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部下への指示が適切なものだったかAIに判定してもらった

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部下に依頼した仕事が想定外の結果に。

僕は食品会社で営業部長として働いている。先日、部下に企画提案書の作成を指示した。食品会社のノウハウを活かした安全衛生チェック業務を、パッケージとして売り出す、その企画提案だ。必要な項目を説明して任せたのは僕よりも年上、50代後半のベテラン社員だ。長いこと業界にいるので難しい仕事ではないはず。期限は1週間後。すると当該部下から「部長! 指示がアバウトすぎます。もっと細かく指示をください。できれば書面で。そのうえで企画提案書のサンプルをいただけたら助かります」と言われた。

 

おかしい。以前、別件で細かく指示したとき「もう少し裁量を与えてくれないと仕事がやりにくいです」と指摘された経緯があった。だから、あえてアバウトな指示を出したのだけれど……。一瞬、そんな葛藤が起こった。けれどもこれもビジネスと割り切ってスルーし、僕は企画提案書のサンプル(概案)をパパっと作って、それをベースに細かな指示を出したのである。

 

当該部下氏は「あーはいはい。こんな感じですね」とライトな感じで受け取っていた。そのライト感は「これくらいの仕事なら朝飯前」という余裕に見えた。1週間後。提出された企画提案書は驚くことなかれ、僕が作成したサンプルと一字一句違わないコピーであった。

「部長の仕事の完成度が高かったのでそのままにしました」
自分で作ったものに文句はいえなかった。というよりは脱力してしまったのだ。
それから数週間経過したが、いまだ僕はそのときの虚無感から完全に回復していない。

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自分の指示が間違っていないかAIで判定してみる。

平静を取り戻してから「僕の指示が間違っていた可能性は否定できない」「具体性に欠けていたかもしれない」と考えるようになった。指示が的外れだったなら、難易度の高い仕事を与えたことになる。それを検証するためにAIを活用することにした。部下氏へ出した指示をAIに出してどのような回答が返ってくるのか検証してみたのだ。

 

AIの回答が的確であったなら指示は適切であったことになる。回答が企画提案書で使えるレベルのモノであったら当該部下氏は必要なくなるかもしれない。AIがデタラメな回答を返してきたら、僕の指示が適切でなかった、ということになり、僕が窓際に飛ばされても文句はいえない。いわばこれは人類の存亡よりも重大な、会社員生命をかけた仁義なき戦いなのである。

実際に出した指示をAIチャットに入力してみた。

AIはBingチャットを使用することにした。GPT-4を搭載しているからというのが表向きの理由だが、単に無料だからだ。チャットに当該部下氏に出した指示を入力して回答をチェックするというシンプルな方法を採った。

質問1:食品会社のプロによる厨房施設の衛生チェックの有効性とその意義を考えてください。

回答:食品会社のプロによる厨房施設の衛生チェックは、食品衛生法に基づいて行われる衛生管理の一環であり、食品の安全性を確保するために重要な役割を担っています。 厨房施設の衛生チェックによって、食品の製造・加工・販売において、衛生的な環境が維持され、食中毒や食品の汚染を防止することができます。

食品会社のプロによる厨房施設の衛生チェックは、HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)に沿った衛生管理の制度化についても取り入れられています。 HACCPは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保するための衛生管理の手法です。

以上のように、食品会社のプロによる厨房施設の衛生チェックは、食品の安全性を確保するために欠かせない重要な役割を担っています。

方向性はまちがってはいない。が、求めるものからは少しずれている。なによりかたい。かたすぎる。他人事感が強い。

質問2:食品会社社員のプロの目による衛生チェックの必要性を説明してください。素人との違いを明確に。

 

回答:食品会社社員のプロの目による衛生チェックは、食品の安全性を確保するために非常に重要です。食品会社社員は、食品の製造、加工、販売に関する専門的な知識を持っており、衛生チェックに必要な技術を習得しています。一方、素人は、食品の安全性に関する知識が不十分であり、衛生チェックに必要な技術を持っていない場合があります。

食品会社社員は、食品の製造、加工、販売に関する法律や規制に精通しており、衛生チェックに必要な知識を持っています。彼らは、食品の安全性を確保するために、食品の製造、加工、販売に関するあらゆる段階で衛生チェックを実施します。これにより、食品の安全性を確保し、消費者に安心して食品を提供することができます。

一方、素人は、食品の安全性に関する知識が不十分であり、衛生チェックに必要な技術を持っていない場合があります。そのため、素人が衛生チェックを行うと、食品の安全性を確保することができず、消費者に健康被害をもたらす可能性があります。

