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インバウンド対策でバーコード決済を導入。業務効率化にもつなげた「箱根観光船」

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日本国内の観光地がインバウンド需要に沸いている。新型コロナウイルス感染症対策による各種制限の緩和や円安も相まって、2023年10月期の訪日客数は、コロナ禍前を初めて上回ったという(参考:日経新聞『10月の訪日客251万人、初のコロナ前超え 観光も正常化』)。神奈川県箱根町は、外国人観光客に人気の高い観光地の1つ。同町で観光船運航と物販・飲食事業を営む箱根観光船株式会社は、利用者の利便性向上と機会損失防止のために、QRコード決済(※)を導入した。同社の営業企画部の安念瑠加さんに、導入の目的や効果を聞いた。

※QRコードは(株)デンソーウェーブの登録商標です。以下、同様。

安念 瑠加(あんねん るか)さん プロフィール

2019年に小田急箱根ホールディングス株式会社に入社。同年、箱根観光船株式会社に出向。運航部にて「箱根海賊船」のチケット販売などお客さまのご案内をはじめ、収入管理や利用促進計画の策定などに携わる。2021年からは現在の営業企画部(事業戦略担当)に所属し、各店舗のメニューリニューアル計画や、レジのクラウド化などのシステム管理を担当。繁忙期は各店舗へ応援に出向き、業務を支援している。

外国人観光客にも人気の「箱根海賊船」を主軸に飲食・物販事業を展開

神奈川県箱根町一帯は首都圏屈指の観光地であり、外国人観光客も多い。最大の観光スポットは、箱根火山のカルデラのなかにある芦ノ湖。細長い芦ノ湖の両端近くを往復する観光船が「箱根海賊船」(以下、海賊船)だ。豪華な船内と甲板からの雄大な眺めが人気。初就航は1964年で、2024年に60周年を迎える。

芦ノ湖を進む、海賊船「クイーン芦ノ湖」号(画像提供:箱根観光船株式会社)

海賊船を運航しているのは箱根観光船株式会社。小田急グループの一員であり、海賊船の運航に加え、発着所周辺の6店舗で飲食・物販事業を手掛ける。今回訪問した「茶屋本陣畔屋」は、海賊船の乗り場に建つ、和モダンな2階建て。1階が土産物を中心とした物販、2階はカフェである。全面の窓の外に芦ノ湖が輝き、取り囲む箱根の山々の紅葉の向こうには富士山を望む絶景が広がる。

 

紅葉の見ごろなどのハイシーズンには、1日約400名がカフェを利用。ピーク時には1時間あたり約100名もの利用がある。売店は、会計件数ベースで1日約550件だという。

 

「6店舗のなかで客数が一番多い『桃源台ビューレストラン』では1日約600名、1時間あたり200名弱、売店では会計件数ベースで1日に約1,000件ものご利用があります」

カフェには食事とスイーツ、ドリンクも合わせて30種類ほどのメニューを揃える。人気メニューは、特製七輪で7種類のだんごを自分で焼く「七福だんご」。外国人観光客からの注文も多く、真剣な眼差しで焼いている姿が見られた(画像提供:箱根観光船株式会社)

 

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利用者の利便性向上と機会損失防止のためにQRコード決済を導入

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの発生以前、箱根を訪れる外国人客は順調に増えていた。コロナ禍で激減するが、2022年6月に一部入国規制が緩和され、今後も水際対策の緩和がさらに進み、海外からの観光客が再び増加することが予想された。

 

当時、箱根観光船が運営する店舗で利用可能なキャッシュレス決済は、クレジットカードと交通系ICカードのみ。QRコード決済は未導入だった。

 

「外国のお客さまは、多数のクレジットカードのみならず、QRコード決済を含め多種の決済手段をお持ちです。レジで会計をされるときに、現金のみや、クレジットカードのみ対応といった場合に、お会計の時間を要してしまうことがあります。また、多様な決済手段に対応していないがゆえに、機会損失が生じている可能性もあると考えました」

 

海賊船の乗船客には、韓国や中国をはじめ、日本よりもキャッシュレス決済が普及している国からの訪問者も多い。日ごろキャッシュレス決済を利用している人にとって、他国の現金で支払いをするのは負担に感じられることもあるだろう。

 

そこで顧客の利便性向上と機会損失防止のために、QRコード決済の導入を決定。各社のサービスを比較した結果、株式会社リクルートの「Air ペイ QR」を選んだ。選定理由は、海外のQRコード決済を含め、対応している決済手段が多く、利用者側の利便性が高いこと。決済手段の種類は多いが、1つのシステムで読み取るだけでシステムが識別するため、運用の手間がかからない点も大きな評価ポイントになった。

 

導入を決定してから数か月の準備期間を経て、2022年9月に運用を開始。10月から水際対策が大幅に緩和され、多数の外国人観光客が箱根を訪れている。

カフェの窓際席にて。芦ノ湖の向こうに冠雪した富士山を望む

キャッシュレス決済比率が53%と予想以上の伸び。お客さまからは喜びの声

「コロナ禍前、箱根全体の業績状況が一番よかった2018年の秋のシーズンで、レストラン部門のキャッシュレス決済比率は24%程度でした。直近の2023年10月は、53%と2倍以上に増えています。ここまで利用が伸びるのは想定外でした」

