紙の帳票の電子化で、ノンデスクワーカーの業務効率アップ。SaaS「カミナシ」の挑戦と展望

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世の中のデジタル化は加速する一方のように見えて、なかなか紙から脱せない仕事の現場は多い。報告書やチェックリストを記入する際に抜け漏れが生じたり、それらを規定の場所にわざわざ提出しにいかなければならなかったりと非効率的な側面がありながらも、独自のフォーマットで運用している帳票を電子化することは簡単ではない。

 

そんな紙の帳票を、誰にでも使いやすいUIで業務アプリ化できるツールが「カミナシ」だ。カミナシを使えば、記入項目の多い煩雑な帳票でも、あらかじめ用意されているパーツをマウスでドラック&ドロップするだけで自由に組み立てて業務アプリ化でき、現場作業者はタブレット上に表示された質問に答えていくだけで記録ができる。オリジナルで業務アプリを作成できるから、ツールの導入によって現場の運用を変える必要もない。カミナシを開発している株式会社カミナシの宮城 徹也さんに、サービスに込められた想いと展望を聞いた。

宮城 徹也(みやぎ てつや)さん プロフィール

株式会社カミナシ執行役員 ビジネス本部 本部長。新卒で大手IT企業に入社したのち、スタートアップを2社経験。その後、2021年3月にカミナシへ入社し、2023年1月から現職。マーケティング、営業、カスタマーサクセスを統括する。

1万を超える現場に導入されているカミナシ

カミナシの顧客となるのは、工場の製造現場、飲食店や商業施設の店頭などで働く、ノンデスクワーカーだ。それらの仕事現場では、上司への報告書やチェックリスト、日報などが欠かせない。だが、紙で運用される帳票の運用や管理には膨大な手間が発生し、生産性を下げてしまう。カミナシは、そういった紙の帳票を電子化するサービスだ。開発のきっかけは、創業者の現場経験だったという。

 

「カミナシを創業した諸岡は、新卒で一般企業に入社したのち、跡を継ぐため彼の父親の会社に入社しました。その会社は航空会社向けの機内食製造、ホテルの清掃など、アウトソーシングを受託する事業を手がけており、その現場に存在する紙媒体が、業務を非効率にしていることに気づいたのです。似たような現場は、日本全国に数多くあります。諸岡は、紙媒体による非効率をSaaSによって解消できないかと思い立ち、カミナシを創業しました」

カミナシの管理画面と操作画面。操作画面(写真右)では、指定された事項をスマートフォンやタブレットに表示された質問に答える形で入力していく。管理画面のダッシュボード(写真中央)では、帳票の提出状況などの情報が一目でわかるようになっている

現在、カミナシが導入されている現場の数は1万を超えている。リリース当初の導入先は食品製造の工場が多かったというが、現在では飲食店やホテル、自動車などの機械製造業にまで拡大した。そこで必要になったのが、各現場に対応するための機能開発だ。

 

「導入先によって、帳票の種類や、必要な記入項目は変わります。そこでカミナシでは、さまざまな形態の帳票に対応するために、多様なフォーマットや機能を設けています。たとえば、必要事項を入力していくだけでExcelのフォーマットに入力内容が転記される機能や、日本語が苦手な外国人の従業員も同じ業務アプリで作業をおこなえるようになる多言語翻訳機能といったものです。

また、顧客の業界によって求められることは変わりますので、業界ごとに5人程度の小規模なチームを編成しています。新規顧客への導入の際には、そのチームで提案活動をおこなっています」

さまざまな質問形式に対応。複数項目から選択する形式はもちろん、自由記入や写真撮影などの指示も可能だ

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業務改善を進める風土を現場に醸成。継続的な効率化を後押し

カミナシの特徴の1つに、顧客自身が新たなフォーマットを作成できることがある。記入項目の追加や変更も簡単な操作でおこなえるから、現場で新たに発生したニーズにも即座に対応可能。導入したときだけでなく、それ以降も継続的に業務改善をおこなう助けになる。宮城さんによれば、導入先の顧客からは、その点を評価されることが多いという。

 

「『現場で働いている人がシステムを作成できるから、現場目線の仕組みを作りやすい』『業務効率化を進める風土を現場に生み出してくれる』といった声を多くいただいています。単純な効率アップ効果よりも、その継続性を評価してくださるお客さまが多くいらっしゃると感じています。カミナシの特徴は、現場目線があるところ。その観点で、尖った機能を今後も拡充していきます」

カミナシは多くの現場で効果をあげているが、そのなかでも代表的な事例は、大手コンビニ・セブン-イレブンの弁当・惣菜を製造するメーカー各社の食品工場だ。セブン-イレブンが提携している全国の製造メーカー63社・176の食品工場のうち、139の工場にカミナシが導入されている(※2023年3月発表時)。カミナシがある現場では、点検や記録の漏れが減り、逸脱があった場合も管理者にすぐアラートが飛ばせるようになった。

 

これにより、工場の品質管理レベルが向上したという。セブン-イレブンが各工場と共同でおこなっている、製品の品質管理に優れた取り組みを称える「品質保証アワード」の表彰では、カミナシを導入した工場が栄冠に輝いた。

人も管理できる、包括的なサービスの開発へ

会社としても、継続的な改善を忘れてはいない。カミナシをリリースして3年以上が経過したいま、新たなサービスの開発を進めている。

 

「現在、カミナシを含め、多数の業務改善ツールが世に出ていますが、複数のサービスを使いこなすのは大変です。実際、当社のお客さまから『カミナシだけで全部できたらいいのに……』といったご要望をいただくこともありました。そこで当社では、現場の人員を管理する新サービスの開発を進め、2024年夏のリリースを目指しています」

 

宮城さんによると、現場でDXを進める際のコツは「夢は大きく、一歩目は小さく確実に」だという。いきなり大きな改革を目指しても、多くのことを一気にやろうとしてはなかなかうまくいかないからだ。

 

「人手不足が加速するなかで、現場にとって必要な業務改善のタスクは、多くなってくると思います。そこで大切なのは、最初の一歩を小さく、着実に踏み出すことです。確実にできるところから着手していくことで、DXの効果は指数関数的に大きくなっていきます」

 

簡単なUIで誰にでも操作しやすいカミナシは、着実な一歩を踏み出すために最適なツールといえる。そして、宮城さんらがこれから世に出そうとしているサービスは、その一歩を発展させ、より大きな変革へと繋げていくものだ。カミナシが日本のノンデスクワーカーにもたらす変化に要注目だ。

 

株式会社カミナシ


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