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モリサワ社がUDフォントを開発する想い。誰もが平等に読みやすく、分かりやすい“文字”を社会に広めたい

≫ 「やりたいことをできるに変える」職場で働きませんか?

株式会社モリサワ
1924年(大正13年)創業。「文字を通じて社会に貢献する」をビジョンに掲げる。「邦文写真植字機」を世界で初めて発明し、その後はDTP化やWebフォント(TypeSquare)への対応など、様々な時代の変化に合わせた“文字”を取り扱う会社。モリサワフォントすべてを利用できるライセンス製品「MORISAWA PASSPORT(モリサワパスポート)」販売中。 

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モリサワフォントでおなじみ、株式会社モリサワの野村さんにお話をうかがいました。

 

さくらのレンタルサーバでは、モリサワ社の提供するクラウドWebフォントサービス「TypeSquare」からUD書体や新ゴシック体など、33書体が追加料金なしでWebサイトにご利用いただけます。

ユニバーサルデザイン、そしてUDフォントとは

ーーまず始めに、ユニバーサルデザインの概念とは何でしょうか?

ユニバーサルデザインとは、文化・国籍・年齢・言語・性別・障害の有無や能力差などを問わず、誰もが利用できるデザインのことです。
近年では高齢化社会に関してのニュースや、平成28年に障害者差別解消法が施行されるなど、すべての人が平等に生活できるようにしよう、共生社会を形成していこう、といった動きがありますので、ユニバーサルデザインという言葉や概念は今の社会に合っているのではないかと考えます。

「バリアフリー」と混同されがちですが、バリアフリーは障害のある方や高齢の方が社会参加をするうえで、階段が登れないなどの障害を取り除くといった意味になります。
そのため、ユニバーサルデザインとは似ているようで、まったく違う考え方になります。ユニバーサルデザインの大きなポイントは、すべての人が対象であるという点です。

 

ーーモリサワ社がユニバーサルデザインを意識し始めたきっかけを教えてください。

少子高齢化という社会的背景がきっかけです。
これからご高齢になる方が増えていきますが、それだけ老眼や白内障などの目の病気により、文字の読みづらさに悩みを持つ方も増えてくると思います。

私たちはフォントメーカーですから、そういった悩みを持つ方々に向けて誰もが読みやすいフォントが必要だろうと考えました。
また、利用者の方からもそういったフォントが必要であるという声を上げていただいた事が制作するきっかけになり、ユニバーサルデザインの概念を持ったフォント、UDフォントが誕生しました。

 

ーーUDフォントは将来を見越したフォントなのですね。

フォントを作成するのには数年の時間が掛かるので、先を見越して開発を進めています。
弊社のUDフォントは10年くらい前に誕生しました。継続して改良をしており、お客様からの声を参考にして日本語フォントだけでなく、多言語など徐々にラインナップを増やしています。 

UDフォントの「わかりやすさ」 や 「読みやすさ」 とは

ーーUDフォントのコンセプトや工夫されている点は何でしょうか?

UDフォントとは「文字の形が分かりやすい」 「文書が読みやすい」 「読み間違えにくい」 といった3つの事をコンセプトにして作られている書体です。

 

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特徴としては、文字を構成する線で囲われた「ふところ」という部分が広く作られています。ゴシック体では濁点と半濁点を一般的な書体よりも大きく設計し、文字の線を削っています。こうして文字と濁点と半濁点との間にスペースを作ることで、見間違いや読み間違いを起こしにくい工夫をしています。

また、文字の大きさもUDではないフォントと比較して少し大きめに作られています。
明朝体は縦線が太く、横線が細い特徴を持っているので、横線がかすれて見えにくい事がありますが、UDフォントでは横線を太めに作ることで見えにくさを解消しています。 

教育現場に適した「UDデジタル教科書体」とモリサワのUDフォントが広まった経緯

ーー教科書体にもUDフォントがあるとうかがいましたが、どんな書体なのでしょうか?

「UDデジタル教科書体」という書体ですね。
日本初のユニバーサルデザインの概念で作られた教科書体となります。可視性・可読性のエビデンス(科学的根拠)も取得しているうえに、教育現場でも注目いただいている書体です。

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弊社のUDフォントは、第三者が実施したエビデンスを多数持っていますが、この書体も同じようにエビデンスを取得しています。
きっかけは、UDデジタル教科書体のチーフデザイナーが「自分たちの考えだけでユニバーサルデザイン、とうたってもいいのだろうか?」と疑問に思ったことがはじまりです。

そこで、ロービジョン研究の第一人者である慶應義塾大学の中野泰志教授にお話をうかがったところ、現場を見るべきだというご意見をいただきました。
そして、中野教授にご協力いただきヒアリングを進めた結果がでました。一般的な教科書体の止め、跳ね、払いといった部分の先端の尖りや線の太さの強弱表示が、視覚過敏やロービジョン(弱視)の子どもたちにとっては、怖さや見えにくさに繋がっていることが分かりました。

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では、先端が尖っておらず、線の強弱も少ないゴシック体にすれば良い話かというとそうではないです。ゴシック体は可視性を高めるために、あえて文字の形を変えている場合があります。

