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みやぎプロコンで「子どもたちに、作ることの楽しさを伝えたい」

プログラムコンテスト(以下、プロコン)は、さまざまな団体によっていろいろな場所で開催されています。この記事では、宮城県でおこなわれている「みやぎプロコン」に注目しました。

仙台高等専門学校とPCN仙台の共催で、2019年からはじまった「みやぎプロコン」。子どもたちに「もの作りの楽しさや面白さを気軽に体験してほしい」という想いで開催されています。

その「みやぎプロコン2021」への応募が本日からはじまりました! 応募期間は2022年1月11日までなので、ぜひご応募ください。

今回はそのみやぎプロコンを立ち上げた、PCN仙台/株式会社アイティプロジェクトの荒木義彦さんにお話をうかがいました。

 

荒木 義彦さん プロフィール

荒木 義彦さん プロフィール

1967年生まれ。福島県いわき市出身。通称:親方。株式会社アイティプロジェクト 代表取締役、PCN仙台 会長親方、みやぎプロコン 事務局長、ロボットサバイバルプロジェクト 主宰。

異業種から転身し、宮城県仙台市で2000年よりWeb制作&プログラム開発の会社を運営開始。企業のHP制作&管理やWebシステム開発を20年以上続ける。地域における子どもたちの身近な活躍の場を作りたい想いが高じて、2019年から仙台高専と共催で「みやぎプロコン」を運営開始し2021年度で3年目。

2021年からはKDDIと共催で「ロボットサバイバルプロジェクト」を主宰し、第2回大会からは仙台市・仙台高専も共催となる。昨年からは地域での人材育成を強化するため、他団体と連携した活動を強化中。

30歳を過ぎてからプログラミングを本格的に学ぶ

私は現在、株式会社アイティプロジェクトの代表をつとめています。仙台を拠点に、仙台放送さんやエフエム仙台さんなどのWeb系の管理とバックヤードのWebプログラムも担当しています。といっても、私がプログラミングを本格的に学びはじめたのは30歳を過ぎてからです。

 

はじめてコンピュータやプログラミングの存在を知ったのは中学生のころです。ゲームの『ドンキーコング』で遊びたかったのですが、当時は家庭用ゲーム機がまだなくて、お店でプレイするのに1回100円かかるわけですよ。

そんなとき、たまたま本屋さんで『I/O(アイオー)』という雑誌を見つけました。その表紙に『ドンキーコング』の文字が載っていたんです。

気になって読んでみたら、『ドンキーコング』のプログラムが書いてあったんですね。「この本を買えば、『ドンキーコング』が遊べるのかな?」と思い、買いました。でも買ってみて気づいたんですけど、パソコンが必要だったんですよ。当時のパソコンってすごく高いので買えなかったんですけど、それがはじめてコンピュータやプログラムと出会った瞬間でした。

それから大人になり、私は営業の仕事をしていました。その前から少しだけプログラミングを勉強していましたが、しっかりと学びはじめたのは30歳過ぎてからになります。

PCN仙台を立ち上げたきっかけ

2000年くらいに、「IchigoJam」を開発した福野(福野泰介さん)と出会いました。

その後2014年に、福野と松田(松田優一さん)と原くん(原秀一さん)が、PCN(プログラミングクラブネットワーク)を立ち上げたんです。

「面白いな、仙台でもやろう」となり、PCN仙台が立ち上がりました。

みやぎプロコン誕生

みやぎプロコン誕生

 

PCNの活動として「PCNこどもプロコン」を長い間やっていて、たくさんの子どもたちがいっぱい作品を出してくれています。でも運営に参加して、地方の子どもたちが全国規模のプロコンに参加するのはハードルが高いと感じました。

コロナ以前は表彰式をオフラインでやっていました。全国規模の大会だと、表彰式を都市部でおこなうことが多かったんです。宮城県の子が、東京や大阪に行くのって大変じゃないですか。

あとは全国規模の大会はレベルが高いので、すでにプログラミングをしっかりやっている子どもの腕試しになっているんですよね。初心者向けではありません。腕試しだけではなくて、いままでプログラミングに触れたことのない子どもが気軽に参加できる地域のプロコンを作りたかったんです。機会損失を防ぐためといえます。

プログラミングや電子工作を通して子どもたちに学んでほしいこと

とにかく、まずは触ってみてほしいです。大人が介入しすぎちゃうのは良くないですね。「なんだそんなものしか作れないのか」と言う大人もいますが、そういうことではないんですよね。

自分たちだって小さいころには、大人から見たらどうでもよいものを作って喜んでいたはずなんです。

いまは何でも手に入ってしまう時代になりました。自分で何かを作る機会が昔と比べて減っていると思うので、いまの子どもたちにも経験してほしいんです。

「本当にほしいものは売っていない」と福野がいつも言っています。確かにそうなんです。だから自分で作ってほしいんです。自分で作ってきたものには愛着が湧くんですよね。

みやぎプロコンで印象に残っているエピソード

みやぎプロコンで印象に残っているエピソード

 

先ほどお話ししたように、プログラミングに触れたことのない子どもが気軽に参加できるように体験ワークショップを開催しています。

そこに小学4年生の女の子が、お母さんと一緒に来ました。体験ワークショップでサーボモーターや光センサーとか、そういうものを学んだんですね。

学んだことをもとに、どんなものを作るか考えるときに「お母さんが毎日お薬を飲んでるから、それを飲み忘れないようにしてあげたい」と言うわけです。それで「お母さん薬飲み忘れない装置」を作ることになりました。

 

