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サガン鳥栖の小林 祐三選手にキャリアやプライベートについて語ってもらいました

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小林 祐三(こばやし ゆうぞう)さん。
1985年生まれ。東京都出身。サッカーJ1 サガン鳥栖所属。背番号13。ポジションはディフェンダー(サイドバック)。Jリーグ通算で481試合出場。Twitter:@KobayashiYuzo13

各業界の著名人にインタビューをしていく、この企画。今回は「さくらインターネット福岡オフィス」で、サッカー選手として第一線で活躍する小林 祐三さんにお話をうかがいました。小林さんにセカンドキャリア、理想のリーダー像といった仕事に関する話とともに、お子さんの教育など、プライベートについても語っていただきました。 

小林祐三選手「選手のうちからセカンドキャリアを考える」

ーー早速ですが、最初の質問です。サッカー選手をやりながら別の仕事、セカンドキャリアのことを考える事ってありますか?

ありますね。僕の理想としては、現役選手のあいだになにか別の事業をやっていたとしても、しっかりピッチの中にフィードバックされるのがベストかなと思います。スポーツ界って閉鎖的な世界なので、やること自体はすごくいいことだと思います。

ただ選手一人の力だとなかなか難しい。周りにいい大人がいればいいけど、それも運次第なところはありますからね。

 

サッカーを辞めた後の話を考えるのがいいかどうかっていうのは議論を生みそうですけど(笑)。僕は考えないのはヤバいと思うんです。自分の人生のことを考えるのは普通だから。サッカー選手だからとかじゃなくて、社会人として普通のことじゃないですか。

 

おそらくプレイヤーの多くは、セカンドキャリアに漠然とした不安を抱えていると思いますけど、何で不安なのかっていうと、サッカー以外の世界との接点がないから不安なんですよね。

僕もそうですけど、高校卒業してそのままプロに入って、つまり社会人経験がない。「外の世界なんて何もわからない、これ引退したらどうなるんだ?不安だ」というループだと思うんです。

 

いくつかそこのループから抜ける道があると思うんですけど、そこは他の人の力を借りないと難しいと思うんですよね。僕は、選手のうちからセカンドキャリアを考えるのが自然だと思います。

 

ポッドキャストをはじめたきっかけ

ーー小林選手の場合ポッドキャストなどをやっていますが、あれはご自身でやりたいと思ってはじめたんですか?

もともと話すのが好きで、よく友人と長電話してたんですけど、これをコンテンツにしたら面白いんじゃないかと思って。試しに電話を録音して後で聴いてみたら結構面白かったんです。それで、よし! これやってみようかと。

 

サッカー以外の魅力にも溢れた選手はたくさんいます。既存のメディアで引き出されてる選手の魅力って本当に一部だと思うので、ポッドキャストでは、選手の「素」を出せたらもっと楽しんでもらえるんじゃないかなと思ってやってます。9割くらいは自己満足なんですけど(笑)。

サッカー選手ってどんな人なのか、どんな人がサッカーやってるのかを知るのってサッカーを楽しく見る方法の一つなんですよね。簡単にいうと友達が出てるのが一番面白い。

 

ある日ご飯を食べに行ったお店でサッカー選手と仲良くなって、その人が出てる試合を観に行ったらその人を応援するじゃないですか。それが選手にとって究極のマーケティングと言えるかもしれないですね。

サッカーに限らず、コンサートやライブもそうだと思います。この人ってこういう人なんだって知った上で観に行くと更に面白いし、それが一番応援されやすいし応援しがいがあると思ってます。

選手のすべてを知ってもらうのは難しいと思うけど、その人のキャラクターや、どんな考え方をしているかを知った上で観てもらうと応援しやすいですよね。

 

ーーポッドキャスト出演者のキャスティングや準備も小林選手がしているんですか?

