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「ミッション:インポッシブル」=「不可能な任務」から逃げることが働き続けるためには大切だ。

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ミッション:インポッシブル最新作を見てきた

『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』が劇場公開されたので、早速鑑賞してきた。還暦を過ぎたトム・クルーズ=イーサン・ハントは最新作でも変わらず……というかシリーズ過去最高レベルのアクションを決めていた。おかしい。周辺にいるヨレヨレな60代男性と比べるとトム・クルーズのおかしさが際立つ。いま、振り返ってみると、第1作の見せ場だったイーサン・ハントの吊り下げられアクションなんて、ずいぶんとのんびりしていているように見える。アクションはシリーズを重ねるごとにパワーアップしている。すごい(おかしい)。

第1作が公開されたのは1996年、僕が新卒として働きはじめた年だ。第一作の巨大な屋外広告を見ながら通勤したのをよく覚えている。あれから約30年が経った。ミッション:インポッシブルシリーズと同じように、僕の職業人生も続いている。トム・クルーズがエージェントを演じて世界を股にかけて戦っているとき、僕はサラリーマンとして股ずれに悩まされながらうだつのあがらないサラリーマンライフを戦っていたのだ。僕は達成不可能な重大ミッションを成し遂げたようなことは一度もない。

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スーパーマンではない僕が仕事を続けてこられた理由は?

イーサン・ハントと、演じているトム・クルーズはスーパーマンだ。誰も真似できない。僕のような一般人は「すごいなぁ」と口をポカーンと開けて見ているだけだ。でも僕らだってトム・クルーズと同じ時代、同じ時間を戦っているのだ。何年、何十年間も、誰でもできるミッションを、地味な継続と努力を武器にこなしてきた。それ以外にも、何かあっただろうか。振り返ってみると、僕は、うまく力を抜いてきたから続けてこられたのだと言える。

僕は一貫して営業職だ。営業活動を地道に続けるしかなかった。アポ取りの電話、定期訪問の繰り返し、顧客の繰り返し、ニーズに沿った提案作成。研究職なら何十年も同じテーマの研究を続けている人だっているはずだ。毎日同じようなことを繰り返していると、ふと、見失うことがある。「いま、自分がやっていることは何になるのだろう」みたいな感じに。そして、ときどき指針が必要になる。ミッション:インポッシブルのイーサン・ハントやトムクルーズは憧れの存在で勇気はもらえる。憧れの存在だ。だが、スーパーすぎて参考や指針にならない。猛スピードで疾走する電車の屋根の上で嫌味な上司と殴る機会に恵まれたら参考になるだろうが、その前に退職届を人事部に持っていくべきだ。憧れは憧れであって参考にはならない。

見失ったとき、頼りになるものが見つからなくても、それでも明日はやってくる。生きていかなければならない。見失ってぼーっとしていても、仕事では結果が求められる。目標を達成できないと苦しくなる一方だ。だから苦しくても地道にやりつづけなければならない。けれども、見失った状態、悩みを抱えたまま、継続するのは苦しい。逃げたくなる。僕は、この30年間何度もそういう時期があった。そこからの脱出が僕にとってのミッション:インポッシブルだった。だが、イーサン・ハントになれない僕には解決や打開は不可能だった。ではどうしたか。逃げたのだ。サボったのだ。

