さくらインターネット代表の田中です。この連載は「働くすべてのビジネスパーソン」に向けて書いていきます。
仕事を断らない人には、仕事を任せたくなるものです。といっても、「仕事は何でも無条件で引き受けろ」と伝えたいわけではありません。まずは話を聞き、すぐ断らずに条件を提示すればいいのです。
たとえば、「はじめてやることなので、アドバイスください」「先に頼まれていたあの仕事の期限は、遅らせてもいいですか?」と条件を提示してみてはいかがでしょう。その条件で相手が納得しないのであれば、断ればいいだけです。
頼まれてすぐに「難しそうだからできません」「忙しくて時間がないからできません」と言ってしまうと仕事のチャンスを逃しますし、頼んだ側も次から頼みづらくなってしまいます。
最も良くないのは、どんどん仕事を受けるけれど、その仕事を放っておいてしまうことです。こうなると信頼を失ってしまいます。
気楽に生きられる人付き合いの方法
人生100年時代となり、多くの人がこれまで以上に長く働くことになると思います。
長く働くうえで大切なのは「無理に嫌なことをしない」。これに尽きます。嫌なことをするとストレスが溜まります。ストレスによってうつ病発症のリスクが上がったり、心筋梗塞になりやすいと報告されています。寿命が短くなる可能性があるわけです。
(参考:国立研究開発法人 国立がん研究センター)
人付き合いも同じです。私は多くの人と付き合いがあるように思われがちですが、それほど多くの人とは付き合っていません。無理せずに付き合える人とだけ関わっています。
人に時間を取られている人は多いと思いますが、人付き合いはペースを考えたほうがいいです。あとは「嫌われたくない、好かれたいと思わないこと」が大事です。そうすることで無理に人付き合いせず、気楽に生きられます。
嫌な人には時間を使わないことが大事です。腹が立つこともあるけれど、その人のせいで寿命が短くなるのは、余計腹が立つじゃないですか。憎むことで、その人の記憶が残ってしまいます。「あいつのせいで」と思いながら生きると、ストレスになります。嫌な人のせいで精神を病んでしまうのは、もったいないです。
私自身が引きずってしまうタイプなので、このようなことをロジカルに自分へと言い聞かせています。
要するに「自分を大切にすること」が大事です。自分を大切にできる人は、他人も大切にできます。他人にだけ優しくすることは、本質的には無理だと思います。
集中力を高める方法
私は周りから集中力が高いと思われているそうですが、集中できないことが悩みです。
私が周りからは集中力が高いと思われているのは、「立場」が関係しているのではないでしょうか。社長という立場で会社も上場していますし、やらざるを得ないわけです。集中しなければならない立場です。
もしかしたら、型にはめられることで集中できるのかもしれません。でも、自分が嫌な型にはめられたと感じたなら、辞めたほうがいいかもしれませんが…。
結局のところ、細かいところまでは集中できません。自分が苦手なことは他の人にやってもらいます。私が苦手なことでも、それが得意な人に任せられるのが会社です。
ビジネスパーソンにおすすめの書籍
ビジネスパーソンの方におすすめの書籍を紹介します。少し古い本ですが、クレイトン・クリステンセン氏が書いた『イノベーションのジレンマ』とジム・コリンズ氏が書いた『ビジョナリー・カンパニー』は鉄板です。生き方の本でいうと、『イノベーション・オブ・ライフ』をよくおすすめしています。これもクレイトン・クリステンセン氏が書いた本です。
最近読んだ本で面白かったのは、『DIE WITH ZERO』。コンサルティング会社のCEOをしているビル・パーキンス氏が書いた本です。死ぬときに財産をゼロにして、それまでの人生を楽しもうという話が書かれています。お金持ち向けの本だと思いきや、そんなことはありません。
「時間・健康・お金」3つの因子が重要です。若いときにはお金はないけど、時間と健康はあります。年を取ると、若いときに比べて健康は損なわれますが、時間は増えて、お金も増えていきます。
このときにお金があったら良かったのになと思う時期は、25歳から34歳くらいのときらしいです。この年代にお金があれば、海外旅行にも行けますし、もし子どもがいれば教育にお金をかけられます。お金の使い方のコツが良く書かれた本なので、おすすめです。
紹介した『イノベーション・オブ・ライフ』と『DIE WITH ZERO』に共通しているのは、「いまを大切に生きよう」ということです。最近は夫婦で働く選択肢がありますが、「お金を稼ぐ」を重視しすぎると、子どもと一緒に過ごす時間が減ってしまいます。何のために働いているのかを考えることが大事です。
男性も、もっと子どもと一緒に過ごしたほうがいいと思います。女性だけが負担させられるのは違います。男性の甘えです。
男性の育休について
ただ、これには社会の問題もあると思います。男性よりも女性のほうが非正規雇用の割合が高く、給料が安い現実があります。