子どもたちが書き順や画数などを学ぶ際、ゴシック体を手本に覚えてしまうと、書き方のテストでは間違いになってしまうことが想定されます。
そのため、ゴシック体は子どもたちにとっては学びにくく、先生たちにとっても教えにくい書体であることが、ヒアリングの結果分かりました。

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これらの結果を参考にして、UDデジタル教科書体では太さをなるべく均一にしてロービジョン(弱視)やディスレクシア(読み書き障害)の子どもに配慮しました。また、形状も文部科学省指定の学習指導要領に沿った形状にすることで、教育現場でも使っていただける書体として誕生しました。

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モリサワ社のフォントを用いた検証 

ーーUDデジタル教科書体は、豊富なユーザーの声を反映した書体なのですね。可視性・可読性のエビデンスは第三者機関と検証されたと聞きましたが、どのような検証をされたのでしょうか?

読み書きに困難さを抱えている小学生の子どもたちを対象に、36問の簡単な問題を1分間で解いてもらいました。UDデジタル教科書体と、そうではない一般的な教科書体で問題を読み進める速度を検証するテストを実施したのです。その結果、UDデジタル教科書体のほうが9%も読みの速度が改善しました。

※検証の詳細はこちら
 https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/ud-public/education/#evidence

同様のテストを、奈良県生駒市の通常学級の生徒さんにも実施して貰いました。やはり、読みの速度が改善される結果が得られました。 そして、この結果から奈良県だけでなく生駒市でも導入が決定したのです。

 

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※検証に使用された問題のイメージです

 

ーー県や市への導入に関するエピソードがあれば教えてください。

奈良県教育委員会にUDフォントが導入されたきっかけがあります。奈良県に住んでいるディスレクシアの生徒さんが、UDフォントなら読めると発信したことが始まりです。

加えて、タイミング良く教育現場の方とお話させていただく機会がありました。その際に弊社のUD フォントが教育的にも効果があるというエビデンスをご紹介したのです。そうして、先程述べたテストの実施やUDフォントを導入いただく話へ繋がります。

 

さらに、UDデジタル教科書体の開発当初からご協力いただいている中野教授が、さまざまなところでこの書体を広めてくれました。結果、マイクロソフトの方がUDフォントに興味を持っている、という連絡をいただきました。

それがきっかけとなり、2017年、Windows 10のシステムに UDデジタル教科書体が標準搭載となりました。また、2018年にBIZ UDフォント(ゴシック体・明朝体)も追加されました。
現在はWindows10の最新バージョンであれば、インストールをしなくてもこれらのUDフォントがご利用いただける状態になっています。 もちろんOffice製品でもご利用可能です。

ーーUDフォントは子供たちの声から始まり自治体、教育委員会、モリサワ社、Microsoft社などの活動によって全国でUDフォントが使える環境が広がってきているのですね。

 

モリサワ社に聞く、UDフォントの導入例 

ーー生駒市以外の市町村でもUDフォントの導入例はあるのでしょうか?

2020年1月15日より、三重県いなべ市と地方創生の推進などに取り組むための連携協力に関する包括協定を締結しました。

 

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今後は、市の作成する文書などにUDフォントを活用いただくほか、市内の中学生へ見やすい資料作成の特別授業や市職員の方に活用方法のレクチャーを開催し、サポートしていきます。いなべ市の方も、市全体でUD フォントをもっと活用していこうと言ってくれています。

UDフォントを、もっと社会に広めていきたい

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ーーモリサワ社の今後やりたいことについて教えてください。

今までモリサワはデザイナーの方や印刷業界の方にご利用いただく事が多かったです。ただ、これからはさまざまな方に「書体を選ぶ」ことの有用性を知っていただきたいと思っています。

業務で教育現場の方と携わるうちに感じたことですが、相手に伝えるときに、自分の考えと同様の理解を相手に与えるのはとても難しいです。だからこそ、「伝わる」ための配慮や工夫が必要になってきます。

例えば、書体を変えたりレイアウトを工夫したりすることで、言いたいことが相手に伝わりやすくなります。 まずは第一歩として、普段お使いのフォントをUDフォントに変更することから始めていただけるとうれしいです。

またUDフォントは広く社会に使われていく事を意識して開発したものです。そのため、さらに読みやすく、使いやすくしていくために、広く一般の方の意見も継続して参考にしたいと考えています。

最後に、余談になりますが、最近街中で UDデジタル教科書体を良く見かけるようになりました。

広告や飲食店のメニュー、道の駅やお土産屋さんのポップ、コンビニのおにぎりの棚でも使われているんですよ。

 

ーーWindows10へ搭載された事も利用増の後押しになっているのかもしれないですね。また、商用利用するにあたって権利などの問題はありませんか?

はい。商用利用にまったく問題はありませんので、ぜひご利用ください!
お店のパソコンで作られたポップからプロの方が作ったデザインにまで、私たちのフォントを使っていただいたものを見ると、すごくうれしいです。

 

 

 

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執筆

尾崎 翔一

さくらインターネットでWebマーケティングを担当。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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