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awabar okinawa 店長 荒川大晴さんに聞く「20代のキャリア形成」

「awabar」は、2010年12月に東京・六本木で誕生したスタンディングバーで、起業家や経営者が出会い、挑戦する仲間や支援者を見つける出会いの場として設立されました。その後は六本木のほか、2017年に福岡、2020年に京都、2021年に沖縄、2023年に大阪へ出店しています。

じつは awabar の創業者は、さくらインターネットの共同創業者である小笠原 治。その縁がつながって、代表取締役社長の田中 邦裕を含む、沖縄にゆかりのあるメンバーが集い、2021年11月に沖縄・那覇にオープンしたのが、 “awabar okinawa” です。

2022年から awabar okinawa の店長をつとめているのは、25歳の起業家で理学療法士の荒川 大晴さん。店長となるまでの歩みのほか、叶えたい夢やキャリアの展望についてもくわしくうかがいました。

荒川 大晴(あらかわ たいせい)さん プロフィール

1997年生まれ、滋賀県出身。awabar okinawa 店長、株式会社Adam代表、理学療法士、スポーツトレーナー。
2016年、佛教大学 保健医療技術学部に入学。大学卒業後2年間、理学療法士として病院に勤務。2022年、株式会社Adam を設立。同年から awabar okinawa の店長に就任。2023年には運営メンバーの一員として、会員制クリプトバー「BAR KRYPTO」をオープン。現在は沖縄県と京都府の2拠点生活をおこなっている。

祖父の闘病をきっかけに理学療法士を知る

――高校時代、進路はどのように考えていたのですか?

高校時代はあまり勉強もしていなくて、高校3年生までは、センター試験(現:共通テスト)ってなに? というようなレベルでした。

でも「理学療法士になりたい」という気持ちが固まってからは、エンジンがかかって勉強に身が入るようになりました。指定校推薦が狙える大学には、理学療法士を目指せる学部がなかったので、一般入試で佛教大学の保健医療技術学部を受けることにしました。試験まで時間もなかったですし、定員数が少なかったので結構必死に勉強しましたね。

――そもそも「理学療法士になりたい」と思ったきっかけは何だったのでしょうか?

10歳くらいのころ、祖父が脳梗塞になってほとんど寝たきりの状態になってしまいました。でも、理学療法士のサポートのもと、リハビリをして歩けるまでに回復することができたんです。そのあと、祖父は亡くなってしまったのですが、「医学の力でここまで回復できるんだ」と子どもながらに衝撃を受けたんですよね。それが理学療法士という職業を知るきっかけになりました。

その後、医療事務に勤めていた母から「理学療法士は人手不足」だということを耳にし、自分の職業として真剣に考えるようになりました。

学生時代から会社勤め以外の働き方を意識

――大学生活や理学療法士の勉強はいかがでしたか?

勉強自体はそれほど苦ではなかったですね。ただ、大学3年の春ごろに「本当に理学療法士になる道でいいのか?」「ほかの道も見てみたほうがいいんじゃないか?」と、悩んだことがありました。1〜2週間学校を休んだのですが、お世話になっていた先生から「やってみないとわからないよ」と背中を押してもらったんです。それで、もう一度頑張ってみようと学校に復帰し、2月の試験で合格することができました。

――大学卒業後のキャリアについては、どのように考えていましたか?

まずは同級生と同じく、理学療法士として病院で働こうと考えていましたね。就職活動の末、11月ごろに就職先の病院が決まりました。

ただ、ずっとその病院に勤めようとは考えていませんでした。3年生の春、進路に悩んでいたころから、自分の働き方について考えるようになったのですが、会社員一本、会社員をやりながら副業、フリーランス、経営者――。いろいろなキャリアが選べるなか、現状は「会社員一本」という人が多いものの、これからは AI の進歩などもあって、そういう人が減っていくと思ったんです。実際、僕らの世代にはフリーランスという働き方に興味を持つ人も多かった。それで、就職する前から「会社員2年、フリーランス2年、経営者2年」というビジョンを持っていました。「病院は2年で辞める」とあらかじめ決めていたんです。

病院勤務で医療現場の IT化 の遅れを実感

――「2年限定」とご自身で決めて就職されたんですね。この病院ではどのような仕事をされていたのですか?

