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「JAM BASE」開業記念イベントレポート~「AI×ものづくり、ディープテック」の次世代パラダイムによって開かれる関西経済の未来~

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うめきた2期地区開発事業「グラングリーン大阪」の中核機能施設「JAM BASE」が2024年9月6日(金)に開業し、同日開業記念イベントがおこなわれました。そのなかの「『AI×ものづくり、ディープテック』の次世代パラダイムによって開かれる関西経済の未来」と題したセッションにて、さくらインターネット 代表取締役社長 田中 邦裕がファシリテーターとして登壇。他登壇者とともに、いかにして関西でのオープンイノベーションを世界にインパクトのあるものにしていくか、ディスカッションしました。本記事ではそのセッションの一部をお届けします。

各社のオープンイノベーションの取り組み

セッションの冒頭、さくらインターネット 代表取締役社長 田中 邦裕より本セッションの趣旨と、さくらインターネットが新たに開所した、本社機能を有するオープンイノベーションのための施設「Blooming Camp」について紹介しました。

>>さくらインターネット、オープンイノベーションのための施設「Blooming Camp」をうめきた2期地区開発事業「グラングリーン大阪」に開所(ニュースリリース)

「スタートアップのなかでも、最近投資が進んでいる分野がディープテックです。またAI、IoTなど、確かな技術や研究に基づいたスタートアップが資金を獲得している傾向にあります。関西は東京に比べるとベンチャーキャピタル(VC)の出資で大きく差が開いていますが、ディープテック分野においては人口当たりの投資額はそれほど差がないんです。大学・研究とスタートアップをいかに結び付けていくかということが、関西経済の投資を誘発するためには重要です※1。このような背景のもと、本日のセッションをお届けします。

ここから、少し当社の取り組みについて紹介いたします。

私は大阪出身で、京都にある舞鶴工業高等専門学校に在学中の18歳のときに、さくらインターネットを起業しました。現在はさくらインターネットの経営のほか、さまざまな業界団体の会長、理事長などを務めています。関西だと、関西経済同友会の常任幹事、またグローバル・ベンチャーエコシステム委員会の委員長などです。

じつはこの30年ほどの間で、関西に本社をおくスタートアップで、東証プライム市場(旧:東証一部)に上場した企業は多くありません。さくらインターネットも本社は大阪ですが、大阪のみで事業をおこなっているわけではない。どうにか大阪でエコシステムをつくれないかと大阪市から数年前に相談をいただき、オープンイノベーションのための大阪・関西におけるさまざまなエコシステム構築に関わってきました。

さくらインターネットの企業理念は”『やりたいこと』を『できる』に変える”。それを実現し、新たなオープンイノベーションを生むための施設として『Blooming Camp』をここJAM BASEに開所しました。JAM BASEのコンセプトである『まざまざ と さまざま が まざるさま』に沿い、外と中の壁をなくして社員も社外の方々もごちゃ混ぜになりながら、新たな事業創出を支援していきます」

その後、各登壇者から自社や組織の説明とともに、現在注力するオープンイノベーションの取り組みが次のように紹介されました。

・AVITA株式会社
株式会社ローソンと協業し、「ローソンJAM BASE店」をオープン。生成AI、ロボット、アバター(100言語対応)など最新技術を体験でき、ここに来ることが目的化するようなエンタメ型のイートインをプロデュース。VTuber、クリエーター、アーティストなどとのコラボレーションも計画中。


・ダイキン工業株式会社
さまざまな企業や大学との連携を進めるなかで、2019年、スタートアップに出資をおこなっていくコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)を設立。4年間で、約20社以上のスタートアップやVCに総額70億円を超える投資を実施。イノベーション創出が期待できる国内外の幅広いスタートアップと関係性を構築し、共同開発などをおこなう。

・産業技術総合研究所(AIST)
社会課題の解決と、産業競争力強化をミッションに、産学官のオープンイノベーションを推進。2023年に株式会社AIST Solutionsを立ち上げ、産業技術総合研究所の持つ技術力と、AIST Solutionsのマーケティング力を掛け合わせ、企業と伴走してより高次のオープンイノベーションを目指している。JAM BASEに産総研・関経連うめきたサイトを開設。

>>さくらインターネットのスタートアップ共創プログラム「Link up」とは?

