さくらインターネットの最新の取り組みや社風を知る
>>さくマガのメールマガジンに登録する
2025年、「さくらのレンタルサーバとWebの未来を語り、つながる1日 」をテーマに、さくらインターネットの大阪本社「Blooming Camp」で開催されたイベント「Sakura Sync Day 2025」。『これまでとこれからを語る「さくらのレンタルサーバ」開発ストーリー 』と題したセッションでは、10年近くレンタルサーバー開発運用に従事してきた堀本と、プロダクトマネージャーとしてサービス企画を担う谷口が登壇。さくらのレンタルサーバの歩みと未来、そして開発の裏話やAI活用、さらにはモンゴルでの教育支援まで、幅広いテーマで語り合いました。本記事では、その内容の一部をお届けします。


堀本 照(ほりもと あきら) プロフィール
さくらインターネット 執行役員 大阪府出身。データセンターおよびホスティングサービスの運営会社でインフラ開発、運用設計業務を経て、さくらインターネットに2015年に入社。おもにさくらのレンタルサーバのサービス開発全般に幅広く従事する。2023年7月より現職。

谷口 元紀(たにぐち げんき) プロフィール
インターネットサービス本部 インターネットサービス部 部長 北海道出身。さくらインターネットに2016年入社。さくらのレンタルサーバ、ドメイン、SSL、ウェブアクセラレータ(CDN)などのサービス企画を担当。システム開発のPMからWebサイト構築、運営、クリエイティブディレクター、PdM、イベント登壇、書籍含めた記事ライターまで幅広くこなす。
個人ホームページ全盛期から、社会インフラへ
「さくらのレンタルサーバ」がサービスを開始したのは2004年。当時は個人のホームページが主流で、HTMLを手書きしてFTPでアップロードするのが一般的な時代でした。
そのなかで、さくらインターネットは「高機能なのに低価格」をうたうサービスを立ち上げ、初期は個人ユーザーを中心に支持を広げていきます。当時のサービスサイトについて、「時代を感じるデザインでしたね(笑)」と谷口は振り返ります。

仮想化という転換点
2010年以降、ビジネス用途としてのニーズが高まり、レンタルサーバーは社会インフラとしての役割を担うようになりました。それにともない「データの消失やサービス停止がないこと」「価格が手頃であること」といった基本的な価値が、ユーザーから強く求められるようになります。
そのなかで「仮想化」は、技術的に大きな転換点となります。それまでは1台の物理サーバー上で複数ユーザーの環境を構築していたため、ハードウェアの制約に課題がありました。しかし、KVM(Kernel-based Virtual Machine)などのオープンソース技術が成熟したことで、業界全体が物理環境から仮想環境へとシフトしていった時期でもあったのです。堀本は当時を振り返って、「仮想化によって、1つのラックにより多くのユーザー環境を集約でき、運用効率が上がって、お客様への提供コストが下がった。」と語ります。
またこの時期は同時に、業界全体が巻き込まれた「容量戦争」の真っ只中でもありました。他社が100GBを提供すれば、200GB、300GBと対抗する動きが加速します。そうした時代背景のなかで、さくらインターネットもコストと機能のバランスを追求し続けていました。

WordPressとともに、開発思想の転換
2015から2016年ごろ、WordPressの急速な普及により、さくらのレンタルサーバはさらなる成長の節目を迎えます。当時のことについて、堀本は次のように語りました。
「当時はまだ、Movable TypeやJoomla、DrupalといったCMSが併存していて、WordPress一強になるとは思っていませんでした。実際、社内でもWordPressに特化した開発体制がすぐに整っていたわけではありませんでしたね」
2014年以降、利用者のサーバー環境を調査すると、圧倒的にWordPressが使用されていることが判明。「プロダクトアウトからマーケットインへの転換」が必要であると判断し、サーバー構成の見直しに踏み切りました。
それにともない、無料SSLやWebフォント機能、簡単インストーラーなどを導入。「独自ドメインでWordPressブログを立ち上げたい」というユーザーが、すぐに実現できる環境を整えていきました。
「基本価値は、愛」。追加料金なしの思想と迷惑メール対策
トークの中盤では、「レンタルサーバーの基本価値」についての考え方も語られました。さくらのレンタルサーバにおいては、「追加料金なしで、できる限り多くの機能を提供することにこだわってきた」といいます。
たとえば迷惑メール対策では、従来のSpamAssassin に代わり、AIベースの高性能なフィルターを導入。かつてはユーザーが手動で学習させなければ十分な効果が得られませんでしたが、現在はより高精度で自動化された仕組みが登場しています。
堀本は「新機能の開発にはもちろんコストもかかりますが、単純に価格転嫁をしてしまうと最終的に不利益を被るのはお客様です。だからこそ必要とされるものを先回りして基本料金内で提供し、満足いただくことで末永く利用していただく。それが私たちの責務だと考えています」と語りました。
AI活用で変わるレンタルサーバーの未来
生成AIの普及を受けて、さくらのレンタルサーバでもAIの活用に期待が寄せられています。堀本は、次のように語りました。
「障害対応や負荷監視といった運用業務にも応用していきたいですね。将来的には、『◯◯のサイトをつくりたい』と入力するだけでWordPressの初期構築が自動でできる仕組みや、メール文面の自動生成、AIエージェントによるトラブル対応といった機能の実装も視野に入れています」

「ともに考え、ともにつくる」。次の20年のレンタルサーバーへ
セッションの最後に、2人は改めて「これからのレンタルサーバ開発」に必要な視点について語りました。
「これからも、時代のニーズに合ったサービスの開発をしていきたいと考えています。今後もみなさまと一緒に、何が必要なのかを考えていき、私たちが提供したものを『使っていただく』だけでなく、『一緒に考え、つくっていく』姿勢が求められていると感じています」(谷口)
「今後も20年、サービスを続けていくには、やはり時代のニーズに合わせていくことが重要だと考えています。インターネットの世界では、次々と新しい技術が生まれています。その変化にしっかりと対応しつつ、私たちだけでは難しい部分については、みなさまと一緒に取り組んでいければと思っています」(堀本)
こうして、「さくらのレンタルサーバ」20周年を振り返るセッションは、あたたかく、前向きなメッセージとともに幕を閉じました。

執筆
青木 茉利奈
さくらインターネット初の新卒社員。
2023年4月から、さくマガ・さくらのユーザ通信・SNS関係の担当しています。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
- SHARE