行政手続きサポートのDXで申請期間を短縮! デジタル化で全国展開する行政書士事務所

コロナ禍をきっかけにDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めた企業は多数ある。その中でも、業務効率化とクライアントの拡大を同時に成功させたのが、大阪府に拠点を置く行政書士クリアス法務事務所だ。

代表の行政書士 吉村 健(よしむら けん)さんは、個人情報保護体制の構築やプライバシーマーク(Pマーク)、ISO取得の専門家でもある。事務所のDXと情報管理の考え方などについて話を聞いた。

写真提供:行政書士クリアス法務事務所

吉村 健(よしむら けん)さん プロフィール

1981年生まれ、兵庫県尼崎市出身。立命館大学文学部卒業。行政書士、個人情報保護士、ISMS/ISO27001主任審査員。
情報セキュリティーソフトウェアメーカーでの勤務を経て、コンサルティングベンチャー企業に転職。ISO取得や個人情報保護体制の構築、業務改善のコンサルティングに従事。2013年に行政書士クリアス法務事務所を開業。これまでのコンサルティング経験を活かし、予防法務の観点から企業の事業活動をサポートし、コンサルティング・法務サポートをおこなった企業数は累計で1000社に上る。

「コンサルティングは天職」国家資格を土台に開業

オフィスでは3台のディスプレイを駆使し、外出先で受けた急な問い合わせには愛用のiPadで対応する吉村さん。ITツールを使いこなす様子から理系出身に見られそうだが、大学では文学部だったという。卒業後、情報セキュリティーソフトウェアメーカーに入社した理由は「もともとコンピューターが好きで自分でも触っていたから」。

 

入社後は理工系学部出身ではないことを悔しく感じたこともあったが、コンサルティング業務に携わったことで、現在の仕事につながっている。

「ソフトウェアメーカーでしたが、数年開発の現場を経験した後にコンサルティング事業の開拓に入っていきました。人の話を聞いたり、話したりするのが好きなので、コンサルティングの仕事が自分に合っていると気づいたんです。業務を通じてPマークや情報セキュリティの知識、人脈を得ることができ、それらをさらに活かせるコンサルティングベンチャー企業に数年後に転職しました」

 

コンサルティングベンチャー企業では、ISO取得、個人情報保護体制の構築や業務改善のコンサルティングに従事し、中小企業から一部上場企業まで、700以上のさまざまな規模の企業に対するコンサルティングをおこなう。やがて、コンサルティングの土台として法律の知識が必要だと感じ、国家資格を取得すればコンサルティング経験とのシナジーを生み出すことができると考えるようになった。

「法律系の国家資格はいくつもありますが、資格試験に個人情報保護法が含まれていることもあり行政書士を選び、2012年に試験に合格しました。行政書士の登録をし、行政書士クリアス法務事務所を開設したのは2013年です。情報セキュリティ、個人情報保護を中心とした各種のコンサルティングから申請手続きまでをワンストップでサポートしています」

写真提供:行政書士クリアス法務事務所

クラウド化を徹底。働き方の自由度も業務効率も上がった

「DXの一番の目的は、お客さまへのレスポンスを早めることです」と吉村さんは言う。

「行政への各種申請手続きなど、アナログでやらなければならないことも多いです。そのプロセスの中でも、デジタル化することで作業工数や時間を減らせるところを見つけて、期間を短縮するように努めています。事務所では全員にデュアルディスプレイ環境を整え、書類の比較チェックなどもプリントアウトせず、画面上でできるようにしています」

 

DXのもう1つの目的は、自分たちの仕事を効率化し、働き方の自由度を上げること。

「どこでも仕事ができるように、クラウド化を徹底的に進めました。外出先でもiPadがあれば仕事ができますし、在宅勤務ももちろん可能です。業務の性質上、どうしても出勤してもらわないとならないこともありますが、それ以外は当日の連絡でも在宅勤務可能としています」

 

リモートワークを進めるためのクラウド化だったが、情報の一元化により、管理コストが削減され、ミスも防げるようになった。

「契約や申請業務においては、書類のバージョン管理がとても重要です。クラウド上で一元的に管理するようにしてからは、バージョン管理に関わるミスは発生していません」

 

