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はじめに
「イノベーションストリームKANSAI」は、うめきた2期地区開発プロジェクト「グラングリーン大阪」でめざすイノベーション創出の取り組みを紹介・発信し、登壇者、出展者、関係者、参加者の皆さまとともにイノベーション創出の機運を高める都市型カンファレンスです。
7回目となる今回は、展示、トークセッション、ワークショップを中心に「うめきた Fusion~ディープテックで拓く関西の未来~」をスローガンに、2023年12月19日、20日の2日間にわたって開催されました。本記事では、さくらインターネット代表の田中 邦裕が登壇した内容についてレポートします。
あらゆる企業がIT企業になる!DX時代の到来
デジタルトランスフォーメーション(DX)というキーワードは、みなさま何度も聞いたことはあると思いますが、シンプルに説明すると、デジタルで新たな価値を創造しようというものです。
デジタルの活用には3段階あります。1段階目はデジタルによるコストダウンです。たとえば、ChatGPTのような大規模言語モデルも、コールセンターや文書作成の手間を減らすために使われます。
2段階目は、ただコストを下げるのではなくて、デジタルによって新たな売上を作るというものです。自社のサービスでデジタルを導入することにより、新規顧客の獲得と、利益の増加が期待されます。利益を出す場合、コストを減らすか売上を増やすかのどちらかになります。
これまでの30年間は、どちらかというとコストアプローチを用いて利益を上げることに苦心してきました。しかし、インフレの進行と物価の上昇が続く中で、いかに値段を上げられるかということが重要なキーワードとなっています。
この2段階目にプラスして、3段階目はデジタルによる新たな売上を作っていくというものです。たとえば鉄道会社なら、利用者を増やすだけでなく、デジタル技術の活用により商圏を拡大することができます。また百貨店の場合、単なる売上向上だけでなく、アバターの販売など、新たなデジタルビジネスを展開することも考えられます。
ただコストダウンするだけではなく、デジタルによって売上を伸ばし、付加価値を高めていく。これがデジタルトランスフォーメーションなのです。
テクノロジー・デジタルによる社会変革
インフレに対処するためには、従来のコストアプローチだけで対応するのは難しくなっています。コストではなく、売上をいかに伸ばしていくか考える必要があるのです。
そのため、AI導入においても、単なるコスト削減だけでなく、生産性の向上と売上の拡大を考えることが重要です。生産性とは、人あたりの企業が得られる付加価値のことです。その中で、コスト側にアプローチするのではなくて、入ってくる売上を向上させていくと、当然のことながら生産性が改善していきます。日本は少子高齢化が進んでいる国でもあります。それは、目先のコスト削減ではもはや成り立たないということを意味しています。
「デジタル田園都市国家構想」によって花開く地域の魅力
次にお伝えしたいのは、デジタルによって企業だけでなく人々の生活の付加価値も変わってくるということです。現在、岸田内閣によって「デジタル田園都市国家構想」が進められていますが、多くの人にとって、デジタル前提での人生設計はまだ一般的ではありません。
たとえば東京では、都市圏への人口集中による出生率低下、それによる少子化進行が懸念されています。一方で、沖縄では出生率が高い。そう考えると、東京に行かざるを得ない状況をデジタル化によって解決できれば、少子高齢化が緩和される可能性があるのです。国の発展や個人の幸せという観点でも、デジタル技術の活用により、従来の制約などから解放されることは、非常に重要だと考えています。
イノベーションによって生まれるチャンス
これまでの30年、日本の成長は鈍化していましたが、物価は確実に上昇しています。デフレの時代においては、企業にとって変化を抑えつつコストを削減することが重要でした。しかし、現在はインフレが進行し、さまざまなコストの上昇が当たり前になっている状況です。たとえば、建築コストや人件費の上昇、AI向けクラウド需要の増加など、さまざまな要因でどんどんコストが上がっていき、インフレを感じています。
ITの世界に関しては、新しくチャレンジした人が成功しました。しかし、多くの場面において、チャレンジした人のほうが損をしていたというのが、失われた30年の本質ではないでしょうか。イノベーションといっても、社会が変化を求めていない状況では、新しい技術が浸透しにくくなります。ただ、昨今のインフレ進行や、人件費の上昇などが見られる中で、社会の環境が変化してきました。これまでの30年は、チャレンジしたら損をしたわけですが、これからはチャレンジしたら得をする時代が戻ってきたと思っています。
そんななか、どの分野においても、スタートアップやオープンイノベーションが会社の実績・実利につながり、社会を良くするために効果を発揮する時代になると考えています。関西においても、かなり前からイノベーションが叫ばれていました。今こそオープンイノベーションが関西を加速させていくと感じています。
関西のイノベーションに関わるきっかけ
2013年から2014年ごろ、大阪市から「関西のイノベーションを一緒に考えてみませんか」とお誘いをいただきました。大阪市と協力して関西のイノベーションを促進することで、もしかしたら新たなチャレンジができるかもしれないと考えるようになったんです。
2013年に大阪市が開設したイノベーション創出拠点、大阪イノベーションハブが完成し、イベントを開催したり、ネットワーキングを広げる中で、さまざまな関係者が協力し、1つの目標に向かって共同で進んでいくようになりました。