急性期にある患者さんに対して、回復に向けたリハビリテーションの計画・実施を担当していました。ちょうどコロナ禍に突入した時期で、厳しい感染対策が求められたので、それも含めて大変でしたね。

就職後も2年で退職する意思は変わらず、2年ですべて学ばないといけないという思いで、知識を吸収していました。

――いろいろな知識を吸収したいと考えると、ちがう世界も経験したほうがいいですもんね。

「医療機関は IT化が10年遅れている」と言われているのですが、それを肌で感じました。「これはどうにかしないといけないぞ」という想いはこのときに芽生えていて、いまの仕事にもつながっています。医療機関はとくに閉鎖的な環境なので、同じ病院で働き続けることで、自分の視野が狭くなってしまうし、成長が止まってしまうのではという懸念がありました。

理学療法士の資格と ITスキルを活かして活動

――予定どおり2年で退職されたあと、どのようなお仕事をされていたのですか?

理学療法士の資格を活かした仕事だと、大学での講義や、国家試験受験生向けのオンライン授業の講師、視覚障がい者の方に向けたパーソナルサポートなどをしていました。いまは、小さいお子さん向けの運動指導や、訪問でのリハビリなどを、週1〜2回担当しています。理学療法士の資格があったので、仕事には困らなかったですね。
資格と離れた業務だと、マーケティング支援、Web制作なども請け負っていて、最近はこちらの比重が大きくなっています。

――マーケティング支援、Web制作でのクライアントは、医療関係の方が多いのでしょうか?

いまはほとんどそうですね。鍼灸師さん、整体師さんが多いです。
依頼内容としては、SNS広告の作成や、LPの作成などがメインです。最近だと、NFC で読み込むとプロフィールが表示されるデジタル名刺が流行っていて、ニーズがありますね。

先ほどもお話ししたとおり、医療機関の IT化の遅れは、病院に勤務していたときに肌で感じていたので、その課題を解決できるようなビジネスができればと思っていました。

――マーケティングや開発のスキルはどのように身につけたのですか?

基礎となる部分は友人に教えてもらいましたが、その後はほとんど独学ですね。基本的に、まずインターネットで調べて、とりあえず手を動かしてみるというやり方でした。最初は上手くいかないこともありつつ、試行錯誤しながらスキルを身につけていきました。

起業が活発な沖縄へ移住し awabar に出会う

――沖縄に移住されたのはいつごろでしょうか?

2022年3月です。集客面などがまったくうまくいかず、悩んでいた時期でした。
僕には、話し方や人間力的な部分も含め、いろいろ教えていただいていたビジネスの師匠がいるのですが、その方が沖縄にゆかりのある人だったんです。

調べると、沖縄は補助金も出やすく、起業も盛ん。沖縄に行けば、現状を変えるきっかけをつかめるかもしれない――。そんな想いにノリと勢いも加わって、沖縄移住を決心しました。海も好きでしたし(笑)。

――awabar と出会ったきっかけは何だったのですか?

沖縄に移住したはいいものの、慣れない環境で知り合いもいないし、移住当初はつらい時期が続きました。事業も不振が続き「このままではダメだ」と思っていたときに、インターネットで awabar の存在を知ったんです。堀江 貴文さんと箕輪 厚介さんが awabar の店内で対談している YouTube の動画を見て、こんなすごい場所が沖縄にあるんだと驚きました。「ここに行けば、なにかヒントを得られるかもしれない」と思い、通い始めたのが移住から3か月ほど経った6月ごろです。

awabar okinawa は19時半〜24時まで営業。店舗の壁面には、過去に来店したお客さまの名刺や企業ロゴのステッカーなどが貼られている

チャンスをつかんで店長に就任

――最初はお客さんとして awabar に来ていたんですね。そこから店長に就任するまでの経緯についても教えてください。

2〜3回お客さんとして通ってみて、普通に生活していてはなかなか接することができない経営者や起業家とお話しして、とても刺激を受けました。それで、「これはお客さんではなく、店の内側に入ったほうが勉強になるに違いない」と思って、アルバイトスタッフに志願しました。

ある日、IVS という国内最大級のスタートアップカンファレンスが沖縄で開催されたときに、ちょうどシフトに入っていたんです。その日はオーナーの方たちもお店に集まっていて、お話ができて顔見知りになれました。そんなタイミングで、前の店長がやめるということになり、次はだれに任せようかという話になったんです。これはまたとないチャンスだと思って「僕、店長やりたいです」と手を挙げました。周りの方にも後押しいただいて、9月から店長として働き始めました。

――運も味方して、チャンスをつかんだわけですね。店長はどこまでの業務を担っているのでしょうか?

