テーマパークや動物園、遊園地や商業施設に必ずと言っていいほど設置してある「施設マップ」。紙のマップを低コストで簡単にデジタル化できる DXプラットフォーム「プラチナモール」「プラチナパーク」を提供しているのが、ボールドライト株式会社(東京都新宿区)だ。予算や手間がかかり、導入ハードルが高いと思われがちなマップのデジタル化に取り組む理由、サービスの特徴や強みについて、創業者であり代表取締役社長の宮本章弘さんに話を聞いた。
宮本 章弘(みやもと あきひろ)さん プロフィール
ボールドライト株式会社 創業者 兼 代表取締役社長
学生時代に広告スタートアップを創業。大学院修了後、富士通に入社。2008年に渡米し ITコンサルタントとして活動。帰国後、人工知能サービス開発ベンチャーを創業。2019年、観光DX推進を目指し、ボールドライトを創業。三重県出身。
観光・商業&レジャー施設、2軸の DXプラットフォームを展開
観光と商業施設、2つの DXプラットフォームを開発している同社。いずれもデジタルマップが軸になっており、観光向けDX は自治体に対し広域マップ、商業施設DX はショッピングモールやレジャー施設、テーマパークなど限られたエリアを対象にしたマップを提供している。
2019年に創業し、最初に手掛けたのは観光DXプラットフォーム「プラチナマップ」だ。Googleマップの背景がベースになっており、施設などの場所にあるピンをクリックすると、その場所の詳細情報が表示され、他人に情報をシェアできたり、経路案内を出せたりする。これまで、600以上の事業者が導入しているという。
商業施設DXプラットフォームは、「プラチナモール」と「プラチナパーク」の 2種を展開している。名前のとおり、プラチナモールはショッピングモールなど商業施設用、プラチナパークは動物園や遊園地などを対象にしたプラットフォームだ。
「元は『メタマップ』という1つのサービスとして展開していましたが、お客さまのニーズに対しわかりやすく説明できるよう、2つに切り分けました」
プラチナモールは、商業施設内の店舗マップ、各店舗への経路検索が可能。ベビーカーや車いす利用者に役立つユニバーサル動線も調べられる。フロアが複数に分かれている点がプラチナパークとの大きな違いだ。
プラチナパークは平面マップだが、デジタルマップとは異なり、背景がオリジナルグラフィックな点が特徴。こちらも各エリアへの移動経路が見られるほか、混雑状況、待ち時間も手元で確認できる。
プラチナモール・プラチナパークの構想は創業時からあった
プラチナマップを提供した当時から、いずれは施設向けのデジタルマップも作りたいと思っていたという宮本氏。
「当時は紙のマップが多く、紙に頼り続けるのはどうなのかという課題感がありました。紙のマップは情報変更への対応が遅く、リアルタイム性がないので待ち時間も当然わかりません。Webサイトにマップを載せている施設もありますが、紙のデータを、そのまま掲載しただけのようなものが多く、見づらい。デジタルに最適化しているとはいえません。
また、PDFの場合、制作会社が納品するサイクルが発生するため、マップのリリースまでに時間がかかります。営業時間の変更など、情報が更新された際に即座に対応できないのです。そのため、施設運営者が操作してすぐに変えられるサービスが必要だと思いました」
そこで、「プラチナモール」「プラチナパーク」は、管理画面から簡単に情報を更新できる仕組みを採用した。また、マップの画面表示がスムーズになる技術的工夫も施されている。
利便性の 1つは、利用開始までのスピード感だ。
「プラットフォーム化しているので、通常お申込みから1ヶ月程あれば利用開始できます。これまで、施設マップのデジタル化は専用アプリを作らねばならず、制作・メンテナンスにコストがかかることが、普及を妨げてきた要因の 1つでした。プラチナモール、プラチナパークは、グラフィックスさえいただければ、極端に言うと3、4営業日で使い始められるんです。
グラフィックは紙マップのデータをそのまま使えますし、弊社で制作を請け負うこともできます。紙マップのグラフィックは、距離やサイズ感がデフォルメされていることが多いですが、より利用者がリアリティを感じられるよう、スケールに合わせたグラフィックのほうがおすすめですね」
ペーパーレスを実現するだけではなく、デジタルだからこそのサービスを追加できるのもプラチナモール、プラチナパークの利点だ。
