2017年に設立されたSAKURA Tempesta(サクラテンペスタ)は、中学生・高校生を中心に活動しているロボコンチームです。チームミッションに「エンジニアリングを学ぶ機会の提供」「FRC※への参加によってSTEAM※に興味を持ってもらう」「日本のFRCチームを増やす」ことを掲げています。
※FRC(FIRST Robotics Competition)とは、世界35か国から約3,800チーム、9.5万人以上が参加している世界最大級の国際ロボットコンテスト
※STEAMとは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、芸術(Art)、数学(Mathematics)の頭文字
SAKURA Tempestaの活動は、ロボット製作だけではありません。チーム運営にかかる資金集めも活動のひとつです。毎年約250万円かかる運営費を集めるため、企業訪問やクラウドファンディングなどの施策を中高生のメンバーがおこなっています。
さらに、アウトリーチ活動と呼んでいる社会貢献活動にも力を入れており、2020年4月頃からフェイスシールドの寄付活動をおこなっています。
SAKURA Tempestaの運営に中心的に携わる3名にお話をうかがいました。
世界大会に挑戦する中高生のロボコンチーム
ーーまずはじめに、それぞれの自己紹介をお願いします。
寺崎 優葵さん(以下、寺崎):現在、高校3年生です。SAKURA Tempestaでは、前シーズンのリーダーを務めていました。今シーズンは受験があるので、引継ぎをしながらメンターとしてサポートする予定です。大学生になってからもメンターを続けられたらと思っています。
立崎 乃衣さん(以下、立崎):私は高校2年生です。今シーズンは寺崎さんから引き継いで、チームリーダーを務めています。前シーズンはロボットのハード面のリーダーを務めていました。中学1年生のときから所属していて、毎年ロボットの設計をメインで担当しています。SAKURA Tempestaでは設計と組み立てがメインですが、個人ではプログラミングから組み立てまですべてやっています。
後藤 嵩さん(以下、後藤):僕は高校1年生で、現在チームのリーダーアシストをしています。チーム内の活動は、とくに決まっていることがあるわけではなく、全体を通していろいろ方針を決めています。たとえば、イベントの開催をするにあたって、コンテンツや開催地などの話し合いをリードしたり、どうやってSNSを活用するかなどを決めたりしています。
ーーみなさんがSAKURA Tempestaに参加しようと思ったきっかけを教えてください。
寺崎:兄の紹介です。僕はもともと小学5年生からプログラミングをはじめて、中学1年生になるとプログラミングを本格的にはじめました。そのことを知っていた兄が「やってみたらいいんじゃないか」と紹介してくれました。
立崎:中学1年生の時に物理部の顧問の先生から紹介してもらいました。私は小学3年生からロボット製作をしていました。SAKURA Tempestaに参加する少し前に、半年くらいかけて高さ約150センチある大型の給仕ロボットを製作していたんです。そのときから大型のロボット製作が、自分には向いていると感じていました。でも、個人で作り続けるのは場所的にも金銭的にもちょっと難しいので、どこかでできないかと考えていたときにちょうどお誘いが来ました。
後藤:学校の同窓会のようなものがあり、そこが出している手紙でSAKURA Tempestaが紹介されていて、それを読んで、興味を持ったことがきっかけでした。2020年の8月に参加したので、入ってちょうど1年くらいです。
ーーそれぞれ学校が違いますが、チームの活動や運営はどのようにおこなっているのでしょうか?
立崎:コロナ前は、千葉工業大学の元教授で現在メンターをしてくださっている方の研究室を1部屋お借りして活動をしていました。学校が近いメンバーは、放課後そこに集まったり、それ以外のメンバーも土日に集まって活動しています。ロボット製作期間は毎年1月から3月頃なので、その期間はほぼ毎日メンバーで集まって、ロボット製作に集中するような形で活動していました。
2020年にチェアマンズアワードを受賞
ーー昨年、FRCは開催されたのでしょうか?
寺崎:FRCへの参加は、2年前が最後になります。昨年はコロナの影響で大会が中止となり参加できませんでしたが、チェアマンズアワードの審査はおこなわれました。
結果、北京大会でチェアマンズアワードを受賞できました。この賞は、ほかのチームに対してお手本となり、大会を主催するFIRSTのミッションを最も体現しているチームを表彰する賞です。
2年前の参加が最後と言いましたが、このときもコロナの影響で大会が途中で中止になってしまいました……。そのときに作ったのが雨桜(うろう)というロボットです。昨年はこの雨桜に改良を加えたものを動画で撮影して、ロボットが動いているところを提出しました。
ロボット製作の役割
ーー雨桜の製作は、それぞれがどんな役割を担当したか教えてください。
寺崎:僕も含め、プログラミングメンバーでプログラミングをおこない、設計を立崎がして、他のメンバーで組み立てをしました。
ーー雨桜の設計で苦労した点、工夫した点はどんなところですか?
