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ヒトではなくシステムを変えていく。DXで事業拡大を目指す宅配洗濯代行サービス「オーサムウォッシュ」

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料理の作り置きや掃除など、生活から切り離せない家事を代行するさまざまなサービス。このうち、日々の洗濯を手放すことで時間を生み出せるのが、HIPSTER株式会社(以下、HIPSTER)が提供する宅配洗濯代行サービス「オーサムウォッシュ」だ。代表取締役の保倉 光貴さんがシンガポールやフィリピンで洗濯代行サービスを利用した実体験をもとに立ち上げたという同サービスは、利便性が高く安価な内容を実現するため、DXを推進。サービス拡大とともに柔軟にシステムを改善している。同サービスの特徴や今後の展望について、保倉さんに話を聞いた。

保倉光貴(やすくら みつき)さん プロフィール

HIPSTEP株式会社 代表取締役
1985年9月11日、兵庫県西宮出身。20代前半にシンガポール、フィリピンにてオンラインペイメントサービスのCS部門を担当。帰国後は大手モバイルゲーム会社にてCS部門や新規事業の立ち上げに従事。在籍中に趣味でオーサムウォッシュを立ち上げ、2024年7月より代表に就任。趣味はサーフィン、筋トレ、外食。座右の銘は「アイデアは移動距離に比例する、運がすべて、人生は実験」。

最短当日集荷、翌日配達。宅配洗濯代行サービス「オーサムウォッシュ」とは

HIPSTERが展開する「オーサムウォッシュ」は、個人・法人向けの宅配洗濯代行サービスだ。洗濯量、回数に応じてプランを選べる月額プランのほか、90分で集荷、翌日配達に対応している単発プランも展開している。単発プランでは、一時的なニーズに応えられるほか、「いきなりサブスク契約をするのは不安」という人向けにお試し利用も可能だ。

利用方法は簡単。スマートフォンやパソコンから都合に合わせて集荷依頼をし、洗濯物を専用バッグに入れて出すだけだ。受け渡しは宅配ボックスやドアノブにかけておくなど、不在時にも対応できるようになっている。集荷から最短翌日には洗濯、たたまれた衣類を自宅に届けてもらえるサービスだ。

オーサムウォッシュ利用時に洗濯物を入れる専用バッグ。専用バッグは月額プラン申し込み後、翌営業日に宅配される。単発プランでは専用バッグではなく、45リットルのビニール袋に入れて集荷依頼をおこなう。

「オーサムウォッシュ」の着想を得たのは、保倉さんがシンガポールやフィリピンで実際に利用した洗濯代行だという。

「コンドミニアムの下に洗濯代行店があり、朝にスーパーの袋に入れた洗濯物を出し、帰りに受け取って帰るという手軽さが魅力でした」

日本でも洗濯代行を根付かせたい。そう考え保倉さんが動き始めた2016年は、Uber Eatsが東京でサービスを始めるなど、日本でもスマートフォンを使って手元で何かを頼むことが当たり前になってきた時期だった。

「当時、すでに店舗持ち込み型の洗濯代行サービスは国内に存在していました。ただ、持ち込み、持ち帰りが必須なサービスは、日常の洗濯を外注するにはハードルが高い。サービスを広げるには、簡単であること、すぐに頼めること、お手頃な価格であることが重要。スマートフォンで簡単に頼めるサービスを作り、低価格で提供できれば、広げていけるのではと思ったのです」

「オーサムウォッシュ」が不在時に対応可能なのも、手軽さを重視したためだ。これも、保倉さん自身が家事代行サービスを利用したときに感じたことをサービスに反映したのだという。

「掃除を頼むには自分が家にいなければならず、予約の日程調整が難しいなと思いました。また、家事代行は『いま』頼みたいケースが多いにも関わらず、最低でも3日前には予約が必要なことも多かったんです。忙しいからこそ使いたいのにすぐ使えず、調整の手間が増えることに違和感がありました」

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課題やニーズに応じて、システムを改善。業務の効率性と確実性を担保

洗濯をおこなっている工場。2024年8月には第二工場も増設

スマートフォンから簡単に申し込めて、最短で翌日には洗濯後の衣類を宅配するサービスをできるだけ安価に提供したい。これを実現しているのが、ITの活用だ。「オーサムウォッシュ」は、保倉さんの前職である大手スマートフォンゲーム会社時代からの付き合いであるエンジニアがおもにシステムの設計を担当。自社にエンジニアがいるからこそ、こまやかなシステム改善が可能だ。そして保倉さんは前職時代に顧客対応業務をメインとしていたことから、ユーザー目線でのサービス改善力に強みを持っているという。

システムは顧客向けだけではない。工場オペレーション、集荷・配達など、サービス全体を考えたシステムを開発することで、ミスなく効率的に運用しているのだ。

工場で働くスタッフは、その日にどの顧客のどの洗濯物をするべきなのか、特別な要望や注意点の有無を含め、すべてスマートフォン上で確認しながら作業を進められる。集荷・配達(集配)も同様、その日の担当案件と最適なルートが表示されるため、それに従って集配を進めれば、確実に仕事を終えられる仕組みだ。1件終わるごとに「OK」ボタンを押すことで、業務管理もできている。

