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電話対応を令和にアップデートしたい!「ミライAI」開発経緯と目指す未来

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「今のオフィスの電話対応環境は昭和で止まっている。令和にアップデートさせたい」

そう語るのは「電話」と「AI」を掛け合わせたプロダクトを展開している株式会社ソフツー 代表取締役の鍾 勝雄さんだ。

私たちが想像するオフィスの電話対応というと…

電話が鳴る→誰かが電話を取る→要件を聞く→担当者に引き継ぐ

このようなイメージではないだろうか。私たちにとっては違和感のないこの当たり前を変えようとしているのがソフツーであり、同社のAI電話自動対応サービス「ミライAI」である。 同社は約10の国と地域の社員が集まり、人と人を繋ぐ音声コミュニケーションに変革をもたらしている。そんな同社が注力するAI電話自動対応サービス「ミライAI」やカルチャーなどについて、鍾さんに話を聞いた。

鍾 勝雄(しょう かつお)さん プロフィール

株式会社ソフツー 代表取締役。
1978年生まれ。中国出身。2001年、大学卒業後に入社した米国通信会社の中国支社ではSE・CTOを経験し、IP電話システム開発に従事する。2006年にITエンジニアとして来日。2008年、株式会社ソフツーを設立し、2018年より代表取締役に就任。

「電話対応が面倒!」から生まれた「ミライAI」

鍾さんは2006年に中国より来日し、2008年に電話事業に特化した株式会社ソフツーを創業した。ただ、異国の地での創業は想像以上に大変だったそう。


「来日2年目で創業したため、まず日本語でのコミュニケーションに大変苦労しました。また人脈も資金もなく、創業してから最初の5年間の売上はほぼゼロでしたね。諦めずにサービスを売り込んだ結果、ようやく1社に契約いただいたものの、その後は続きませんでした。それからは市場を徹底的に分析して、料金設定の見直しやPR強化などを図ることで、徐々にお客さまを増やしていきました」


さまざまな壁を乗り越えつつ、ソフツーでは2024年9月現在、次の3つのサービスを展開している。

  • クラウド型コールセンターシステム「BlueBean(ブルービーン)」
  • AI電話自動対応サービス「ミライAI」
  • ホテル電話機販売事業「VTech®ホテル電話機」

上記の中でも、現在もっとも注力しているのがオフィス向けに特化した「ミライAI」だ。ミライAIは取り次ぎ・折り返しなどの電話対応を、ソフツー独自のAIが人に代わっておこなってくれるサービスである。つまりミライAIを使えば、たとえば下記のような1日に何回も発生するやりとりが不要になるのだ。

【電話の取り次ぎ】
顧客「株式会社ABCの佐藤です。鈴木さんいらっしゃいますか?」
自分「鈴木ですね、少々お待ちください」
~保留ボタンを押す~
自分「鈴木さん、株式会社ABCの佐藤さんから2番にお電話です」

【先方からの伝言を連携】
顧客「株式会社ABCの佐藤です。鈴木さんいらっしゃいますか?」
自分「申し訳ございません、鈴木は現在不在にしております」
顧客「そうしましたら鈴木さんに□□と伝言をお伝えいただけますか」
自分「かしこまりました」
~付箋に伝言を書いて、鈴木さんのデスクに貼る~

確かにこれらのやりとりをすべてAIに任せられれば、電話対応の手間とプレッシャーから解放される。

ミライAIでは、折り返し先のヒアリングや取り次ぎ対応などの電話対応をAIが代わりにおこなう

では、なぜソフツーはミライAIを開発しようと思ったのか。


「もともと、私自身が電話の取り次ぎに手間を感じることが多かったんです。『①お客さまの名前を聞く ②要件を聞いてメモに残す ③担当者に伝言する』という一連の作業を何回も繰り返すことに、正直面倒くささを感じていました。そんななか、コロナ禍のリモートワーク中に、大事な電話の取り逃しが社内で発生してしまいました。この事象は他社でも同様に起きているのではと思案を重ねはじめ、当初コールセンター向けのサービスとして開発していたミライAIをオフィス向けとしていくことに方針転換したんです。」


こうしてミライAIはオフィス向けサービスとして2023年2月に正式リリースを果たした。リリースから約1年半、ミライAIを導入した企業からはさまざまな声が届いているという。


「『一人職場の現場では、お客さま対応中は電話に出られません。そういうときに、ミライAIが代わりに『かけ直します』と自動応答してくれます。一人職場の救世主ですね』という趣旨のうれしいお声もいただいたこともあります。また外部の電話代行サービスを依頼している企業からは『ミライAIに変えてからコストを約90%削減できました』という評価もいただきました」


そのほか、”誰からかわからない電話を取らなければならない”という精神的な負担から開放された点も好評だそうだ。

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社員の半数が外国籍。ポイントは「失敗を責めず、挑戦を褒める」

ソフツー社員50名のうち25名が、中国や台湾、ベトナム、インドネシアなどの外国籍(約10の国と地域)の社員。まさに多国籍企業だ。この多様性から生まれる強みは同社のサービス開発にも大きく貢献している。