そうですね。僕ともう一人ディレクションをしてくれる人がいるので、相談しながらやってます。キャスティングといってもほぼ身内しか出ていないのですが(笑)。

 

あと、いまのところはディビジョンが一緒の選手には声をかけてないですね。J1の選手はまだ出てもらったことがないです。J2や、もしくは海外でプレーしている人。他チームの選手同士で仲良く話すとなるといろいろと言われることもあると思うし、出てくれる人に迷惑はかけたくないので。

 

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小林祐三選手が考える「理想のリーダー」

ーー小林選手が考える理想のリーダーについて教えてください。

僕、リーダーコンプレックスで。キャプテンに任命されたことがないんですよ(笑)。 小・中・高・プロとずっとサッカーやってて、これだけ長くやってるのに副キャプテンすら任されたことがないんです。だから、自分はリーダーじゃないんだ、リーダーとして失格なんだって自分の中で思ってます。

 

この中でキャプテン選ぶとしたら自分しかいないだろうっていう状況は過去にあったんですけど、それでも選ばれてこなかったんです。あくまで自分にリーダーコンプレックスがある中でのリーダー論というのはあるんですけど。

キャプテンってみんな苦しみながらやっているし、やっぱり難しいですよね。

(編集部注:2020年シーズンの小林選手はチームキャプテンに選ばれました)

 

選手でいうと、柏レイソルの大谷 秀和選手はすごいキャプテンだと思います。監督では岡田 武史さんは特別でしたね。高校生の時、マリノスに練習参加して「これが本物のプロの監督なんだ」って思いました。場の空気の作り方とかがうまいですね。

 

あとは柏レイソルのネルシーニョ監督もすごく選手のことを見てます。瞳の奥まで見てきますから。バレます。言葉わからないのに、バレますから(笑)。

 

「ミスの引き出し」で修正が早くなる 

ーーJリーグ通算で480試合以上に出場していますが、試合に出続けるための秘訣を教えてください。

時期によっては試合に行く時にテンションが上がらなかったり、逆に上がりすぎてしまったりした時期もありました。でも、それには理由があると思っています。心身のバイオリズムみたいなものもあると思うんですけど、それだけじゃないことも多いと思うんです。

今日はダメだったな、今日は良かったな。でなるべく終わらせないようにする。若い時は、自分のミスしたシーンだけコマ送りで見てましたね。ミスの分析で。

 

ミスの中にも、すごくいろんなタイプのミスがあります。単純に技術的なミスとか、判断ミスとか。それをコマ送りで見ることでその時の風景を思い出して、実はこの時にちょっとパスしようか一瞬迷って出したからミスったんだ。とか、若い時はそういうミスの分析をやってました。

 

それが段々、映像を見返したりしなくても試合中に、今のミスは完全にこれが原因だってわかるようになります。「ミスの引き出し」があって、そこからすぐに見つかり、修正が早くなる。

僕はディフェンダーなので、やられて大きくなったと思います。今でも印象的なシーンとか、10年ぐらい前のシーンも目をつぶるとその時の風景が出てきますし。積み重ねでやられなくなったっていう感じですかね。

 

僕のポジションはmストライカーみたいに数字で結果が出てくるわけじゃない。評価の基準がすごく難しいので、むしろ曖昧だったから僕はここまでやってこれたと思ってます。

 

数字を突きつけられたら、僕はそんなに強いメンタル持ってないので、多分ここまでできなかったですね。ある程度、曖昧な印象値っていうところで勝負せざるを得ないっていうのがちょうど良かったかなって。それが長くやってこれている秘訣だと思います。

 

あとは20歳ぐらいのときに、うまくいかなかったりしたことが、地に足つけてやんなきゃいけないって思うきっかけになったかな。自分が思うキャリアの通りにいかなかったことで、考えることができたんだと思います。そのころに「考える習慣」がついた、ということですかね。

 

小林祐三選手に聞く「すごい選手」

ーー同じサッカー選手としてすごいなと思った選手はいますか?

個人的に自分の礎を作ってくれたのは、レイソルで一緒だった北嶋 秀朗選手ですかね。サッカーが上手い人は他にいくらでもいると思うんですけど(笑)。本当に人間として大事なものをたくさん教えてもらったというか。サッカーとの向き合い方だとか、男としての生き方みたいなところを見せてもらって。

 

20代前半で一緒だったんですけど、それこそ自分がうまくいってない時に色々なことを教えてもらいました。あの人の言葉が血となり肉となり、いま自分がこういう風にしてられるなって思います。

 

あとは中澤 佑二さん。「継続は力なり」をあそこまで地でいった人は、なかなかいないと思います。サッカーに向き合う姿勢っていうのは月並みですけど、すごいです。あの試合数をあのクオリティでプレーし続けるっていうのは、ほんと尋常じゃないなって、自分の年齢が上がれば上がるほどに思いますね。

 

あ、僕に言われるまでもないと思うので、別に中澤さんの話は使わなくてもいいっすよ(笑)。

 

