おトクだけどちょっと面倒な「ふるさと納税」。これがカンタンにできる「IoTふるさと納税自販機」が登場した。
すでに湯河原、相模原、松田(以上神奈川)、小菅村(山梨)、那須(栃木)、藤枝、御殿場(静岡)の7自治体に設置済で、来年の春までに10近くの自治体が新たに加わる予定だ。
それをやってのけたのが、グローキーアップ株式会社(神奈川県藤沢市)の社長・鍵和田芳光氏である。
寄附の金額と返礼品を選んだ後に名前や住所などを登録し、現金かクレジットカードで納税がおこなえ、さらに返礼品をその場で持ち帰れる。わずか3~5分程度しかかからない早ワザだ。
納税の仕方を、デモ機で見てみよう。
まず返礼品を選ぶ
住所を入力。直接入力のほかに免許証を読み込ませるのもOK
出てきたレシートを渡せば、その場で返礼品がもらえる。
と、こんな具合だ。さらにゴルフ場やホテルのフロントで書いた個人情報を、QRコードを通じて流用するやり方もあり、もっとラクになる。
将来的にはマイナンバーカードの情報を読ませるやり方もあるそうで、これを作り上げた鍵和田社長に話をうかがった。
「ふるさと納税自販機」ができたきっかけ
──自販機を発想したきっかけってなんですか?
鍵和田氏(以下、鍵和田):2015年の3月、北陸新幹線の開業時に糸魚川駅でデジタルサイネージからQRコードをスマホで読んでおみやげを買い、家に届く自販機を置いたんです。デジタルサイネージでみやげものを買う仕組みを初めて実現しました。
──おお、先進的ですね。
鍵和田:でも、QRコードを読んでからはスマホで操作するので、「スマホのネット通販」と変わらないですし、面倒くさくて。
──たしかに。
鍵和田:それを自販機だけで完結できるようにして、さらに「ふるさと納税」ができるようにしたのが今の形ですね。
──これまた面倒な「ふるさと納税」が自販機でできるのがスゴいですね。
1台500万円でもすぐ回収できる?
──1台の価格は、どれくらいですか?
鍵和田:今は一応1台買い取りだと500万円、5年リースで月に9万2500円。
──やっぱり、値が張りますね。
鍵和田:その代わりリターンは大きいです。湯河原では12月だけで700万円を集めましたから。
──もう元を取ってしまった!?
鍵和田:ふるさと納税は12月の駆け込み需要がすごいんですが、昨年は12月下旬にクレジットカードがやっと使えるようになってから、入金額が跳ね上がりました。
──そんなふるさと納税自販機が、とくにニーズを感じるのは?
鍵和田:やはり観光地ですね。旅館・ホテルやみやげ店、道の駅。そのほか空港やレジャー施設とか。とくに打診を受けるのはゴルフ場です。
──ゴルフをやる人がお金持ちっていうこともありますかね?
鍵和田:その通りです。若者にも反応がいいので、彼らにアプローチする予定です。
──よく選ばれる返礼品とかはありますか?
鍵和田:やっぱりゴルフ場だとゴルフのプレー券。テーマパークでなら入場券、パスポートや近くのホテル宿泊券や、パーク内のレストラン食事券などが多いです。
流出自治体の起爆剤に
鍵和田:ふるさと納税って地方のものだと思われているじゃないですか。
──「ローカルグルメのお取り寄せ」感覚で使われることも多いですね。
鍵和田:ところがこれなら、首都圏などの流出自治体がすごく使えるんですよ。高級レストランや高級ホテル、テーマパークなどの券を返礼品にするとかね。
──たしかに、千葉で「ホワイト餃子無料券」が返礼品なら、ふるさと納税しますね。
鍵和田:だから相模原市なんかはまさに流出自治体で困っておられて、最初に契約をされたんです。ちなみにいまどこにお住まいですか?
──渋谷です。
鍵和田:渋谷は何十億円と流出して、困っているはずです。ふるさと納税って言いながらも、全然思い入れのない地域に納税しちゃう人が多いじゃないですか。
──私もAmazonギフト券目当てで納税したことあります……
鍵和田:たとえば渋谷に自販機がある場合。渋谷って各地から仕事や観光、買い物で来ますから、渋谷に親しみがある千葉県民が ふるさと納税しやすくなりますよね。
──すぐ納税できる自販機があれば「せっかくだしやるか」ってなりそうだなあ。
鍵和田:うちは地域や親しみに結びついたふるさと納税がコンセプトです。仕事や観光などで地域に来た人に、ふるさと納税してもらえたらなと。
──帰省先に自販機があれば「納税するか」ってなるかもしれませんね。
鍵和田:まさに。自販機が普及すれば、親しみや応援からの納税が増えると思います。
──もともと、ふるさと納税はそっちが目的だったですもんね。
ふるさと納税をしていない「9割」もの人へ
──自販機への反響で記憶に残ったものはなんですか?
鍵和田:ふるさと納税をしている人は総務省の統計だとまだ1割に満たなくて。そんな中、リピーターになってくれた方がいたのはうれしかったですね。
──まだ納税者はそんなに少ないんですか。普及の起爆剤になりそうですね。
鍵和田:ええ、パスワードを設定すれば、次回以降はすぐに納税できる設計ですから。
──そんな仕様もあるんですね。ちなみに開発で苦戦したところは?
鍵和田:ふるさと納税によっておこなわれる、各所への動きを連携させるところです。うちの基幹システムはいろいろな作業を自動的におこないますから。
- 自治体への入金連絡
- 返礼品業者への出荷指示
- 配送業者への連絡
- いろいろな事務処理 など
これらを連動させるのが大変でしたが、完成して特許も取っています。あとは自販機の機能や免許証の読み取りの精度を上げることも難儀でした。
──確かにふるさと納税っていろんな部署が動きますから、その自動化をやってのけたのはすごいな。ほかには?
鍵和田:かんたんに使えるよう、気を配りました。ボタンを押すと限度額の表が出てきたり、ふるさと納税の仕組みの説明が出てきたり。設置場所の店員さんも使い方を教えてくれますよ。
──ここまで聞いて僕も使いたくなっているのですが……今後、会社をどう展開していきたいですか?
鍵和田:うちの基幹システムを活かし、IoTを中心にもっと新展開をしていきたいですね。今はふるさと納税自販機が広まっているので、自販機もさらにブラッシュアップさせますよ。
──ふるさと納税自販機、天下取れるかもしれませんね。
鍵和田:いや別にふるさと納税自販機で天下とるとは思っていないですけど(笑)、役に立てばいいなと思います。
まとめ
「納税したけど、これで合っているのか不安」「返礼品が来るまで待たされる」など、慣れない身には煩雑にも感じる、ふるさと納税。それを手っ取り早い「自販機」にしてしまうとは恐れ入った。全国制覇の勢いで、これが置かれる近未来を見たい。
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