たとえば、ミライAIでは宿泊業界が外国人旅行者にも対応できるように、日本語に加え、英語・中国語でも電話応対ができるよう開発中だ。その検証を英語・中国語のネイティブ社員がおこなうことで、より正確かつスピーディな開発をおこなっている。また開発時に使用するツールについても、日本ではまだ認知度が低いものの、外国ではよく利用されている有用なツールを活用することで、業務効率化を実現。このように、ソフツーではそれぞれの国で学んだ知識や経験を総動員して、サービスの開発・改善を進めている。


「そのほか、外国籍の社員が半数という特性上、社内でのコミュニケーションが非常にダイレクトです。みんな、察してもらうための遠回しな表現をすることがありません。そのため、コミュニケーションの効率が非常によい。それは業務の効率性にも寄与していると思います」


一方、外国籍の社員が半数となると、考え方や文化の違いも多く、社員に十分な能力を発揮させるためにはさまざまな工夫が必要だ。その点ソフツーでは、異なる文化を尊重することを前提として、日本人および多国籍社員の能力を最大限発揮させるために大切にしている価値観がある。


「当社では『失敗を責めず、挑戦を褒める』という会社のコアとなる価値観を全社員と共有しています。シンプルに言うと『チャレンジ精神』を大切にしているわけです。人事評価においても、『①チャレンジに対して成功した人→②チャレンジしたが成功しなかった人→③チャレンジしなかったけど成功した人』の順に評価をつけています」


また、ソフツーでは異なる文化の尊重や異文化交流の施策として「異文化交流ランチ会」を2023年1月から実施中。ランダムに集められた、異なる国の社員がランチを楽しむ、という企画である。ランチ会の効果は上々で、社内コミュニケーションの活性化に繋がっているそうだ。

そのほか、外国籍の社員含め、鍾さんがよく社員に話をするというのが「誠実であり続ける」および「過失の責任は追及しないが、嘘や報告がない場合は追及する」というソフツーフィロソフィーだ。この指針が社員によく浸透していることがわかるエピソードがある。


「数年前、当社サービスのエラーにより、一部お客さまへ不正発信がされてしまいました。この事態に対して担当者は私に真っ先に報告し、すぐにご迷惑をおかけしたお客さまにもご連絡いたしました。『これが知られたら大量解約のリスクがある』という事態ではありましたが、”うまく隠す”という選択肢は、”誠実”の価値観を大事にする私たちのなかにはありません。お客さまには最大限の対応をすることで、逆に当社の誠実さを評価していただきました。もちろん、私はこの事態を報告してくれた社員のことを非常に高く評価しています」


こうしたソフツーフィロソフィーの浸透も同社の強みの1つと言えるだろう。

さくらインターネットと電話事業を営むソフツーとの相性は◎

ミライAIの設定画面。その場でセリフの変更が可能で、 視覚的にわかりやすくなっている。

ソフツーとさくらインターネットとの関係は、ソフツー創業期までさかのぼる。同社はサーバーを契約するにあたり、さくらインターネットを選んだ。現在はおもに「さくらのクラウド」をメインに、顧客の要望に応じて「さくらの専用サーバ PHY(ファイ)」などを利用している。


「さくらインターネットのサービスは、オンラインで申し込み後すぐに利用開始でき、リーズナブル。それに加え、UI/UXが本当にわかりやすいですよね。マニュアルを読まずとも直感的な操作が可能です。ここだけの話ですが、当社のサービスもじつはさくらインターネットのUI/UXを参考にしているんですよ」


また鍾さんはさくらインターネットのサポート面も印象的だという。


「当社は電話事業を営んでいる性質上、たとえ1分でもサービスが止まれば、お客さまに多大なご迷惑をおかけしてしまう可能性があります。そのため、当社としてはクラウド事業者には、とくにトラブル発生時のスピーディなサポートを求めています。その点、さくらインターネットは担当者が責任を持って、ときにリアルタイムで問題の解決に向けて対応してくれていますよね。この1点を持ってしても、さくらインターネットは当社にマッチした事業者だと考えています」

AI普及のパイオニア企業を目指す

「AI元年」とも呼ばれた2023年以降、AIを搭載したサービスが日々リリースされている。「ミライAI」もソフツー独自のAI技術を活用したサービスである。こうしたAIの進化を踏まえたうえで、鍾さんは今後の企業の展望について次のように語った。


「当社は高度な技術が駆使された先進的なAIサービスではなく、もっとも実用性の高いAIサービスを提供する企業になりたいと思っています。「ミライAI」はまさにその第一歩となるサービス。当社はエンジニアが中心の会社であり、自社開発力が強みの1つです。その開発力に一層の磨きをかけ、実務で使えるAIサービスを開発し、AI普及のパイオニア企業になりたいと考えています。目下の目標としてはミライAIをより普及させて、現在の昭和のままのオフィス電話対応環境を令和にアップデートさせていきたいですね」

株式会社ソフツー

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執筆

加茂 歩

証券会社・求人広告会社を経て、2019年よりフリーライターになる。投資・資産運用に関する記事のほか、求人広告会社時代に人事採用担当者へ数多くの取材をしてきた経験から、インタビュー記事も執筆している。
ポートフォリオ:https://note.com/iroha1227mmyy/n/n77676a287fa1

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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