『ライフシフト』著者リンダ・グラットン氏が語る”仕事の再設計に必要な2つの要素"

日本でも話題となった『WORK SHIFT(ワークシフト)』『LIFE SHIFT(ライフシフト)』の著者 リンダ・グラットン氏が、Sansan株式会社主催の「Sansan Innovation Project 2021」に登壇。

新型コロナウイルスによって変わる働き方と、仕事を再設計する方法について語りました。リンダ・グラットン氏が言う、仕事の再設計に欠かせない2つの要素とは――

いつかオフィスに戻るとき、どう働きたいか?

2020年3月、新型コロナウイルスによるパンデミックは、私たちの働き方を根本から変えました。日本では、毎日オフィスに出社するのが当たり前の習慣になっていますが、パンデミックは新しい働き方を考えるきっかけとなるでしょう。仕事を再設計する方法を考える必要があります。

パンデミックによる変化はこの先、何年も続くでしょう。旅の終わりではなく、始まりなのです。旅の間に私たちはどのように働きたいのかを学びました。

私たちは、在宅勤務とオフィス勤務の影響を知っています。いつかオフィスに戻るとき、仕事やオフィスに何を求めるか、どう働きたいかを自問するでしょう。

仕事の再設計に必要なのは「場所」と「時間」

仕事の再設計に必要なのは「場所」と「時間」

 

仕事を再設計する際には「場所」と「時間」の要素が必要です。仕事場所は、どこでしょう。オフィスや工場、顧客の現場などでしょうか。この点を企業は再考しています。オフィスとは、家の近くにある静かで集中できる場所でしょうか? 顧客と会う場所でしょうか?仕事場所とは、職場でも自宅でも、カフェや海外でもいいのです。

しかし仕事の再設計をする場合、場所だけではなく時間も関係します。全員が同じ時間に働くように、勤務時間を決めるほうがいいのでしょうか? それともフレキシブルに好きな時間に働くようにして、ほかの人との関係を断ったほうがいいのでしょうか? 自分の働き方、チームの働き方、会社の働き方など、自問すべきことはたくさんあります。

リンダ・グラットン氏が使うフレームワーク

リンダ・グラットン氏が使うフレームワーク

 

企業にアドバイスする際、私自身が考えるのに役立つフレームワークを紹介します。横軸は場所、縦軸は時間を表します。

この図を見て、パンデミック前には左下のような働き方だった方が多いのではないでしょうか。毎日オフィスに出勤して、決まった時間働いていたと思います。ある程度時間は柔軟な会社もあるかもしれません。

しかし、じつは家でも仕事はできるとみなさん気づきました。今回のパンデミックにより、右上の働き方が増えました。

自分や会社にとっての最善な選択とは何かを4つの要素で考えるといいと思います。

リンダ・グラットン氏が考える生産的な仕事に必要な4つの要素

リンダ・グラットン氏が考える生産的な仕事に必要な4つの要素

 

まず、自分の仕事を考えてください。生産的な仕事には4つの要素があります。しかし、そのすべてが重要とは限りません。

1つめの要素は、「エネルギー」です。よく生きて、食べて、運動することといえます。

2つめの要素は、「集中」です。私は本を書く仕事もしています。以前に『LIFE SHIFT(ライフシフト)』という本を書きましたが、執筆には多くのエネルギーを使いますし、邪魔されたくありません。いまはフランスの自宅で執筆しています。この後は4時間ほど執筆に集中しますが、誰とも会話したくありませんし、気を散らしたくありません。

3つめの要素は、「調整」です。仕事をするときは、ほかの誰かと時間の調整をしています。たとえば、声を掛け合ってフィードバックしたり、一緒に考えることは調整が必要な仕事です。

4つめの要素は、「協力」です。誰かと一緒に創造性を発揮し、自分たちの仕事について話し合います。

重要なのは、自分の仕事にはどの要素が必要なのかを理解することです。そのうえで、仕事をしている場所や時間は何がベストなのかを考えてほしいと思います。

4つの要素に最適な場所と時間

4つの要素に最適な場所と時間

 

4つの要素に最適な場所や時間とはどのようなものか考えました。2021年夏の『ハーバード・ビジネス・レビュー』にも載っています。

まず場所についてです。パンデミックによって在宅勤務のことがよくわかってきました。在宅勤務によって、多くの日本人が毎日の通勤時間を自分の時間にできました。子どもと一緒に過ごしたり、健康的な食事をしたり、公園を散歩したりもしたかもしれません。エネルギーが満たされ、元気が出た方が多いのではないでしょうか。家とは、仕事をしたりエネルギーを蓄えたりする場所です。

