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モバイルオーダーの先駆者「O:der Platform」の足跡をたどる

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私たちの日常にすっかりなじんでいるモバイルオーダー。コロナ禍で初めて触れた人も多いのではないだろうか。そのモバイルオーダーを2013年の時点で先駆けて開発、展開したのが株式会社Showcase Gig(以下、ショーケース・ギグ)だ。なぜ、時代を先取りしてモバイルオーダーを展開することができたのか、取締役会長の新田剛史さんにその理由を聞いた。

新田 剛史(にった たけふみ)さん プロフィール
上智大学卒業後、東京ガールズコレクション・プロデューサーを経て、2009年に株式会社ミクシィ(現株式会社MIXI)入社。2012年に株式会社Showcase Gig(ショーケースギグ)を創業。

「O:der ToGo」「O:der Table」は導入数8,000店舗を超える実績

「O:der Platform(オーダープラットフォーム)」は、それぞれの飲食店にフィットするモバイルオーダーシステムだ。テイクアウト向けの「O:der ToGo」、店内型モバイルオーダーの「O:der Table」、そして次世代タッチパネル型注文決済端末「O:der Kiosk」の3つのサービスを展開している。同社がモバイルオーダーに関するサービスの提供を開始したのは、まだモバイルオーダーがそこまで普及していなかった2013年に遡る。

O:der Kioskの写真。通貨処理機のリーディングカンパニー・グローリー株式会社と連携。店内に設置した同端末から注文と決済をおこなえる

「導入当初、はじめてモバイルオーダーに触れるユーザーからは、『待ち時間が減る』『商品をゆっくり選べる』『事前に決済できるのが便利』といった利便性に関する声が多数上がりました。しかし2024年現在、モバイルオーダーは他社サービスを含めて広く導入されているため、それほど大きな反響はありません。それどころか、インフラの一部になっていることから、何らかの事情で使えなくなった場合、大きな不満が噴出するでしょう」

新田さんが語る通り、モバイルオーダーはもはや説明不要のサービスだ。導入している飲食店サイドから見ても、人件費・人為的ミスの削減による業務効率化と生産性向上を実現できることから、欠かせないサービスになっている。

では、類似サービスとの違いはどこにあるのだろうか。O:der Platformと他社のサービスとの違いは、大きく2つある。1つは、飲食業界での採用率が高い大手 POS システムとの連携が可能なことだ。既存のオペレーションを大きく変更することなく利用できる点は、導入の障壁を1つ解消しているといえる。

「POSシステム業界は、東芝テックやNEC(日本電気株式会社)のサービスがかなりのシェアを占めています。この2社と連携していなければ、O:der Platformは現在のスケールに至っていなかったでしょう」

もう1つ挙げられるのが、圧倒的な実績数だ。

「O:der ToGoは、日本で先駆けて開発、展開したモバイルオーダーサービスで、これまでにかけてきた人員、時間、工数では他社を圧倒しています。おそらく、モバイルオーダーサービスのなかでもっとも安定した運用ができているのではないでしょうか。だからこそ、便利で使いやすい機能を豊富に備えられています」

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SNSに匹敵する重要性を持つサービスを

新田さんいわく、O:der Platform開発の背景には、SNSの発展が関係しているという。創業直前の2011年から2012年ごろといえば、FacebookやTwitter(現X)が台頭し始めていた時期だ。

「当時、今後成長する可能性のある領域を考えたときに、オンラインのみの領域ではFacebookやTwitterにかなわないことはわかっていました。日本土着で、海外インターネット企業が参入しづらいものを考えたときに浮かんだのが、POSシステムだったのです」

新田さんは2011年に、日本で初めてソーシャルギフトクーポンのサービスを開発しており、これが現在のモバイルオーダーの原型になっているという。

また、導入する業界を飲食業に決めたことにも理由がある。調査の結果、スーパーマーケットやコンビニエンスストアといった小売業は、流通額こそ大きいものの、独自のレジシステムを採用しているケースが多いことがわかった。一方で、飲食業界は、他社や他店と同じレジシステムの使用を好む傾向があると新田さんは語る。

