日本に資本主義を取り戻したい|株式会社ディー・エヌ・エー フェロー 川田 尚吾さん


川田さん、小笠原、田中の写真

 

さくらインターネットは「IVS2022 NAHA」のスペシャルスポンサーとして、2日間に渡り「さくらインターネット特設ステージ」を開催しました。

ステージでは「失敗を讃えよう!」をテーマに、起業や経営における挑戦と失敗について、豪華ゲストをお招きして語っていただきました。

本記事では、株式会社ディー・エヌ・エーの共同創業者で、現在は投資家としても活躍する川田 尚吾さんが語る「失敗談」をお届けします。

ディー・エヌ・エー創業時の「大失敗」、投資において「反省しきり」なエピソードなどをお話いただきました。

 

「投資できなかった」失敗

3人の写真

 

田中邦裕(以下、田中):先ほど、川田さんに事前に失敗談をお聞きしたいとお伝えしたところ、「山ほどある」とおっしゃっていましたね。

 

小笠原治(以下、小笠原):川田さんといえば、みなさん投資家としてご存じだと思うんですけど、この10年ぐらいで一番失敗したなと思う投資や、投資できなかった失敗ってありますか?

 

川田 尚吾さん(以下、川田):一番反省したのは、まだ絶賛伸びている最中の、ある会社の話ですね。その会社が立ち上げしたてのころに、ある人に投資先としてどうかと紹介されました。

たしかにプロダクトは非常に面白そうでした。僕の知り合いもこのプロダクトはすごいと反応していて、僕もすごいよねと思っていたのに、誰からどのメッセンジャーで紹介されたのかわからなくなってしまって。迷っている間に、またほかの案件が山のように来てメッセージが流れてしまいました。つい最近になって、誰からだったかわかったんですけど、反省しきりです。

 

田中:メッセンジャーで連絡が来ることが多いんですか?


川田:多いですね。でも、基本的には友達からの紹介で投資しています。本来はもう少し裾野を広げてオープンにすべきなんですけど、リスクもあるし、いま持っている案件で手一杯なので。

川田さんが投資家になった理由

川田さんの写真

 

田中:そもそも、川田さんが個人投資家になるきっかけって何だったんですか?

 

川田:80年代の終わりから90年代の始め、僕はスタートアップの世界にいたんですよ。そのころはまだインターネットがなくて、でもポテンシャルが非常に高くて、エネルギッシュな人がポツポツいて。ただ、そういった人たちに対して、誰もお金を出さないんです。

非常に優秀な人たちがいるんだけど、そこにお金を出すのは、ビジネスのことをよくわかっていない人たちしかいませんでした。

そういったことも含めいろいろ経験しましたが、理屈ではなくて、あらゆるところから刺激を受けて得た結論は、「日本は社会主義国家だな」ということです。

僕が「日本はちゃんと資本主義国家にならないとやばい」と思ったのが昭和のおわり、平成になるタイミング。ちょうど20歳のときです。

そのとき、日本に資本主義を取り戻すところに自分の人生をかけようと思ったんです。だから、わりと早い時期から投資家になると言っていました。

システム開発の大失敗

小笠原:僕らからすると、ディー・エヌ・エー立ち上げのころってすごくキラキラして見えたんですよ。

 

田中:そうですね。コンサル出身の方がきちんとやられていて。

 

川田:内情はもうボロボロでした(笑)。それこそ失敗談になるんですけど。

 

田中:それ、お聞きしたいですね。

 

川田:南場さんもいろいろなところで言っていますが、システム開発で大失敗してるんですよ。立ち上げのときのメンバー3人の中で、多少プログラムを書いたことがあるのは僕だけ。エンジニアが1人もいなくて、大学の研究室の後輩で非常に優秀なインフラエンジニアがいたので、なんとか彼を口説き落として入ってもらっていました。

 

当然、システム開発ができる人がいなくて、結局全部外注しました。そこが、2か月か3か月で作ると言って請け負ってもらったのですが、リリースの2週間前に現場の責任者に話を聞いたら、実はまったくできていないことがわかって……。

 

田中:そんなことあります?!

 

小笠原:きついですね……。

 

川田:きつかったですね。結論としては、そこからなんとか知り合いに助けてもらってリリースにこぎ着けたんですけど、本当に大変でした。

コアメンバーにエンジニアがいないと苦労する

川田さんと田中

 

田中:それでいうと、最近、ITエンジニア不足が深刻じゃないですか。スタートアップで起業して、めちゃくちゃ良いプロダクトを目指していても、エンジニア不足だけでダメになる会社が多いです。当時もそうだったはずなのに、なぜいまこんなに不足感があるんだろうって、不思議なんですよね。

 

川田:なぜですかね。たぶん以前の僕らの時代は「エンジニアは下請け仕事」という時代で、本当に優秀なプログラマーはごく少数だったと思います。

優秀でかつプログラムがわかる人は、SEやコンサルタントになっていて、自分で手を動かしてコードを書く人は非常に少なかった。だから、そのときよりもはるかにエンジニアの数は増えているはずですよね。

 

田中:ただ、お金が集まっても、エンジニアが集まらないというスタートアップの話、結構聞きますよね。

 

川田:僕は、そのパターンには一切投資しないです。過去の失敗もあるので、できれば創業メンバーの中にエンジニアがいる会社がいいですね。

 

小笠原:僕もわりとそうかもしれないです。なるべくエンジニアが代表なり、経営に関わっているところに投資したいというのはあります。

 

川田:チームのコアメンバーにエンジニアがいないパターンは必ず苦労しますよ。

 

田中:そうですね。まず、1人目のエンジニアを雇うための面接ができないですし。

 

川田:でも、たとえばウォンテッドリーの仲暁子代表は、別にプログラマーではなかったんだけど、自分で勉強してプロトタイプを作ったんです。上場したときも、彼女が書いたコードでまだ動いていたはずですよ。

 

田中:そうなんですか。

 

川田:自分でコードを書いて動かしていたという事実があると、エンジニアは「この社長は単なるビジネス系の人ではない」と思いますよね。

 

小笠原:エンジニアに対する敬意があるなら、会話は成り立ちますよね。

 

川田:ビジネス系のキャリアなのに、自分でプロトタイプをつくるというのはすごいと思います。でも、ソースコードを見ると荒いから、なんとか助けてやらなきゃみたいな感じで、エンジニアの助っ人がどんどん入ってきてうまくいくことはあります。

 

 

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