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小林祐三選手が町のサッカーチームで指導する理由

ーー町のサッカーチームで子どもたちの指導もしているんですよね。

はい。すごく楽しいですね。人に教える難しさも楽しさも感じます。いままでプロに入って練習メニューをやりながら、「ここ、こうしたら良いのに」とか思ってたんですよ。

でも、メニュー作るのってめちゃくちゃ難しい。監督、コーチ、いままでほんとごめんなさいと思いましたね(笑)。

 

子どもたちの親御さんにも「僕はサッカーをやるプロだけど、教えるプロじゃないです」っていう話をよくしてます。やっぱり、教えるプロは全く別のプロフェッショナリズムですね。

どうしてJリーグの下部組織じゃなくて町のクラブで教えているかっていうと、町のチームはみんながプロサッカー選手目指してやってる子たちばかりじゃなくて、いろんな子がいて面白いんですよね。

 

自分自身も町のクラブで育った背景があり、そこではサッカー以外のことを多く学んだと後から気づいたんです。人間関係とかいろんなこと含め、面白かったなあって。息子もそういうところに入れたかったし、自分もそういうところで教えてみたいなって思ったんです。

 

ボランティアでやっていますけど、自分の一言が子どもたちの人生を変える可能性もあると思ってるんで、そこは責任持って発言しなきゃいけないと思ってます。指導者になりたいわけじゃないんですけどね。ライセンスも取ろうと思ってないですし。ライセンス取るのも大事ですが、現場で教えるほうが僕には絶対勉強になると思ってます。

自分も小学生の時にサッカーが好きで始めているのですが、どうしていまもサッカーを続けているのだろうって考えることがあります。

 

サラリーをもらっちゃうと、どうしてもそのインセンティブの持つ力って大きいじゃないですか。それは否定するつもりも毛頭ないですし、それを目指して頑張る選手を否定するつもりも全くないです。

逆にそれがエネルギーになることもたくさんあると思います。でも行き着くとこまで行っちゃえば、最後は絶対それじゃないってほとんどの選手がなると思うんですよね。

 

埃が舞う中で子どもたちとサッカーすると、いろんなものを思い出せていいです。自分はここから来たなっていうか。サッカーを通じて自分が何を伝えたいかとか、逆に何をもらってるかとか、考え直すことができます。

 

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小林祐三選手がお子さんについて語る

ーーお子さんが将来サッカー選手になりたいって言ったら応援しますか?

すでにガンガン言ってますよ。どうにかそっちに行かないようにしてます(笑)。

僕は普通の家庭で普通に育ちました。家系も全然スポーツ関係じゃなくて、ずっと向いてないって思いながらやってたんですよ。朝は父の弾くチェロの音で目覚めるような家でした。

 

自分自身、サッカー選手になって周りを見た時に、自分はいろんな意味で全然違うと思ったし、僕の息子もサッカー選手になったら多分、辛い思いするだろうなっていうのが分かるので。サッカー選手になる過程も大変だし、大変な思いをしてほしくないっていうか。まぁ、親のエゴですが(笑)。

 

自分の好きなことをやって、幸せに生活してもらえればそれでいいです。サッカー選手になって欲しいわけじゃないし、なんならサッカーやらなくても良いと思ってるんですけど、めっちゃサッカー好きなんですよね(笑)。

 

いまもずっと試合を見てて、「サガン鳥栖はよく負けてるから、俺が入って強くしてやる」とか言うんですよ(笑)。サッカー選手になってほしくない反面、うれしく思う気持ちもあるんですよね。複雑な気持ちです。

 

息子にはなるべく教えないで、ただボールを蹴ってるだけです。良く近所の公園で一緒にボール蹴るのですが、この間、公園で3人組の小学校1年生に「お父さんサッカー上手いね。一緒にやっていい?」って声掛けられて(笑)。

それで、僕と息子と小学生とでサッカーしましたね。

 

ーーすごいエピソードですね。息子さんはサッカー選手だと誰が好きなんですか? やっぱり小林選手ですか?

僕のことは好きみたいですね。サガン鳥栖の試合はもちろん、サガン鳥栖の元選手の出ている他チームの試合もよく見てます。

うちの息子はいま6歳なんですけど、自分もサッカーが好きになったのはちょうどそれくらいの歳でした。90年のイタリアワールドカップのビデオを擦り切れるほど見てたので、まあ一緒だなと思いますね。

 

ーー娘さんもいらっしゃいますよね。かわいいですか?

もうメロメロです(笑)。

 

 ーー小林祐三選手、ありがとうございました。

 

執筆

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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