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約3,000本の動画と専用スタジオ。群馬県が挑む新しい発信活動と動画の活用とは

地方自治体の YouTube活用が進んでいる。

 

これまで自治体の情報発信は、広報誌など紙の媒体やホームページをメインにおこなわれていた。しかし、最近では各行政機関が専用の YouTubeチャンネルを開設し、その地域の情報を動画でも伝えるようになりつつある。

 

47都道府県の地方自治体が活用している YouTube だが、その中でも力を入れて取り組んでいる自治体の1つが群馬県だ。

 

群馬県庁の展望ホールの区画に作られた「tsulunos(つるのす)」という動画配信スタジオでは、群馬県が発信するニュースや、県が主催するイベントでおこなわれた著名人同士の対談の様子などを撮影。そしてその様子が、動画配信スタジオと同じ名前のYouTubeチャンネル「tsulunos〜群馬県公式〜」を通じて配信されている。

また、一部の配信に関しては、公式YouTubeチャンネルのアーカイブにも残るため、視聴者は自身の好きなタイミングで興味のあるコンテンツを観ることができる。

2020年4月に開設された「tsulunos〜群馬県公式〜」の登録者数は約3.5万人(2023年3月現在)と、YouTube全体で見るとそれほど多くないように思える。ただ、地方自治体のYouTubeチャンネルに限れば、この登録者数は決して少なくはない。全国47都道府県の公式YouTubeチャンネルの中で、「tsulunos〜群馬県公式〜」の登録者数は東京・茨城・岩手・神奈川に次ぐ5番目の登録者数を誇っているのだ。

 

さらに、驚きなのが動画の本数だ。チャンネルの開設から約3年が経ったいま、公開中の動画の数は約3,000本にも上り、温泉地などの観光情報から行政の部署の紹介まで多岐に渡る。10万回再生を超える動画も複数あり、その中の1本は100万再生を超えるなど、再生数においても成果を出している。

 

ちなみに、動画撮影スタジオと YouTubeチャンネルに使用されている「tsulunos」という名前は、群馬で育った人みんなが親しむ郷土かるた「上毛かるた」の札にある「つる舞う形の群馬県」が由来だ。

 

「tsulunos〜群馬県公式〜」は、どのように成長し、どのように運営されているのだろうか。群馬県庁 tsulunos室の吉田さんに話を聞いた。

吉田 和正(よしだ かずまさ)さん プロフィール 

群馬県知事戦略部メディアプロモーション課 tsulunos室ネットメディア係長。2020年の4月より現所属。

転機となったコロナ禍。小中学校のオンライン授業で動画を活用

群馬県の YouTube公式チャンネル「tsulunos〜群馬県公式〜」は、これまでに運用されていた群馬県公式チャンネルと入れ替わる形で2020年の4月に誕生した。

 

「群馬県として動画での発信に力を入れるために、動画撮影スタジオの『tsulunos』と名称を統一して、しっかりブランドを築こうという意図で、新しいチャンネルを作りました」

 

また「tsulunos〜群馬県公式〜」の運用がスタートしたのは、全国で新型コロナウイルスが猛威をふるっていた時期だ。

 

「チャンネルを開設したのは、コロナ禍でみんなが接触を控えて、オンライン化の重要性が叫ばれていた時期でした。その中で、小中学校の全面休校が決まるのですが、結果的にこの一斉休校の対応を機に、群馬県庁では動画が身近なものになりました」

 

小中学校の一斉休校は、群馬県庁へどのように影響を与えたのだろうか。

 

「小中学校が全面休校になり、オンライン授業が検討される中、教育委員会は『どうやって授業を届けようか』と頭を悩ませていました。そこで、ちょうど動画スタジオの tsulunos が完成間近で、YouTubeのチャンネルやカメラなどの撮影機材が揃っていたため、これらを授業で活用してもらおうと考えたんです。それからは、教育委員会の先生たちが、授業の動画を手探りで撮影していましたね。緊急の対応ではありましたが、これをきっかけに県庁では動画が身近になったんです」