オフィスまでの通勤は、とても疲れます。それでもオフィスへ行くのはなぜでしょうか。オフィスとは、単なる空間ではなく「人と会う場所」なのです。ほかの人と一緒に協力して、イノベーションを実現するためにオフィスがあると考えています。

ほかの人と仕事をする場合、基本的には一緒に仕事をする相手と時間についての合意が必要です。これは、自宅からのZoomでも、オフィスでもできることです。つまり、調整で最も重要なのは同じ時間を過ごすこと。場所はどこでも構いません。

集中して作業をしたいときは、邪魔をされない時間が必要です。

これからの働き場所について

これからの働き場所について

 

オフィスは共同作業の場所になります。パンデミックが終わった後にオフィスに戻るのはなぜでしょうか。オフィスとは、誰かと出会う場所です。オフィスに戻っても、ヘッドフォンをしながら、ひとりで作業をするのは意味がありません。それは家でもできます。

顔を合わせてのコーチングやメンタリングなど、そのための場なのです。

 

家はエネルギーを蓄える場所

 

家はエネルギーを蓄える場所です。通勤時間がなくなり、有意義に時間を使えます。

ただ、日本では家が狭くて仕事ができない方も多いでしょう。そこで東京の通勤圏や中堅都市でシェアスペースを作る企業が増えています。自宅の近くに、誰にも邪魔されずに仕事ができる空間を提供してくれるのです。

仕事をする場所がない方のために、仕事場を探すよう、リーダーの方は考えてください。

家で仕事をするときに重要なのは、「邪魔のないこと」です。私が家で集中して仕事するときにはドアを閉めます。そして子どもや家族には「邪魔しないで」と言います。境界線を管理しましょう。家は、レポートを読んだり何かを書くには最適な場所ですが、数分ごとに邪魔が入るようでは困ります。

オンライン会議の時間と頻度を減らそう

オンライン会議の時間と頻度を減らそう

 

場所の話をしてきましたが、時間はどうでしょう。ほかの人と連携したいとき、同じ時間に集まって会議することを「同期する時間」と私は呼んでいます。オフィスで直接会ってもいいし、家からZoomなどを使ってオンラインで打ち合わせてもいいでしょう。良い方法はないか、できる限り調整することが大事です。

パンデミック以降、会議が増えたと感じました。オンラインだと、会議に来てもらうのが簡単だからです。会議の回数を増やしすぎないように注意しましょう。最小限にして、短時間にする。オンライン会議は1時間でも長すぎます。ほとんどは30分で済むはずです。

 

「同期しない時間」も大事

 

集中してひとりで仕事をする「同期しない時間」も大事です。集中するための時間を作り出すときには、自分のエネルギーの好みに合わせるといいでしょう。私の場合は、午前中に集中して、午後は別のことをします。チームで仕事をする場合は、約束事を決めてください。たとえば、「午前9時から11時までは執筆中なので、邪魔をしないでください」といった約束です。

毎日オフィスで仕事をしているときは、仕事はデザインするものではなく、ひとりでにデザインされるものでした。ところが、仕事を再設計するには場所や時間を意識する必要があります。

最後に仕事を再設計する方法について考えてみましょう。

仕事を再設計する方法

仕事を再設計する方法

 

まず自分が求めるものを考えてください。自分の好みや状況といったことです。これらは、自分の性格に関係します。私の場合、内気な性格なので、あまり人に会わない仕事でも満足しています。外交的な人なら、ほかの人と一緒にオフィスで仕事をするほうが好きではないでしょうか。人それぞれです。

人の管理では、チームが望んでいるものは何なのか考えましょう。誰かの好みを知ることは重要です。しかし、全員の好みに合わせて仕事を再設計することは不可能です。そこで、仕事に何が必要かを全員で決めましょう。自分たちの仕事を実現するのに必要なものは何だろうか、と考えるのです。誰もがメンバーの一員として仕事をしています。メンバー同士の連携が必要です。

まとめ

今回のパンデミックでは、多くの実験がおこなわれました。日本では、在宅勤務の経験はほとんどありませんでしたが、自宅で仕事ができる人の多くがそうしました。働き方の大きな変化です。今後のために働き方を再構築できるチャンスでもあります。

私たちは仕事の再設計ができます。これから数年間が、働き方・働く場所・働く時間を改革するチャンスです。昔の働き方に戻らないようにしましょう。

 

 

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