進捗やスケジュールもデジタル化して共有しているので「いつの間にか予定が埋まっています」と吉村さんは笑う。現在、力を入れているのは、事務所内での知識・ノウハウの共有。書類作成のポイントといった基礎的なことから、補助金申請などに関する事務局や役所からのコメントなどもキーワードで検索できるようまとめて共有している。

「頭の中に留めずにアウトプットして共有しておけば、お客さまからお問い合わせをいただいた際に、受けたメンバーがすぐにフォローできます。レスポンスを早くするために、ノウハウの蓄積には組織として取り組んでいます」

 

勤怠管理や経理もクラウド型のサービスを利用。デジタルツール類の費用が大きくなってきているが、それに見合う効果が得られると判断して惜しまず契約している。

写真提供:行政書士クリアス法務事務所

オンラインツールを活用して全国の企業をサポート

行政書士クリアス法務事務所では、2020年のコロナ禍による緊急事態宣言発出を契機に、クライアント企業とのコミュニケーションのオンライン化が一気に進んだ。

「最初の緊急事態宣言のときは、ピタリと仕事が止まりました。それまでは対面で仕事をしていましたから。お客さま側のテレワーク体制が整い次第、打ち合わせはZoomになりました。現在も極力オンラインで打ち合わせするようにしています」

 

移動時間が不要になったため、一気に効率が上がったと吉村さんはいう。また、足を運べる日は先になるが、オンラインでの打ち合わせ時間なら数日中に取れることも多々あり、打ち合わせ日程を繰り上げられる。クライアントが望む結果が得られるまでの期間が短縮された。

「打ち合わせ以外のコミュニケーションでも、電話は極力使わず、テキストコミュニケーションで記録を残すようにしています。口頭で起こりがちな『言った・言わない』を避けるためでもあります」

 

コロナ禍をきっかけにオンライン化を進めたことにより、全国のクライアントに対応できるようになった。

「コロナ禍前は新規のクライアントさんの8割が紹介によるものでした。それが今では逆転しており、WebやSNSからお問い合わせをいただくケースが圧倒的に多くなっています」

一時的に仕事がストップした間にWebサイトのコンテンツを作ったり、SNSに力を入れたりしたことが功を奏したという。現在は、北は北海道から南は九州まで、全国の企業をサポートしている。

写真提供:行政書士クリアス法務事務所

「情報セキュリティの専門家」実践を踏まえたコンサルティングが強み

行政書士だけでなく、個人情報保護士、ISMS/ISO27001主任審査員でもある吉村さん。リモートワークやモバイルワークでの情報漏洩や暴露には十分に注意している。

「難しいことではなく、外では重要書類はできるだけ開かない、ホテルなどのWi-Fiに繋がず自分のネットワークを使う、カフェなどで仕事をするときの席選びや電車内などでの窓ガラスへの映り込みに気をつけるといった基本的なことです」

 

PCの画面に貼る覗き見防止フィルムは、安価なものだと正面からも画面が見辛くなるため、横や斜めからは見えないが、正面の照明の透過性が高いものを使用している。

「リモートワークに限らず、情報漏洩のリスクはゼロにはなりません。ゼロにする唯一の方法は、その情報を使わないようにすることだけです。それではビジネスが進みませんよね。情報活用と管理のバランスを取りながら、漏洩リスクをできるだけゼロに近づけ、万が一漏洩した場合にも被害を最小限に抑えることが重要です」

 

情報管理体制の構築のコンサルティングにおいては、自社の実践に基づいた情報を提供できることが強みの1つになっている。そのためにも、ツールに関する情報を積極的に収集し、自社で購入して評価している。

 

行政書士クリアス法務事務所は、PマークとISO27001認証の取得コンサルティングを得意とし、「取得率100%」を謳っているが、取得して終わりではなく、その後の個人情報の漏洩といった、クライアント企業のトラブル対処もサポートしている。

「トラブルのご相談では『個人情報が入ったファイルをなくした』『メールを誤送信してしまった』などが多いですね。『ノートパソコンの入ったカバンごとなくした』というケースもありました。個人情報が漏洩したら報告しなければならないことや、対応しなければならないことがたくさんあります。クライアントが把握し切れていないケースが多いこともあり、私たちがサポートしています」

 

これから個人情報を活用してビジネスを始めようとしている会社には、PマークとISO認証の取得を勧めたいという吉村さん。クライアントへのサポートをより充実させるとともに、今後も専門家として広く情報を発信していきたいと力を込めた。

 

行政書士クリアス法務事務所