株式会社ストロボライト~ボタニカルライフメディア「LOVEGREEN」の野望とは?

株式会社ストロボライト 代表取締役 石塚秀彦さん

株式会社ストロボライト 代表取締役 石塚秀彦さん

こちらの記事は、2017年4月にさくらのナレッジで公開された記事を再編集したものとなります。文●山下達也

さくらインターネットが注目するスタートアップ企業を紹介。今回ご登場いただいたのは、“植物と暮らしを豊かに。”をコンセプトとするボタニカルライフメディア「LOVEGREEN」を運営している 株式会社ストロボライト の皆さん。約4年前までは、植物の知識もほとんどなかったという石塚さんがなぜ、この業界に飛び込んだのかを聞いてきました。

「LOVEGREEN」をきっかけに園芸業界を拡大・活性化させたい

――始めに、ストロボライトの事業内容について教えてください。

株式会社ストロボライトは2012年7月創業で、最初の3期は広告代事業をメインでやっていました。ところが、そこで私個人が「植物」に目覚めてしまい、大きく事業内容を変更することになります。まず、2015年9月に「LOVEGREEN」というWebメディアを軸に、ベンチャーキャピタルなどから資金調達を行いました。2016年11月にも約1.4億円の資金調達を行い、今年2月には園芸フリーペーパー「Botapii[ボタピー] by LOVEGREEN」を創刊、2017年4月にはお庭やインドアグリーンの施工・仲介を行う「“みどりと暮らす。” MIDOLAS[ミドラス]」をリリース、“植物と暮らしを豊かに。”を事業コンセプトに各サービスを展開しています。

 

――広告事業から植物のWebメディアというのはかなり大胆な方針変更ですね。何かきっかけがあったんですか?

4年ほど前に新居に引っ越したのですが、日当たりが良い物件だったので妻から観葉植物を置きたいという要望があったんです。でも、当時の私は植物について全く知識がなく……それまでも何度かインテリアとして観葉植物を買ったことがあったんですが、手入れが簡単なものを2度も根腐れさせてしまうような有様でして(苦笑)。Webでもいろいろ調べてみたんですが、当時は、「時代にあった園芸の情報」を「時代に合う形で配信」できているサイトがほとんど存在していなかったんですよ。

そこで、ふと、植物って生活に密着している割に、距離を感じることが多いと気がつきました。花屋さんで売っていないような植物はどこで買えば良いのか、庭の手入れを専門家にお願いしたい時に誰に頼めばいいのかとか、ビジネスシーンでもお祝いの花をどこにお願いすればいいのか、もらった時にどうすればいいのかとか、とにかく分からないことだらけなんですよね。

 

――言われてみればそうですね。

それが「LOVEGREEN」を立ち上げた直接のきっかけです。調べてみると、園芸業界の市場規模は約1兆円もあり、年間で約3,000万人がお金を使っているそうです。さらに、庭やエクステリアまで広げると約1.6兆円ほどの市場があると言われているそうです。それなのにWebがほとんど活用されていない。飲食業界における「ぐるなび」や「食べログ」のような、市場を活性化させるようなサービスも当時は存在していませんでした。

 

――そこにビジネスチャンスがあると考えたんですね。

はい、その通りです。ただ、そういう計算だけでなく、純粋に植物が好きになってしまったからという側面ももちろんあります。新居には結局、ウンベラータという葉っぱがハート型の観葉植物を買ったんですが、これがとても可愛くて。ちょっと元気がないのでお水をあげたら翌朝、ぴーんと元気になるんですよ。こういうのを見ていると「ああ、生きているんだな!」ってキュンキュンしちゃいますね(笑)。同時に、植物が正しい扱いをされずに枯れてしまうのをとても悲しく思うようになりました。

石塚氏の写真

――そうして「LOVEGREEN」を立ち上げたんですね。でも当初のコンテンツ制作はどうしていたんですか?

当初のコンテンツ制作はほぼ私1人でやっていました。この業界のプロの方々とやり合っていくために、自分自身に知識と経験が必要だと考えたからです。この頃は、毎日、園芸店を回ったり、自分で植物の手入れをするなどして、育て方を学んでいきました。

その後、現役の花屋さんや農業大学出身の方々などが、園芸業界の発展のためにということでお手伝いをしてくださるようになって……以降も紆余曲折あったのですが、2016年の春ごろには、今の編集部の体裁が整いました。

 

――ちなみに「LOVEGREEN」というサイト名にはどういう意図があるのですか?

キャッチーで、ビッグワードで、とにかく分かりやすい名前にしたかったんです。辞書で調べないと分からない言葉ではなく、誰にでも通じる名称にすることで、すそ野を広げたいという気持ちが大きかったですね。

あと大事なのは「趣味」というワード、ニュアンスを入れなかったこと。これまでの植物メディアって趣味の方向にフォーカスしたものが圧倒的に多かったのですが、「LOVEGREEN」はその方向ではないと考えていました。

 

――と、言いますと?

