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【Interop Tokyo カンファレンス 2024】さくらインターネット田中邦裕のIT戦略2024 ~生成AIによる変革・日本のデジタルインフラの未来~

さくらインターネットのガバメント分野への取り組みとは?
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※本記事は2024年6月12日~14日にかけて開催された「Interop Tokyo カンファレンス 2024」にておこなわれた、さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中 邦裕が登壇したセッション「さくらインターネット田中邦裕のIT戦略2024~生成AIによる変革・日本のデジタルインフラの未来~」をまとめた記事です。

すべての人々がテクノロジーの進歩と影響を理解し、それに適応することが求められる時代となりました。とくに生成AIの台頭は、この変革の波を象徴しており、情報検索から創造的な作品の生成に至るまで、私たちの仕事や学びや日常生活にまで大きな革命を起こしています。 

2024年の現在、生成AIによる変革だけではなく、ガバメントクラウドをはじめとした国のデジタル化の推進、経済安全保障による基幹インフラの安全性確保、NTT法による通信市場の変革などを目の当たりにしています。これらの動きは、日本のデジタルインフラのあり方に大きな影響を与えるでしょう。

本セッションでは、これらのキーワードを中心に、最新の事例を交えながら日本が直面しているIT業界の最前線とその課題について、BBIX株式会社 専務取締役 兼 COO1 福智 道一 氏と、さくらインターネット 代表取締役社長 田中 邦裕が語り合いました。

本記事では、田中のコメントを中心にお届けします。

28年間デジタルインフラサービスを提供し続ける

さくらインターネットは、創業以来28年間、デジタルインフラサービスを提供しているIT企業です。時代の移り変わりが激しいIT業界において、ずっと同じことをやっている会社はかなり珍しいと思います。

それだけに、いかにトレンドにいち早く乗って成長するかが大変重要になります。

さくらインターネットが創業した1996年から2000年の間に、Webはとてつもなく広がりました。これは、インターネットが伸びたというよりはWebが伸びたという意味で、じつはインターネットブーム=Webブームなのです。NetscapeやMosaicがリリースされましたし、Yahoo!やGoogleももちろんWebです。とくにGoogleが開発し特許を取得したページランクのアルゴリズムはGoogleのコア技術となって当時急成長しました。さくらインターネットは、そのような2000年頃までのWebの流行りに乗るように創業しました。 

その後、2003年から2008年頃までにWeb2.0を用いた動的コンテンツの時代へと移り変わっていきます。それまで、たとえばブログやSNSといったものは、既存の紙やFAXをWebに置き換えただけに過ぎませんでした。いきなりすべての人が情報発信することはできなかったのです。

しかしWeb2.0により、さまざまな人がコンシューマージェネレイテッドメディア(CGM)と言われるようなパーソナルなコンテンツを世界中に発信できるようになりました。Webでしかできないことが可能になったのです。

このWeb2.0ブームによってさくらインターネットは大きな成長を遂げることとなり、2005年には上場を果たしました。当時の主要顧客は、mixi、GREE、サイバーエージェント、はてな、paperboy&co.などでした。 

2015年から2020年頃には、ブロックチェーンやディープラーニングによって大きく伸びました。Web3.0やディープラーニング、AIがブームとなった頃です。この頃の主要顧客は、ドワンゴ、Preferred Networks、トヨタなどディープラーニングを最大限活用している企業です。さらにはABEJA、フィックスターズなどのAIに関する会社が中心でした。

「アマゾンエフェクト」という言葉をご存じでしょうか。アマゾンが進出した分野は軒並み変革されてしまうという現象です。デジタルインフラのビジネスにアマゾンが参入し、非常に厳しい状況におかれました。

この状況のなかで、デジタル庁から弊社に対しガバメントクラウドの提供事業者になれないかというお声がけがあったのです。結果として条件付きではありますが、2023年さくらインターネットが日本企業初のガバメントクラウド提供事業者に選定されました。クラウドインフラは目先の儲けは見込めないものの、3年、5年、10年先にクラウド・バイ・デフォルトになったときには絶対に儲かるのです。私は、5年後に伸びているのはコンサルビジネスとクラウドインフラビジネスだと考えています。

おかげさまで、いまはGPUクラウドもガバメントクラウドも伸びていて、さくらインターネットは生成AIブームとデジタル貿易赤字、経済安全保障銘柄として成長をしています。大きな流れに抗うよりは、伸びている分野にいかに速くフィットさせるかというのが経営の根幹です。いまはちょうど追い風を受けながら成長をしていると感じています。 

