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ChatGPT などの生成AI が随所で活用されつつあります。しかし実際に使ってみると、思いどおりの答えを返してくれないこともあるのではないでしょうか。
生成AI から理想の答えを引き出すのには、じつはコツがあります。
生成AI は「プロンプト(prompt)」と呼ばれる質問内容や指示に沿って答えを出します。つまり、質問内容や指示によって異なる回答をするという特徴があるのです。
そして求めている回答を AI から引き出すプロンプトを操る「プロンプトエンジニア」がいま注目の的になっています。
生成AI におけるプロンプトの重要性
生成AI は、同じことを知りたくても質問のしかたで異なる返事をします。
たとえば、30代の女性に日焼け止めを販売したいとします。
まず、ChatGPT にこのように質問してみました。
「30代の女性に日焼け止めを売り込むのによいコピーを作ってください。」
すると ChatGPT の返答はこのようなものでした。
では、同じような内容で、立場を変えてこのような質問をしてみます。
「あなたは 30代の女性です。日焼け止めを買うとき、どのようなコピーが刺さるか教えてください。」
すると、ChatGPT の返答はこう変わります。
異なるキャッチコピーが提案されていることがわかります。
質問の違いは、「あなたは 30代の女性です」と ChatGPT に「役割」を与えていることです。
また、桃太郎の話についての質問では、役割を与えるのと与えないのでは大きく異なる言葉を返してきます。
まず「桃太郎の話を教えてください」とだけ質問した場合です。
では、「あなたは小学校の先生です」という前提をつけると、こうなります。
説明の丁寧さや口調がまったく異なります。
このように、生成AI をうまく操るのは「求める答えを引き出すための上手なプロンプトを書けるかどうか」にかかっているともいえます。
そして、これらの「プロンプト」について高いスキルを持つ人たちは「プロンプトエンジニア」と呼ばれ、生成AI での業務をより合理化するために欠かせない存在になりつつあります。
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欧米では年収5,000万円の求人も
プロンプトエンジニアの需要は高く、アメリカではプロンプトエンジニアの求人が低いものでも 18万ドル程度(約2,500万円)、高いものでは 37万5,000ドル(約5,000万円)の年収が提示されています。*1
国内でも、プロンプトエンジニアを大量養成するプランを掲げている企業もあります。
博報堂DYグループの株式会社博報堂テクノロジーズは「ChatGPTソリューション開発推進室」を発足。その活動の一環として ITエンジニアやプロデューサー職を教育し、300人のプロンプトエンジニアを育て、最終的にはグループ全体で 1,000人体制を目指すとしています。*2
デジタル広告の世界では「つねに最新のもの」を供給し続ける必要があり、生成AI を使って大量に制作する必要に追われているという背景があります。
プロンプトそのものが売買の対象に
また、エンジニアが作成したプロンプトを売買するプラットフォームもできています。
東京都渋谷区に本社を置く株式会社ピカブルは、プロンプトマーケットプレイス「PromptSpace」をリリースしました。作成したプロンプトを売買できる仕組みです。
たとえば画像の生成にあたって、「CDジャケット風に音楽を聞いている人」の画像が欲しいが自分ではうまく AI から引き出せない、といった場合に、下のような映像を生成するプロンプトを有料で出品・売買できるというものです。
生成AI で描画をしてみても自分で思うようなイメージがなかなか得られない、といった場合に、それぞれのサンプル画像を出力させるためのプロンプトを購入・販売できるのです。
また大阪府大阪市に本社を置く株式会社ユニソンプラネットは、ビジネスに重きを置いた AI利用者向けのプロンプトマーケットプレイス「Prompt Works(β版)」をリリースしました。各分野の専門家が作成した AI に指示を出すための良質なプロンプトや独自のプロンプトを売買できる場所です。
プロンプト作成は、その分野のプロフェッショナルが関わってこそ良質になるという考え方で、分野ごとの専門知識を持つ人が作成したプロンプトが出品されているのが特徴です。
なお、いずれのプロンプトマーケットも、「動作確認・審査を通過した」ものが販売されています。
プロンプト作成のコツは「質問力」にあり
さて、こうしたプロンプトのスキルはどのように身につければよいでしょうか。
まず、よいプロンプト作成の条件として、下のようなものがあります。
「プロンプトのコツ “RELIC”」
- 「Role」:AI に役職を与えること
- 「Exclusion」:含んで欲しくない情報をあらかじめ伝えること
- 「Length」:何文字以内で回答して欲しいか長さを設定すること
- 「Inspiration」:URL などを入力して AI に実例を示すこと
- 「Context」:質問の意図や背景を明確にすること
(出典:「年収5000万円! ChatGPT操る『プロンプトエンジニア』って?」NHK)
これらの基本を押さえ、自分なりに発展させていく能力がある人がプロンプトエンジニアとして高給を得られるのです。
筆者はこれを「質問力の高さ」と捉えます。
何かを知りたいときに、どんな質問をするか? これはとても重要なことです。自分が知りたいことを、どれだけ自分のなかで具現化できているかどうかがベースになります。
5W1H はもちろんのこと、文字数、意図の的確性、まさに上記にある「RERIC」がなければ、どれだけ生成AI を利用してもさして業務の合理化にはつながらない可能性があります。
生成AI は人間の仕事を奪っていくのか? という問いに対する答えはここにあると考えます。
プロンプトエンジニアのようにAI を操る人、そして生成AI は正しくない情報でもそれらしい文章で回答をしてきますから、その真偽を見極める能力のある人。
生成AI とともに働く新しい「DX人材」とは、このような姿になっていくのかもしれません。
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*1:「年収5000万円! ChatGPT操る「プロンプトエンジニア」って?」NHK
*2:日経BPムック「ChatGPT産業革命」 p13