世界に1つだけの「フルオーダーケーキ」でお客さまの想いを届けるMARINE HOUSE

「可愛い!」思わず叫ばずにはいられないケーキたち。小さなクマさんや美しいバラのデコレーションにワクワクする。

明治神宮から表参道へ続く美しいケヤキ並木。華やかな原宿の通りから静かな路地を進むと、落ち着いた一角にMARINE HOUSE(マリーンハウス)がある。

日本で売られていたケーキのデザインがまだまだ限られ、生クリームのケーキやチョコレートケーキが一般的だったころ、はじめてフルオーダーケーキを作った。お客さまの想いとイメージをのせた、色あざやかでユニークなデザイン。フルオーダーケーキという言葉をはじめて作り、世界にたった1つのケーキ作りを続けてきた東野吏沙さん。先駆者の想いと進化を続けるMARINE HOUSEのDXについて話を聞いた。

東野 吏沙(ひがしの りさ)さん プロフィール

東京都生まれ。玉川学園から戸板女子短期大学に進学。服飾デザインを学んだあと、家業のケーキ製造販売会社「マリリッサ」に就職。23歳で家業を引き継ぎ、代表に就任。当時、複数の会社の経営にも携わる。日本で初めてフルオーダーケーキの受注製造販売を開始。その後、株式会社Your Storyを設立、原宿にMARINE HOUSEを立ち上げる。2022年10月に大阪の堀江に2号店をオープンし、いまに至る。MARINE HOUSE 代表(現職)。

ケーキのデザインを考え続けて誕生したフルオーダーケーキ

「人やものを見るだけでケーキのデザインが浮かぶんです。インスピレーションが湧いてきて、パパパって10個くらいのケーキをイメージできてしまう。13年間もオーダーケーキを作り続けてきたら自然とそうなっていました。ケーキのデザインは天職かもしれません」東野さんは微笑む。

提供:MARINE HOUSE ホームページは可愛らしいケーキでワクワクする

生まれたときから東野さんのそばにはケーキがあった。高校時代も大学時代も家業のケーキ屋でアルバイトをしていた。短大で服飾のデザインを学んだあと、家業のケーキ屋の社員となる。父が45年育ててきた家業のケーキ屋を託されたのは23歳のとき。

 

アメリカンスタイルのケーキ屋さんで働きながら、東野さんは「可愛いらしいケーキがないなぁ。毎日同じケーキが並んでいるだけではちょっと退屈」と思っていたそうだ。

 

そのころ、製菓スクールでバラの形のクリームの絞り方や星のデコレーションの方法を習った。

 

「アメリカではケーキにバラの形のクリームや、ピンク色のクリームでデコレーションするようになっていました。当時、日本ではまだケーキは白いものと思われていたので、もっと可愛らしくてカラフルなケーキを作りたいと思ったんです。パティシエもいろいろアイデアをだしてくれて、アイシングクッキー(粉砂糖と卵白を混ぜたクリームでクッキーの表面をデコレーションし、好きな色や形を作れる)をのせてみようとか。それがオーダーケーキのスタートでした」

 

デコレーション方法も進化した。食べられる素材に顔写真をプリントできるようになった。お花のクリームやアイシングクッキーと組み合わせ、オーダーできる種類を増やしていった。

 

MARINE HOUSEのホームページを見ると、思わず歓声があがる。サッカーボールのケーキ、可愛らしいクマさんがちょこんとのったケーキ、ハワイの風景や恐竜たち。できないものはないというくらいさまざまなデザインのケーキが並ぶ。何よりもすべて食べられる素材というのがすごい。

提供:MARINE HOUSE 美しくデコレーションされたオーダーケーキ

現在、MARINE HOUSEで売られるセミオーダーケーキは約120種類、フルオーダーにいたってはケーキの大きさ、形、カラー、材料などさまざまな組み合わせで20万種類以上にもなる。

 

オーダーもデザインも爆発的に増えてIT化が必要になった。

「ホームページを作るときにエンジニアと相談したんです。サービスの名前をどうつけようかと。オートクチュール、カスタムメイドケーキ、フルオーダーケーキ……オートクチュールはお洒落すぎかな。カスタムメイドケーキは正しい英語だけど、フルオーダーケーキは逆に外国人には通じない和製英語。逆張りがいいかなと、フルオーダーケーキという名前にしました」

DXで進化するフルオーダーケーキ販売のオペレーション

オーダーも増え、ケーキの種類も増えることでオペレーションの仕組みもアナログからデジタルへ進化した。

提供:MARINE HOUSE カラフルでポップなアイシングクッキー

オペレーションの第1段階はアナログだった。お客さまには紙のオーダーフォームに発注内容を書いてもらい、さらにスタッフがお客さまにくわしく聞き取りをしていた。最終的に伝票ができて、パティシエが紙を見ながらケーキを作る。

 

第2段階はホームページから予約を取れるようにした。お客さまの情報やオーダー内容、希望するデザイン内容を文章でもらうようにした。受注内容をA4の紙2枚に印刷し、1枚はキッチンのパティシエに、もう1枚は事務所のスタッフで管理。それが約10年前だそうだ。

 

第3段階は完全にデジタル化。Webのオンライン受注から配送まで一気通貫のオペレーションができるようになった。お客さまが記入した伝票をデジタルで自動的に入力するようにした。オペレーションの仕組みに伴い、オーダーも増えていった。

 

