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創業60年の老舗IT企業が「人を大切にする DX」で大変革

創業60年以上の老舗でありながら、M&A や DX を取り入れ、大きく変革した企業がある。それが株式会社 FCCテクノ(以下、FCC)だ。1962年に電子計算センターとして設立した同社は、2020年に創業60周年を迎えた。令和になってもなお、データ管理や書類確認すべてが紙ベース。そこから完全にペーパーレス化しただけでなく、従業員が働きやすい環境を作るためにさまざまな取り組みを導入した。業績も右肩上がりだという。

 

改革を進めたFCC 代表の西村さん、執行役員の緒方さん、DX・マーケティングを担当する池上さんにお話をうかがった。

西村 秀星(にしむら しゅうせい)さん プロフィール

株式会社FCCテクノ 代表取締役 CEO・税理士。1983年生まれ、大分県日出町出身。KPMG税理士法人にて、M&A・不動産証券化などのアドバイザリー業務に従事。その後、株式会社地域経済活性化支援機構(旧:企業再生支援機構)で、地方の中堅企業の企業価値向上に貢献。事業再生計画策定、金融機関調整および資本構成立案、その他、各地で常勤赴任し、組織設計・経営管理体制確立・財務健全化などの経営改革の経験を有する。現在、株式会社FCCテクノにて代表取締役、組織再編・DX支援アドバイザリー、システム開発案件PMO、その他大手エネルギー企業等へのBPOマネジメントなどを担当。

写真左側:池上さん、写真右側:緒方さん
緒方 伸一(おがた しんいち)さん プロフィール

株式会社FCCテクノ 執行役員、Director・ITコーディネーター。1984年生まれ、熊本県荒尾市出身。福岡県内の Sler にておもに組込み系SE として、携帯電話および移動体通信網開発の PM を務める。その後、メディカル商社に転身、セールスおよび事業企画に従事し、九州・中四国の営業統括、新規拠点設立などを実施。さらにスタートアップ企業で事業開発・営業統括・デジタルマーケティング・インサイドセールスを立ち上げ、西日本支社長などを歴任。2021年、FCCテクノに参画し、新規事業開発、DXコンサルティング、デジタルマーケ立ち上げなど、各種PMO に従事している。

池上 桃佳(いけがみ ももか)さん プロフィール

1997年生まれ、福岡県柳川市出身。新卒で 株式会社FCCテクノに入社し、現在は DX・マーケティングチームに所属。Web開発案件のディレクション、デザイン、開発業務と並行して、社内・社外向けのマーケティング業務に従事。社内イベントの企画運営としても活動。

それぞれが効率的に働く手段としてのペーパーレス化

リモートワークが進み人がまばらな社内

「会社を継承した初めのころは、出社したらノートや書類が山のように机に積んであったんです。それを確認して判子を押していくだけで1日の業務時間が終わってしまうような状態でした。自分が勤務した時間をノートに赤鉛筆で引いて時間を管理したり、業務内容を手書きするような作業がまだ残っていましたね」

 

代表の西村さんはそう語り始めた。2021年にM&A によって FCC を事業継承し、株主兼代表取締役に就任。前職で数々の地方企業の再生に従事した経験を活かし、FCC でも改革を進めている。そんな西村さんには、FCC を継承することになった3つの決め手があった。

 

「まず、福岡という地方にあること、IT に強いこと、そして独立系で各メーカーともフラットに付き合えること。この3つがあれば、自分の過去の経験から FCC にも、FCCを通じて地方にも変革を起こせるのでは、と考えたのです」

 

事業を継承して社内の状態を目の当たりにし、もっと効率的にしてみんなが働きやすい環境を作りたいと考えた西村さん。

 

「当初は、勤勉であることが美徳とされる状態でした。極端な話、工夫し効率よく働く職員よりも、9時から23時まで働き、長時間会社にいることがよしとされる風潮があったように思います。ここから、それぞれが短い時間に高いバリューを発揮できる環境を作りたかった。まずこの点からこそ変革していくために動きました」

 

紙で情報が管理されているため、会社に居なければ仕事ができないうえ、必要な情報を探すことに多くの時間を割かれてしまう。場所を選ばず、時間内で効率よく働ける環境を作る手段として、ペーパーレス化が進められた。

 

「いつも話すことなのですが、私の理想は、離島に住んでいる方がそのまま島で家族と暮らすような、自分の生きたい場所で、生きたいように生きながらも、会社の仕事を普通にこなせる状態なんです」

 

いまでは100%ペーパーレス化したという FCC。どんな変化があったのだろうか。

 

「いままでバラバラになっていた情報が整理され、どこに何のデータがあるのか、それぞれが現状どれくらいの仕事をしているのかが、ひと目でわかります。そのため、仕事が滞らない流れができました」と執行役員の緒方さんはいう。

独自の管理システムを導入し、社員ごとの作業内容や作業時間がひと目でわかるように

働き方が自由になっただけでなく、クラウド管理することで業務や情報の見える化が進み、いままでよりも効率よく仕事ができるようになったそうだ。

DX は「当たり前」に切り込むところから始まる

会議に参加する池上さん(写真左)

