「既存サービスの安定運用と新たなチャレンジ」さくらのVPSとさくらのクラウドをつくるインフラ開発エンジニア

さくらインターネットで日本最大級のサーバーホスティングサービスや IaaSサービスに携わる「インフラ開発エンジニア」。さくマガでは、インフラ開発エンジニアの仕事内容や、エンジニアとして働く魅力などについて紹介しています。

 

今回は、安定・高速・低価格を実現した仮想サーバーサービス「さくらのVPS」と、サーバーのスケールアップ・スケールダウンやネットワーク設定も可能なIaaS型パブリッククラウド「さくらのクラウド」に携わるインフラ開発エンジニアにインタビュー。さくらのVPSとさくらのクラウドをつくる技術や、インフラ開発エンジニアに必要なことなどについて話を聞きました。

(左から)長谷川 伸、山田 泰史

山田 泰史(やまだ やすふみ)プロフィール

2014年入社。新卒入社したIT企業で営業職を経てエンジニアに転向した。クラウドに携わりたいとの想いからさくらインターネット入社。現在、クラウド事業本部 プラットフォーム部 副部長。

長谷川 伸(はせがわ しん)プロフィール

2017年入社。大手ISPでVPNサービスの開発・運用を経験後、知人の話をきっかけにさくらインターネットに入社。入社以来、おもにさくらのクラウドの運用を担当する。現在はメンバーのマネジメントも務める。

さくらインターネットに入社したきっかけ

――これまでの経歴について教えてください。

山田 泰史(以下、山田):2014年9月にさくらインターネットに入社しました。新卒で入ったのもIT企業で、そこで営業職を1年半くらい経験しています。そのときの同期だったエンジニアの仕事ぶりを見て、「楽しそうだな」と思ったのがきっかけで技術側に移りました。

いまに至った大きな要因の1つは、前職のISP(インターネットサービスプロバイダ)での経験です。ISPというとインターネット接続を提供するサービスが主力事業ではありますが、私はサービスを支える各種サーバーの運用・管理をメインの業務としていました。代表的なところでは、当該サービスに必須となるDNSサーバーやWebサーバー、ほかにも管理基盤となるサーバーなどです。これらの運用を通じて大規模インフラに触れることができたことで、エンジニアとして大きな経験となりました。

ISPでの業務はとてもやりがいのあるものでしたが、AWS などをはじめとしたクラウドサービスの勢いを感じて、自分自身の今後の方向性を考えていたタイミングでさくらインターネットとご縁があり、転職することにしました。

さくらインターネットに入社してからは、さくらのクラウドのインフラ運用にずっと携わっています。サーバーの構築やセットアップ、物理的な作業や障害対応、お客さま対応などを経験してきました。組織変更もいくつか経て、現在は副部長とマネージャーを兼務しています。

 

――長谷川さんはこれまでどういったご経験をされてきたのでしょうか。

長谷川 伸(以下、長谷川):私がさくらインターネットに入社したのは2017年で、2社目の転職でした。前職は某大手ISPです。コンシューマー向けVPNサービスの開発と運用、おもにVPNネットワークに携わっていました。

さくらインターネットに興味を持ったのは、たまたま先輩がさくらインターネットに転職して、その後、いろいろ話を聞いていたからです。その方が、自分のやりたいことをつぎつぎとかなえていくスーパーエンジニアだったんですね。そういった人が、「かなり自由に開発ができる」と言っていたので、「いい会社なのだろうな」と思いました。ネットワークやクラウドに携わりたいと思っていたのと、前職の職場環境が変化するタイミングもあって、その先輩にさらにくわしく話を聞いたうえで、さくらインターネットに応募したという感じですね。

いまは山田さんの下でさくらのクラウドのインフラ運用をメインで担当しています。2022年からリーダーになりましたので、いままでの運用業務に加えて、メンバーのマネジメントにも取り組んでいます。

さくらのVPSとさくらのクラウドを支える仕事

――お二人が所属するプラットフォーム部 基盤グループ基盤ユニットの役割や業務内容を教えてください。

山田:ざっくり言うと、さくらのVPSとさくらのクラウドのインフラ運用、また、さくらのVPS、さくらのクラウド、専用サーバーといったサービス間をつなぐためのネットワーク運用です。

