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動画、音声、文字といったあらゆるデータへのアクセスと活用を可能にするマルチメディア対応AIプラットフォーム「BlendVision AiM(ブレンドビジョン・エイム)」。林修氏が出演しているテレビコマーシャルを記憶している人もいるだろう。2024年4月のリリースから、間を置かずして大手予備校、コールセンターなどの幅広い業界において導入実績を伸ばしている。同製品が支持されている理由を知るために、KKCompany Japan合同会社 Product/Technical チームの小島麻衣子さんに話を聞いた。
小島 麻衣子(こじま まいこ)さん プロフィール
アカウントマネージャーとしての経験を経て、2023年にKKCompany Japan 合同会社に入社。現在はBlendVisionのProduct / Technical担当として主に日本市場での製品リリースやプリセールスを担当。
社内に散らばった電子データを1か所にまとめ、横断的に検索可能
アジア太平洋圏に事業拠点を持つAIマルチメディアテクノロジーグループKKCompany Technologies Inc.。その一員であり、2012年から日本国内でサービス提供をしているのが、KKCompany Japan 合同会社だ。同社は、AI技術を基盤にした音楽配信サービス、動画ストリーミングサービスを中心に事業を展開。培った技術とノウハウを生かして2024年4月にリリースしたのが、「BlendVision AiM」だ。
同製品は、動画、音声、文字などのデータを統合し、組織の情報資産を最大限に活用するためのマルチメディア対応AIプラットフォームである。会議の要約や議事録の生成、対話型AIを用いた動画の関連箇所のピックアップなど、業務効率を大幅に向上させる機能を提供する。
たとえば、同製品でオンライン会議の録画データを取り扱えば、会議内容の文字起こし、議事録の作成が可能。さらに、それらの詳細をリクエストすれば、視聴したい箇所から録画データを再生したり、適切な文書ファイルやWebリンクを閲覧したりすることもできる。
使い方は至ってシンプル。ユーザーは動画、文書ファイル、Webリンクなどの社内にあるデータを「BlendVision AiM」に取り込み、情報源となるナレッジベースを作成。あとは、チャットボットにリクエストするだけで、高い精度で必要な情報を横断的に抽出できる。
「昨今ではコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスが重要視されています。当社の製品を使用すれば、議事録作成の要員として社員を配置する必要はありません。また、参加しなかった会議の録画データを一から見なくてもキャッチアップすることができます。
オンライン会議のほか、動画の業務マニュアルを視聴する際にも活用できます。さらにいえば、動画に限らず、社内中に散らばった文書ファイルなどのデータから必要なものを瞬時に抽出できることから、動画データを所有していない企業でもデータ収集における省力化を期待できます」(小島さん、以下同)
チャットボットは日本語以外に、中国語と英語への切り替えも可能。グローバルな企業やオンライン会議での活用も見込んでいる。
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日本の慣習が開発のネックに
ChatGPTを取り巻く環境に見られるように、近年では日本でも個人でAIツールを利用するケースが増えつつある。一方で法人に目を向ければ、導入に壁を感じている企業も少なくないだろう。そんな障壁を取り除くために「BlendVision AiM」では、どのような工夫をおこなっているのだろうか。
「生成AIとのチャットにおいて、ユーザーの質問が具体的ではないと、的確な回答が得られないケースはよく耳にすると思います。しかし「BlendVision AiM」では、一定のプロンプト(AIに対する指示)をあらかじめ設定しているため、ユーザーが自分の言葉で質問しても、的確な回答を得やすい仕様になっています」
「BlendVision AiM」の使用前には、チャットボット作成画面において、プロンプトのロールを選択。初期設定では管理者、サポート、要約者の3つがあり、チャットボットはその役割に沿った回答を実施するという。初期設定のロール以外にカスタマイズをすることも可能だ。
「開発を始めたころは、日本語の質問に対しておかしな回答が多くあり、的確な回答を引き出すために、かなりな回数のテストと調整を繰り返しました。会議の議事録の作成にも苦労しましたね。海外企業の簡易的な議事録とは異なり、日本の企業の議事録は長く、複雑になりがちです。「BlendVision AiM」の開発チームはグループ本社のある台湾にあるため、はじめは日本の慣習を理解できませんでした。そのため丁寧に説明をして理解をしてもらい、協力しながら作り上げたことには、ちょっとした達成感があります」