DX・マーケティングチームに所属する池上さんは、2020年に新卒で FCC に入社。FCC でDXを推進する前と、改革後の状態をちょうど半分ずつ体験している。

 

じつは、変革前には退職も考えていたという池上さん。もともとエンジニアとして入社したが、エンジニアの仕事ができる機会が少なく、漠然とした不安があったそうだ。もしこのまま仕事を辞めても、この先どうしたらいいのかという発想すら浮かばなかったという。

 

変革後の会社について、「改革前といまでは、同じ会社にいながら転職したのではないかと思うくらい変化を感じています」と池上さんは語る。

有人対応だった会社受付は、QRコードのシステムを導入しスムーズな対応が可能になった

仕組みが変わり、業務ごとの垣根が下がった。そのため、デザイナーやコンサルタントなど、いままでの働き方では一緒に仕事をしなかったような人たちとも、関われるようになったのだという。

 

「社内外の人の話を聞く機会が増え、多くの方の考え方に触れられたことで、私自身の発想も、働き方の選択肢も大きく広がりましたね」

 

池上さんのいう、発想と物事の考え方が広がった部分は、まさに西村さんがFCC の社員にやってほしいことなのだそうだ。

そのために、西村さんが仕掛けていることがある。定期的に社外から他社の経営者やフリーランス・個人事業主など、さまざまなジャンルのゲストを呼んでスピーカーとなってもらうイベント「DIVE」だ。

イベントについて、西村さんは次のように話す。

 

「地方と都心で働く人のモチベーションの差は、さまざまなことをやっている、面白い人や尊敬できる人たちを身近に感じる機会があるかないかという部分だと思っているんです。FCC の従業員には、オフラインまたはオンラインで、多くの方々の話を聴ける機会を作りたいと考えています」

 

池上さんに少し前までの日常を聞いてみた。

 

「お客さまが来たら必ず『女性社員』がわざわざ下の階からお茶を持っていっていたんです。でも、当時は当たり前のことだと思っていました。業務管理が紙であることも、びっくりはしましたが、そういうものなのだろうと受け入れていましたね」

 

こうした以前の FCC のような文化は、DX を取り入れたいと考えている地方の中小企業には、よくあることなのだという。FCC ではそういった会社のサポートもおこなっているという。

 

「お客さまと話しているときに、まさにうちも同じでした! と、共感できるし、とても盛り上がるんです」と西村さんは言う。

 

会社をよりよい状態に変革して存続させるためにも、中にいる人たちが当たり前だと思っていることに切り込んでいく。そこから DX は始まる。

 

「そのために、まずは FCC の社内で働いている人たちが、自分のことを客観的に見て自立できる環境を作っています」

「きれいな水」のところにしか蛍は寄ってこない

2021年から、経営方針や環境含め大きな変革をおこなっている FCC では、環境作りにもっとも力を注いでいる。

 

「せっかく共感してくれる人が来てくれても、居心地が悪い会社だったら定着しないじゃないですか」

 

みんなが居心地よく過ごせる土台を固めるための DX を進める西村さん。しかし、DX という表現を前面に出すのを辞めようかと考えていたのだそうだ。

 

「DX の『デジタル』は、いまや当たり前に取り入れられるようになってきています。それより、社内では『トランスフォーメーション』していることが多すぎて……。D をとったほうがいいのでは、と話していたんです」と笑う。

現在執行役員の緒方さんは、会社の方針が決まったあとに入社した第1号だ。

 

西村さんは、緒方さんを「どんな人でも相手の立場に立って敬意を持って接することができる人」だと話す。

 

「これからの FCC に必要なのは、こういう人なんです。きっと社内の誰に聞いても、『緒方さんが来てくれてよかった』と言うと思います」

 

緒方さんは、少し照れながら語ってくれた。

 

「FCC に来て、時間や場所に縛られるのではなく、とても合理的で、働く人それぞれがバリューを発揮するための環境が整っていると感じました。そのうえで、これから新たなチャレンジができそうだと思いましたね」

 

少し前までの FCC からは考えられないくらい一変した印象だったという。

 

「西村がよく使う表現で『きれいな水のところにしか蛍は寄ってこない』というのがあるんです。その『きれいな水=社内環境』を心から作っていきたいと、自ら腕まくりして進めている部分に共感しました」

ある日の「にしむら通信」の一部

FCC には「にしむら通信」という社内報がある。西村さん自らが2,000字程度で執筆し、毎日社内チャットで発信しているものだ。

 

にしむら通信には、会社の取り組みやなぜそれを進めているのかについてはもちろん、今日聴いた曲や妻に怒られてしまったことなど、西村さんの人柄やプライベートなことまで綴られている。

 

その背景には、西村さんが前職で地方の中小企業の事業再生に携わっていたときの経験がある。事業を再生するよいアイディアはあるのに、社長と社員たちの思いや方向性が噛み合っていないために、問題が起きてしまうことが多々あったという。そもそも、社長自身が社員に向けてこまめにメッセージを発信している会社自体が皆無だった。

