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葬儀DX、AgeTech(エイジテック)領域において、事業を展開するLDT株式会社。同社が提供している葬祭業界に特化したクラウドサービス「スマート葬儀」は、アナログ管理がおもで属人化が課題となっている葬儀会社の業務改善に役立つサービスだ。
この「スマート葬儀」から派生して、2023年4月にリリースされたのが、オンライン火葬場予約サービス「スマート火葬予約」。両サービスの開発背景、導入メリットについて、カスタマーサクセス担当 江原信一さんに話を聞いた。
江原信一(えはら しんいち)さん プロフィール
LDT株式会社 SaaS事業本部 事業推進部 カスタマーサクセス担当。
SaaSカスタマーサクセス関連の仕事に転職したのち、2022年10月にLDTに入社。全国のクライアントに対し売上拡大・業務効率化を支援するカスタマーサクセスに従事。受注後の導入支援、オンボーディング、導入後のテクニカルサポート、データ分析、利用促進などの業務を担う。
葬儀会社がご遺族に寄り添えるようDXを後押し
LDTが取り組むのは、葬祭業界のDXだ。AgeTech領域の情報、サービスインフラになるため、会社設立時よりさまざまなサービスを展開してきた背景がある。
現在展開されている事業は、葬祭管理SaaS事業、ライフエンディングプラットフォーム事業、コールセンター事業、行政事業の4つ。このうち、メイン事業は葬祭管理SaaS事業とライフエンディングプラットフォーム事業の2つだ。葬祭管理SaaS事業は、葬儀のオペレーションで必要な機能を一気通貫で提供するBtoB事業。アナログ管理が多い葬儀会社に向けてサービスを提供している。
クラウド型葬祭管理サービス「スマート葬儀」誕生の背景について、江原さんは次のように語る。
「2040年に死亡者はピークを迎え、年間168万人と推定されており、葬儀件数の増加も見込まれます。しかし一方で、就業者数は同じく2040年までに1,285万人減少すると推計されており、葬儀業界にも人員不足による深刻な業務過多が予想されます。こうしたなか、テクノロジーを活用し問題を解決をするために『スマート葬儀』を開発しました」
顧客管理サービスはほかにもあるが、「スマート葬儀」は葬儀に特化したサービス。顧客管理をクラウド上でおこなえるだけではなく、デジタル版の訃報案内や供花のEC決済にも対応している。
メイン機能となる顧客管理は、葬儀会社の働き方改革にもつながっているという。
「お客さまに対して、葬儀の担当者は1人。そのため社内で情報共有がされずに、属人化しやすい傾向がありました。『スマート葬儀』はクラウドサービスなので、インターネット環境があればどこにいても内容を確認できます。
担当者が不在のときに問い合わせがあった際も、管理画面を見れば担当者以外がその場で対応できます。また、お客さま宅で打ち合わせをしながら情報を入力できるので、事務所に戻ってExcelに転記する二度手間がなくなり、発注作業も効率化できます。出社必須だった事務職に関して、このサービスによりテレワークが可能になったという話も伺っています」
各種カタログもデジタル化されているため、客先に向かう際もタブレットを1台持っていけば済むようになった。
「葬儀会社の営業は、祭壇、供花、返礼品と何冊もの紙カタログを抱えて訪問していますから、タブレット1台で済むことは大きな負担軽減になっていると思います」
リリース後も、葬儀会社からの要望を受け、必要に応じてアップデートしているという。カレンダー機能や、Googleドライブなどのリンクを貼れるようにした機能は、顧客からの要望を受けて社内で検討し、標準機能として追加したものの一例だ。
「アナログ主流の業界ではありますが、サービスへの感触はよく、現在では大手から地域の中小規模まで、幅広い規模の葬儀会社に導入していただいています」
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ヒューマンエラーが起こりがちな火葬場の予約手続きをシンプルに
2023年4月に新たにリリースされたのが、「スマート火葬予約」だ。従来、火葬予約は葬儀会社の担当者が火葬場に電話をかけ、空いている日時を確認してからFAXで予約を入れ、再度予約が間違いなく入っているか電話で確認するという手間のかかる工程を経ている。火葬予約ができたのちに、葬儀を組むことが多い。
しかし、複数人がかかわるアナログ工程のため、書き間違いや転記し忘れといったヒューマンエラーが生じることもある。
「いざ葬儀をして火葬場に向かうも、ダブルブッキングしていて火葬ができなかったり、ほかと順番が前後してしまい長時間ご遺族を待たせてしまったりといった問題事例もあり、『何とかできないか』という声が上がっていました」
そこで、LDTが開発に取り組んだのが「スマート火葬予約」だ。この前段階には、行政との取り組みがあったと江原さんは説明する。
「埼玉県入間市とともに、火葬許可証のデジタル化に向けた協定を締結し、実証実験をおこなっています。デジタル庁ともやり取りし、行政でどこまでデジタル化が可能なのか、お手伝いをしているのです」
