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【Interop Tokyo カンファレンス 2024】「インサイドさくらインターネット」登大遊✕田中邦裕

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※本記事は2024年6月12日~14日にかけて開催された「Interop Tokyo カンファレンス 2024」内のセッション、「インサイドさくらインターネット ~田中邦裕×登大遊 トークセッション~」の概要をまとめた記事です。有料セッションのため、概要のみのご紹介となります。

IT技術者のための名著として知られる『インサイドWindows(WindowsInternals)』。Windowsの最新バージョンがリリースされるたびに重版が続き、1992年の初版の発行から30年以上が経ったいまでも、Windowsのアーキテクチャや内部構造を解き明かすバイブルとして読み継がれています。

その『インサイドWindows』になぞらえ「インサイドさくらインターネット」と題し、さくらインターネットのアーキテクチャや内部構造について、テクノロジーだけでなく、歴史や文化、組織などの観点からも掘り下げました。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA) 産業サイバーセキュリティセンター サイバー技術研究室 室長の登 大遊 さんが”外の人”として、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕とクラウド事業本部 副本部長 大久保 修一が”中の人”として、外と中の両視点から、さくらインターネットについて解き明かします。

「インサイドさくらインターネット」の語源

はじめに、登さんから自己紹介と『インサイドWindows』の紹介がされました。

IPAやNTT東日本でいろいろやっております、登と申します。よろしくお願いします。

今日のテーマである「インサイドさくらインターネット」という言葉には語源がございます。『INSIDE WINDOWS NT』という書籍があります。現在のWindows10、Windows11のようなソフトウェアの、とくに「カーネル」と呼ばれる内部構造の高度・複雑な部分はどうなっているか。企業秘密なのですが、それをまったく公開しないと技術者が育ちませんし、若い学生も興味を持ってくれません。

そこでMicrosoftは20年以上前から、Windowsの中身をだいぶ抽象的な部分となりますが書籍にまとめているんです。具体的なソースコードではなく、エッセンスが書いてあり、これを見ればWindowsがわかるだけではなく、WindowsのようなOSを自分で作りたいと思える、そんな内容です。

Microsoftの素晴らしいところは1からOSを作っていて、いろいろな部分にオリジナリティーがあることです。

以前にさくらインターネットの田中さんがIPAにいらしてくれた際、さくらインターネットもクラウドを全部自社でつくっているから、作り方も全部わかると話してくれました。

それを聞いて興奮しまして、さくらインターネットについてさまざまな質問をする機会をいただけたのが、今回のセッションです。

続いて、さくらインターネットの田中が自己紹介をおこないました。

田中

さくらインターネットの田中です。28年前、舞鶴高専在学中にさくらインターネットを起業しました。私が使っていたサーバーを共同利用していた友人から、「お金を払うから続けてくれないか」といわれたのがさくらインターネットの起源です。

13年ほど前にAmazonのAWSを見て「これはすごいな」と衝撃を受け、自分たちでも作れないかと思い、2011年に「さくらのクラウド」を私が1人で作りはじめました。プロトタイプを作ってからは社員と一緒に広げていきました。いろいろなトラブルを乗り越えながら、2023年には、条件付きではありますがガバメントクラウドに認定されています。

ちなみに、さくらのクラウドの提供開始とともに、北海道に石狩データセンターを開所しました。そこに作った理由は、もちろん経済合理性として安く済むということもあります。ただそもそも13年前にデータセンターを作った背景としては、「いつかデータセンターを作ってみたかった」という自分の夢だったんですよ。それを東京、大阪で叶えるのが難しかったので、北海道に作りました。

以前はデータセンターの運用を外注していましたが、8年ほど前からはすべて自社の正社員でおこなっています。とにかく自分たちで設備投資して、自分たちでソフト開発して、自分たちでサービスを提供することをずっとやってきたのが、さくらインターネットという会社です。

ただ、途中には失敗もありました。一時期、仮想化をやっていなくて、ソフトウェアよりも物理基盤に注力していたことがあるんです。そんななかで2010年に「さくらのVPS」という仮想化サービスを始めます。要は設備も重要なんだけれども、それを仮想化レイヤー、いわゆるシステムソフトウェアレイヤーまで自分たちで作ることにしたんです。その次の年に石狩データセンターの開設とともに、さくらのクラウドを提供開始しました。

2015年くらいから、私はコードを書くことはなくなりましたので、今日はクラウド事業部門で技術に一番くわしい人を連れてきました。大久保さん、自己紹介お願いします。

大久保

さくらインターネットの大久保と申します。現役でさくらのクラウドの開発に携わっております。現在、クラウド事業本部の副本部長を担当しておりまして、今年入社21年目となります。

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登さんからさくらインターネットへの質問

登さんからさくらインターネットにいただいた質問を、5つピックアップしてご紹介します。

田中さんがレンタルサーバーをはじめたきっかけや当時の様子を教えてください。

田中

高専在学中、勝手に研究室へサーバーを置いていました。研究室の先生は知っていましたが、そのうち学校に知られてしまいました。友人からは「お金を払うからサーバーを使いたい」と言われていたので、地元のプロバイダー3社に「アルバイトするから無料でサーバーを置かせてほしい」と連絡したんです。そのうちの1社から返信があり、サーバーを置かせてもらいました。スライドの中央にある写真が、当時置かせてもらっていたサーバーです。

さくらインターネットの最初のインターネットバックボーンはどういうものでしたか。

田中

高専の研究室でイエローケーブルを使ってインターネットの分岐を自分で作り、サーバーを置いてIPアドレスを割り当ててもらいました。自分でドメインをJPNICに申請するという一連のプロセスを進めました。

昔、フレッツPPPoE接続もされていたと思います。あれはどのようなシステムになっていたのでしょうか。

大久保

PPPoE用の収納ルータを作ってやっていました。フレッツとつなぐケーブルは自前のものです。接続方法は結構特殊で、分厚い接続マニュアルを読み込んでなんとかつなぎました。

さくらのクラウドのアーキテクチャはどのようになっているのでしょうか?

大久保

基本的にはLinuxとKVMを組み合わせたハイパーバイザーを構築しています。クラウドは一般的にはlibvirtを用いると思うんですけども、さくらインターネットの場合はそれと同じような仕組みを自社で開発しました。これを作ったのは田中です。生のQemuを直接制御する形で動かしています。なので、vCenterやOpenStack Novaに相当するものを自社で開発しています。

クラウドはホストサーバーの中ではお客さまのデータは格納せず、すべて専用のストレージ機器に格納する構成になっています。お客さまのディスク契約ごとに論理ボリュームを作り、そこにiSCSIセッションを張っています。

これまでの長い歴史の中で、大変だった出来事について教えてください。

田中

直近でいうと、やはり北海道胆振東部地震です。最大震度7の地震の影響で、約60時間の停電が発生しました。復電するまで、さまざまな関係者のお力添えもあり、北海道の石狩市にあるデータセンターを停止させることなく運用し続けることができました。


登さんからの質問のほかにも、会場にいる方からも質問が飛び出し、登壇者が回答するといった一体型のセッションとなりました。

セッションの最後には、登さんより「長い間、ユーザーを大切にされていること、そしてすべての技術を内製化されていること、そのエッセンスを教えていただきありがとうございました。技術だけではなくてお客さま第一で、エンジニアを集めるという精神は素晴らしいと思います。ぜひ、この知の共有を今後もお願いします」とコメントいただきました。

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執筆・編集

さくマガ編集部

さくらインターネット株式会社が運営するオウンドメディア「さくマガ」の編集部。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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