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教育現場の負担をデジタルの力で軽減。コニカミノルタの「tomoLinks」の“いま”と、描く“未来”

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イメージングを武器に、世界130か国以上で事業を展開するコニカミノルタ株式会社。カメラ・フィルムを祖業とする同社だが、“顧客が見たいものを見える化する”ことをコンセプトに、現在では多彩な事業を展開している。そのうちの1つが、教育現場でデジタルの力を活用し、授業の質や生徒の学習状況などを可視化する「tomoLinks」だ。IoT の力で教育現場の新しい地平を切り拓く同サービスの開発担当者に、その現在地と今後の展望を聞いた。

松末 育美(まつすえ いくみ)さん プロフィール

コニカミノルタジャパン株式会社 教育DX事業開発部 副部長。2018年に同社に中途入社し、2019年に tomoLinks の事業を立ち上げ、開発を担当する。現在では販売も併せて担当し、開発から販売まで、tomoLinks の展開全体に携わっている。

3つの柱で教育現場のデジタル化をサポート

tomoLinks には、教師・生徒両面の学習に関するコミュニケーションを支援する「学習支援」、教室に設置したカメラとマイクで授業の質を分析する「授業診断」、独自のAIモデルで生徒の学習状況を可視化し個別に最適化された学習プランを提示する「先生×AIアシスト」の3つの柱がある。

 

「学習支援」には、遠隔授業ツールや連絡帳機能、生徒が自身の心の状況を記録する「こころの日記機能」、教師・生徒・保護者の3者が利用可能な連絡帳機能が組み込まれている。松末さんによると、現在導入されている学校では連絡帳機能がとくに好評だという。

 

「保護者の方からは、『スマートフォンから連絡事項が見ることができるから、子どもから都度聞かなくてもよくなった』、先生からは『朝の忙しい時間帯に保護者の方から電話がかかってくることがなくなり、物量的・精神的な負担が軽くなった』という声をいただいています。『連絡帳にもっと機能を追加してほしい』というご要望もいただいていて、現在開発に取り組んでいるところです」

教師向けの連絡帳の画面

また革新的なのが「授業診断」だ。教室に設置したカメラとマイクで、授業の様子を客観的に記録。先生と生徒の発話率や挙手率、生徒が机上を見ている時間、生徒たちを見て回る教師の動きを分析するサービスだ。そのデータをもとに教師は自らの授業を振り返り、たとえば挙手率が低ければ、教師からの発問に問題があったのではないかなど、授業内容の改善の余地を見出せる。だが松末さんによれば、このサービスはその革新性ゆえ、導入には苦労したという。

 

「もともと tomoLinks は、文部科学省の実証事業としてスタートしました。最初は大阪府箕面市の学校に導入の打診をしたのですが、『どんどん撮影してほしい』という好意的な反応があった一方、『監視されているようで嫌だ』といった意見もあり、学校や教育委員会の方々に対して丁寧に説明する必要がありました。また授業を撮影するには保護者の同意も必要なため、教育委員会と協議しながら進めていきました」

 

導入障壁こそあった「授業診断」だが、実際に導入してみるとその壁は解消された。データの有効性に理解を得られたのだ。自分の授業も撮影してほしいと希望する教師も現れたという。

「先生×AIアシスト」では、コニカミノルタの独自性が光っている。このサービスでは、学力調査のテスト結果を AI分析し、生徒たちの学習の変化を記録する。

 

そのデータに基づいて、教師には生徒ごとに現在の定着率や今後の単元の学習状況の AI予測が示される。現況だけでなく、未来まで予測できる点がユニークだ。また生徒には、個別のアドバイスや弱点を克服するためのおすすめ教材による学習方法を提供する。

 

「生徒1人ひとりにタブレットが配布されたことにより、教育のデジタル化が一気に進みました。しかし、生徒たちの学習状況を先生たちが統合的に確認できるツールはありませんでした。その穴を埋めるべく開発したのが『先生×AIアシスト』です。先生だけでなく、生徒たちに学習のアドバイスやドリルを提示できるのがこのサービスの強みで、これは競合サービスにはない要素です。子ども自身が自分の学びの状況を振り返り、一人ひとりに応じた指導をデジタルの力でカバーできればと考えています」 

教師は、生徒の学習結果の事前予測と実際の結果を確認できる

生徒向けの画面。ドリルの進捗状況や AI からのアドバイスが表示されている

 

先生向けのダッシュボード。すべての機能の情報がまとめて表示されており、見やすい

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導入事例は10以上。今後は他社との協業に注力

tomoLinks を構成する3つのサービスは、単独または組み合わせて利用できる。自治体の教育委員会や学校のニーズに応じて、必要なものを選んで導入できるのだ。サービスの魅力に加え、柔軟性も相まって、tomoLinks は10以上の教育委員会・団体に導入されている。そのうち、大阪府箕面市教育委員会や茨城大学教育学部附属小学校などの3件は正式導入であり、残りは実証導入だ。

 

導入先が徐々に広がっていくのと同時に、現場からさまざまな要望が出るようになってきた。松末さんもその声に応えるべく開発に取り組んでいるが、「いまもっとも注力したいのは他社との協業」だという。

 

「『先生×AIアシスト』では、子ども一人ひとりに合ったドリルが提案されますが、ここで出題される問題は、教材メーカーからご提供いただいています。今後、問題のバリエーションを増やしていくのは、コニカミノルタだけの力では不可能です。またドリルだけでなく、ムービーコンテンツも生徒たちに提供できるよう、映像コンテンツメーカーとの協業も進めています」

 

インタビューの最後に、「何か、読者に強く伝えたいことはありますか?」と松末さんに聞いた。返ってきたのは「もっと多くの教材メーカーや団体と協業したい」という答えだった。もし、この記事を読んだ方が松末さんたちと手を携えていくことになったら……。筆者として、このうえなくうれしい。

 

コニカミノルタ株式会社

 

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執筆

畑野 壮太

編集者・ライター。出版社、IT企業での勤務を経て独立。ガジェットや家電など、モノ関連の記事のほか、ビジネス系などの取材を多く手掛けている。最近の目標は、フクロウと暮らすこと。
Website:https://hatakenoweb.com/

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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