以上のように、食品会社社員のプロの目による衛生チェックは、食品の安全性を確保するために非常に重要であり、素人との違いは明確です。

方向性はまちがってはいないが、必要性の説明が足りない。あとくどい。同じフレーズが繰り返されている。

質問3:食中毒事故の危険性と現在の日本社会の食中毒事故の状況についてわかりやすく説明してください。

 

回答:食中毒とは、食品に含まれる有害物質や細菌・ウイルスなどが原因で、食品を摂取した人が体調不良を起こす病気のことです。食中毒事故は、食品の製造・加工・販売・調理・保存などの過程で、衛生管理が不十分であったり、食品に異物が混入していたりすることが原因となります。

日本では、厚生労働省が食中毒の発生状況を調査しています。令和4年には、962件の食中毒事故が報告され、患者数は6,856人、死者は5人でした。食中毒の原因となる食品は、魚介類加工品、肉類及びその加工品、卵類及びその加工品、野菜及びその加工品などがあります。

食中毒事故を防ぐためには、以下のような対策が必要です:

食品の衛生管理を徹底する。

食品の保存方法に注意する。

食品を調理する際には、十分な加熱を行う。

食品を摂取する前に、賞味期限や消費期限を確認する。

食品に異物が混入している場合は、食べないようにする。

以上のような対策を講じることで、食中毒事故を未然に防ぐことができます。

…方向性は良いけど。かたいです。会社の事業と結びつけて説明してほしいけど質問に含まれていないから無理ですね。

質問4:食中毒事故が事業展開に及ぼす影響について。具体的な例をあげてください。食中毒を起こすと事業展開がマイナスになるという話でお願いします。

 

回答:食中毒事故が発生すると、事業展開に悪影響を及ぼすことがあります。例えば、以下のような影響が考えられます:

顧客からの信頼を失う

売上が減少する

製品の回収や廃棄によるコストが発生する

行政処分による罰金が発生する

以上のような影響が考えられます。事業者は、食中毒予防に努めることが重要です。

方向性は(以下略)。当たり前のことすぎる。具体例の具体性が足りない。

質問5:提供サービスは衛生チェック基本パッケージ5万円/回。1時間で「説明」「チェック」「評価」とするスケジュール例(概案)を作成してください。

 

回答:衛生チェック基本パッケージの提供についてお問い合わせいただきありがとうございます。提供サービスは、1回あたり5万円となっております1。以下に、1時間で「説明」「チェック」「評価」を行うスケジュール例をご提供いたします。

時間 内容

0分 – 10分 お客様のご要望や症状についてのヒアリング

10分 – 30分 衛生チェックの説明

30分 – 50分 衛生チェックの実施

50分 – 60分 衛生チェックの評価と結果の報告

以上が、1時間で「説明」「チェック」「評価」を行うスケジュール例となります。ご参考になれば幸いです。

方向性は(以下略)。味気なさすぎる。Bingさんはサービス精神に欠けるようだ。

質問6:サービスの免責事項を作成してください。一般的なサービス業の免責事項をベースにして考えてください。

 

回答:免責事項は、サービス提供者が利用者がそのサービスや製品を利用する際のリスクを理解し、それによって生じる損失や損害に対して自身が責任を負わないことを明確にするために特定のリスクや責任を明示し、それに関連する責任から免除されることを目的とした文書です。

以下は、一般的なサービス業の免責事項の例です:

  1. 当社は、本サービスに関連して、利用者に生じた損害について、一切の責任を負わないものとします。
  2. 当社は、本サービスに関連して、利用者が第三者に与えた損害について、一切の責任を負わないものとします。
  3. 当社は、本サービスに関連して、利用者が第三者に与えた損害について、利用者が自己の責任において解決するものとします。
  4. 当社は、本サービスに関連して、利用者が第三者に与えた損害について、利用者が自己の責任において解決するものとします。
  5. 当社は、本サービスに関連して、利用者が第三者に与えた損害について、利用者が自己の責任において解決するものとします。

上記の例は、あくまで参考として提示したものであり、サービス提供者が提供するサービスの内容に応じて、適切な免責事項を作成する必要があります。また、免責事項は、法的に有効であるためには、適切な内容、形式、提示方法などの要件を満たしている必要があります。

方向性は(以下略)。これは設問が間違っていたようだ。この回答では当社がまったく責任を負わない無責任企業に思われてしまいそうだ。こちらの主張(免責)が強すぎる。

質問7:サービス導入までの流れを作ってください。ヒアリング、見積提示と説明、導入の流れになります。

 

