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美容室のDX。アンドロイドOSを搭載しネットとつながる驚きのスマートミラー

どこの美容室でも、壁には大きな鏡がかかる。スマートミラーはスマホと鏡が合体し、大画面になったイメージだ。鏡には動画が流れ、ヘアカタログが投影される。美容師はお客さまの髪をセットしながら、鏡に映るヘアカタログをお見せする。さまざまなヘアスタイルが鏡の中に表示され、お客さまは髪を整えたあとをイメージできる。鏡の下部には、YouTubeでヘッドスパのキャンペーンが流れる。最先端のスマートミラーのDXが美容室にイノベーションを起こす。株式会社ミラーロイド 代表取締役社長の成田 秀基さんに話を聞いた。

 

美容室のDX。アンドロイドOSを搭載しネットとつながる驚きのスマートミラー

成田 秀基(なりた ひでき)さん プロフィール 

1981年生まれ。東京都出身。大阪学院大学卒業後、セキュリティー関連商社に就職。その後、独立起業し、2009年4月に株式会社D&Dコーポレーションを設立する。セキュリティ機器の輸入販売・セキュリティシステムの企画・販売などで実績を積む。海外との取引の中でスマートミラーに出会い、自社にて製造販売を決断。2017年10月に株式会社ミラーロイドを設立。スマートミラーの製造販売、アプリケーションの開発・運営、スマートミラー向け広告配信・運用のビジネスを展開している。株式会社ミラーロイド代表取締役社長(現職)。

革新的!美容室の鏡が巨大なスマホになった

髪は1度ハサミを入れてしまったら、すぐにもとの長さには戻らない。1度染めてしまったら、地毛の色に戻るには時間がかかる。美容室ではお客さまのイメージとずれが起こりうる。シミュレーションができて、ビフォーアフターを共有できたら……。イメージ通りの髪型を実現してくれる美容師には信頼感が生まれる。

ミラーロイドのスマートミラーは、美容業界にイノベーションをもたらした。Wi-Fi環境があれば美容室の鏡がインターネットにつながる。鏡と一体の大画面が、タブレット操作ができるディスプレイになるのだ。

 

ミラーロイドのスマートミラー

提供:株式会社 ミラーロイド

 

鏡をタップするとさまざまな画面が表示される。付属のカメラで撮影されたヘアカットのビフォーアフターや、仕上がり画像や動画は自分のスマホにアップロードできる。お客さまはQRコードでミラーロイドのアプリをダウンロードすればよい。

美容師のフィニッシュワークを、自宅でするのは難しい。スマートミラーで撮影した動画があれば自宅の鏡の前でも再現できるのだ。

いつ、どの店舗で、どんな髪型にしたのか。履歴をデジタル化し複数の店舗で共有できる。美容師の記憶と紙のカルテのアナログ情報をデジタル化し、お客さまとも視覚的に共有が可能。イメージのギャップから生じるお客さまの不満を減らせば店舗からの離脱防止にもつながる。

店舗はヘアカタログを管理画面からアップロードできる。SNSのピンタレストの画像もカタログとして利用できるのだ。

 

「私たちは『スマートミラーでヘアシミュレーションができるという技術』で特許をとっています。このシミュレーション技術はメイクにも応用が可能です。今後、蓄積したデータを活用すれば、さまざまなシミュレーションが提供できます」

 

提供:株式会社ミラーロイド

提供:株式会社ミラーロイド

 

2021年新しい機能もリリースした。地毛の色を変えたらどんなイメージになるのか。AIを使ったカラーチェンジのシミュレーションだ。まだベータ版だが、実際に髪を染めずともビフォーアフターをイメージできる。シミュレーション画像はスマホにアップロードも可能だ。

レッスン機能もある。一流美容師のワザを鏡に映した動画で学べる。鏡の中のコンテンツを見ながら、オンライン研修やカットの練習ができるのだ。

もちろん、本来の鏡としての機能も申し分ない。UI(ユーザーインターフェース)に優れ、パッとクリックすると鏡に戻る。鏡がただの鏡ではなくなった。成田さんはミラーロイドには価値提供の3つのポイントがあるという。

 

「ひとつめは顧客満足度を高めること、2つめは売上をあげること、3つめは業務効率をあげることです」

スマートミラーで起業した原点とは

スマートミラーのビジネスで起業した原点について聞いた。

成田さんは大学卒業後、セキュリティ機器の商社で働いたが「自分のビジネスをしたい」強い思いがあった。世界にビジネスを展開したい、IPO(新規株式公開)をしてみたい。今から7年前の2015年、まだIoT(モノのインターネット)という言葉すらなかった。そんなとき、鏡がインターネットとつながりスマート化して人びとの生活を豊かにしているCGを見る。衝撃的だった。

 

「これなら自分の思いを独自に実現できる。鏡なら世界共通だ。世界中の鏡を『理想の美を実現するためのインフラ』にしてみたい」

 

