さくマガ公式SNS
お問い合わせ

両社社長が語る!ロイヤルホテルとさくらインターネットの取り組み

株式会社ロイヤルホテルとさくらインターネット株式会社は、両社の社員が互いの会社へ出向する人材交流を2021年7月より開始しました。

この人材交流で、さくらインターネットはロイヤルホテルのホスピタリティを学び、これまで以上にお客さまのニーズに合うサービス創出を目指します。ロイヤルホテルは、さくらインターネットのITスキルを学ぶことで、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進します。

大阪に本社のある両社代表が、大阪で愛され続けるリーガロイヤルホテルで対談しました。

 

さくらインターネット株式会社代表取締役 田中邦裕(左)、株式会社ロイヤルホテル代表取締役 䕃山 秀一さん(右)

さくらインターネット株式会社代表取締役 田中邦裕(左)、
株式会社ロイヤルホテル代表取締役 䕃山 秀一さん(右)

䕃山 秀一(かげやま しゅういち)さん プロフィール

1956年大阪府生まれ。神戸大学を卒業後、住友銀行(現・三井住友銀行)入行。2015年に副会長に就任。2015年から2017年まで関西経済同友会代表幹事を務める。2017年、株式会社ロイヤルホテルの代表取締役に就任。

田中 邦裕(たなか くにひろ) プロフィール

1978年大阪府生まれ。1996年、国立舞鶴工業高等専門学校在学中にさくらインターネットを創業、レンタルサーバ事業を開始。その後、最高執行責任者などを歴任し、2007年より現職。インターネット業界発展のため、各種団体に理事や委員として多数参画。

2人の出会い

2人の出会い

――お2人の交流は、いつからはじまったのでしょうか?

田中邦裕(以下、田中):䕃山社長が三井住友銀行の取締役副会長をされていたときに、初めてお会いしました。もう8年くらい経ちますかね? 三井住友銀行の大阪本店に行きました。「副会長に会いに来ました」と言ったら、守衛の方に怪しまれた記憶があります(笑)。

 

䕃山秀一さん(以下、䕃山):かなりラフな格好で来てましたからね(笑)。当時大阪市が大阪のベンチャー企業を育成していて、その中で成功している企業3社の代表の1人として来てくれました。その後、私が関西経済同友会の幹事になったときに「ベンチャーに頑張ってもらわないと大阪経済の発展はない」と思ったわけです。そのときに、田中社長のことを思い出して「一緒にやりませんか?」とお声がけしました。

なぜ、人材交流をはじめたのか

なぜ、人材交流をはじめたのか

 

――2021年から人材交流がはじまりました。どうしてこの取り組みをはじめようと思ったのでしょうか?

 

䕃山:われわれの会社では、IT人材を育成し切れない部分があります。これだけ大きなホテルにも関わらず、私が代表に就任した当時、システム担当者が数名しかいませんでした。われわれからすると、そもそもIT人材とはどのような人材なのかもわかっていない状態でした。そこで、代表就任の数か月後に、田中社長のところへ相談しに行きました。さくらインターネットさんには、副業制度があると聞いていたので「副業としてロイヤルホテルで働いてくれる人を紹介してほしい」と言いました。

 

田中:そうでしたね。でも「副業している社員は会社に申請する必要がないので、勝手にやってますよ」とお伝えしました。それと同時に「そんなに人が必要であれば、出向なんてどうでしょう?」と提案したのがきっかけです。

 

䕃山:一方的に出向だと申し訳ないから、お互いに出向し合う「人材交流」にしたわけです。

 

田中:さくらインターネットとしては、社員に違う環境での仕事を経験してもらうことで成長の機会を得られます。ユーザーサイドで仕事することで、得られるものは大きいですよね。ずっと同じ会社にいると、考え方が似てきてしまいますが、他社で働くことで多様性が生まれます。

ロイヤルホテルのDX(デジタルトランスフォーメーション)

――さくらインターネットから社員が出向し、DXが進んだ実感はありますか?