そう小島さんは笑顔で語る。
生成AIにおいては学習が重要であり、一般的にはインターネットを通じておこなわれている。それによるセキュリティの侵害が懸念されるが、企業内でのセキュアな環境を用意されていることが前提にあり、読み込ませた社内データをもとに学習がおこなわれ、またその学習結果が外部に漏れることもないことから、安心して利用できるという。
顧客のニーズに合わせてよりよい製品にしていきたい
スピード感のある対応も、「BlendVision AiM」が評価されているポイントかもしれない。同製品は2024年9月上旬に新しい機能が実装された。
いままで同製品が動画において読み取る情報は音声のみだったが、現在は動画に映るすべての情報、たとえば共有されたファイルの文字情報、黒板やホワイトボードに書かれた癖のある手書きの文字、人物の表情や身振り手振りなどを認識することができるようになったという。
「会議のシーンで、よく『これをこっちに』のように指示代名詞のみで会話が進むことがありますよね。あとから会議の文字起こしを読んでも何を示していたのかわからないことがあります。しかし、当社の製品を使用すれば、AIが動画から『これ』や『こっちに』が何を指しているのかを解析し、簡単に抽出してくれるので、情報を誤ることも、確認に時間を使うことも減るはずです」
また、動画内のシーンの切り替えをAIが認識し、シーン分けとタグづけをする「クリップ」と呼ばれる機能も実装。話者が一度も発していない情報であっても、動画内に画像や文字から読み取れる情報があれば、タグづけとクリップは有効になるという。無音の動画であってもAIが解析をし、シーンごとのクリップを高い精度でおこなうことから、「BlendVision AiM」の活用の幅が広がることが予想される。
同社では顧客の要望に応えながら開発を進めているといい、「お客さまに寄り添ってニーズをくみ取り、一緒に活用しながら成長していきたい」と小島さんは話す。
利便性を求めるだけでなく、DX推進のツールとしての活用を目指す
電子帳簿保存法によって2024年1月から「電子取引のデータ保存」が完全義務化された影響や、SDGsの観点から、いままで紙で保存していた資料を電子保存している企業が増えているだろう。紙のように捨てる必要がなくなったことから、データはたまる一方だが、同社はこの点に目をつけている。
「データを保有しているだけで満足するのはもったいないですよね。『BlendVision AiM』があれば、それらをデジタル資産として活用できます。展示会に出展すると、当社のブースには企業のDX部門の方々が多く訪れ、デジタル資産を活用しようとする気概を肌で感じています。便利なツールとして使っていただくだけでなく、一段上のフェーズに移り、DX推進に協力していくことが目標です。
また、動画データを所有していない企業にも当製品の導入を機に動画データの活用を始めてもらい、既存のデータを含めて包括的なデジタル資産として活用し、DXを推進するための第一歩をサポートしたいですね」
文字起こしツール、議事録作成ツールなどは世の中に多数あるが、「BlendVision AiM」はそれらの機能を包括したうえで、動画に強みを持った独自性のある製品だ。新しく画期的な製品としてマーケットにインパクトを残せるのでは? という期待のもと、まずは認知拡大のために林修氏を起用したテレビコマーシャルの放送を決定したという。
「IT関連の製品はアメリカで開発されて、その後世界中に広がるケースが多いと思います。しかし、当グループの開発拠点は台湾にあり、製品化にあたっては、日本のマーケットの環境と要望を反映しています。実質的に日台合作の製品ですね。これをアジアから世界へ広められたらと考えると、おもしろいと思いませんか?」
「BlendVision AiM」が世界を主導するプラットフォームになるというKKCompanyの描く夢。想像して心を躍らせたのは筆者だけではないはずだ。
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執筆
増田洋子
東京都在住。インタビューが好きなフリーランスのライターで、紙媒体とWebメディアで執筆中。ネズミを中心とした動物が好きで、ペット関連の記事を書くことも。
ポートフォリオ:https://degutoichacora.link/about-works/
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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