私がみやぎプロコンの審査員に言う言葉があります。

「プログラミング技術の評価は、それほど多くなくていいです。作る理由と過程を重視してもらいたい」。

プログラミングコードがすごいかどうかなんて、正直言ってエゴですよ。使う側には関係ありません。それよりも、作ったものが便利かどうかが大事じゃないですか。

そのお母さんのために薬飲み忘れ装置を作った子は、みやぎプロコンに応募してくれて、1次審査を通って審査会にまで進んでいました。

初めてプログラミングを体験した子が作品を出せて、そして審査会まで残ったことが印象に強く残っています。

 

その子はいま小学校6年生になりました。いまでもプログラミングクラブでプログラミングを続けてくれています。とてもうれしかったですね。今年のみやぎプロコンにも参加してくれるそうです。

人は褒められると成長します。褒められることで、自信につながります。自信を持てると、人間ってどんどん前に進めますよね。

可能な限りリアル開催を目指す

昨年はオンライン開催でしたが、共催する仙台高専さんとも話し合い、今年は可能な限りリアル開催を目指します。もちろん、不安な方はオンラインでも参加できるようにはしますが。

プロコンに向けてワークショップを開催中です。「作る」ワークをしています。これまでに『紙コップで自動センサーゴミ箱を作って学ぼう』、『AtomMatrixでセンサープログラミング!モータを連携させよう』といったワークショップをおこないました。センサーやサーボモータを使った電子工作がメインです。

これからプログラミングをはじめようと思っている子どもたちへ

これからプログラミングをはじめようと思っている子どもたちへ

「プログラミングをはじめるときに、何からはじめればいいのか?」とよく聞かれます。何からはじめてもいいと思うんです。

大人たちが「子どもにはこの教材がいい、あの教材がいい」と勝手なことばかり言いますが、何だっていいんですよ。

マイクラやりたい子はマイクラやればいいし、電子工作やりたい子は電子工作やればいいと思います。ただ、なるべく偏らないことは大事です。

キーボードを触らないのは、やめてもらいたいな。それだけはお願いとしてあります。もしかしたら将来、キーボード入力をしなくてもよくなるのかもしれませんが、ベースを知らない人間になってしまうのは避けてもらいたいです。

 

あとは、マシーンの限界も味わってほしいですね。

いまってサーバスペックが上がり過ぎちゃって、何でもあります。でも限られたものの中で、やらないといけないときって出てくるじゃないですか。それをマシーンのせいにするような人にはなってほしくないんです。マシーンの限界を知って、その中でできることを考えられるような人になってほしいんです。

みやぎプロコンとさくらインターネットの関わり

さくらインターネットさんら数社でおこなっているCSR活動「KidsVenture」に、弊社も参画させていただき、いろいろなワークショップをご一緒させてもらっています。

そういった中でみやぎプロコンは2019年からはじまりまして、さくらインターネットさんにもスポンサーとして快く参加いただきました。

2020年はオンライン開催でしたので、ファイルサーバの構築といった技術面で協力してもらいました。2021年の今年は、応募システム用にファイルサーバをご提供いただきます。いろいろな面で協力していただき、助かっています。

荒木さんが、みやぎプロコンを通じて「やりたいこと」

(作ることは楽しいと語る荒木さん。ミンティアケースを加工して作ったインベーダーゲームを見せてくれた)

(作ることは楽しいと語る荒木さん。ミンティアケースを加工して作ったインベーダーゲームを見せてくれた)

 

1人でも多くの子どもたちに「作ることは楽しい」を届けたいです。ただそれだけです。

「プログラミングが楽しい」というのは、少し違うんですよね。どんなにプログラミングを学んでも、それだけだと何も作れないです。何かを作ることが楽しい、何かを作りたい、と思うからプログラミングが必要なんですよ。

お母さんのために薬飲み忘れ装置を作った子の話をしました。その子のように、誰かのために何かを作りたい気持ちが大事になります。プログラミングは、そのための手段です。

 

みやぎプロコンは子どもを対象にしていますが、子どもだけではなく、大人にも作ることの楽しさを届けたいです。親御さん(大人)が理解しないと、子どもがはじめることもできないし、続けることもできないんですよ。

子どもたちが僕らと会える時間って、限られているじゃないですか。子どもは家にいる時間が一番多いですよね。親御さんが作ることの楽しさを理解してくれれば、子どもは自由にいろいろなものを作れます。

だから僕らは最近「親子」というキーワードで、もの作りのワークショップを開催しています。

みやぎプロコンの参加を迷っている子どもたちへ

参加すれば、何かいいものがもらえるかもよ(笑)。

 

【みやぎプロコン2021】

募集内容:2021年1月7日以降に完成した、受賞歴のない(参加賞は除く)オリジナルのプログラム作品を募集します。(ジャンルや言語、作成ツールは問いません)

 

部門(全5部門):

  • テーマ部門(NEW) 仙台市産業振興課さんからのテーマ 「Withコロナに役立つ便利ツール」
  •  ソフトウェア(小学生部門 ・ 中学生部門) 
  • ロボット・電子工作(小学生部門 ・ 中学生部門)

 

応募資格:

  • 東北地方に在住の小学生・中学生
  • 個人または小中学生で構成された団体

 

応募期間:2021年12/13(月)-2022年1/11(火)

 

賞:各部門 最優秀賞・優秀賞 

一次審査通過後、入選作品をHPで公開します。

 

詳細はみやぎプロコンのホームページをご確認ください。

 

>>みやぎプロコン ホームページはこちら

>>みやぎプロコン ホームページはこちら

執筆

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

編集

武田 伸子

2014年に中途でさくらインターネットに入社。「さくらのユーザ通信」(メルマガ)やさくマガの編集を担当している。1児の母。おいしいごはんとお酒が好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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