女性が休んで男性が働いたほうが、収入の減り幅が少ないわけです。だから男性の育休制度があったとしても、女性のほうが子育てを担う割合が高くなってしまいます。「男性が働くべき」という社会的圧力も、いまだに残っています。こうした社会を変えていかなければなりません。
さくらインターネットでは、女性の育休取得率は100%です。男性の育休率も年々上がっており、2020年度は63.1%でした。でも、女性社員から「夫が勤めている会社は、育休を取れるような環境ではない」という話を聞いたことがあります。
以前、お子さんができて報告に来てくれた方に「よかったね。おめでとう」と言いました。そうしたらその方が「いままでの会社では、子どもができたら『おめでとう』ではなく、『仕事どうするの?』と言われていました」と言うわけです。子どもができたら「おめでとう」と言える社会であってほしいです。
これは、当社のアピールというより、社会を変えるためにこうした事実を発信することが大事だと思っています。
会社の存在はどう変わるか
副業や社外活動をするビジネスパーソンが増えてきました。帰属意識がなくなるといった意見もありますが、会社はこれまで以上に自分の居場所といえる存在になると思います。
収入的にも精神的にも、ある程度の安定性があったうえでのチャレンジだと思います。だからこそ「会社」というホームグラウンドが大事です。
チャレンジしてきたことを、ホームグラウンドである会社でやってくれてもいいわけです。そうすると、新規事業も生まれます。安定と挑戦の場所が会社ではないでしょうか。
コピーされないものを作ることが大事
取材や講演のときに、「熱量」「人とのつながり」「運」が大事だとお話をすることがあります。ほとんどのことはコピーできるので、コピーされないものを作ることが大事です。
熱量、人とのつながり、運はコピーされませんから、育てることで財産になります。熱量と人とのつながりを育てることはイメージしやすいですが、運はイメージしづらいかもしれません。
運は、起こったことに対して「自分は運がいい」と思えるかどうかのメンタル面の話です。周りからは運のいい人と見えていても、本人は運が悪いと思っているケースがよくあります。幸せかどうかを人と比べてしまうのは、もったいないと思います。
言い方を変えると、「自分で人生をコントロールする」ということです。運がいいと思うことは、自分でコントロールできます。
世の中には、自分でコントロールできないことが多いけれど、自分の人生なので他人にコントロールされないように生きていくことが大事です。
誰もが自分の意見を言えるように
さくらインターネットには「肯定ファースト」というバリューがあります。まず自分を肯定し、他の人にも肯定的な態度をとろう、という考え方です。これはエッセンシャル・マネジメント・スクールのクレドを参考にしたものです。
会社として、どうまとまっていくのか悩んでいた時期がありました。サイボウズの青野さんに相談していたら、エッセンシャル・マネジメント・スクールを紹介していただきました。行ってみたらいきなり壇上にあげられて、自分の話をしたわけです。すると、みなさんが肯定してくれました。心理的ハードルが下がり、とても話しやすかったのを覚えています。
「心理的安全性」という言葉がありますが、それを作るうえで「肯定ファースト」は最適なメソッドだと思います。
最もいけないのは、批判しかしないことです。次にいけないのが、批判ができないこと。強い人だけがワーワー言っているだけではダメです。誰もが自分の意見を言える会社にすることが重要だと思います。
期待値コントロールも大事です。過度に期待させると、お互いが不幸になります。仕事の話もそうですが、できると言ってできないと相手も自分も不幸になってしまいます。しっかりと合意をすることが大事です。
合意をするプロセスは物事を明確にするので、避けてしまう人が多いです。明確化を避けてフワッとさせたがりますが、期待値コントロールはしっかりとおこなったほうがいいです。曖昧な態度は、みんなを不幸にしてしまいます。
これから就職する方へ
新卒入社する方も、中途入社する方も、会社に入ることを目的にしないほうがいいと思います。会社に入ることを目的にしてしまうと、ミスマッチが起きてしまいます。「自分のやりたいこと」を軸に考えてください。
自分のやりたいことはしっかりと主張すべきだと思うし、それを面接で主張して落とされたならそれまでの会社だということです。
やりたいことをやるためには、もちろん我慢しなくてはいけないこともあるでしょうが、それを事前に把握しておくことが大事です。
昔のように、大企業でも安定しているわけではありません。親世代は、いい会社に入ったら、いい思いができると思っています。ただ、これからはそうとは限りませんから、何をやりたいかを中心に考えたほうが良いと思います。
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