また、さくらのクラウドは独自に課金システムを持っています。もちろん既存のシステムと連携していますが、そのほかのサービスと課金の仕組みが異なります。

現在、さくらのクラウドのサービス企画やお客さまが利用するコントロールパネルの開発、APIの開発といった「開発」と呼ばれるものは他部署が担当し、インフラ運用を私たちが担っています。さくらのクラウドは2つの部署にまたがって構成されているということですね。

以前、私たちの部署では、さくらのクラウドのインフラ運用をメインにおこなっていましたが、2022年からはさくらのVPSのインフラ運用を担当するメンバーも加わりました。さくらのクラウドとさくらのVPSは、お客さまのレイヤーは異なるものの、どちらも仮想化技術を利用したサービスです。一部の機器では同型機種も使用しており、物理的にも論理的にも親和性があります。また、体制面を強化するという意味でも、さくらのVPS、さくらのクラウド双方のメンバーが協働してサービスに向かう体制を構築するため、同じチームとして取り組んでいくことになりました。

山田 泰史

――具体的な業務はどういったものでしょうか。

長谷川:多岐にわたりますが、山田さんもおっしゃっていたように、インフラ開発とインフラ運用という2つの軸があります。インフラ開発は、ざっくり言うと新しい機器などをサービスに組み込んでいく業務ですね。インフラ運用は、そういった機器を壊れたら直す、足りなくなったら足すといった、継続して安定したサービスを提供するための業務です。

 

IT業界は、新たな技術やソフトウェアがどんどん出てきます。できる限りそれをキャッチアップしながら、必要な機器を選んで検証・設定・チューニングしてサービスに取り入れていくのがインフラ開発の仕事です。

細かな制御部分などの開発自体は他部署の担当になりますが、かなり密に連携をとっています。お互いの定例ミーティングに参加して、課題を見つけたら「ここ直したほうがいいよね」「こういう機能が必要だよね」といった情報交換をしながら進めています。

あとは次世代基盤の検討ですね。今後20年、30年、いまと同じ仕組みのままサービスを提供し続けるわけにはいかないので、現在の仕組みをどう新しくしていくかといった検証もインフラ開発が中心となっておこなっています。

 

インフラ運用は、いま稼働しているものを安定的に提供するための仕事です。 機器の物理的・論理的な障害対応や保守、脆弱性対応のための各種ミドルウェアなどのアップデートなどをおこなっています。お客さまに提供するクラウドや仮想サービスは、どうしても物理的に多くのリソースがないとお客さまに提供できなくなります。なので、もし足りなくなったり足りなそうだとわかったら、適宜サーバーなどの機器を増やしていくのも運用の仕事です。

あとは、機器が古くなったらリプレイスが必要になります。サーバーやストレージからお客さまのサービスを退避してもらって、機器を撤去するといった一連のライフサイクルを回していくのがインフラ運用の大きなミッションの1つです。

こういった業務のなかで、さくらのクラウドとさくらのVPSいずれも、メンバーが直接データセンターに足を運び自分たちで機器を設置する機会もあります。最近は、コロナ禍の影響で外出が制限される期間もありましたので、データセンターのスタッフにお願いして作業を完結できるよう工夫していますね。

また、運用改善にも取り組んでいます。たとえば、手作業でおこなっている業務の自動化や、作業効率化のための仕組みづくりなどです。リソースの状態やさまざまな機器をモニタリングしつつ、異常がないか、リソースが足りているかを判断できるシステムの拡充に注力しています。

これらのシステムを活用してキャパシティ管理をおこない、サービスを安定的に供給できるようにリソースの最適化を実施しています。IPアドレスやお客さまのサーバー、ディスク作成数などをモニタリングしながらリソースに不足がないかを判断して、お客さまを適切に割り当てたり、機器をリプレイスしたりといったことをしています。

 

お問い合わせ対応も私たちの重要な仕事の1つです。お客さまからいただくお問い合わせ内容のなかで、フロント(カスタマーサポート)で回答が難しいものについては、私たちにエスカレーションされます。技術や仕様に関する回答をしたり、障害の調査をして基盤側の問題の可能性があれば適宜是正したり、あるいは開発チームにフィードバックしたりしています。

 

山田:もう1つ、さくらのクラウドのサービスを提供するにあたっては、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)への対応も非常に重要な業務です。2021年にISMAPを取得しましたので、それを維持し続けるための活動については、開発や企画、運用メンバー含め、みんなで取り組んでいます。

インフラ開発エンジニアに必要なこと

――業務内容が非常に幅広いと感じました。どういった方がさくらインターネットのインフラ開発エンジニアに向いていると思いますか?