 

こうして「tsulunos〜群馬県公式〜」には、200本以上の授業の動画が公開され、休校期間中の家庭学習の助けになった。

 

2020年4月下旬には、tsulunos のスタジオを正式にオープン。ニュースやメディアでも広く取り上げられ、tsulunos という名前は群馬県内に広まった。

tsulnos のスタジオ完成後も、動画の本数は順調に増えていく。開設初年度に当たる2020年度は、1,513本の動画がアップロードされ、トータルで180万回再生された。

 

2020年度の年間目標は、500本の動画のアップロードと44万回再生だったため、大幅な目標達成となった。

 

翌年度は、600本・560万回という目標に対し、2,500本・630万回という実績で、目標を2年連続で達成。群馬県庁では、現在も新しい目標を立て、それらを達成するために邁進している。

動画の内容は各部署に一任

群馬県が運営する公式チャンネル「tsulunos〜群馬県公式〜」には、観光だけではなく、県庁の仕事内容に触れられる動画もアップロードされている。その内容は、どのように決められているのだろうか。

 

「基本的には各部署の方針に任せるボトムアップ型で運用しています。私たちの部署で、企画立案や撮影、動画編集などの実作業はしていないんです。たとえば、群馬県の古墳を PR したいと担当部署が考えたとき、その部署で広報冊子やホームページを作ります。動画の配信も同じような位置づけなので、内容は該当の部署に一任しています。私たちの部署が担っているのは、スタジオや撮影機材、編集用のパソコンを整えることと動音割れや映像の乱れ、不適切な内容がないかなどの品質チェックそして職員のスキルアップのみです。各部署の自主性に任せているからこそ、多くの動画を公開できているのだと思います」

 

県庁の各部署で動画の撮影が進められることで、職員たちにとって動画は身近なものになった。その影響もあり、通常の業務でも動画が活用されるようになったという。

 

「例年4月には、各部署が新しい年度の方針や取り組みなどについて、市町村や外部の関係者に向けて説明する会議を開きます。数十人が大きな会議室へ集まるのですが、コロナ禍では同じことができなくなりました。日程を分けて会議を開催する場合、主催する部署にとっても参加する人にとっても、移動や日程調整の手間や負担がかかってしまいます。そんな中、群馬県庁では、動画の活用が浸透したことで、こういったリアルの会議は減り、動画配信ベースのものが増えました。動画は自分のペースで好きなときに見ることができるので、利便性も高いです。働き方の改善にも繋がっていますね」

動画配信を通じて県民との距離を縮めたい

動画配信により、業務効率化が進んだ群馬県庁。今後、動画の活用でどのようなことを目指していこうとしているのだろうか。これから「tsulunos〜群馬県公式〜」で力を入れていきたいことについて、吉田さんは次のように語ってくれた。

 

「現在、群馬県の行政に携わる部署は200ほどあります。前述のとおり動画の運用方針を各部署に任せたことで、それぞれの部署が職場や仕事内容の動画を作るようになりました。たとえば、ぐんま天文台では、流星群の観測動画を上げていますし、就職労働政策課では、企業と学生のマッチングをおこなうための合同説明会などの動画をアップロードしています。最終的には、動画が県民のみなさんとの距離を縮めるツールになっていけたらうれしいですね」

 

動画のアップロード数は順調に増えている。現在では動画を探しやすくするために、動画の目録となるホームページも作成した。

 

必要なときに必要な情報にアクセスできるようになりつつある群馬県。これからも動画によって発信される情報が増え、行政と県民の距離は近づいていくことだろう。

 

群馬県庁

 

執筆

中 たんぺい

1989年生まれ。フリーライター。ビジネス・メンタルヘルス・ローカルに関わるインタビュー記事を執筆しています。趣味は写真撮影とサウナです。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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