 

䕃山:ロイヤルホテルの場合、DXというより「システム化」からはじめています。まだDXというレベルの話ではありません。まずはバックヤードでシステム化を進めています。その次に進めるのは、導入したシステムを使いこなすことです。人によってリテラシーの差があるので、これには時間がかかります。使い方がわからないときに、わかる人に聞ける仕組みが必要です。

 

田中:ホテル業のようなサービス業では、ホスピタリティと関係ない部分をシステム化しつつ、人間の時間をいかにホスピタリティに使えるかが、はじめのステップだと思います。その次に、お客さまへの価値提供の部分もデジタル化することが必要です。

 

䕃山:それで言うと、ロイヤルホテルには「リーガメンバーズ」というアプリがあります。ご宿泊やレストランなどのご利用でポイントが貯まったり、ステージ制度に応じたお得なサービスや特典を用意しています。2021年の8月にアプリの提供をスタートして、2022年2月時点で会員数が10万人を超えました。

 

田中:1年足らずで会員数10万人はすごいですね! プレミアム会員制度を作って、課金サービスを提供する未来もありそうです。最初は大変だと思いますが、会員数が増えればそれがビジネスになります。ホテルそのものではなく、デジタルで商売ができる。まさに、デジタルトランスフォーメーションです。

 

䕃山:こういうアイディアは社内だけでは出てこないので、ディスカッションしていきたいですね。

社員に向けたメッセージ

社員に向けたメッセージ

 

――人材交流を続けていますが、そもそもなぜ人材交流が必要なんだろう? と考えている社員もいると思います。そうした社員に向けてメッセージをください。

 

䕃山:将来のホテルには、一定レベルのシステム化が必要です。ロイヤルホテルでは、やらなければならないシステム化は2022年中にある程度完了します。更新作業はありますが、システムを使いこなすフェーズに入ります。

ただし社員は、そこまでできているレベルにあるとは知らないはずです。実際にシステムを使って「こんなことができますよ」という姿を、できるだけ早く見せていきたい。そうすれば、社員も腹落ちしやすいと考えています。

 

田中:人材交流によって、自分たちでは当たり前だと思っていたことが、じつは当たり前ではないことに気づけると思います。自分の会社や仕事のことは、中に居ると見えないものです。転職してからそれに気づくのは、あまりにももったいない。外から自社のことが見られるのは、かけがえのない経験だと思います。

 

䕃山:ホテル業は、コロナの影響でものすごいダメージを受けた典型的な業種です。立ち上がれないくらい、大きなダメージを受けました。この危機を何とか乗り切るために、われわれ自身が大きく変わらないといけません。システム開発やさくらインターネットさんとの人材交流のような取り組みは、コロナ禍でもコロナが明けたときのために続けています。「コロナの影響で売上が下がってしまったから止めます」とはなりません。今後、関西では万博やIR(統合型リゾート施設)の話があるので、マーケットが良い方向に進む可能性もあります。

 

田中:コロナについては、まったく予想できませんでしたからね。ただ、䕃山社長がおっしゃるように、関西はこれから盛り上がっていくと思います。

 

䕃山:この戦略が正しいかどうかは、正直なところ分かりません。コロナの影響は本当に大きいですから。「山より大きな猪は出ぬ」ということわざがあります。恐ろしい猪がいるとしても、住んでいる山よりは大きくないので正確に恐れるという意味で使っていました。ただ、コロナの影響を受けて「山より大きな猪、おったんちゃうかな」と思っています。本当に大変ですよ。

人材交流の手応え

人材交流の手応え

 

――人事交流をはじめてみて、手応えは感じますか?