立崎:FRCの場合、大会側から決められている製作可能期間がものすごく短くて、設計から、操作練習を終えるまでに約10週間しか与えられていません。なので、設計にかけられる期間は2-3週間程度になってしまいます。
その期間内に、これだけ大きいロボット※を全部設計し終えることが大変でした。
※雨桜のサイズ:縦113cm、横85cm、高さ75cm
ーープログラミングで苦労した点、工夫した点はどんなところですか?
寺崎:自動操縦が必要な部分があって、そこがすごく難しかったです。あと、ボールを発射して、角度を調整して的に向かって入れなければならなかったのですが、その角度の調整の部分が大変でしたね。
コロナ禍におけるアウトリーチ活動(社会貢献活動)
ーーなかなかコロナで活動しにくい状況だと思いますが、直近でアウトリーチ活動の予定はありますか?
後藤:8月28日にリコチャレ※の一環で、女子中高生向けに開催するオンラインイベントをおこないました。チームとして一番規模が大きいイベントです。
※理工チャレンジの略語。女子中高生、女子学生の方が、理工系分野に興味・関心を持ち、将来の自分をしっかりイメージして進路選択(チャレンジ)することを応援するため、 内閣府男女共同参画局が中心となっておこなっている取り組み。
さくらインターネットとの関わり
ーーさくらインターネットを知って、サーバーを採用することになった経緯を教えてください。
寺崎:僕が「スポンサーをしていただけないか」と問い合わせをしました。もともと個人的にさくらインターネットのサーバーを借りていたんです。安くて高品質なものを提供しているところはどこかと調べた結果、さくらインターネットが浮かびました。
問い合わせに返信いただき、東京のオフィスにうかがいました。そのときは、まだ中学生でしたね。
ーー中学生で問い合わせの連絡をして、オフィスまで行くってすごい行動力ですね! 当時の担当として、寺崎さんとお話したときに、熱量を持ちながら自分の夢をきちんと具体的にお話する姿が印象に残っています。夢の実現を後押ししたいと思い、ご支援させていただくことになりました。
活動を通じて得られたもの
ーーSAKURA Tempestaの活動を通して、ご自身で得られたものをお聞かせいただけますか。
後藤:たくさんありますね。たとえば、パソコンを使った資料作成がすごく上達しました。プレゼンの機会やチーム内で資料共有しながら話し合ったりする機会が多いので、そういったときにWordやExcelを使って、いろいろなことができるようになりました。
あと、FRCはすべて英語でルールが発表されるし、ジャッジの方とも英語でコミュニケーションを取るので、英語に対するハードルが下がりましたね。
僕はロボットやハードウェアに興味があるんですけど、これまでは周りに知識を持っている方があまりいませんでした。SAKURA Tempestaには、知識を持っている方がたくさんいます。
それだけではなく周りの方が丁寧に教えてくれるので、自分のやりたいことや興味のあることを伸ばせたと思います。
寺崎:僕はもともとプログラミングをやっていましたが、他の人と共同で開発したことがありませんでした。SAKURA Tempestaでは、複数のメンバーで分担してプログラムを書いていきます。
他の人のことを考えて、見やすいコードを書くことを意識するようになりました。こうした経験ができたのはすごくよかったです。
もうひとつは、世界大会に参加して他のチームと交流できたことです。他のチームがどんなロボットを作っているのか聞いたり、他のチームに自分のチームの宣伝をしに行くこともあるんです。英語で会話するのは難しいですが、Google翻訳などを使いながらも、交流できたのはすごく良い経験になりましたね。
立崎:毎年ロボット設計の大部分を担当できてきているので、技術力が身についてきています。
イベント運営の経験を積めたのも大きいです。100人くらい参加するような、大きなイベントの責任者をやらせてもらえる機会もありました。
SAKURA Tempestaでの経験を活かして、新しい団体を立ち上げようとしています。
ロボットと違った分野で、非常時や緊急事態に物資の供給ルートが確立されていないものを解消できるシステム開発をしています。
SAKURA Tempestaに入った中学1年生の時点では想像できなかったような未来が開けたので、SAKURA Tempestaを通して成長できた面が多いです。
今後の目標
ーー最後に、今後のSAKURA Tempestaの目標を教えてください。
立崎:私たちチームはコロナ渦でも医療機関にフェイスシールドを製作して寄付する活動をおこなったり、イベントを完全オンラインで行ったりと常に新しいことにチャレンジしてきました。今後もチームミッションで掲げているSTEAM教育の普及のためにチーム一丸となって精力的に活動し、New Normalの時代をリードしていけるようなチームにしていきたいです。
ーーみなさん、ありがとうございました!
執筆
鎌田 真依
2015年6月にさくらインターネットに中途入社。 ES(人事)部所属。 これまで、スタートアップ支援や学生支援などのブランディング活動に従事し、現在は新卒採用を担う。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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