2022年2月16日に新サーバーをリリースし、従来より5倍速くなった「さくらのレンタルサーバ」。SSD化をはじめとした機材の刷新により、WordPressなどのCMS(※)も、より快適に利用できるようになりました。
※CMS・・・Contents Management Systemの略。Webサイトを簡単に作成・編集・管理できるシステムの総称。代表的なものに「WordPress(ワードプレス)」がある。
サーバーリニューアル実施の背景や、こだわったポイントなどについて、さくらインターネット インターネットサービス部でサービス企画を担当する谷口 元紀に話を聞きました。
谷口 元紀(たにぐち げんき)
2016年、さくらインターネット入社。インターネットサービス部 部長。さくらのレンタルサーバをはじめ、ドメイン・SSL、CDNサービスなどのサービス企画を担当。前職ではデザイン会社でクリエイティブディレクターとして働いていた。
さくらのレンタルサーバのサービス企画
ーー谷口さんの業務について教えてください。
インターネットサービス部で部長をしつつ、さくらのレンタルサーバのサービス企画全般を担当しています。インターネットサービス部では、レンタルサーバーのほかにドメインやSSL、あとCDNサービスの「ウェブアクセラレータ」などもあつかっています。そういったサービスすべてについて、エンジニアリング以外の企画業務をおこなっているという感じですね。
新しいさくらのレンタルサーバの強み
ーー「さらに速く、快適に」なったさくらのレンタルサーバですが、リニューアルの背景について教えてください。
レンタルサーバー業界全体で共通だと思うのですが、古いサーバーで10年、20年とサービスを提供していくのは不可能です。どこかのタイミングで新しいサーバーに移行しなければなりません。それで、何年かごとにリニューアルを繰り返していくのですが、そのタイミングがようやく来ました。
レンタルサーバーを提供している各社、会社によって更新するスパンが決まっているところもあると思います。さくらインターネットの場合、いろいろな状況を考え、いまがそのタイミングだったという感じです。
普通のリニューアルなら、見た目はなにも変えずに「新しいサーバーになりました」「CPUが新しくなって速くなりました」というだけの話です。ただ、他社との競争力なども考えて、いままで長く使用していたHDD(ハードディスクドライブ)を、より高速なSSD(ソリッドステートドライブ)に変えたり、容量を増やしたり、初期費用を撤廃したりといった施策を同時におこないました。
ーー表示速度や処理速度が最大で5倍になりましたが、それ以外で新しいさくらのレンタルサーバの強みはどういったところでしょうか。
※1 試験環境にWordPressを設置し、トップページを200回表示した平均を基に算出
※2 2018年4月18日以降にお申し込みいただいた環境
※3 2018年4月17日以前にお申し込みいただいた環境
まるごと新しいサーバーになったので、CPUなどのスペックはすべて上がっています。とくに、今回のリニューアルの大きな強みは、ストレージがSSDになったことです。動作速度もそれに合わせて速くなりました。
結局のところ、お客さまが作成するWebページ次第で表示速度は変わります。なので、サーバーのスペックが影響することももちろんありますが、サーバーが変わったからといって、必ずWebページの表示が速くなる、とはなかなか言えないんですよね。
ただ、「サーバーの応答速度が速い」のは、大事な要素のひとつではあります。これまでのHDDと比較して、SSDはディスクの読み書きが速いので、単純に処理の速度が上がっています。また、CPUも、WordPressなどのPHPアプリケーションを高速に処理できるよう選定しました。これは、お客さまにとってのメリットになると思いますね。
工夫次第で表示速度は速くなる
ーーおすすめのCMSはありますか?