 

䕃山:さくらインターネットさんへ出向した社員の話を聞くと、驚くくらい楽しそうに働いていますね。「こういう風に育ってほしいな」と考えていた通りに育ってくれているので、私としては安心です。

 

田中:それは、とても良かったです。先ほどもお話ししたように、ロイヤルホテルさんに出向してもらうことで、違う環境での仕事を経験してもらえています。それも重要ですが、ロイヤルホテルさんから人材を受け入れたことも重要です。外から来た人と一緒に働くことで、自分たちの仕事の価値に気づけると思います。ずっと同じ人と同じ業務をやるのに比べて、刺激を得られるはずです。社内文化とは異なる人を受け入れること自体に価値があります。

 

䕃山:もし、ほかの会社から「人材交流やりましょう」と言われたらどうしますか?

 

田中:経営者同士が目的を共有できていれば、やるかもしれません。でも、経営者同士が目的を共有できていないと難しいと思います。人事交流を増やす目的で進めると、うまくいかないのではないでしょうか。

 

䕃山:それはありますね。そういえば、御社へ出向している社員に聞いたところ、田中社長が社内ラジオを配信したり、役員会議の議事録を公開しているそうですね。これには驚いたようです。

 

田中:「田中ラジオ」という社内向けラジオを、週に1回ペースで配信しています。役員会議もオープンにできないこと以外は、全社員に公開していますね。

人事の業務について

――両社の人事が主導して、人材交流の取り組みが進んでいます。人事の業務についてはどうお考えでしょうか?

 

䕃山:人事は重要です。退職や休職で人が足りなくなった部署に人を補充することが人事の仕事になりがちですが、人事の仕事は戦略的に育成と配置をすることです。銀行には「人事部人事」という組織があります。人事部人事の役割は、面談を重ねて人材育成や配置を戦略的に考えることです。多くの会社では、こうしたことを人事部ではない部署でやってしまっているのではないでしょうか。

 

田中:人が足りなくなったから入れるのでは、遅いですよね。そうなる前に人を入れる必要があります。「人事部人事」のない会社は、とても多いです。さくらインターネットにも、いまはないので、作らなければと考えています。人事が主導となって業務ベースではなく、育成ベースで考えようと話をしています。CS(カスタマーサクセス)とES(エンプロイーサクセス)を実現するために、どうすればよいかを考える必要があります。

 

――人材育成において、ビジネスパーソンに必要な要素はどのようなものがあると考えますか?

 

䕃山:ビジネスパーソンには「耐性」が必要です。耐性を鍛えるには、適度なストレスを抱えながら自分で乗り切ることが必要です。

 

田中:社員にネガティブなストレスを感じてほしくはないですが、ちょっとしたことで行き詰まってしまうのは、あまりにももったいないですよね。そのブレイクスルーとしての手段のひとつに、出向や異動があると思います。良い環境だとしても、違う環境なのでストレスはかかります。でもそのストレスは、ネガティブなストレスではありません。

 

䕃山:「プロジェクトをやり遂げること」も良い経験だと思います。プロジェクトを進めるにはストレスがかかりますが、やりとげた際の達成感は大きいです。

これからの働き方

これからの働き方

 

田中:終身雇用がなくなりつつありますが、さくらインターネットは終身雇用を続けたいです。ジョブ型採用の話もありますが、私はいろいろな経験をしたほうがいいと思っています。ただ、年功序列は良くないと思いますし、できる人には給料を上げていかなければなりません。同じ会社で長く働くけれど、いつでも転職できるような人材になってほしいです。違う会社で働く経験を積むことで、そうした人材に近づけると思います。ぜひ、ロイヤルホテルさんとの取り組みは続けていきたいですね。

 

䕃山:私もそう思っています。続けていきましょう。

 

 

執筆

川崎 博則

1986年生まれ。2019年4月に中途でさくらインターネット株式会社に入社。さくマガ立ち上げメンバー。さくマガ編集長を務める。WEBマーケティングの仕事に10年以上たずさわっている。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

すべての記事を見る

関連記事

この記事を読んだ人におすすめ

おすすめのタグ

特集