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「ネオ・サッポロバレー」の旗手 インプルが見据える未来

オフショア開発は大規模サイトの構築などにおける開発やインフラ構築、さらには運用保守などのプロセスを国外に委託することによって、人件費の削減や生産性の向上が期待できる開発手法だ。一方で、言語的な問題やスキルの齟齬などにより、かえってトラブルに見舞われる場合も多い。

 

そんななか、オフショア開発で高い顧客満足度とリピート率を獲得している企業がある。北海道・札幌に本社を構える株式会社インプルだ。最先端の IT技術にこだわり、大手企業を中心に支持を集める同社の特色と、高い信頼性と迅速な開発に定評のあるオフショア開発のあり方について、代表取締役CEO の西嶋 裕二さんに聞いた。

西嶋 裕二さん(にしじま ゆうじ)さんプロフィール

立命館大学理工学部中退、株式会社ソフトフロントホールディングス、株式会社コネクトテクノロジーズ(現:株式会社ジー・スリーホールディングス)にて金融機関向けモバイルアプリ開発事業に携わる。2011年、株式会社インプルを設立し、代表取締役CEO に就任。F&Pジャパン株式会社 CTO。2022年9月より一般社団法人北海道モバイルコンテンツ・ビジネス協議会会長に就任。

最新技術にこだわり 価値を提供する

インプルが開発した製品(インプル提供)

北海道・札幌。当地は1980年代から90年代にかけて、ITベンチャーの集積地として脚光を浴びた。その盛り上がりから、かつては「サッポロバレー」と呼ばれていたが、バブル崩壊後の北海道経済の不況から、その呼び名は失われつつあった。

 

しかし、その札幌の地で再び、テクノロジー領域で注目を集める企業がある。2011年設立の ITベンチャー、株式会社インプル(以下、インプル)だ。東京に本社を構える大手企業をメインクライアントとする同社の強みはどこにあるのか。西嶋さんに聞いた。

 

「インプルの特色は、React Native や Flutter を活用したスマートフォンのアプリ開発を得意とする点にあります。これらは iOS や Android いずれの OS にも対応できるアプリが開発できるフレームワークで、それをいち早く取り入れたリーディングカンパニーとして評価をいただいています。インプルがミッションとして掲げているのは『先進技術で革命を起こす』。スマートフォンのアプリ開発に限らず、最先端の技術領域を積極的に取り入れているため、顧客にはシステム開発や企業の DX支援など幅広い提案ができる点が強みです」

 

設立から 12期目を迎える現在、従業員規模は 100名を超え、IPO(新規株式公開)の準備を進めているという。地方都市でありながら東京のベンチャー企業にも匹敵する成長を遂げている背景には、同社のミッションに共感する人材の姿がある。

 

「2011年の設立当時からスマートフォンアプリの開発をおこなっています。いまでは多くの企業がアプリ開発をしていますが、当時はスマートフォンが日本に普及しはじめた黎明期。その頃から法人向けのアプリ開発を担い、つねに最新技術をキャッチアップし、扱いつづけているというのは、インプルの理念を実証しています。そのため、セールスとしてもターゲットの顧客ニーズを把握しやすく、採用でも新しい技術に挑戦したいエンジニアが集まっているんです。あくまで『先進技術』にこだわりつづける姿勢が、マーケティングやセールス、そして採用に相乗効果をもたらしていると考えています」

「リピート率90%以上」を実現するオフショア開発

Alobridge のエンジニアたち(インプル提供)

インプルの開発におけるもう1つの特徴に、信頼性の高いオフショア開発がある。オフショア開発は大規模サイトの開発やインフラ構築、さらには運用保守などのプロセスを国外に委託することによって、人件費の削減や生産性の向上が期待できる開発手法だ。同社のオフショア開発を担うのが、2019年からベトナムに設置した 100%子会社の Alobridge(アロブリッジ)だ。

 

「Alobridge は、設立当初の社名がインプル・ベトナムで、親会社である当社のプロジェクトの一部を担う子会社という位置づけでした。そこから社名変更に合わせて戦略転換し、海外の優れたエンジニアのスキルを日本企業に提供し、開発支援をおこなうようになりました」

 

現在ではインプルのプロジェクトが半分ほど、ほかは顧客のプロジェクトを直接手掛けているため、独立採算制の高い組織へと成長しているという。一方で、オフショア開発には言語的な問題やスキルの齟齬などにより、かえってトラブルに見舞われる場合も多い。海外の子会社でありながらも日本企業と円滑にプロジェクトを進行する自走力は、どのように培われているのだろうか。

 

「Alobridge は、現地に日本人の責任者が駐在し、人材採用にも注力していることに特徴があると思います。日本語を話せるエンジニア、エンジニアではないが日本語が話せる人材、そして日本語は話せないが優れた技術を持つエンジニアと、言語レベルやスキルによってグラデーションを設ける。そうすることで、コミュニケーション力と開発力の両立を実現しています。もちろん込み入った話になる際は日本人スタッフが対応することもありますが、定例ミーティングなどは現地のエンジニアが参加し、直接コミュニケーションをとることも可能です。そのため、認識の齟齬が発生しづらく、安心してプロジェクトを進行することができるのです」

 

「エンジニアの顔が見える」オフショア開発だからこそ、信頼できる。Alobridge の顧客リピート率が 90% を超えることからも、顧客からの信頼を得ていることが伺える。また、西嶋さんは「親会社と子会社の間での相互支援体制の構築も意識した」と語る。