仕事のできる先輩から学んだサボり方のコツ

さいわい、指針はあった。ひとつ年上の先輩に凄い人がいたのだ。イーサン・ハントとは別の方向性の凄さだ。端的にいうとサボり方がうまかった。営業部員だったので結果を出さなければ、上司から詰められてしまうが、その先輩はメリハリをつけてサボることで詰問を回避していた。ある時期はモーレツな勢いで新規開発営業に打ち込み、大きな契約を取り、会社の業績を底上げするレベルの素晴らしい実績数字を積み上げ、上の人間から「こいつは凄い」と認められる。そして、次の時期は思い切り手を抜くのだ。上の人間は先輩の能力を知ったあとだけに「もう一度チャンスを与えよう」という判断を下さざるをえない。「次はまたやってくれるだろう」という期待感から、手抜きを見過ごして不問に付すのだ。先輩はまたモーレツに働いて結果を出し、その次は手を抜く。先輩は仕事ができた。優秀だった。だが彼の仕事ぶりや能力より、そのサボり方に僕は感銘を受けた。「毎年フルスロットルで走っていたら壊れてしまうから力を抜いている。トータルでみれば仕事をしていることになる」というのが彼の言い分だった。もちろん毎年フルスロットルでものすごい成果を上げ続けていくような生き方・働き方もある。きっとトム・クルーズのようなスターはそうやってずっと戦って勝ち続けてきた人だ。

僕らはトム・クルーズと同じような生き方はできない。壊れそうなとき、しんどいときは逃げたり回避したりしながらなんとか折り合いをつけて進んでいく。先輩はその究極だった。目標を定めそれを達成して身分の安全を確保したらサボる。先輩の生き方にはプロ意識みたいなものがあった。サボってもクビにならないという自信。やれば必ず大きな成果を出せるという自信。それらが彼にはあった。なかなかできることではない。僕には彼のサボりかたをコピーすることはできなかったが、メリハリをつけたサボり方は参考にはなった。

全力ダッシュし続ける必要はない

人生にはそれぞれのミッション:インポッシブルがある。無理にクリアする必要はない。逃げてしまえばいい。逃げられないのなら思い切り力を抜く。自分に合った方法でやればいい。僕が先輩から学んだサボり方にはコツがあった。短期間でサボりを繰り返さないことだ。もっと大きな期間でサボることだ。たとえば1日サボって1日働くとか1週間サボって1週間働くみたいなやり方は、「またサボっているのか」と周りから見られて肩身の狭い思いをすることになる。

それに対して、先行投資のつもりで半年か1年間全力でやって周りに「あいつすごく頑張っている」という印象をもたせてから、つぎの期間、力をセーブするように大きな波を作ったほうが「頑張っていたから少し疲れているようだ。休ませてあげよう」というふうに見られる。総計すればサボっている期間が同じでも印象はだいぶ違う。露骨にサボっていると印象が悪いので、書類作成などは全部AIに投げて仕事の密度を落とすという方向性もありだ。僕は力を抜いてノルマをギリギリ達成する年と、思い切り数字を追い込む年を交互につくってメリハリをつけてきた。うまくやっているから力を抜いていることに気付かれていない。30年全力ダッシュは無理だ。惰性で進む期間をつくってきた。だからここまで続けてこられたのだ。

そういえばミッション:インポッシブルも毎年は公開していない。イーサン・ハントを毎年やっていたら壊れてしまうからだろう。数年に1度だからやっていられるのだ。というわけで仕事は地道に継続していくしかないけれども、そのなかで自分を見失ったり心身ともに疲れたりするときがある。そういうときは頑張らない。無理せずサボったほうがいい。長期的なスパンでとらえてプラスになればいいくらいの割り切った気持ちを持つようにしよう。「自分を見失った状態からの回復」は、難しい。自分の努力ではどうにもならないミッションだ。そういうミッションからは逃げる。さいわい、世界の命運をかけるような逃げられない任務ではないのだから。以上。

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執筆

フミコ・フミオ

大学卒業後、営業職として働き続けるサラリーマン。 食品会社の営業部長サンという表の顔とは別に、20世紀末よりネット上に「日記」を公開して以来約20年間ウェブに文章を吐き続けている裏の顔を持つ。 現在は、はてなブログEverything you’ve ever Dreamedを主戦場に行き恥をさらす
Everything you've ever Dreamed : https://delete-all.hatenablog.com/
2021年12月にKADOKAWAより『神・文章術』を発売。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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