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コロナ禍を経て、テレワークやリモート会議がすっかり定着した現在、人材採用時の面接をオンラインでおこなっている企業も少なくないだろう。対面での面接が当たり前だった時代に、Web面接ツール「SOKUMEN」をいち早くリリースしたのが、株式会社マルジュ(以下、マルジュ)だ。取締役の中島大樹さんに、人材業界に参入した理由や開発のきっかけを聞いた。
中島 大樹(なかじま だいき)さん プロフィール
株式会社マルジュ取締役。2014年にIT未経験で入社し、おもにエンタメ業界を中心に、Flashによるライブ配信サービスの営業を担当。2018年より、WebRTCライブ配信メディアサーバの企画・立ち上げに携わる。2019年に、Web面接ツール「SOKUMEN」を企画・開発し、HR業界に参入。その後も、動画選考ツール「ITSUMEN」、電子契約サービス「FAST SIGN」、AIによる求人原稿作成ツール「ANDASU」など、複数のプロダクトを企画・リリースし、顧客の業務改善や効率化を支援している。
「シンプルで簡単」をコンセプトに開発されたWeb面接ツール
「SOKUMEN(ソクメン)」は、アプリのインストールが要らず、誰でも簡単に使えるWeb面接ツールだ。パートやアルバイト、業務請負の人材を大量に採用する企業を中心に導入されている。
「Web面接ツールは、アプリのインストールが必要なものがほとんどですが、SOKUMENは、アプリのインストールやアカウント登録が不要です。ITに不慣れな方でも、簡単に利用できるようシンプルに設計しました。求職者と面接担当者の双方が、戸惑うことなく操作できることを意識しています」
SOKUMENの特徴は、操作性の良さだけではない。データ通信量が業界最小レベルである点も、他社サービスとの差別化を図る点の1つだ。同サービスの通信量は、ほかの無料ツールと比較すると、3分の1から半分程度。これにより、電波が弱い回線でも、途中切断されるリスクを抑えられる。
「SOKUMENではアプリのインストールが不要とはいえ、Wi-Fi環境がなくスマートフォンのデータ通信量の残り、いわゆる“ギガが減る”ことを気にする求職者もいます。せっかく興味をもってもらえたのに、面接にたどり着くまでの懸念点が多いと応募意欲が下がり、辞退されるケースも。応募する側の煩わしさを減らし、いかにスピーディーに面接へ進んでもらえるかが大切です」
もちろん、応募者側だけではなく、面接担当者のメリットも多い。時間制限やアカウント数の上限がなく、使いたいときにいつでも利用可能だ。日時や求職者の連絡先を登録すると、面接用URLが自動発行され、同時に送信も完了。当日は、URLをクリックするだけで面接を始められる。
さらに、SOKUMENには、グループ面接機能や録画機能など、豊富なオプション機能もそろっている。その1つが面接日時の自動調整機能だ。面接担当者の空き時間をカレンダーに入力し、求職者に面接可能日を選択してもらうと、面接用URLが自動送付される。双方の予定を合わせる時間が短縮されることで、採用担当者の課題の解決にも役立つ仕組みだ。
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自社開発によりコストを抑え、顧客の要望を実現
中島さんは、機能だけでなく、コスト面でもアドバンテージがあると胸を張る。
「SOKUMENは、他社と比べると非常に安価なWeb面接ツールだと思います。しかも操作が簡単で、コストパフォーマンスもいい。その理由は、ライブ配信システムやそのエンジンの開発を自社でおこなっているから。外部委託していないぶん、開発にかかるコストを抑えられるんです」
SOKUMENは、初期費用無料で月額費用は定額制。ミニマムに導入し、必要なオプションをあとから追加することも可能だ。即日利用もOKと、スピーディーな対応にも定評がある。顧客の要望に応えるべく、リリース後もアップデートを続けているが、なぜここまで対応できるのだろう。
「役職や部署に関係なく、お互いがフラットにやり取りできる社風が影響しているかもしれません。弊社の強みの1つは、営業と開発担当者の距離が近いことです。お客さまの目的や要望を伝え、あとは開発メンバーに任せれば形になる。もちろん細かい調整は必要ですが、信頼関係があるからこそ成り立っていると感じます」
HR業界参入のきっかけはFlashの終了
マルジュは、もともとエンタメ系のライブ配信システムの開発・提供をメイン事業としてきた企業だ。そもそも、なぜ、人材採用に特化したWeb面接ツールを開発することになったのだろう。