「スタンプラリーやクーポン、クイズ機能など、その施設を訪れたお客さまがより楽しめる要素を入れられます。紙のマップよりもはるかに手軽に多言語対応できるのもデジタルのよさですね。また、お客さまが何を見ていて、どんなキーワードで検索しているのかというデータが得られますし、アンケートを加えて直接声を集めることもできる。紙のマップでは得られなかった情報を集められるのも、デジタル化する強みです」
混雑状況のデータ取得は、スタッフが端末を持ち情報を入れる手動パターンと、AIカメラを設置してデータを収集するパターンとの2通りがあるという。
「AIカメラを導入するにはコストがかかるので、まずはスタッフによる手動パターンから試していただくことをおすすめしています。混雑状況を入力するアプリ『CONNECT』は無料です。実際にプラットフォームを使い、よさを感じてから AIカメラを導入いただくステップ型のケースが多いですね」
あらゆる施設のマップのデジタル化を可能に。今後も機能を追加予定
「メタマップ」時代は商業施設への導入が多かったそうだが、「プラチナパーク」に切り分けてからはパーク系の導入が増え、現在は全国16か所ほどのレジャー施設に導入されている。導入先の事例や口コミからの問い合わせが大半で、いまも複数の施設に採用が決まっているという。導入目的の多くを占めるのは、DX によるコスト削減だ。導入先のすべてが IT に長けているわけではないが、プラチナパークの導入に困るケースはほぼないという。
「導入後にオンボーディングをおこなっていましたが、とくに質問が寄せられることはありませんでした。UI もわかりやすいと言っていただけています。管理画面は自治体用のデジタルマップと同じものを使っています。DX にハードルのある自治体が使える UI を追求してきたことが、プラチナモール、プラチナパークにもいきた形です。デジタルマップの開発段階から、ゆくゆくはモール・パーク版を出したいと考えて進めてきたからこそ、いままでにないプラットフォームを提供できたのだと思います」
施設を訪れるユーザーにも、プラチナモール、プラチナパークは好評だという。
「とある施設がおこなったアンケートの結果、満足度が 90%以上という結果が出ました。エンドユーザーの方にも、使い勝手がよいと評価いただけた表れだと受け止めています」
最近取り組んでいるのは、デジタルサイネージだ。
「据え置きタイプのマップを見ながら、手元のスマートフォンでもご確認いただけることで、動線を作れます。デジタルサイネージ版もお客さまから好評で、すぐに追加導入してくださったところが多いです」
今後は、モバイルオーダー機能や AR機能など、レジャー施設、エンターテインメント寄りの機能を追加していきたいという。また、国内だけではなく、海外展開も視野に入れている。
「海外にも同じようなサービスがありそうなものですが、意外にないらしいんです。あってたとしても、大掛かりなものが多い。弊社サービスは月4万円代で導入できる手頃さも魅力。海外にも展開して、需要に応えられるようにしていきたいです」
最後に、DX やデジタル化に悩む企業に向けて、メッセージをもらった。
「これまで、マップのデジタル化は簡単にはできない、コストのかかるものだと思われてきました。自社で専用アプリの開発を依頼できる規模の会社しか導入できないものだと思っていた方も多いでしょう。
プラチナモール、プラチナパークは、ハードルが高いと思われていたテクノロジーをプラットフォームとして提供することで、すぐに利用でき、運用もお客さま自身でできる構想で作ってきました。今後はお客さまにヒアリングをし、必要な機能を一緒に実現していきたいとも思っています。興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。みなさまの課題解決に貢献できるよう、サービス改善に努めていきます」
執筆
卯岡 若菜
さいたま市在住フリーライター。企業HP掲載用の社員インタビュー記事、顧客事例インタビュー記事を始めとしたWEB用の記事制作を多く手掛ける。取材先はベンチャー・大企業・自治体や教育機関など多岐に渡る。温泉・サウナ・岩盤浴好き。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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