これからのAI利活用とは

続いて、田中がファシリテーターを務め、関西でのオープンイノベーションを世界にインパクトのあるものにしていくかについてディスカッションをおこないました。

田中

AI普及の現状を見ると、2030年までにはほぼ社会実装されていると思います。これからどのようにしてオープンイノベーションを広げていくのか、AIをどのように利活用するのか、さらに自らのビジネスや研究開発をどうしていくのか、みなさんのお考えを聞かせてください。

西口

AIが社会実装されるにはまだ課題があると感じます。というのも、生成AIの技術の根本を理解していない人は、生成AIを魔法のように考えていて「AIは何でもできる、間違えることはない」と思っているんです。しかし、この先どれだけAIが向上しても、精度は100%にはなりません。必ずフォローする人間が必要です。ですから、人間の仕事をAIで完全に置き換えようと考えていたら、なかなか普及しないでしょう。人間をエンパワーメントしていく方向でAI導入を検討していくことで、AIの実装が進んでいくと予想しています。

そして、いまはまさに勝負のタイミングだと思っています。ここで間違ったAIの使い方をしてしまうと「結局AIって使えない」と、ガートナーのハイプサイクルの幻滅期に落とされる可能性があるからです。正しい理解のもとでAIを広げていきたいですね。

田中

AVITAとしてはどのような取り組みをされていますか?

西口

アバターにおいて、たとえば簡単なことはAIで対応し、複雑なことはお客さまの困惑度のようなものをAIで推定して、オペレーターにエスカレーションするというサービスを導入しています。そうすればAIが間違ったり答えられなかったりしても、必ず人間がフォローするので安心して導入できますよね。

田中

すべてをAIがする必要はないということですね。

西口

そうです。仮に全部AIでできるとしても、それは私たちが本当に望んでいる世界なのでしょうか。 たとえばアバターを使うことによって、人の目を見て話せないような人でも自分らしくいられたり、不得意な部分を補完してもらって自分は好きなことに特化できたり。人間がよりいきいきと生活できるようなAIをつくっていきたいと思っているんです。

田中

AIといまあるテクノロジーを組み合わせて価値を出していく、ということですね。三谷さんはいかがでしょうか。

三谷

製造業では、すでに効率化のためにAIがかなり使われています。しかしAIの価値はそれだけではないので、いかにして新しい価値を生んでいくかが非常に重要だと考えています。

現在、ダイキン工業の売り上げのほとんどは機器販売ですが、これからは空気や空間など、概念を広げていったところにいろいろなチャンスがあると思います。そこでは人間や空気のデータが重要な要素になるはずで、たとえば健康によいだとか、より生産性が上がるような空気や空間などをつくるために、データをテクノロジーと掛け合わせて付加価値を生んでいくことに挑戦したいです。そして、実際にそこからビジネスを生まなければなりません。

2017年ごろから新入社員向けに社内大学のような制度をはじめ、AI人材を育てる情報教育を実施してきました。現在は自社の技術や業務はもちろんAIも理解している人材が、社内にかなり増えているんですよ。

田中

さくらインターネットでもGPU基盤を提供していますが、スタートアップだけではなく大手メーカーのお客さまも多いんです。メーカーの場合、一般的なAIはどういう情報を学習させたのかわからないので製造物に入れたときの責任が取れない。そのため自社でAIを開発することが必要という背景もありますよね。続いて辰巳さん、お願いいたします。