回答:サービス導入までの流れは以下の通りです。

ヒアリング:お客様のニーズを把握するために、弊社担当者がお客様と打ち合わせを行います。

見積提示と説明:お客様のニーズに基づき、弊社担当者がサービスの内容や価格について説明し、見積もりを提示します。

導入:お客様が弊社の提供するサービスを利用するために、弊社担当者が導入作業を行います。

以上が、サービス導入までの流れになります。ご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。

方向性は以下略。普通すぎる。必要最低限の内容といえばいいのだろうか。サービストークがなさすぎる。

質問8:オプションのサービスを定めてください。厨房施設内消毒や研修会などです。金額については基本パッケージが5万円なので、不自然にならないよう、世の中の類似サービスより安価に設定してください。

 

回答:こんにちは。Bingです。お客様がおっしゃるような厨房施設内消毒や研修会などのオプションサービスについて、私が見つけた情報を元にお答えします。

まず、厨房施設内消毒については、ダスキンが提供する「実践! 衛生環境講座」が参考になるかもしれません。また、文部科学省が公開している「調理場における洗浄・消毒マニュアルPart1」にも、洗浄・消毒に関する基本的な考え方や方法が記載されています。

研修会については、ダスキンが提供する「厨房衛生マネジメントサービス」が参考になるかもしれません。また、ダスキンが提供する「HACCPトータルサポートサービス」も、定期管理システムやアドバイスなどを提供しているようです。

金額については、お客様がおっしゃるように、世の中の類似サービスよりも安価に設定することが望ましいです。ただし、具体的な金額については、私が見つけた情報には記載されていませんでした。ご了承ください。以上、参考になる情報があれば幸いです。

方向性は以下略…じゃなくて途中からダスキン社のサービスのアピールになってしまっている。AIちゃんの中の人はダスキンさんですか(個人的にはダスキンにはお世話になっております)。これではダメですね。

方向性はあっているけれども。

以上である。質問に対して間違っていない方向性の回答が返ってきた。つまり僕の指示は場違いなものではないということだ。ただ、それだけだ。部下氏とAIが交換可能というわけではない。部下氏、よかった。

 

回答からわかるようにAIは、方向性は間違っていないが全体的に「かたい」こと、そして求められたもの以上の回答ではないこと、人間同士の関係性とこれまでの経緯といった言語化されていないが指示に含まれている要素が抜けてしまうこと、などから客先にそのまま提出できるレベルの企画提案書をつくるのは現時点では難しいこともわかった。ひとことで言えば、間違ってはいないけど「うーん物足りない」、といったところ。

 

僕の指示が概ね間違っていないことが確認できてよかった。生成AIの活用としてプロダクトの作成(とそのサポート)があげられるけれども、このケースのように指示や伝達のチェックに使うのはおおいにありだと思った。なお、今回の企画提案書作成の例でランク付けをすると、僕>Bingちゃん>部下氏になる。「あーはいはい」というだけで何も作っていない部下氏よりBingちゃんはすでに上を行っているかもしれない。

 

この実験の結果は部下氏へ伝えないほうがいいだろう。「その仕事ならAIに回してもらえませんか。私は人間のやるべき仕事をやりますので」などとできる感に覆われた無気力発言が飛び出すのは容易に予測できるからだ。バブル世代のおじさんはたくましいのだ。いろいろな意味で。最後に藁にも縋る気持ちで「50代後半で無気力な社員にノビシロはありますか。どうやって指導すればよいですか」とAIに聞いてみた。

こんにちは。Bingです。50代後半で無気力な社員には、以下のような特徴があるとされています:

言い訳を探す

指示を待ってばかりいる

周りに仕事を任せられない

小さなミスが多い

期日を守らない

マニュアル通りにしかできない

プライドが高すぎる

仕事のやり方にこだわりが強い

ただし、50代であっても、前向きに努力できる人は成長につながる可能性を持っています。

現実は厳しい。厳しすぎる。それでも僕らは前を向いていくしかない。前向きに努力できる人は成長につながる可能性を持っています。とAIも言っているようにね。前向きに努力すれば希望はある。

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執筆

フミコ・フミオ

大学卒業後、営業職として働き続けるサラリーマン。 食品会社の営業部長サンという表の顔とは別に、20世紀末よりネット上に「日記」を公開して以来約20年間ウェブに文章を吐き続けている裏の顔を持つ。 現在は、はてなブログEverything you’ve ever Dreamedを主戦場に行き恥をさらす
Everything you've ever Dreamed : https://delete-all.hatenablog.com/
2021年12月にKADOKAWAより『神・文章術』を発売。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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