山田:まず物理的な知識として、ざっくりとどういったものかという理解は必要です。そして、ただ機器だけ置いてもサービスは提供できませんので、OS やミドルウェアをインストールして、ネットワークでつなぐという知識の大前提があると思うんですね。そこにはさまざまな要素がありますが、さくらインターネットが他社と比べて特徴的なのは、OS も含めオープンソースのソフトウェアを使用している点です。オープンソースの OS を活用して、その上でオープンソースのミドルウェアを入れています。なので、OS やミドルウェアを触って楽しいと思える方にとってはいい環境ではないかと思います。

また、ネットワークの L2 や L3 といったレイヤーごとの知識があるとベターですね。具体的には「サーバーだとこんなコンフィグと VLAN 通せるよね」「スイッチだとこうすれば VLAN をわけられるよね」といったイメージがつく方、オペレーションができる方だと頼もしいです。

 

――どういった方と一緒に働きたいですか?

山田:サーバーやネットワーク機器、ストレージ機器などを触るのが楽しい、OS やミドルウェアを触るのが楽しい、そしてそういったものを使ってサービスを作りたいというマインドのある方ですね。もし経験が浅くても、さくらインターネットには実際に触りながらいろいろなことを検証できる環境がそろっていますから、スキルアップできるはずです。

 

――長谷川さんもうなづいていらっしゃいますね。

長谷川:じつは、私はさくらインターネットに入社するまでサーバーやネットワーク機器、光ファイバーなどをほとんど触ったことがなかったんです。なのに「クラウドをやりたい」と言っていたんですけど(笑)。実際にさくらインターネットのデータセンターで実物を見て、触れることができたのはとても楽しかったですし、その経験が自分のスキルアップにつながっている実感があります。山田さんがおっしゃったように、楽しんで興味を持って取り組むことができて、知識を吸収してアウトプットできる方は、さくらインターネットのインフラ開発エンジニアに向いていると思います。

あと、物理・ミドルウェアなど構成要素は多岐にわたりますが、それらを組み合わせて新しいものを作ったり、課題を解決したりするイメージを抱ける方。そういったことを提案できて、実際に作れる方が一緒に働いてくれたらとても楽しいだろうなと思います。

 

――さくらのVPSとさくらのクラウドの運用に携わるうえで、そのほかのサービスを作っているインフラ開発エンジニアとの違いはありますか?

長谷川:低レイヤーの仮想化技術を扱っているところはほかのサービスと違う点だと思います。ただ、それはサービス仕様の違いによるものですから、エンジニアとしてのマインドはあまり変わらない気がしますね。

クラウドの場合は、1つのサーバーやストレージ、ネットワークの中に複数のお客さまを収容する必要があるので、KVMや関連するさまざまな仮想化技術を扱う点については、ほかのサービスとは少し違うかなと思います。クラウドの場合はネットワークストレージというキーワードもありますので、そこも違う点かもしれないですね。

ただ、何かがネットワークにつながって互いに通信したり、インターネットに出て行ったり入ってきたりするという根本的な仕組みはどのサービスでもあまり変わらないと思います。その内側をどうするかという話になってきますので、クラウドやVPSだからといって、エンジニアに求められるものに違いはあまりないと思います。

長谷川 伸

リモートワークならではの生活スタイル

――さくらインターネットはリモートワーク前提の働き方(※)となりましたが、それ以前と以後でなにか違いはありましたか?

※さくらインターネットのリモートワーク前提の働き方と「さぶりこ」ついてはこちら

山田:リモートワーク前提の働き方になる以前、メンバーのほとんどが東京支社勤務でしたが、もともとデータセンターにあるサーバーに対して遠隔のオペレーションをしていました。先ほどお話ししたように、物理的な作業も当然ありますが、一度設置さえすればリモートで業務可能です。

それに、コロナ禍の前からリモートワークができる制度はあったので、それを活用している人もいました。離れた場所にいても打ち合わせができるツールや、Slack(チャットツール)を活用して情報共有していましたね。

コロナ禍による緊急事態宣言などで出社できないことがあったり、本社や支社の環境も大きく変わったりしたなかで、最初は戸惑いがあったかもしれません。それでも、もともとリモートワークできるベースは整っていたので、業務においてはあまり大きな影響はなかったと思います。

 