既存企業の成長とスタートアップ共創の方向性

経営者も、ある程度の規模になると伸びていなくてもうまくいっていると思い込んでしまうところがあります。それに、80年代は1兆、2兆の売り上げを目指している会社が多くありましたが、いまは100億、200億の売り上げで成功したと見なされます。成功の基準がとても低くなったことで、成長へのモチベーションを失ってしまっているのではないでしょうか。現在、時価総額が日本のトップ50位に入っている会社の中で、平成以降に創業された会社は1社もありません。さくらインターネットもトップ50位に入りたいと思っています。そういう志を持つ新しい企業がチャレンジを続けて、成功する姿を見たいです。 

この30年間、日本のGDPは横ばいでした。2002年あたりからは社会が良くなってきて、景気は上向きかけていました。そのときに投資に目を向け直した会社も多くあったのですが、リーマンショック、そして2011年の震災が決定打となり、そこから日本はまったく伸びなくなってしまいました。景気が横ばいの状況下で社員を確保することはリスクにつながり、コストダウンやアウトソーシングのようなビジネスが伸びていきます。その結果、独立したエンジニアたちが子会社、孫会社、ひ孫会社として外注を請けることとなり、日本の多重請負構造を引き起こしました。 

ここ3、4年でエンジニア紹介をする人材ビジネスがとても伸びていますが、その要因は自社でIT部門を持って変革を進めようとしている会社がようやく増えてきたからです。いよいよここから、成長や変化をする会社が伸びていく時代が戻ってきますし、それが社会の成長にもつながっていくと思います。

さくらインターネットはスタートアップ共創にも力を入れています。国の方向性が新規創業の支援ではなく、できたスタートアップをいかにユニコーンにしていくかに変わったことを強く感じます。3、4年前まではたくさん作ることが重要視されていましたが、いまはメガスタートアップ、メガベンチャーを作っていくという施策に変わりました。

ただここにきて、スタートアップをユニコーンにする以前に、上場企業が1,000億円を超えるようにするべきではないかという議論がなされています。スタートアップの支援も重要ですが、既存の企業がいかに伸びるかも大事です。関西経済同友会にも大企業が多いですが、大企業がスタートアップのエッセンスを得ながらも企業体を大きくしていって、1兆円から1兆1,000億円に伸ばすほうがより合理的なのではないかと考えています。 

>>さくらインターネット、スタートアップ共創プログラム「Link up」を開始(ニュースリリース)

世界経済と比較して見る日本の状況~第5次産業革命「インダストリー5.0」の時代へ~

アメリカのS&P500も伸びて成長していると言われますが、じつは既存の企業はそれほど伸びていません。ITのメガベンチャーなどを多く擁しているだけのことなのです。 5年前までと、現在のITはずいぶん変わってきています。以前はGoogleやFacebookなどのWebで成功した会社が多く、いわゆるネット企業台頭時代と言われていました。

それが、ここ5年でクラウド化してきたことと、スマートフォンなどのデバイスが重要になってきたなかで、MicrosoftとAppleが息を吹き返しました。面白いのがNVIDIAで、一時期にAppleの時価総額を抜いたのを見ればわかるとおり、アメリカではつねに新しい企業が果敢に上位の企業に挑んでいる状況があります。 

2020、2021年あたりは、新型コロナウイルス感染症の影響で変化が激しく、AppleやMicrosoftも伸びたので世界の時価総額が膨張しました。そのうち減るだろうと言われていたのですが、その後も増え続けています。同じくインターネットとトラフィックもコロナ禍のときにすごく伸びて、一旦落ち着いたものの最近になってまた伸びてきています。

これ以上膨張しないと言われていますが、膨張し続けています。テック企業が伸びているわけですが、GAFAMを除いた時価総額を見ると日米にそれほど差はありません。
たとえばトヨタは時価総額が60兆円ほどで、とても伸びています。日米半導体協定の交渉のときに自動車業界も徹底的に叩かれたのですが、トヨタはリスクを取ってアメリカに工場を作りました。90年代は大変な状況でしたが、いまとなっては5兆円の利益をあげる会社になっています。

