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CROSS Party2021「魅力発見研究職!」

「研究職」という言葉はよく聞くけど、実際にはどんな仕事をしているのでしょうか? 現職の研究員達が赤裸々に語ってくれました。研究職の魅力についてわかりやすく解説してくれたので、これから研究員を目指す方におすすめのイベントレポートです。

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本パネルのテーマ

普段の業務について

普段の業務について

 

鷲北 賢さん(以下、鷲北):本パネルは、企業の研究関連業務に携わる方々をお招きし、研究という業種・業務内容や、どのような働き方をされているかについてお話しいただきます。1つ目のトピックは、普段の業務についてうかがいます。まず堀場さんからお話ください。

 

堀場 勝広さん(以下、堀場):私の部門では、研究らしい研究というよりは、事業の結びつきを意識して研究開発をしています。5G領域や、ユースケースみたいな話が結構大きいんですけど、なにぶん領域が横断的なんですよね。

ネットワークを使って何かをするにしても、その中で広い分野のスペシャリストが集まってやっています。そこで実証実験などに取り組んでいます。当然、その取り組みはわれわれだけでやっているわけではありません。パートナー企業さんも含めて、やらせてもらっています。1つの技術で掘り下げていくというよりは、広範囲な境界領域を一生懸命やっている部門です。

 

鷲北:事業に結びつくような研究をされているとのことですが、何かテーマはあるのでしょうか? それも与えられるケースはありますか?

 

堀場:与えられることもありますけれども、多くの場合では自分たちでこれから何が必要になってくるかを含めて、課題形成をします。それからストーリーテリングも含めて、われわれの仕事になっていますね。

 

鷲北:ありがとうございます。続いて立掘さんお願いします。

 

立堀 道昭さん(以下、立掘):私たちは、会社に関係あることをします。その中でも「インパクトを産み出す」ことを大事にしています。インパクトを生み出すというのは、いろいろな見方があります。論文を書いて賞をとるのもいいでしょうし、売り上げに何らかの形で貢献するのもいいです。

ほかにも面白い技術を開発して、新聞やWebメディアなどに公開してもらって、IBMの認知を高めるという形でもいいと思います。いろいな尺度はあるんですけど、インパクトを生み出すことを目指して、プロジェクトを定義します。

論文について

鷲北:事業も見据えつつ、さまざまアウトプットされていると思います。論文についてもうかがいたいです。

 

堀場:論文を外に出していくのは、1つの出口として存在しています。論文がKPIになっているわけではなくて、戦略上、論文を出すことが適しているのであれば出します。まずは特許を出してからという話もあるでしょうし、論文以外の形でのアウトプットもあります。論文は出口の中のone of themと考えています。

 

鷲北:おそらく今回、プロダクトの開発業務や運用業務に関わっている視聴者が多いはずです。そういった方からみると、サービスなどがアウトプットの中心になるのかなと思います。研究業務のアウトプットには、さまざまな形態がありうるんだ、と理解されそうですね。

 

立堀:IBMの文化では、基本的に論文を書かなければ研究者じゃない、という考えが正しいと思っています。それなりに尖ったことをしているんだったら、論文を出すべきです。これは1つの考え方なんですけど、必ずしも論文を出さないと生き延びられないかというとそうではありません。

すごく面白いことをして、すごいインパクトさえ見出していれば、生き延びていけると思うんです。ただ、どうも研究者としては論文を出していないと、今後のキャリアを考えたときに難しくなります。なので大邸の人は、論文を常に出したいと考えていると思いますね。そうじゃない人は、他に行ったほうがもっと面白いことができると思います。

 

堀場:論文に書きやすい成果、書きにくい成果ってあると思うんですよね。数字で表しやすいものや、それを公開することによって、業界を盛り上げる可能性があるものについては、論文として書くことも多いです。あとは学会から「このテーマについて書いてくれないか」と話もあったりするので、そういうケースで書くことが多いですね。

ただ、論文を目的としていないリサーチのような、少し事業開発寄りの話もあります。なので、必ずしも論文がゴールではないです。必要になれば書くという感じです。立堀さんがおっしゃるように今後のキャリアを考えたり、自分を残すという視点については重要だと思います。

 

視聴者からの質問

視聴者からの質問

 

鷲北:ここで、視聴者からの質問にも答えていきたいと思います。研究職以外の職種の方との関わり合いについてお聞きしたいです。

 

堀場:事業部門との関わりはあります。営業から「法人営業でこういうご紹介をしたい」という話もありますし、広報から「こういうニュースみたいに取り上げたいんだけど」といった話もあります。

 

立堀:望まれないものを作っても仕方がないので、受け入れ先の製品部門と密に連携しなければいけません。プレスリリースを打つこともするので、広報担当とも関わりがあります。いろいろな方の力を借りてやっていくことは、当たり前におこなわれています。

 

トピック2 企業研究所の課題

鷲北:2つ目のトピックです。企業研究所は、いわゆる純粋な研究とは違います。企業というのは、利益を求める組織です。なんでもかんでも好き勝手にできるわけではありません。

あと、私も「何の役に立つの?」と非常に無粋なことを言われたりするんですよね。そういう経験がおありかどうかは別にして、何か思うところがあれば教えてください。

 