鏡が大量に使われているのは理容室、美容室、フィットネスクラブだった。「美しくなりたい」人々が集まる場所だ。この分野に特化しよう。そう考えた。

あるとき、スマートミラー発売のプレスリリースを知る。韓国に視察にいき、仕入れて日本で独占販売しようと考えた。しかし品質が全然イケていない。おまけに販売会社自体も消滅してしまった。OEMで作ってもらったが、今度は製造の品質が悪く、鏡面が割れている始末。

美容師から「これは鏡ではない」と言われ、頭を抱えた。唯一の救いは鏡の品質が優れている点だった。そこで成田さんは自社製造にトライする。個別に部品を調達し、日本国内で筐体を製造してくれるメーカーを探しだした。プロトタイプができたのが2016年。10台がすぐに売れ「これはイケそうだ」と成田さんは手応えを感じた。

2017年の10月に株式会社ミラーロイドを立ち上げる。製品をリリースした時、1社もなかった販売代理店が、いまでは23社まで増えた。スマートミラーは100店舗に300台を納品した。

製品も進化している。スマートミラーの構造は表面から順に、ガラス、タッチパネル、モニター、基盤があり、筐体(きょうたい:機能を有する格納している箱)に格納される。発売当時に比べガラスの品質も向上し、筐体自体も薄くなった。アプリケーションの機能も拡張している。

 

筐体自体も薄くなった

理想の美を実現するためのインフラ、プラットフォームとしての可能性

成田さんが問いかけた。

「スマホショップへ年に何回行きますか?一方、美容室には年に何回いくでしょうか?」

カットする、髪をセットする。多くの人は年に数回あるいは月に1回、芸能人に至っては個人でスタイリストを雇っている人もいる。髪に触れ、鏡の中でアイコンタクトをしながらプライベートな会話も弾む。一度信頼関係が作られると同じ美容師を長きにわたって指名する。1回あたりのサービスの時間も長く、お客様と美容師との接点は多く、そして深い。

カットされながら、お客さまが無意識に鏡を見ている時間はゴールデンタイムだ。スマートミラーから流れる映像はアイキャッチ力がとても強い。動画で店頭商材をさりげなく販売したり、新しいサービスを提案できる。自然に流れる動画には売り込み感がない。動画を巻き戻したり、途中で止めて口頭で補足できる。

スマートミラーならお客さまに充実したカウンセリングができる。信頼関係が築かれた販売は成約率が高くなり、リピートも増えるそうだ。

 

「スマートミラーは新たなキャッシュポイント(売上の機会)を作れて、安定した高収益を実現できます」

 

東海地方でスマートミラーを初導入したLouvre(ルーブル)社では、店舗販売の商品が同月比で72万円から1年後に142万円に倍増したという。美容師1人あたりの売上が増えたのだ。

 

提供:株式会社ミラーロイド

提供:株式会社ミラーロイド

 

「お客さまは美容室にいくとテンションがあがります。整って美しく変身すれば、気持ちが前向きになります。何か次のことをしたくなるのです。『表参道のランチのお店を教えてほしい』カットのあとの美味しいイタリアンの情報をスマートミラーで流すこともできます」

ミラーロイドの管理画面には、一人ひとりの美容師各々が自由に動画を設定できる枠がある。YouTubeのURLを貼り付けるだけだ。店頭販売の商材を紹介したり、新しいサービスの紹介もできる。地域の美味しいお店を紹介することで、そこに広告収入のスキームを作れ、マネタイズができる。

コロナで打撃を受けた飲食店を紹介することで、地域にも貢献できる。スマートミラーが単なる鏡ではなくなり、広告収入を得るためのプラットフォームになるのだ。髪をカットする本来のビジネス以外の収入が増える。

「やりたいこと」を「できる」にかえる

成田さんにとって「やりたいこと」を「できるにかえる」は何だろうか。

「スマートミラーを美容業界のインフラにしていく。そして世界へ広げて行きたいですね。『理想の美を実現していくこと』は当然ですが、新たなキャッシュポイントを作り、広めて行きたい。スマートミラーは顧客単価を高められます。日本には理容室、美容室が合わせて約24万軒、理髪店が約12万軒。合計で約36万軒の登録がされています。そのうち約3分の1は運営されていないそうです」

 

成田さんは美容師が安心して働ける環境つくりをサポートしたいと話す。

「供給過剰でオーバーストアな状況です。価格競争によって安定して高収益を出せる店舗は多くありません。スマートミラーには『髪をカットする、整える』という美容室本来の収益源に加え、新たなキャッシュポイントを提供できる可能性があります。スマートミラーを通じたDXで美容業界に貢献し、支えていくことが使命だと思っています」

「美容医療、フィットネスの業界にも大いに可能性がありますね」

『理想の美を実現するためのインフラ』を実現する。そんな思いを成田さんは力強く語ってくれた。

 

株式会社ミラーロイド

 

 

執筆・編集

さくマガ編集部

さくらインターネット株式会社が運営するオウンドメディア「さくマガ」の編集部。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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