「O:der Platformのようなサービスの場合、同じレジシステムがベースにないと展開しづらい。飲食業界の方が、当社のサービスを受け入れやすいだろうという仮説を立てて事業を開始しました。12年経ったいま、ようやくそれが当たっていたと思えるようになりました」

ユーザー目線で開発したサービスだからこそ得られる信頼

現在では完全に市民権を得ているモバイルオーダーだが、ここまでの道のりは平坦ではなかった。

「創業から4年後の2016年は、まだ資金調達をしていた時期で、さまざまな銀行や投資家の方々とお会いしていました。ある地方銀行のフィンテックを担当する部長の方が、『モバイルオーダーなんてものは流行らない』と仰っていたことを覚えています。その当時、アメリカではすでにモバイルオーダーが導入されていましたが、日本での導入には懐疑的な人が多い印象でした」

新田さんはそれでもあきらめずに事業を継続し、実証実験を繰り返しながらサービスに改良を加えていった。
2016年には、全国のコーヒー豆を取り扱うショップから豆を集めた「THE LOCAL COFFEE STAND」を表参道に開店。続く2019年には、テーブルオーダーを研究する目的で焼き肉屋をオープンした。店舗の運営には、コアな開発メンバーもかかわっていたという。

「デバイスから注文を受け、それがどのような形でキッチンディスプレイに表示され、伝票が出て、POSレジにどう表示されるのか。このような一連の流れを、自ら店舗を運営することで確認しました」

O:der Platformは、このような顧客目線の努力が反映されているサービスだからこそ、導入先の飲食店、小売店から信頼を得られていると語る新田さん。「たいていのことは経験済みなので、いま導入先で問題が発生しても、すぐにリカバリーできます」と笑顔を見せる。

続けてきたからこそ、いまがある

「当社のサービスが日の目を見るようになったのは、ここ4、5年のことです。10年以上前にローンチしているので、ムーブメントが来るのを待つことに慣れてはいるんです。ただ、ようやく市民権を得られたと実感しています」

新田さんが話す通り、O:der Platformが広く普及したのはコロナ禍以降だ。

「コロナ禍で多くのIT事業者が当社と同様のサービスを開発、展開をしていました。しかし、私の感覚ですが、その時期にローンチしたサービスのおそらく9割はなくなっていると思います」

多くのサービスが生まれては消えるなか、O:der Platformがどのように生き残りを図ったのか。

「事業の存続性が評価されたのではないでしょうか。最初にサービスを作って、その反応を見ている時間はとても楽しいですよね。でも、24時間365日、それを何年も続けられるか、そこに耐えられる体制があるかを考えると、作るだけよりも継続するほうが圧倒的に難しい。私が飲食店の立場だったら、もっとも重視するのは存続性です。その後に品質を問うべきだと思います」

飲食店のよきパートナーであり続けたい

O:der Platformの3つめのサービスとなるO:der Kioskの提供を開始したのは、2023年9月。注文、会計業務の効率化はもちろんのこと、国内の主要決済のほか、海外決済への対応、英語と中国語表記、多言語対応の音声案内といったインバウンド対応も万全だ。

「今後は、O:der Kioskの改良と導入数の普及を強化したいですね。O:der Kioskは、O:der ToGoとの連携も可能です。各種サービスが連携することで、メニュー情報、注文情報、売上情報などの一元管理ができます。 私はクラウド上で飲食店のすべての注文、決済処理が完了する画を描いています。しかし、まだ私たちの描くフェーズまで到達している飲食店はほとんどありません。その実現を目標にしている飲食店のパートナーでありたいですね」

モバイルオーダーが導入される飲食店は比較的単価が低いが、O:der Platformはその柔軟なUI/UXを武器に高単価のレストランにも導入されている。今後さらに、食欲や購買欲をよりかきたてるようなメニューにすること、たとえば動画を再生するといった手法の導入を進めている最中だ。 飲食業界と消費者の両方に利便性をもたらすO:der Platform。「いいサービスを生み、業界のNo.1であり続けたい」という言葉の力強さには、先駆者としての矜持が見えた。

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執筆

増田洋子

東京都在住。インタビューが好きなフリーランスのライターで、紙媒体とWebメディアで執筆中。ネズミを中心とした動物が好きで、ペット関連の記事を書くことも。
ポートフォリオ:https://degutoichacora.link/about-works/

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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