ただ、リモートのコミュニケーションとなると、リアルとはまた違ってきます。たとえば、複数人が参加するリモートの会議では、1人しか話せないですよね。リアルの会議だと、隣に座っている人とちょっとした会話ができます。リアルならより柔軟なコミュニケーションが可能ですが、リモートでは難しい。そういったやりづらさを感じることはありますね。

もちろんリモートワーク前提となってからいい変化もあります。さぶりこフレックスを活用し、それぞれの家庭のライフスタイルに合わせて柔軟に働くメンバーが増えました。お子さんのお迎えのために朝早く業務を始めて早めに退勤するなど、仕事とプライベートの両立をしやすくなったのは、すごく良かったと感じます。私自身も、子どもと一緒にゆっくり夕食をとれるようになりましたが、リモートワークならではの生活スタイルですよね。メリットもデメリットもありますが、オンラインとオフラインのいいとこどりをして、状況に合わせてうまくやっていけたらと思います。

既存サービスの安定運用と新たなチャレンジ

――今後目指していることは何でしょうか?

長谷川:いま稼働しているさくらのクラウドやさくらのVPSをきちんと運用し、サービスを安定して提供し続けていくことがまず第一です。運用を疎かにはできません。私たちが携わるインフラの上でお客さまのサービスが動いていて、その対価として料金をいただいています。まずはいま動いているものに関しては安定して運用し、そのうえで必要な増強や刷新、サービスのスペックや運用品質の向上を目指します。

これまで、運用も改善もすべて少数のメンバーで取り組んできましたが、組織が少しずつ大きくなり、動けるメンバーも増えてきました。メンバーが増えた分、役割分担しつつ、いまあるものの安定した運用の継続と、新しいものを作ることの両方に取り組めるようになってきていると思います。あとは、いま動いているインフラ基盤を中心に、抜本的な改革をしてよりよいサービスをお客さまに提供できるようチャレンジしたいですね。山田さん、いかがでしょうか?

 

山田:おっしゃるとおりです。さくらインターネットのサービスの売り上げを支える割合において、さくらのVPSとさくらのクラウドは大きな比率を占めています。お客さまに提供しているサービスをきちんと支えることで、結果としてしっかり売り上げをとれる。つまり、さくらインターネットを支えることにもつながります。10年続いてきたものを、この先もしっかりと続けていくという意味では、お客さまの信頼を獲得し、いいものを適切な価格で提供すること。それらを実現できるよう、支えていくのが一番大事だと思います。

ただし、同じものを使い回すわけではなく、基本設計から見直して新しいものへのチャレンジも必要です。支えることばかり重視すると、新しいことができなくなりますが、かといって新しいことや楽しいことだけやっていればいいわけではありません。きちんと両方に取り組んでいきます。

――最後に、これからチャレンジしたいことについて教えてください。

山田:さくらのクラウドは IaaS と呼ばれるインフラまでを提供するサービスです。お客さま側のカスタマイズ性・自由度が高いのが特長ですが、言い換えれば玄人志向のサービスとも言えます。でも、もっと便利で使いやすいものを求めているお客さまもいる。ミドルウェア層やアプリケーションまでを提供するレイヤーの高いサービス、あとはサービスの導入や設定、運用や管理などを担うマネージドサービスのような、お客さまの負担を軽減するサービスも需要があると思いますね。そういったものが実現できるように、インフラ開発をもっと加速していきたいと思っています。

もう1つ、1~2年前くらいからガバメントクラウドや ISMAP取得といった政府・官公庁系の話もでてきています。そういったものに追従していくための活動という意味では、スペックが足りなければ新しい機器を入れてサービスにしていくといったインフラ開発も必要です。また、ISMAP を維持し続けるためには、それに合わせてきちんと運用を回し続けなければなりません。これはチャレンジというよりも継続の話にはなりますが、きちんと取り組まなければいけません。

 

長谷川:安定して運用を継続することについて、山田さんもおっしゃっていますが、それにはミスなく迅速なオペレーションを可能にする必要があります。そうなると、やはり自動化というキーワードは今後も重要になってきますね。自動化を推進して、エンジニアが「楽できる運用」、「夜寝られる運用」にチャレンジしたいです。

運用が辛いと、お客さまも辛いと思うんです。そういったことがないよう、新しい技術と新しい基盤でさくらのクラウドやさくらのVPSを提供して、お客さまも運用している私たちエンジニアもお互いにハッピーになれるといいですね。そういった仮想化基盤を作ることが私の夢です。

 

(撮影:ナカムラヨシノーブ)

 

 

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