 

キャッシュレス決済比率の向上要因は複数考えられるが、QRコード決済導入の影響も大きいと同社では推測している。

 

導入目的であった会計時間の短縮について、安念さんは「測る指標がなく、情勢変化の影響もあるため、数字では出せません。とはいえ、QRコード決済を入れてなかったら、もっと会計に時間を要し、並んでお待ちいただいていた可能性はあると考えています」と語る。

 

会計に要する時間の短縮が必要だったのは、カフェよりも物販店とのこと。

1階の土産物コーナー。伝統工芸品である寄木細工や観光土産品数百種に加え、ソフトクリームなどの軽食を販売。

「物販店では、土産品と一緒に飲食物をテイクアウトされる方も多いため、1会計当たりの点数が増え、金額も高めになる傾向があるんです。現金では、お客さまがお金を出すにも店側のチェックにも時間がかかります。また、プラスチックのクレジットカードの場合も財布から出すのにある程度の時間がかかりますよね。それに比べると、QRコード決済は短時間で済みます」

 

お客さま側の反応は上々で、安念さんが現場に立つときも「PayPay使えるんだ」「タッチでも大丈夫なんだ」といった発言はよく耳にするという。海外の方には、自国で利用しているQRコード決済手段をそのまま使えることが喜ばれており、中国系の方は銀聯カードよりもWeChatやAlipayの利用率が高いそうだ。

 

機会損失についても「QRコード決済利用率が上がっていることからも、効果はあったのではないかと考えています」と安念さんはうなずいた。

バックオフィスの効率化などさまざまなメリットが

QRコード決済を導入した結果、効果として大きかったのは、バックオフィス業務の効率化と情報共有の進展だったという。

 

「以前利用していたクレジット決済では、会計ごとに発行される加盟店控えの紙と売上を1件ずつ照合して、売上集計をしていました。『Air ペイ』『Air ペイ QR』導入後は、店舗のアプリ画面で確認ができ、翌日にはバックオフィスの管理画面上でも見ることができます。集計も簡単で、事務作業の工数が大幅に軽減しましたね。店舗の情報がバックオフィスにすぐに共有されるのは、予想以上のメリットと感じています」

『Air ペイ』の決済は、端末にスマートフォンをかざすだけ。QRコード決済ができる『Air ペイ QR』の決済は、来店客がスマホ画面に表示したQRコードをiPad 又は iPhoneで読み取るだけ。2023年11月15日からは、従来からの中国、韓国、フィリピン、タイ、シンガポール、マレーシアに加え、イタリアやモンゴル、マカオのQRコード決済にも対応

予想外のデメリットはなかったのかと訊ねると、「すぐには思い浮かびませんが……」と少し考えたあとで答えが返ってきた。

 

「スタッフはすぐに慣れましたし、オペレーション上、とくに問題は起きていません。日常的に使っているスマートフォンと同じ感覚で操作できるので、なじみやすいのかもしれませんね。意外だったことといえば、レジと読み取り端末が連動していないため、キャッシュレスの取扱件数が増えると同時に打ち間違いが若干増えました。今後はさらなる効率化を図るため、AirPAY(QR)との連動が可能なレジシステムを導入することも視野に検討しています」

現状は打ち間違えてやり直す手間が多少増えているとも言えるが、「導入によって得られたメリットに比較するとその手間は微々たるものです」と安念さんはうなずく。

機械に任せられることは任せ、人だからできるサービスに注力していく

箱根観光船では、「Airペイ」導入と同じタイミングで、食材発注のシステムも導入している。

 

「レストラン部門に関しては、原則として受発注をシステムでおこなっています。伝票を減らせたり、帳票の作成もシステム上からほとんどできるようになったことで、業務の効率化が大きく進みました。1年前まではFAXと電話でやっていましたから、迅速に情報共有できるようになったこともかなりありがたいと感じています」

 

そのほか、勤怠管理システムも導入済で、一部の店舗では券売機を設置している。

 

「機械に任せたほうが確実な分野に関しては機械化やシステム化をしてDXを進め、人だからこそできるサービスに注力していこうと考えています」

 

将来的にDXに期待することについては、「個人的な考え」として、こう語ってくれた。

 

「観光客の方は、さまざまな交通機関を利用して移動しながら、鑑賞や体験をされたり、買い物や飲食をされたりします。個々のサービスを利用されるたびに個別に支払いをされるのではなく、一括でできたら便利なのではないかと思います。いろいろな領域をシームレスにつなぎ、対応できるようなアプリやシステムができたら、観光体験がより豊かなものになるのではないでしょうか」

箱根観光船株式会社

 

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執筆

ひらばやし ふさこ

インタビューが好きなライター。ビジネス系メディアを中心に、記事の企画・取材・執筆・編集に携わる。元IT系企業の広報・広告担当。宅地建物取引士。趣味は散歩。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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