仕入れから数値管理、広報やマーケティング、イベント運営まで、基本的にすべてです。オーナーもサポートしてくださいますが、基本的にはすべてをお任せいただいています。

黒字化を叶えた「リピーター戦略」

――店長を引き継いだとき、お店はどのような経営状態でしたか?

正直に言うと、数字を見たときに「これは結構やばいぞ」と思いました(笑)。キャッシュフローが悪く、赤字に近い状態でしたね。
IVS や著名人が来店するイベントの日は売上が伸びるのですが、それ以外の日の赤字で相殺してしまう状態でした。

「awabar(泡バー)」は、名前のとおりシャンパンを開けるバーでした。そのため、商品単価が高く、気軽に来店できない、リピーターが少ないお店だったんですよね。

――黒字化のために、具体的にはどういった施策をおこなったんでしょうか?

お店の方針を変えました。シャンパンでゲリラ的に稼ぐのではなく、リピーターを増やして安定的にお客さまに来ていただけるようなお店にしようとしています。

イベントや著名人が来てシャンパンが出るのは、イレギュラー、ラッキーでしかない。それに頼る現状から脱して、自分たちの力で稼がなくてはいけないと思ったんです。

そのために、気軽に飲めるお酒も用意して価格に幅を持たせたり、お客さまの顔と名前を覚えたり、お客さま同士をつなげてあげたり……。「また来よう」と思っていただけるような接客を徹底しました。

店長に就任した9月は現状把握とリピーター獲得に注力して、10月から黒字になり、それ以降も好調に推移しています。

「また来ようと思ってもらえるように」お客さまとの会話を大事にしている

「20代をどう過ごすか」がキャリア形成の鍵

――awabar での経験は、ご自身のキャリアにどう役立っていると考えていますか?

世界が変わりましたよ、本当に。経営のノウハウを身につけられて、人脈も増えました。そこから別の仕事にもつながっています。awabar に出会えてよかったと、心から思います。

――荒川さん個人として、今後「こういう風になりたい」「こういうことをやってみたい」といった展望や夢はありますか?

僕の軸足はあくまで医療にあるんです。勤務時代、医療現場で感じた「医療現場の ITリテラシーの低さ」をどうにか解消していきたいと思っています。

医療現場に限らず、飲食業界もそうです。ITリテラシーの低い業界はまだ多いと思うので、経営や IT のスキルを活かして、ITリテラシーを底上げし、さまざまな業界を活性化させていきたいと思っています。

あとは経営者、とくに IT関係にお勤めの方って、すごく姿勢が悪い方が多いんですよ。健康寿命が短そうだなと心配になりますね。そういうところには理学療法士として、姿勢改善のレクチャーなどもできるのではないかと思っています。

理学療法士、マーケター、開発者、経営者。いろいろな経験や知識を持っている自分だからこそ、できることがあると思うんです。業界と業界の間に入って、よい要素を取り入れ合って高め合う。そういう風に、業界同士をつなぐ架け橋になりたいというのが、いま考えている展望です。awabar での出会いをきっかけに、そういう事業が起こせたら最高ですね。

「やりたいこと」を叶えるために、20代のうちはいろいろ経験して引き出しを増やしたい。そう思って、「会社員2年、フリーランス2年、経営者2年」という予定を立てていたビジョンが、いま達成されつつあります。

ただ、マーケティングやビジネススキルは独学の部分もあり、まだまだ不足していると感じています。スキルアップのために、一度は一般企業に就職してみるのもいいかもしれないと、悩んでいる最中です。

――「やりたいことを叶えるために、いま何をすべきか」ということですね。使える時間は有限ですから、どういうキャリアを選べばいいのか悩みますよね。

はい。会社員として成果を出している人を見ていると、「やっぱりすごいな」と感じるんですよね。企業に勤めながら、たくさん勉強しているんだろうなと思います。いま25歳なので、第二新卒として入社するとなると、あと数年がラストチャンス。もちろん、awabar のほうも軌道に乗ってきたのできちんと形を作っていきたいですし……。今年1年はキャリアの転換点かなとは思っています。

「自分が社会に必要である」「だれかにとって自分は必要な存在である」と思えることが、自分の幸せをつくる大きなピースになっていると、僕は考えています。それを叶える道はいろいろあるので迷ってしまいますが、模索しながら20代後半のキャリアを後悔のないように突き進んでいきたいです。

 

awabar okinawa

 

執筆

篠崎 沙恵

資格スクールでのオウンドメディア編集・マーケティング担当を経て、 2023年1月に中途でさくらインターネットに入社。おもに『さくマガ』編集、ユーザー向けメールマガジンを担当している。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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