堀場:分野にもよると思うんですけど、最近は研究の理論的なところと、実践のところが非常に近くなっていると思います。それを製品レベルに押し上げるのはまた別の話ですが……。研究者をやっていてすごくモヤモヤしているのは、実際の通信事業者のネットワークに放り込んでみて、どのような欠陥があるのかは、結構わからないまま終わることが多いんですよ。

僕がソフトバンクに入って一番やりたかったことは、そういうギャップをどんどん埋めて、俺の思った一番いいと思うネットワークをテレコム事業者の中でちゃんと動かしてやるんだ、くらいのことを思っています。そういう点では、企業の求める利潤とやりたい研究が非常に近い状況だと思いながらやっています。僕としては企業と研究との間のギャップは、いまのところはそんなにありません。

 

立堀:実は案外、やりたい研究が本当はできていないのかもしれません。何の役に立つのかを考えるのは、当たり前のことだと自分では思っています。基本的にITをやっていて、役に立たない研究をしてどうするの? とは思います。

それが10年後なのか50年後なのかはさておき、何らかの役には立つと信じています。でも、会社のポリシーに合うか合わないかは必ず出てきます。

 

鷲北:もちろん研究をやっている本人たちは、役に立つと信じてやっているわけです。一方で、その進捗を見ている人や、あるいは論文を見た社内の人のリアクションが「何の役に立つの?」みたいなこともあって、ギャップを感じることもありました。

続けていくうちに、コミュニケーションが非常に重要だと改めて思います。「自分はこういう気持ちで、この役に立つのでやっている」という、コミュニケーションをすることが重要です。それを伝えて、理解していただける上層部や一緒に仕事をしているみなさんとコミュニケーションをする。そうしないと「何の役に立つの?」という質問が生まれてしまいます。これがコミュニケーションギャップなんだなと、いま思いました。

 

堀場:僕は大学院の入試のときに初めて、研究計画書を書かされたんですよね。そのときのトレーニングが会社に入ってすごく役立ったと思っています。

「自分たちのプロジェクトが、会社に対してこう貢献するんです」という説明って、言い換えると「自分のやりたいことを会社のやりたいことにフィットさせていくこと」です。また、そういうふうに会社自体を動かしていくことでもあります。リサーチャーとして何かをやっていくときに、そのようなコミュニケーションは非常に重要だなと思います。

研究者のキャリアについて

鷲北:次のトピックに移らせていただきます。研究者のキャリアについてです。エンジニアで、開発や運用に携わっている方との比較でお話をうかがえればと思います。研究所に入ろうと思った動機を教えていただきたいです。

 

立堀:子どもの頃、大学教授になって研究ばかりして暮らしたいと思っていました。IT系の研究をしたいなと思い、頑張って博士まで行きました。大学で博士をそのまま取ると、大学に4年間いた後、修士2年間、博士3年間、9年も大学にいるわけですね。

そうすると、大学という閉鎖的な空間がちょっと嫌になっちゃいました。そのころはソフトウェア工学をしていましたが、それが本当に役に立つかよくわかりませんでした。インパクトを世界に与えるためには企業の研究所かなと思い、たまたまIBMの研究所を知る機会があったので、入ったのが経緯ですね。

 

鷲北:入社当初から研究所ですか?

 

立堀:そうですね、研究所以外は行きたくなかったので。

 

堀場:私はもともと大学の研究室で研究開発をしていたら、面白くてやめられなくなってしまいました。それを実際の環境で動かすところまでやりたいというモチベーションが高かったです。自分のアイディアを適用したい、どこかで動かすところまでやりたいという想いがありました。

その中でソフトバンクというテレコムキャリアに入ってやってみたいなという想いがが大きかったです。その中で実務にすごく近いというよりは、それをどうディレクションしていくかを考える部門で受け入れていただきました。僕としては研究と運用に入る直前くらいまでを全部フォーカスしてやれる場所を狙って入りました。

「これはすごいな」と思った研究内容

鷲北:最後の質問となります。「これはすごいな」と思った他の方の研究内容はありますか? 最近聞いたこのテーマ面白かったとか、こういうのに注目してるといったものがあれば教えてください。

 

立堀:結構前にUSにたまたま行ったときに、研究の評価をする業務がありました。そのときに一緒に業務をした人がですね、レーシックの発明をした方です。そういう人がゴロゴロいて、彼らと競争しなきゃいけないのはつらいなと思いました(笑)。

 

堀場:一番最初に大学の研究室に入って、一緒に研究を開始させていただいたときの先輩です。IPで映像を運ぶ話があったと思います。それのすごいところは、リサーチとしても成り立っていて且つ、ダウンロード数も何十万とかあるんです。ソフトウェアの開発と、論文としてちゃんと成り立っている。

あと社会に対しての研究としても成り立ってるし、役に立っています。これは理想的だなと一番最初に感じたのがその研究でした。なので、自分としても動かすとこまで含めてやりたいなと思っているのは、そのインパクトが強かったからなんだろうなと思っています。

 

鷲北:ありがとうございます。それでは、お時間もきてしまいましたので、今回ここまでにさせていただければと思います。本セッションは以上とさせていただきます。ご視聴ありがとうございました。立堀さん、堀場さん、みなさまここまでお時間ありがとうございました。

 

執筆

鎌田 真依

2015年6月にさくらインターネットに中途入社。 ES(人事)部所属。 これまで、スタートアップ支援や学生支援などのブランディング活動に従事し、現在は新卒採用を担う。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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