「2003年ごろから、Adobe Flashを使用して、映像や音声を配信するパッケージシステムを提供していました。ところが、セキュリティの脆弱性などにより、Adobe Flashが終了することに。そこで、ライブ配信エンジンを自社で開発するプロジェクトを立ち上げました」
新規や既存のサービス・コンテンツに、ライブ配信機能を組み込むことができる「メディアサーバー」を開発し、リリースしたのが2018年の夏ごろ。ただ、思っていたほどの反応が得られなかった。用途が広すぎてユーザーに刺さりにくく、ターゲットもぼやけていると考えた中島さんは、次の一手として、誰がどんなシーンで何に使うのかが明確な製品を作ろうと検討を始めた。
「新規事業参入に向けて、市場調査を実施しました。当時(2018年)は有効求人倍率が高く、人材業界が伸びていることに着目したんです。HR業界への参入を決め、これまで培ってきたライブ配信技術と人材採用をかけ合わせて思いついたのが、SaaS型の面接ツールだったんです。ターゲットは、通年、面接システムを利用するであろう、人材派遣会社に絞りました」
人材派遣会社を60社ほどリストアップしてDMを送付したところ、3社から返信があり、手ごたえを感じたと中島さんは語る。
「双方向で会話ができるプロトタイプを作成し、搭載可能な機能を提案しました。具体的な話を進めていくなかで、どんどんブラッシュアップされていき、約3か月で製品化。2019年の1月にSOKUMENをリリースしました」
リリース時は、まだZoomなどのWeb面接ツールが普及していない時代だ。物珍しさだけではなく、採用面接に関する課題が解決できそうだという、人材派遣会社の期待感もあったからこそ実現できたのだろう。
時代のニーズを捉え、導入実績は700社超え
2019年にSOKUMENをリリースした際、初月から20件以上の問い合わせがあった。当時の様子について、中島さんはこう語る。
「当初は、既存事業の売上に少しでも貢献できればと思っていました。ところが、リリース直後から想定以上の反応があり、Web面接ツールの必要性を確信しました。2020年を迎えたころ、世界中で新型コロナウイルスが蔓延し始めた影響もあり、1~2月ごろから対応が追いつかないほど、多くのお問い合わせがありました」
コロナ禍で対面で会えない状況になり、オンラインシステムの需要が増加した。時代を先取りした「SOKUMEN」は、リリースから1年足らずで約100社への導入が決定。2年目には、問い合わせ数が4.5倍、売上は11倍以上になった。
「応募から面接までの時間が大幅に短縮できるだけでなく、ログインIDやパスワードの入力が不要であることなど、求職者側の操作が簡単なことも、後押しになったのだと思います」
「コロナ禍の影響で、企業の採用活動にオンライン面接という選択肢が加わりました。実際に導入する機会が増えたことで、SOKUMENの認知度もアップしたんです。当時は類似サービスも多くありましたが、費用対効果が評価され、お客さまに選んでいただけたのだと思います。おかげさまでSOKUMENの累計導入実績は700社を突破し、売上はリリースからずっと右肩上がりです」
マルジュでは業務提携を積極的におこない、自社ではリーチできない企業へアプローチしている。人材採用における課題を解決したいとの想いから、今後も縁があれば、さまざまな企業と業務提携を進めていくつもりだ。
パート・アルバイト採用業務をDXで効率化していきたい
これまでマルジュでは、おもに人材派遣会社を中心とした業務効率化に役立ててもらうべく、SOKUMENの新規導入先を開拓してきた。今後は、アルバイト・パート採用を頻繁に実施する企業にも、SOKUMENやその他のITツールを導入していきたいと中島さんは語る。
「アルバイトやパート人材を多く採用している企業の多くは、業界的にもまだまだオンライン採用ツールが普及しているとは言いにくい部分があります。Web面接ツールを使用したことがない方もいますので、私たちがお役に立てるのであれば、積極的にご提案したいですね。もちろん、既存のお客さまともコミュニケーションをとりながら、ご要望をうかがい、課題を解決するための機能アップデートも続けていきます」
SOKUMEN以外にも、AIを活用して求人原稿を作成する「ANDASU(アンダス)」や、動画選考ツール「ITSUMEN(イツメン)」など、人材採用に関するさまざまなツールを企画・開発してきたマルジュ。今後も時代のニーズを捉えたツールの開発により、人材採用のDXを支えていくだろう。
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