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遊漁券購入アプリ「FISH PASS」は釣り人と川を守る人をつなぐ川釣りのパートナー

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「FISH PASS」は、川釣りに必要な「遊漁券」のオンライン購入を実現し、釣り人や川を管理する漁協組合に「ストレスフリーな釣り体験」をもたらした画期的なスマートフォンアプリだ。2023年には年間ユーザー数が42万人を超え、日本の半分近い川に対応している。提供元である株式会社フィッシュパスでWebマーケティングを担当する上田さんに、平均年齢70歳を超える漁協組合へのDX導入を成功させた秘訣や、デジタルサービスだからこそチャレンジできる次の一手を聞いた。

上田 江利子(うえだ えりこ)さん プロフィール

株式会社フィッシュパスのWEBマーケティング部責任者。入社前は釣り経験がなく、遊漁券が必要なことも知らなかった。仕事を機に川釣りの魅力に目覚め、現在はプライベートでもアユ釣りを楽しんでいる。職場では釣り愛好家の目線で、FISH PASSアプリの企画やSNSでの情報発信を担当する。

GPSを活用し「ストレスフリーな釣り体験」を提供

渓流釣りができる川の様子。美しい環境が保たれているのは川を整備する漁協組合の存在があってこそ。

FISH PASSは、川釣りで必要となる遊漁券をオンライン上で買えるスマートフォン用のアプリケーションだ。従来は販売店で購入するのが主流だった紙のチケットをデジタル化し、アプリを通じて24時間どこでも遊漁券が買えるようになった。

 

FISH PASSにはGPSが搭載されており、FISH PASSを購入したユーザーの位置情報が川を管理する漁協組合に届くようになっている。川のどこで誰が釣りをしているかが一目でわかるため、監視の労力が大幅に削減された。GPSを活用するFISH PASSの技術は特許を取得している。「FISH PASSが目指すのはストレスフリーな釣り体験の提供です」と話すのはWebマーケティングを担当する上田さんだ。

アプリを開いたら真っ先に購入画面が出てくる。少しでも早く購入できるよう導線を工夫しているそう。

「遊漁券は販売店が限られています。店の場所がわからなかったり、早朝で店が開いていなかったり、購入したくても購入できずに、結局未購入のまま釣りをする状況が多発していました。遊漁券の売上は漁協組合が川を管理するための費用に充てられているので、券の未購入は川の整備不良の原因になります。地元の荒れた川を見て、未購入問題に焦点を当てたことがFISH PASS開発の出発点でした」

 

いつでもどこでも簡単に遊漁券が買えるFISH PASSは、釣り人に「ストレスフリーな釣り体験」を提供し、漁協組合の収入を支えることになった。2023年のアプリの年間ユーザーは42万人を記録。全国のほぼ半数の漁協組合と提携し、いまもユーザーを増やし続けている。

 

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保険付き遊漁券で釣り人の安全を守る

アユ釣りができる川の様子。腰まで水に浸かって糸を垂らすことも。

2023年1月、FISH PASSは遊漁券に無償で自動的に任意保険を付与するサービスを開始した。川釣りは事故が多く、上田さんも釣り仲間から危険を感じたエピソードをよく耳にしていたという。

 

「流れがある水のなかに入って釣りをする川釣りは、危険なレジャーなんです。弊社の本社がある福井県の九頭竜川でも、じつは毎年事故が起きています。流れの激しい場所で流されそうになったり、渓流釣りの途中でクマに遭遇したり、釣り仲間からドキッとするようなエピソードを聞いたこともありました。

 

通常、事故やけがに保険を適用するには、釣りをしていた時間や場所を保険会社に証明する必要があります。FISH PASSでは、釣り開始時にアプリ内のボタンをタップするだけで簡単に場所と時間が記録できます。デジタルだからこそ実現できたサービスで、『安心して釣りができる』とユーザーからも好評でした」

 

損害保険ジャパン株式会社と提携して進められたこの保険サービスは、釣りを楽しむ人々の安心感を高めることにつながり、アプリにさらなる付加価値をもたらした。2024年も保険サービスの継続が決まっている。

平均年齢70代の漁協組合、DX導入のハードルを超える

FISH PASSの画面。遊漁券(左)と、管轄している組合が表示された河川のマップ(右)