これまでの趣味の中での“園芸”というものは、植物の“育成”にフォーカスされ、ストイックな姿勢で取り組むものであると認識をしています。しかし、「LOVEGREEN」では園芸に“暮らし”という要素を追加して情報を発信しています。70〜90年代の園芸と違い、いまの時代の園芸は、家の中の生活空間でもどのように植物と共存していけるかがテーマになってきているのではないかと考えているからです。

また、これまで、切り花(生花店)、鉢物(園芸店)、庭(造園)の3つの領域は、業界側でも縦割りになっており、まったく消費者側の視点に立って情報配信ができていなかったのです。僕が成し遂げたいと思っているのは、園芸業界の活性化と市場規模の拡大です。その課題解決をするためにも、困っている消費者と、知識・技術を持った職人さんや商材をどのようにマッチングさせることができるのかをずっと考えています。

冒頭でもお話ししたよう、この業界にはいろいろと“旧態依然”としたところがあります。まずは「LOVEGREEN」というWEBメディアで情報の流れに変化を起こし、小売店に設置されたフリーペーパー「Botapii」でコアファンを定着させ、園芸のプロ集団である「MIDOLAS」で課題を解決していくことを目指しています。

「LOVEGREEN」は他の植物・園芸メディアとはひと味違う!?

石塚氏の写真

――現在の「LOVEGREEN」のコンテンツの方向性について教えてください。

「LOVEGREEN」では、各植物の「育て方」「管理の仕方」「飾り方」の3つを基本に情報を配信を行っています。特に植物については、「育て方」が圧倒的に検索され、読まれるコンテンツでもあります。

その上で、植物との暮らしにフォーカスしたコンテンツも配信を行っており、「実際にやってみた」シリーズとして「DIY」や「料理」などのジャンルも情報を配信しています。

アンケートの結果によると、「LOVEGREEN」閲覧者の約8割がインテリアに、約7割がDIYに、約6割が料理に興味があることが分かっています。これらと園芸との組みあわせに興味を持っている人が我々の読者なんですよ。

 

――“園芸だけ”ではないんですね。

実は国内の園芸トレンドって、20年おきくらいに切りかわっているんです。1970年代のガーデニングブームは庭を使った家庭菜園のことだったんですが、1990年代になるとベランダガーデニングという新しい流れが生まれます。そしてそれが2010年代にはインドアへ。リビングやキッチンなどの生活空間に植物が入って来るようになるんですね。ミーハーな言い方では「ボタニカルライフ」なんて言うんですが、それは植物だけでなく、インテリアなども含めた盛り上がりなんですよ。そういうことも含めて情報を提供しています。

 

――反響はいかがですか?

40代前半の主婦層を中心に読者が増えているのはもちろん、プロの方たちからの評判も上々です。園芸店や生花店、ホームセンターに行った際に「いつも読んでいます」とお声がけ頂くことも増えており、最近では生産者の方から連絡を頂くことも増えています。

 

――それは凄いですね!

園芸業界のベテランの方々からも注目してもらえていることは本当に嬉しいことです。園芸に関する現役のプロ、元プロ、変態的な趣味家のメンバーで毎日記事を書いているので、記事のレベルは高いと自負しています。

植物の世界はとても奥が深いですから、一見すると同じような記事に見えても、見る人が見れば分かるんですよ。例えば、桜の記事があったとして、正しい知識がないと、その桜は何という品種なのか、写っているものが正しい品種なのかもわかりません。

また、他のサービスとの決定的な違いは、インテリアとしての植物と、園芸としての植物をきちんと切り分けていること。実は、これをきちんと理解した上で情報を配信できているメディアは少ないと思います。同じ植物でもこの2つは大きく異なるんです。前者は「飾る」もの、後者は「育てる」ものですから。

そして、その上で、多くのメディアが「育てる」まで届いていません。素敵な観葉植物をお部屋において、そこで満足してしまうんです。実際、記事ではそれでも成立してしまいますからね。でも、植物は生きていますから、そこから先がある。ちゃんと育て方を学ばないと、かつての私のようにすぐに枯らしてしまって、結果的に植物と距離を置いてしまうことになりかねません。それは良くないことですよね。

 

――「LOVEGREEN」なら、そこも含めてきちんと知る事ができるというのは、大きなアドバンテージだと思います。

はい、そして、その上で、あまりマニアックにならないようには気をつけています。編集部には本物の植物好きが集まっているので、油断するとそっちに行ってしまいがちなのですが(笑)、そこはグッとこらえて、初心者の方、より多くの方が必要とする情報を優先的に制作するようにしています。

 

――そんな「LOVEGREEN」の運営において、さくらインターネットがどのようにお役に立てているかを教えていただけますか?

それについては、弊社の技術周りを取り仕切っている川上と寺山がお答えしますね。

 

川上さん:「LOVEGREEN」オープン当初はVPS1台でサービスを提供していましたが、負荷状況にあわせて、現在は全面クラウド型に移行しています。移行時に他社とも比較してみましたが、VPSからの移行ツールを用意していたこと、スタートアップ支援があったことから、さくらインターネットを選びました。

 

寺山さん:また、今後のメディア拡大にあわせ、次世代のサーバー環境を検討してみましたが、さくらインターネットは、スペックや環境含めて驚きのコストパフォーマンスで、そのまま継続利用する事を決めています。

「LOVEGREEN」以外でも、新規サービスとしてフリーペーパー事業の「Botapii」を立ち上げましたが、フロント及びバックエンドシステムを、拡張性のあるサーバ環境ですぐに構築できましたので、とても助かりました。さくらインターネットは、既に弊社にとってはなくてはならない存在です。

 

――今後、システム面で取り組んでみたいことがありましたら教えてください。

川上さん:現在は一部CGM化しておりますが、今後はもっと花・園芸業界の人が頑張った分だけ活躍できる場を提供していきたいですし、ユーザーも花・園芸業界の方も、さらに便利で使えるサービスにしていきたいです。

川上氏・寺山氏の写真

株式会社ストロボライト 取締役/COO川上睦生さん(左)、開発事業部/マネージャー寺山昭夫さん(右)

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