「このとき、フルオーダーケーキという名前を作りました。フルオーダーとセミオーダーをわけたんです。1点モノのオーダーケーキが間違いなくお客さまに届くよう、失敗が許されない仕組みが必要でした。ケーキのデザインももちろん大切ですが、オーダーをいかに効率よくお届けできるかがポイントでした」

 

オペレーションの要となるのが6〜7人いるコンシェルジュだ。

コンシェルジュはWebのオーダーフォームから入ってきた予約を受けつけ、ケーキができ上がるまで、お客さまとやり取りする。

 

「でき上がりのイメージをお客さまとすり合わせていくのは、本当に大変です。セミオーダーはWebで選択肢を選びながらカスタマイズできますが、フルオーダーは本当に細かいところまでお客さまのご要望に寄り添います。デザインを記入してもらったり、画像を送ってもらいます。チャットでの確認もおこないます」

 

コンシェルジュは受注のときに描画ツールでケーキの絵を描く。たとえば、まる型、側面は白とピンクのストライプ。真ん中はアイシングクッキーに名前を書いて、周りは白丸のクリームデコレーション。隙間にイチゴを散りばめるなど。

 

最終的なデザインが確定したらお客さまに見積りを送る。受注データがデジタル化されて、デジタルで伝票が出力される。キッチンにはデジタル伝票が流れ、パティシエはiPadでデザイン画像を見ながらケーキを作る。

 

出荷はヤマト運輸の宅急便と連携し、配送伝票にお届け先が自動的に転記されるようになっている。お客さまがWebから入力したデータは、受注から出荷までつながった。

 

でき上がったケーキはキッチンで撮影し、アルバムに掲載する。お客さまのクレームがあった場合には、改善点を部署ごとに報告もしている。

 

「いかに効率化するかがいまのテーマです。まだまだシステムは未完成で、毎年進化しています。ABC分析やCRMも導入し顧客分析もしています。POSレジアプリの『Airレジ』のケーキバージョンをさらに細かく分析できるイメージだと思います。商品ごとの売上分析やお客さまの購入履歴なども分析できます」

 

Webでお客さまが入力したデータは受注から出荷までつながり、完全なデジタルオペレーションができるようになった。

提供:MARINE HOUSE クリームで作ったお花のデコレーションが美しいケーキ

Instagramフォロワー数7万人のファンが支えるオーダーケーキ

Instagramは、流行する前からはじめていたそうだ。フォロワーがもともと多く、インフルエンサーがファンになってくれている。”インスタ映え”するMARINE HOUSEのケーキはSNSでも大人気。

 

「可愛いケーキを見にきてくれるから自然とビューが上がってお客さまが増えています。写真をとってインスタにあげてくださることが、広告になって集客につながっています。そのおかげで、いままで広告費用はかけていないのです」

 

最近ではYouTuberが企画で取り上げてくれるケースも増えたそうだ。YouTubeからもお客さまが来てくれる。

MARINE HOUSEのオーダーケーキに込める想い

「ハッピーな瞬間には健康に良いものを楽しんでほしい」

MARINE HOUSEのケーキには漂白した白砂糖ではなく、健康に良いとされる甜菜糖(てんさいとう)を利用している。

ビーガンでも食べられるケーキや、グルテンフリーのケーキもオーダーできる。

 

東野さんが1枚の紙を見せてくれた。

「ケーキの箱に添える言葉なんですよ。『あなたが主役。ケーキは脇役』なんです」Instagramで注目されるケーキだが、そこにはMARINE HOUSEの想いがあった。

提供:MARINE HOUSE クマさんが可愛らしいプリンのケーキ

世界にたった1つしかないフルオーダーのケーキ。世の中にケーキは数多あるけれど、MARINE  HOUSEのケーキは、贈る人やケーキを楽しんでくれる人への想いが形になっている。

 

子どもの誕生会にサッカーボールの形をしたケーキを贈るママ。愛する人のためにバラを乗せたケーキを贈るパートナー。退職する上司のフェアウェルパーティーで、長かった労に感謝する部下や同僚。人の数だけストーリーがある。

 

そういった想いをしっかり届けたい。東野さんのチームはオーダーケーキを作り続け、オペレーションのデジタル化を進化させてきた。

「やりたいことをできるに変える」MARINE HOUSEが目指すNext Stage

2022年10月、MARINE HOUSE 大阪堀江店がオープンした。大阪は東京の次に大きなマーケット。堀江は大阪の中でもとくに感度が高い人が集まる注目の街。心斎橋に近く、オレンジストリートにはハイセンスな家具やインテリアのお店が連なる。大阪の代官山といわれるエリアだ。

 

いままで、店舗での受け取りは原宿の本店のみだった。大阪の店舗でもお客さまのお顔を見ながら手渡ししたい。フルオーダーケーキの先駆けとして関西のお客さまにもMARINE HOUSEのケーキを楽しんでほしい。

 

東野さんにこれから進めていきたいことを聞いた。

「お客さまの予約の応答スピードを高めたいですね。ありがたいことにお客さまからたくさんのお問い合わせやご予約をいただいています。コンシェルジュの応答の順番待ちのスピードを早めることで、お客さまをお待たせせず、満足度を高めていきたいですね」

 

オーダーケーキの先駆けとして、世界にたった1つのケーキを作り続けてきた東野さん。進化するITの仕組みで、お客さまに寄り添いながらMARINE HOUSEは次のステージを目指している。

 

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