 

「オフショア開発をおこなう会社には大きく2種類あります。1つは海外資本でつくられた独立系の会社で、もう1つは Alobridge のように日本資本で設立され、親会社も日本にある会社です。当社の場合は札幌に開発拠点を構え、日本人エンジニアやセールスが多数在籍しているため、ベトナムでの開発で困ったことがあった際にはすぐにフォローできるのです。また、得意とする開発領域をインプルと同じアプリ開発やフロントエンドにすることによって、開発チームとの連携のしやすさも意識していますね。このように、Alobridge に独立性を持たせつつ、インプルと強い連携があることで、顧客にとって安心材料を提供できていると考えています」

 

Alobridge では現在、現地従業員の語学教育にも注力しているという。2024年6月までに全従業員の日本語検定の N3、もしくは TOEICスコアの 700点以上の取得を目指す。

日本でのIT人材不足に貢献。外国IT人材の可能性

西嶋 裕二さん

日本での最先端技術に対応した開発、ベトナム子会社における信頼性の高いオフショア開発を確立するインプル。同社は2022年10月末、ベトナムの IT人材に関する育成サービスを運営する NiX Education と資本業務提携を実施した。見据えるのは、日本における IT人材不足の解決だ。

 

「日本では2030年に最大79万人のIT人材が不足するといわれています 。*1 少子高齢化社会の現状で、あと7年でその不足を補うことは難しい。一方で、日本企業の競争力を高めるためには、このギャップを必ず埋めなければなりません。そういったなかで、海外の人材に着目するというアプローチを選びました。Alobridge の設立もそのような考えがベースにあります。今回の資本業務提携には、大学教育の段階からより価値の高い人材育成に取り組むことを意図しています」

 

 

NiX Education が手がけるのは、就職を控えた大学生に向けた語学教育と業務スキルのトレーニングだ。今回の資本業務提携でインプルが目指すのは「高度グローバルIT人材」の確保だという。では、インプルとしては今後、どのような人材の流れをつくりだそうとしているのだろうか。

 

「目的は優秀なベトナム人エンジニアが来日して日本企業に就職することで、IT人材の不足をカバーすることです。一方で、現在ではチャットやオンラインミーティングなどのコミュニケーションツールが普及しているため、現地でリモートワークをしたり、日本企業の現地法人で働くという選択肢もあります。今後、優秀な現地人材が場所を問わずに日本企業で働けるプラットフォームを構築する予定です」

 

現在、インプルの従業員の約10%が外国籍の人材だ。それに加え、Alobridge と NiX Education のノウハウを活用することでより大きなシナジーを発揮しようとしている。

 

「実際、インプルで働いていたベトナム人エンジニアが、ライフイベントを機に帰国し、 Alobridge に転籍するという事例もあります。このように、働ける環境を構築することも重要です。日本とベトナムで優秀な IT人材が絶えず流動する仕組みをつくることで、IT人材の不足という大きな社会課題の解決に貢献できると考えています」

アプリ開発ソリューション市場トップシェアを目指す

インプルの役員及びマネージャー(前列)と 2023年の新卒入社社員(インプル提供)

前述のとおり、インプルは現在、IPO の準備を進めているという。そこにはどのような事業展望を描いているのだろうか。西嶋さんは「アプリ開発ソリューション市場でのトップシェア企業に押し上げたい」と意気込みを語る。

 

「現状、インプルは React Native による開発のリーディングカンパニーであり、アプリ開発やフロントエンドでは一定の認知をしていただいている段階です。そこをもう一歩突き抜けるようなかたちで、市場のシェア1位を狙いたい。現状、アプリ開発ソリューションには、大小含め多様なプレーヤーがいて、市場規模は約850億円といわれています。そのなかで 5%のシェアがとれれば 1位になれる。さらには 10%のシェアを獲得できれば、2位以下に圧倒的な差をつけられます。

 

IT業界のなかではニッチな市場ですが、ここで1位になるというのは事業戦略上とても重要なことだと考えています。IPO は資金調達とブランディングの両面において非常に大きなステップとなり、シェア獲得に向けた大きな足がかりとなります。最終的にはアプリ市場を含めた DX という大きな成長市場のなかで、最先端の技術を駆使したさまざまなソリューションを提供できる企業として認知されるようになりたいです」

 

一方で、西嶋さんは自社の技術を活用した社会貢献にも意欲を見せている。着目するのは、地元・北海道の地域創生だ。

 

「北海道の地方部に目を向けると、その地域における課題は多くあり、地域の観光資源や魅力が引き出しきれていない現状があります。北海道のなかで、札幌は、ほとんどのビジネスが集約されている関東における東京都のような存在です。地方創生にはデジタル化が必要になりますから、そういったところは札幌に本社を構えるインプルが大きく貢献できると考えています。また、地方創生は事業としても非常に大きなポテンシャルがあります。ヘルスケア領域やモビリティ領域など、ノウハウを活用しながら地域課題を解決するソリューションを提供していきたいです」

 

株式会社インプル

 

執筆

川島 大雅

編集者・ライター。ビジネス系のコンテンツ制作をメインに行っています。大学では美術史専攻。一時ワイン屋に就職してたくらいにはワイン好き(詳しくはない)。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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