りを変えるなどの工夫が必要です。
正しい情報を見極める方法
インターネット上には正しい情報と正しくない情報が混ざっています。情報収集をするうえで、つねに情報のリファレンス(参考文献・参考資料)を確認することが大事です。根拠のない話を信じるよりも、データをみたり、自分で調べることです。たとえば新型コロナウイルスやワクチンの情報は、厚生労働省のホームページを見ればデータが出ています。
さまざまな意見に触れるという点では、リンクをたどりすぎないことが大事だと思っています。リンクはクラスター化しますから。Twitterで同じような人をフォローしていると、情報が偏るのと同じです。私の場合は、同じ意見だけで固まるのではなくて、違う意見にも触れるようにしています。せっかくいろいろな人とつながれるインターネットですから、さまざまな意見に触れてみてはいかがでしょうか。
情報がたくさんあるので、判断を他人に任せないことが大事です。結論が書いてあるのを見ると楽だけど、結論は自分で考える癖をつけてください。
いまのインターネット時代に限らず、人は強い意見を言う人が目に入りやすいものです。
これからの働く場所はデジタルがメインになる
東京や大阪の都市部に通う人は少なくなっていくでしょうし、そうなってほしいと思っています。ほとんどの人は会社に行かなくても大丈夫ですから。
「そもそも会社とはなんなのか?」を考えています。さくらインターネットにとって、データセンターは場所として必要だけど、本社って場所として必要なんだろうか、と。コンビニも同じです。店舗は必要だけど、本社って場所として必要でしょうか。
残念ながら、AIによってホワイトワーカーの必要性すら減っていると思います。これからは、クリエイティブな仕事を自分の好きなところでやるようになっていくのではないでしょうか。
それでも会社に通って働かないとダメだと言っている方もいますが、これは業種の問題ではなくて経営者の問題だと思います。IT企業の場合、ほとんどの仕事が家でできますから。
夫婦ともに働けて、東京や大阪といった都市部でなくても暮らしていけるようにしたいです。そのために地方の給与をあげたいと考えています。私はいま沖縄に住んでいます。沖縄で東京と同じような給与形態が確立できれば、働き方はだいぶ変わるだろうなと思います。
わざわざ地方から東京に上京することがなくなっていくんだろうなと。
リアルを補完するデジタルやバーチャルではなくて、デジタルやバーチャルを補完するリアルになっていくと思います。これからは、デジタルがメインになっていくイメージです。
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