漁協組合は年々高齢化が進み、現在の平均年齢は70歳を超える。紙のチェックリストで管理を続けてきた組合のメンバーにとって、FISH PASSの導入には少なからずハードルがあったという。「ボタン1つでなんでもできるようにしてほしい」との声に応え、管理画面の操作性にはこだわっていると上田さんは話す。FISH PASSに集まったデータは河川の整備にも活用されている。

 

「漁協組合では、毎年稚魚の放流が義務付けられています。決められた数の稚魚を放流するほかに、組合独自で放流の計画を立てて、釣り場の魚の数を管理しています。システムを使うと1年間でどの時期に、どのポイントに釣り人が来ているかがわかるので、そのデータを活用して放流の数や場所を決めている組合もあるようです。

 

いままで目に見えていなかった情報が数値化されて一目でわかるようになり、業務を効率よく進められたり、経理コストが下がったりしたと報告をいただいています。機械操作に抵抗がある方でも、デジタルツールを活用するメリットを感じていただけているのではないでしょうか」

 

組合向けの管理画面と並行して、ユーザー向けのアプリも随時改良されている。購入済み遊漁券を並べて表示したり、その地域の天気情報や川の水位がすぐ検索できたり、少しでも早く情報がキャッチできるように操作性や導線が日々ブラッシュアップされている。

1秒でも早く、1秒でも長く釣りができるように

自身もアユ釣りをする上田さんは「釣り人には1秒でも早く、1秒でも長く釣りに集中してほしい」と、釣り人ならではの目線でアプリを見つめる。

 

「天気や水位など、現地に行かなくてもわかる情報は事前にチェックできます。しかし、水の濁り具合など、実際の川を見ないとわからないコンディションも釣果を左右します。たとえば『今日はあの川で釣りをしよう』と遊漁券を買って意気込んで川に向かったとしても、前日の雨のせいで水が濁っていて釣りにならないといった残念な状況が起こり得るんですね。

 

釣り場に行ってその川の状態がよければ、あとは1秒でも早く遊漁券を手にして竿を振りたい。自分も釣りをするようになってから、どうしたらもっと気持ちよくFISH PASSを使ってもらえるかを考えるようになりました」

「釣れた瞬間にアユが川のなかを走っていく感覚がたまらない」と釣りの魅力を語る上田さん

設立8期目を迎えた株式会社フィッシュパスでは、便利なツールとしての機能充実はもちろん、釣りを一緒に楽しむパートナーとして釣り人に頼られる存在を目指している。FISH PASSのもとにはSNSやウェブサイトを通じて、サービスに関する問い合わせ以外の釣り人の悩みや困りごとが届くようになったそうだ。上田さんたちは釣り人の声をシステムに反映させるとともに、それを漁協組合に伝える窓口の役割も担っている。

 

「釣り人のなかには、川が荒れていることを自分ごととして捉え、組合の活動に参加して放流を手伝っている人もいます。魚が住める環境が保たれないと釣りができないことは釣り人もよく理解しているので、楽しむだけでなく環境整備の問題も真剣に考えている人が多いと感じます。

 

そのような釣り人が増えることで川も整備が進みますし、手が行き届いた川が増えれば釣り人も集まって組合の資金も増えます。釣りに来た人が宿泊したり、買い物をしたりすれば地域経済にもプラスの効果がありますよね。

 

釣り人、漁協組合、地域によい循環を広げるミッションを果たすため、企業として挑戦すべきことがまだたくさんあります。川釣りのパートナーとして、今後もあらゆる側面からサービスを磨いていきたいです」

シーズン中は自身もFISH PASSのユーザーとして釣りを楽しむ上田さん

「来年のシーズンが楽しみです」と目を輝かせる上田さん。FISH PASSは釣り人と川を守る人をつなぎ、両者の頼れるパートナーとして今後も活躍の機会を増やしていくことだろう。

 

株式会社フィッシュパス

 

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執筆

虎尾ありあ

福井県在住のフリーライター。ソーシャルやローカルなテーマ(ウェルビーイング、地域創生、循環社会、環境など)に興味があります。ライフワークは畑と筋トレ、3歳娘と5歳息子のドタバタ育児中です。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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