 

「中小企業などはとくにですが、社長のやりたい方向性があるからこそ、会社として成り立っているはず。なぜ、社長自らが、社員に向けてわかりやすいメッセージを発信しないんだろう、と常々思っていました」

 

西村さんは当時、問題が起きるたびに、現状と会社として変化が必要なことを丁寧に伝えていった。

 

その一貫で、関わっている企業の方々へ「本日の振り返り」を毎日メールで伝え始めた。次第に、一度では伝わらなかった人たちがだんだんと共感を得てくれるようになったのだという。コミュニケーションが円滑になることで、会社の方向性が共通認識になる。結果として、会社をよい方向に変革していきやすくなったのだ。

 

「にしむら通信」は、環境を整えるための大切なツールになっている。

 

24時間のうち少なくとも8時間は働いているという人が多い中、仕事を「耐え忍ぶ時間にしてほしくない」と西村さんは言う。

 

「社内で進めていることは基本的にすべて情報を開示しています。立場に関係なく誰でも見ることができ、そのうえでいろいろな判断ができる状態がフェアなのではないかと思ったんです。でも、毎日仕事の話だけではあんまりかと思って、自分のプライベートなことも書いています」

 

会社としていまどういうことを進めているのか、どういう方向性なのかが共通認識になる。それは、従業員が過ごしやすい環境作りに欠かせない。

働きやすい環境が人にも業績にもよい変化を起こす

業務の流れがひと目でわかる社内システム

働きやすい環境にするために変革を続けたここ数年で、売上も20%増になっているという。

 

ペーパーレス化に伴い、情報の流れを整理したことで働き方は自由になった。さらに、それぞれの仕事が明確になり、見える化した。それが社員のモチベーションにも繋がり、結果的に仕事の効率も業績も上がったという。

 

社外からの評判も変わってきた。古くから付き合いのある企業から、「以前は『言われたことを黙々とやってくれる会社』という印象だったが、いまでは自分から意見やアイディアを提案してくれたり、カルチャーが全然変わっている感じがする」と言われた。「一体どうやったんですか?」と驚かれるのだそうだ。

 

業務の幅も広がった。開発の種類やコンサルティングの幅が広がっただけでなく、戦略サポートにおいても業務効率化、IT、M&A、組織風土の変革プロジェクトなど、DXの支援も増えた。緒方さんは「自分たちが取り組んでいるからこそ、お客さまのDXも支援できる」という。

 

「ものを売るのではなく、シンプルに変わってほしいという思いでやっています。企業のDX の中心は人。人を変えていくのが一番難しいからこそ、実践している私たちには伝えられることがあると思うんです」

 

西村さんは、「地方の中小企業が変化していけば、必ず日本全体によい変化が生まれていく」と言う。

 

「そのために、まずは会社としての方向性を決める。そして、それを実現するための人が集まり、その人たちが成長できるような環境を作っています」

DX で「生きる力」「生き残る力」を身に付ける

DX を進めてオープンかつフラットな組織に生まれ変わった FCC。変革を進めるにあたって気を付けたのは、上から押さえつけるのではなく、自ら変わることができる環境を作ることだという。

 

「計画を作り、構成を立てて進める『剛』な DX は、手法としてはありかもしれません。ただ、ずっとそのやり方で進めても、モチベーションが下がり、保たないはずです。私たちが、従業員やお客さまと進めていきたいのは、しなやかに、したたかに生きていくための DX です」

 

西村さんは、ダーウィンの「強いものが生き残るのではなく、変化するものが生き残る」

という言葉を身をもって感じているという。

 

「もともとは売上をあげる、利益をあげることが自分のミッションだと思っていました。しかし、実際にこの会社を継承して働いている方やお客さまと出会い、自分が思っていたのとは違ったと気づいたんです。利益をあげるのはもちろんですが、中で働いている人たちそれぞれが自立して生きていける会社。そんな環境を作っていくのが自分の最優先のミッションだとわかりました。会社も変化し、従業員も自ら変化できる環境を作りたいんです。

 

東京ではなく、問題も課題も山積している福岡で、変革することで生き残っていける企業を増やしたいですね。それが、FCC の従業員にとっても付加価値になると思っています」

 

いま、FCC は変革の土台となる環境がようやく整って「きれいな水ができてきた」状態。ここから、どんどん業務内容や新規顧客の開拓など変化を進めていきたいという。

 

「目先の利益だけではなく、長い目でみた資産を作るためにも、社員たちが過ごしやすい環境を維持していきたいですね。水が淀まないように、障害となる石をどけたり泥をきれいにしたり、その手段として DX を進めていきます」

 

株式会社FCCテクノ

 

執筆

みたとも

1990年生まれ、福岡県出身。福岡在住のフリーライター・編集者。旅行と日本酒が大好き。一眼レフでの撮影・イベントでのフォトブース作りや即興演奏など、ジャンル問わず活動中。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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