辰巳

まずものづくりの観点から言えば、AIが予想する世界も「実現できるかたちでフィジカルに戻す」ことが必要です。そのため、ものづくりの研究者や技術者という職業はなくならないでしょう。西口さんがおっしゃったように、私もAIがすべてを塗り替えるわけではないと感じています。

また材料開発分野でもっとも限界を感じるのが、AIは与えたデータの範囲外はまだ予想できないということです。もしデータ範囲外の予測ができるようになれば、研究者が「こんなものをつくってみたら何ができるだろう、一度つくってみようか」とどんどん試していける世界になっていくかもしれません。おそらく2030年ごろにはそれができるのではないかと考えています。

田中

確かに、ものづくりとAIは非常につながりが深くなっていきますね。

「ものづくりの地・関西」とAIが出会うとき

田中

今後いかにして実際にものづくりにAIを適用していくことになると思いますか。また関西の強みといえば、西高東低で大学が多いこととものづくりだと思います。そのようななかで、社会をよりよくする施策はなんでしょうか。

西口

AVITAでは、ものづくりの工程でAIをかなり使っています。たとえば、アバターのキャラクターデザインを1体つくるのに以前は約2か月かかっていました。それがいまは、1時間で何百パターンとつくり出せるわけです。制作の負荷が60~70%ぐらい下がっています。これをただのコスト削減で終わらせるのでは意味がない。負荷が減った分、もっとたくさんクリエイティブなことができると捉えることが必要です。

それから、私たちが発想もできなかったような抽象的な概念をAIに生み出してもらうのも、とてもおもしろいです。先ほどのダイキン工業のお話で、体験や空間のDXに興味を持ちました。たとえば「図書館で集中して本が読める空気」や「飲食店でお酒をどんどん飲みたくなる空気」をいまの生成AIで生み出せるかもしれません。そのような“体験”をつくり出すことをAIでやりたいですね。

田中

まさにいま、オープンイノベーションが起こりそうになっています。このように、ここJAM BASEに来た方々が混ざり合って仕事をしているなかで生まれるんですね。オンラインではこうはなりません。やはりイノベーションにはリアルな場が必要です。

三谷

本当にそうですよね。われわれも“体験の価値”にシフトしていきたいです。 そうなってくると、自社の技術だけでなく、いろいろな技術が必要です。すでに大学や大学発ベンチャーとの連携を積極的におこなっています。関西にはとてもおもしろい技術がたくさんあるんです。それをどんどん進めて、実装して活用していくことがとても大事です。ものづくりをする企業が増えて次のフェーズに進んでいくときに、まさにJAM BASEのような場でスタートアップも大企業も混ざり合うのは非常にいいことです。オープンイノベーションのベースができたので、ここがもっと活性化されていくために、われわれもその一翼を担っていきたいと思います。

辰巳

「ものづくりでAIと言われても難しくてわからない」という反応もあるとは思いますが、AIの活用は新しい価値を生み出す可能性を高めるものだと捉えていただきたいです。もうすでにAIの利活用に取り組んでいる企業においては、新しいAIもどんどん使って、価値の創造に効率よく時間を使い、よりクリエイティブな部分に人のリソースを割いてほしいですね。 AIを使ったものづくりの取り組みを増やしていきたいです。

田中

オープンイノベーションの中核で、国の機関も一緒になって、DXが促進されるのは、非常にすばらしいことです。これでセッションは終わりますが、たまたま関西にいるわれわれが、この場で触れ合う機会を持つことができました。このように、東京だけではなく、関西でもここJAM BASEを起点にイノベーションが起こり、新たな価値が生み出されていくのではないでしょうか。

>>さくらインターネット、オープンイノベーションのための施設「Blooming Camp」をうめきた2期地区開発事業「グラングリーン大阪」に開所(ニュースリリース)

編集

さくマガ編集部

さくらインターネット株式会社が運営するオウンドメディア「さくマガ」の編集部。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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