こうした取り組み内容は、「スマート葬儀」を導入している顧客も知っていたという。そこから「火葬予約のサービスはできないのか」という要望が上がったことを受け、サービス開発にいたった。
「スマート火葬予約」により、約417時間超の工数削減例も
「スマート火葬予約」の使い方は、いたってシンプルだ。予約済みの枠は色付きで示されるため、表示すれば一目で空いている枠がわかる。葬儀会社の担当者は、遺族と打ち合わせをしながら空きを確認し、火葬場を予約するだけ。火葬場との口頭やFAXでのやり取りが一切不要となるため、予約にかかる業務時間を格段に圧縮できるほか、ヒューマンエラーが起こる可能性もほぼゼロになった。実際、リリース後にヒューマンエラーに起因するトラブルは1件も発生していないという。
「年間1,000件以上の火葬を予約していた葬祭場では、従来の対応に1件あたり25分かかっていたものがゼロになったことで、年間で約417時間を超える工数削減となったそうです。また、ご遺族の方からも『スケジュール調整がしやすくなった』と喜びの声が寄せられています」
負担軽減の恩恵は、葬儀会社、遺族だけではなく、火葬場にもある。
「ある火葬場の運営者は、これまで18時までFAXを受け付けていたため、1分過ぎて届いたものはどうするのかといった悩みがあったのだそうです。『スマート火葬予約』であれば、葬儀会社が空きを確認して予約してくれるので、火葬場の負担は大幅に減ります。予約状況を見ながらシフト調整もできるようになったと聞いています。
また、24時間予約できる火葬場でも活用されています。これまで、夜間受付では聞き間違いがあったり、予約手続きが結局数日後になってしまったりといったトラブルが起きていて、なかには夜間受付自体をやめるところも出てきていました。こうしたトラブルも、葬儀会社側が自分で確認して予約してもらえれば発生しません」
「スマート火葬予約」は、行政にも使われることがあるという。ペットの火葬などは、役所を通じておこなうこともあるため、市民からの電話を受けた役所職員が火葬場に電話し、市民につなぐというフローが発生する。これもオンライン上で可能となり、時間と負担の軽減につながっているのだ。
業務改善だけではなく、売上増にも貢献。葬祭業界のワンストップサービスへ
「スマート葬儀」「スマート火葬予約」ともに、現場の負担を軽減することで業務改善が叶うサービスだ。導入会社からは、「喪主やご葬家のケアに時間を割けるようになってうれしい」という声も寄せられているという。過去のデータもすべて集約されるため、以前に同じ葬儀会社で葬儀をしたことのある遺族に対しては、過去の情報を活かした打ち合わせができるため、提案の質の向上にも寄与している。
「コロナ禍以後、密にならないようにということから、準備も司会も霊柩車の運転も1人の担当者がおこなうなど、1人当たりの負担が増した葬儀会社もあります。より属人化が進んでいるんです。当社のサービスで、楽に情報を共有して、労働時間の削減に役立てていただきたいですね。
こうしたサービスは大手だからこそ導入効果が高いと思われがちなところがありますが、『スマート葬儀』や『スマート火葬予約』は中小規模の会社にも価値があります。地域によっては、葬儀が済んだら終わりではなく、返礼品をあとで贈る風習があったり、49日法要やお墓の準備など次にやるべきこともあります。顧客管理やアフターケアに活用いただくことで、業務改善だけではなく、葬儀会社の売上増にも寄与できるサービスです。
また、『スマート火葬予約』は、自然災害や停電などで地元の火葬場が一時的に使えなくなったときの対応にも有用です。そのような場合は近隣の自治体の火葬場に頼むしかないのですが、インターネットさえつなげられればすぐに情報を確認できるため、葬儀会社の規模を問わずご活用いただけるのです」
今後は、葬祭関係のあらゆるサービスを一元化することが目標だと江原さんは語る。現在は別のサービスとして展開している「スマート葬儀」「スマート火葬予約」だが、まずはこれらをまとめ、遺族と打ち合わせをしながら顧客登録をし、スマート葬儀からそのままスマート火葬を利用して火葬予約までできるようにすることが、直近の目標だ。
「将来的には、霊園や納骨堂の予約なども連携したワンストップサービスを構築したい」と江原さんは話す。葬祭業界のDXの取り組みは、今後も続く。
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執筆
卯岡 若菜
さいたま市在住フリーライター。企業HP掲載用の社員インタビュー記事、顧客事例インタビュー記事を始めとしたWEB用の記事制作を多く手掛ける。取材先はベンチャー・大企業・自治体や教育機関など多岐に渡る。温泉・サウナ・岩盤浴好き。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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