「集配に関しては、集配を別日におこなうプラン、同日におこなうプランを提供しています。同日プランを選んでいただければ、洗濯済みの衣類のお届け時に次の洗濯物を回収できるため、われわれが訪問する回数が半分になります。お客さまの負担が減りますし、われわれにとっても効率的なんです」

ただ、最初からいまのようなシステムが整っていたわけではない。顧客数の増加に伴い見えてくる課題に、システムを柔軟に変えることで対応してきたという。

「ボタンの押し間違いや押し忘れなどミスが生じた場合、『人が悪い』とはせず『そうさせるシステムが悪い』と考えるべきだと前職時代の経験から学びました。私も、開発しているエンジニアもそのようなマインドで考えているので、何かミスが起こると『そうならないためにシステムをどう改善すればいいのか』と考えるようにしてきました」

具体的な改善例の1つが、依頼数と集荷時に出されているバッグの個数とのズレへの対応だ。配達員は集荷時にステータスを「対応済み」に変えることになっているが、ここで実際の受け取り数を入れなければ次の作業に進めない仕様に変更したのだという。

「この個数が注文数とされるため、実際の数と間違っていた場合、売上にも影響が及びます。『数が違っていたら直してね』と配達員に任せる仕組みでは、どうしても抜け漏れが出る可能性があります。『絶対に数を入れる』流れにすることで解決できた一例です」

業務管理もシステムで完結。柔軟な働き方を叶えたい

工場オペレーション、集配ともにITを活用することの利点は、人が付きっ切りで教える必要がないことにもある。初日に少し研修をしさえすれば、すぐに仕事を始められる。それにより、物件(工場)と、そこに置く必要な機械、働く人がいれば事業をスケールできる。管理者を置く必要がないため、人員が増えても管理コストが増えることはないという。

「極端に思われるかもしれませんが、弊社では業務に関して口頭でやり取りするのはやめてほしいと言っているんです。各自がスマートフォンでボタンさえ押してくれれば仕事が進み、誰がどの仕事を終えたのかはチャットに自動投稿されるため、自分で報告を別途上げる必要もない。宅配洗濯代行サービスは実働部分にどうしても人が必要な事業ですが、DXによりコストを最小限に抑えられます。宅配洗濯代行市場は現在大手も参入してきている拡大市場ですが、DXのノウハウ、開発力では大手にも負けない自信がありますね」

では、肝心の人材採用についてはどうなのか。ここに関しても「心配ない」と保倉さんは語る。

「現在は、ニーズが増えたタイミングでスキマバイトサービスを活用し、その間に採用を進めるようにして対応しています。スキマバイトに募集を上げたら、すぐに応募枠が埋まるんですよ。ふだん家事をしている主婦層の方がトライしやすいのもあるでしょうし、働きやすい環境をITで整えているのも大きいと思います」

いずれは、自分でスマートフォンを使って働く枠を申告して、24時間いつでも好きなときに出社し、目標分の業務を終えれればOKとする働き方を実現したいと語る保倉さん。働き方の多様化にもつながる考えだ。

「日々の洗濯を外注する」認知の拡大を目指して

一般消費者にとって、クリーニングではない、ふつうの洗濯を外注するという認知自体が低いのが現状だ。単発プランを導入したのも、「利用する人を広げたい」想いが強かったという。

「日本人は『日常の洗濯は家でできるもの』という価値観が根強いです。これは洗濯に限らず家事代行全体にいえることなのですが、家事を外注することに対し、まだまだ『お金を払ってさぼっていると見られるのでは』という懸念がある。そのため、ほかのサービスとは異なり、利用していることを知人友人に話すことで広がる口コミ効果は薄いのが現状です。

ただ、一方で『時間を買う、生活の余裕を生む』ために家事代行を使う価値観が生まれてきているのも事実です。まずは単発サービスを含め対応エリアを広げ、『1回試してみる』人を増やしたいですね。大前提として、サービスの質を落とさないことも重視しています」

日常の洗濯が必要なのは、一般家庭だけではない。ホテルや民泊事業者、長期滞在する外国人旅行客への「オーサムウォッシュ」の提供も前向きに検討中だという。

洗濯を外注することで、日々の生活や出張や旅行時の洗濯に要する時間を減らせる「オーサムウォッシュ」。サービス拡大に取り組む保倉さんが大切にしているのが、自身が配達をおこなっていた立ち上げ初期に顧客からもらったお礼の言葉だ。

「週1回集配に訪れていた男性のお客さまが、海外赴任のため退会されることになったんです。最後の配達時に『需要があるサービスだと思うので、これからもがんばってください』というメモ書きが添えてありました。直接お客さまと相対することはほぼありませんが、洗濯物というお客さまの生活に入り込んでいるサービスであることをあらためて実感しました。あのときに感じたうれしさを大切に、これからも事業に取り組んでいきたいですね」

HIPSTER株式会社

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執筆

卯岡 若菜

さいたま市在住フリーライター。企業HP掲載用の社員インタビュー記事、顧客事例インタビュー記事を始めとしたWEB用の記事制作を多く手掛ける。取材先はベンチャー・大企業・自治体や教育機関など多岐に渡る。温泉・サウナ・岩盤浴好き。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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