そういった視点で見ると、日本の成長性もそれほど悪くはないのですが、デジタルを持たなかったことと、半導体を捨ててしまったことは失敗だと言えるでしょう。日本もここへ来て巻き返していますが、世界は生成AI向けの半導体中心に変わってきています。 
90年代にインダストリー3.0といういわゆるIT革命が起こりますが、モバイルの変化がとても大きく影響しました。その後の4.0でロボット化やIoTによる自動化、そして現在の5.0、これはまさしくAI革命です。 

いま、何日も時間をかけておこなっている作業が、AIによって2、3秒でできるようになる可能性もあるのです。飛脚と車がまったく勝負にならないのと同じで、AIを使わなければビジネスが成り立たなくなっていくことを理解する必要があります。 

もっと多くの人がChatGPTをはじめとする生成AIの有料版をきちんと使って、メリットを享受する必要があります。そして、これからはどういうプロンプトを投げられるかということが大事になります。テクノロジーの怖いところは、必要とされるスキルがまったく変わってしまうことです。いまはプロンプトの発想ができる人が優勢になってきています。 

国の動きから見るこれからの企業のあり方とデジタルインフラの未来

世界の動きの変化としては、企業は利益を出せばいいというものではなくなってきています。いかに国全体の付加価値を高めるか、どうしたらGDPを高めていけるかを考えなければなりません。利益は付加価値の1つではありますが、人件費や減価償却費、賃貸料といったコストも含まれています。利益を出す方法はコストを下げるか売上を伸ばすかの2つしかないのですが、利益を出すためにほかの部分を圧縮してしまっては、拡大再生産ではなく縮小再生産になってしまいます。 

さくらインターネットの生成AI向けクラウドサービスに関しても、今後、資源高になり競争も激しくなると見込んで価格を4割上げています。やはり定価、売値を上げることによって社員への給与をもっと上げていくべきなのです。さらにサプライヤーに対してもどんどん払えるようにしていけば、サプライヤーも自社の社員に高い給与を払えるようになり、好循環が生まれるでしょう。

そして、地域によって待遇を変えるのはそもそもおかしなことです。北海道にあるさくらインターネットの石狩データセンターでは、運用担当を外注から自社の直接雇用に変えて同じ給与体系にしたところ、明らかに離職率が低くなりました。賃金の引き上げや人的投資は、次の成長につながっていく大きな要素だと考えています。 

いま、デジタル化を背景に活発に状況が動いているのがデータセンターです。いよいよクラウド化が進んできたことによって、東京や大阪を中心としていたデータセンターが地方に移りはじめています。 
データセンターは電力多消費施設であり、現在の10倍の電力があっても国のデータセンターは支えられないと言われています。エネルギーの安定供給の確保に加え、脱炭素電力の確保やGX推進の必要性が高まりました。

さくらインターネットのデータセンターにおいても、再生可能エネルギー電源への変更や、外気を利用した空調設備を採用するなど、脱炭素と消費電力の削減に取り組んでいます。 
国はすでにGX推進戦略を閣議決定しており、エネルギーの安定供給と脱炭素に関する分野への投資を促進する方針です。国だけではなく、投資家の関心も向かっていくことになるでしょう。世界はGX時代に突入しています。世界的にもESG投資額が急増しているように、ESGの取り組みが進んでいない企業はいくら利益を出したところで株価が上がらなくなっていきます。

もう1つが生成AIです。どう考えてもこれからAIインフラは伸びるわけです。AIインフラがなければAIの構築ができません。日本はAIの利活用を推進していますが、海外のAIを利活用すればするほど、デジタル貿易赤字が拡大するわけです。日本にエンジニアがいないわけではないのに、なぜ自分たちでAIを開発しないのでしょうか。自動車と同じで、使うだけではなく作るビジネスも必要なはずです。さくらインターネットは、生成AI向けGPU基盤などに対して約1,000億円の投資を計画しています。 

これからは、人材の獲得や教育、新しいテクノロジーの導入にどんどん投資し、新たな価値を創造するべき時代です。成長と変化を受け入れることによって、若い人たちが目指してくれる、さらなる成長に向かっていく、国産クラウド事業者でありたいと考えています。 

さくらインターネットの提供するクラウドサービスの特徴やメリットをご紹介
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  1. セッションがおこなわれた2024年6月14日時点。2024年10月9日現在、BBIX株式会社 Senior Liaison Officer。 ↩︎

執筆・編集

さくマガ編集部

さくらインターネット株式会社が運営するオウンドメディア「さくマガ」の編集部。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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