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スタートアッププログラムへの想い
また、EO Osakaと協力し、起業家が起業家を育てるスタートアップアクセラプログラム「Booming!」や、大阪におけるスタートアップ・エコシステムの定着と将来の大阪発のロールモデルとなる企業の発掘、成長支援を目的としたプロジェクト「RISING!」、関西スタートアップインキュベーションプログラム「起動」などのメンタリングプログラムに関わるようになりました。
Booming!は、成長志向の創業者支援事業で、2015年から5年後に3社の上場企業を作るという目標を掲げ開始しましたが、すでにそれを超える上場企業が生まれています。Booming!でメンターをした起業家たち(メンティー)が成功し上場する。そして、今度はその方がメンターになり、次の世代を指導することで拡大再生産を促進し、持続的な発展を生み出しています。
RISING!でもメンターとして参加していました。エコシステムが持続的に成長し続けるためには、成功した人たちが次の世代を指導し、新しいメンターが登場するというサイクルを継続する必要があります。このエコシステムの拡大再生産がキーポイントだと考えています。エコシステムが健全に機能し続けるためには、拡大再生産が欠かせません。とくに、指導した人々や大企業の担当者が、その経験を通じて成長し、次の世代を指導することで、エコシステム全体が強化されます。
成功事例が経済的な成果をもたらし、企業や担当者の実績となり評価に繋がることで、オープンイノベーションやエコシステムの価値が再確認され、継続的なサポートが期待できます。拡大再生産が広がることで、関西は大きく変わっていくと思っています。
私は、スタートアップをつくる、教育を変えていく、地域を変えていくことは、同一線上の混ざりあった活動だと考えています。
新たなオープンイノベーションを推進する施設「グラングリーン大阪」
2017年に、大阪に新たな可能性があるのではと感じ、グランフロント大阪に本社を引越しました。自分たちのアイデンティティである関西で、オープンイノベーションに骨をうずめ新たなチャレンジをすることで、個々の成長だけでなく地域全体の発展に繋がると考えたんです。
2024年9月に先行まちびらきを迎える「グラングリーン大阪」には、新たなイノベーション拠点となるJAM BASEが整備されます。産学連携することで、新たな価値や技術が生まれ、学生や若手の起業家たちが育成される環境が整うのではと考えています。
関西は、ほかの地域と比べると人と人の距離が近く、大企業がグローバルに活動する拠点として優れていると感じています。大企業とスタートアップがつながり、協力することで、ほかの地域にはない、独自のエコシステムを形成してきたのではと思います。
グラングリーン大阪に進出を決めた理由
「グラングリーン大阪」は、北街区賃貸棟内に整備される中核機能施設「JAM BASE(ジャム ベース)」を中心に、新たなオープンイノベーションを推進する施設として期待されています。多くの人々が交われるよう、あえてさまざまな用途・機能を共存させ、一体感(つながり)のある施設配置や空間構成としていることが特徴だそうです。これこそがさくらインターネットが目指している世界観そのものだなと思い進出を決めました。
スタートアップ企業が集まるグラングリーン大阪に参入することで、可能性を広げることができるようになるのではないかと、期待しています。
2024年9月に、JAM BASEの3Fに進出する予定です。JAM BASEは、さまざまな用途や機能を“ごちゃごちゃ”に混ぜ合わせた配置になっており、壁のないオープンスペースが特徴です。
じつは、さくらインターネットの9割以上の社員がリモートワークで働いています。そんななか、たくさんの人たちが自由に行き来し、つながる場所を作る予定です。たとえば、イベントを開催したときなど、社外の方にも気軽に見に来てもらえるような場所になればと考えています。さまざまな人たちが交わり、そのなかで不確実性のある何かが生まれてくることを、この場所に求めたいと思っています。
そして、JAM BASEに新たに人が集まる場所を作ろうと考えたのは、新たなものを生み出す力はまだまだ足りないと思ったからです。人が集まれる場所を作って、いろいろな人とコミュニケーションや活動ができる環境を作りたいと考えています。
大阪のスーパーシティ構想の延長線上に、うめきた2期の計画が入っており、梅田エリアは駅の利用者も多く、関西の方が集う場所を考えたとき、第一想起する場所だと思います。そこに「みどり」と「イノベーション」の融合を目指すグラングリーン大阪が開発され、さくらインターネットも参入できたら、こんなに素晴らしいことはないと思っています。
さいごに
さくらインターネットは、2024年9月に先行まちびらきを迎えるグラングリーン大阪へ、オープンイノベーションを起こすための取り組みの一環として進出を決定いたしました。ビジョンである「『やりたいこと』を『できる』に変える」を実現するコミュニケーションの場を目指し計画を進めています。
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執筆
青木 茉利奈
さくらインターネット初の新卒社員。
2023年4月から、さくマガ・さくらのユーザ通信・SNS関係の担当しています。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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