おすすめと言われると、やはりWordPressになりますね。無料で使えますし、圧倒的に利用者数が多いです。利用者が多い分、困ったことがあった場合も、調べればだいたいの情報が出てきますから。
ーーWordPressをご利用中の方のなかには、表示が遅いとお悩みの方も多いと思います。
WordPressのプラグインを活用したり、さくらのレンタルサーバのコンテンツブーストを使えば、疑似的に静的なページを配信できます。こういった対策をすれば、十分、表示速度を上げられる可能性があります。
ただ、先ほども少し話しましたが、表示速度が遅いのは、一概にサーバーだけのせいとは言えないんです。
ストレージがSSDになれば速くなると考えられがちです。例えば、お手元のパソコンの場合、新しくSSDのものを買ったら「めちゃくちゃ動作が速くなった」と感じるかもしれません。でも、エクスプローラーで画像を開くとき、SSDのPCのほうが表示が速くなるかというと、体感できるほど速くはないと思うんですよ。
サーバーも同じで、SSDになるだけでWebページの表示が速くなるかというと、圧倒的に速くなるわけではありません。
サーバーを提供する側としては、もちろんスペックの良いサーバーをお客さまに使っていただきたい。そうすることで、Webページの表示速度を上げることもできます。
ただ、不要なプラグインを入れない、使用するテーマを軽いものにする、といったWordPress側の工夫で、Webページの表示速度はかなり変わります。
サーバーを提供する私たちと、サーバーを利用するお客さまの両者が、表示速度について意識して、サービスとWebサイトを運営していく必要があるんです。なにかひとつでも欠けると、最大のパフォーマンスを発揮することはできません。
もちろん、レンタルサーバーを高いプランに移行することで、速度を上げられる可能性はあると思います。でも、まずは速度が遅くなっている要因を探るところからはじめていただきたいですね。そうしないと、かかったコストのわりに、効果があまり得られないかもしれません。
最近よく見る、動画がトップページで動いてるようなWebサイトだと、見た目のインパクトはありますが、読み込むのに時間がかかって、そのぶん表示速度も遅くなります。そういったところは、なにを優先するのか、メリットとデメリットを把握したうえで利用していただきたいと思います。
さくらインターネットとしては、レンタルサーバーの事業者として、ネットワークの帯域を太くしたり、なるべくさくらインターネット側がボトルネックにならないよう、サービスを提供していかなければなりません。お客さまには、ぜひサービスを100%活用していただきたいと考えています。
WordPressが快適に利用できるように
ーー新サーバーの提供にあたって、苦労した点などはありますか?
サーバーの選定がいちばん大変でした。いろいろな検証機を借りて試しました。同じメーカーのCPUでも、性能が違うものが何種類もあるんです。選択肢が多いのはありがたいのですが、検証対象が多いのは大変でしたね。
さきほども触れたとおり、いまはWordPressの利用者が圧倒的に多いので、WordPressを快適に利用できるCPU選びにこだわりました。
WordPressは、ストレージの読み書きよりもCPUの負荷が結構高いんです。どのCPUが適切なのか、検証機を使ってパフォーマンスを比べて、いちばん良かったものを選びました。実際にWordPressのどこの処理にいちばん時間がかかっているか、ボトルネックを探し出すところからやりましたね。
極論を言ってしまうと、いちばん高いサーバーを買って、少数のお客さまに使っていただくかたちにすれば、速く動くんですけど(笑)。ただ、そうすると、提供価格が高くなってしまいます。
価格と性能のバランスをどこでとるか。それが非常に難しかったです。「高いサーバーになりましたので、来月から値上げします」となったら、これまでご利用いただいていたお客さまに申し訳ないですから。同じ価格で、どれだけの性能のものを提供できるかを考えたうえでサーバーを選定しました。
ーー5倍速くなって、お値段も据え置きですね。
初期費用が無料になったので、新規でお申し込みいただく場合なら、むしろ以前よりもお得になりました。2月16日以前よりご利用中のお客さまについても、新サーバーへ移行できる「移行ツール※」を後日提供する予定です。
※追記:2022年7月13日より提供開始しました。
ーー最後に、新しいさくらのレンタルサーバを検討されている方に向けて、なにかメッセージはありますでしょうか。
繰り返しになってしまいますが、いままで以上に、WordPressやそれ以外のWebサイトの表示速度が向上しているので、ぜひご利用いただきたいです。
あと、前回のサーバーリプレイス以降、手軽にCDNとの連携ができるコンテンツブーストなど、Webページを速く安定して表示するための便利な機能をリリースしています。そういったものも活用いただくことで、利用できるWebサイトの幅も広がるのではないかと思います。
実際に、大規模なアクセスのあるWebサイトに、さくらのレンタルサーバを利用していただいているお客さまも増えています。レンタルサーバーの利用は、個人のWebサイトだけだと思う方が多いかもしれませんが、トラフィックが集中するような商用のWebサイトを運用されているお客さまも結構多いです。
サーバー管理はかなり楽になるので、ぜひお試しください。
>>【さくらのレンタルサーバ】さらに速く、快適になりました!