アバター接客の「AVACOM」で叶う、効率性と人のあたたかさを両立させた DX

バーチャル空間での自分の分身、「アバター」。VTuber やメタバースなど、昨今エンターテインメント界隈での話題は尽きない。一方で、アバターでのコミュニケーションをビジネスに取り入れ、成功している事例は意外にもまだ少ない。AVITA株式会社(以下、AVITA)は、アバターによるリモート接客によって、店舗の省人化や Webサイトの売上アップなどに成功しているアバター界のリーディングカンパニーだ。創業者/取締役COO の西口 昇吾さんに、アバタービジネスへの想いや成功の秘訣、DX を目指す企業がアバターを取り入れるべき理由などを聞いた。

西口 昇吾(にしぐち しょうご)さん プロフィール

AVITA株式会社 創業者/取締役 COO。2017年に新卒で日本テレビ放送網株式会社に入社。2018年に VTuber事業を立ち上げ、共同代表に就任。2021年に独立し、AVITA株式会社を創業。アバターや生成AI を活用したオンライン接客サービス「AVACOM」などを展開し企業の DX を支援。大阪・関西万博にて石黒 浩 氏が手がけるシグネチャーパビリオン「いのちの未来」のメタバースアドバイザー。三重県明和町で地方創生の一環としておこなわれている、デジタル技術を活用した「めいわデジタルプロジェクト」PM。

企業のDXを支援するアバターオンライン接客サービス「AVACOM」

AVACOM  展開イメージ(画像提供:AVITA株式会社)

AVITA は「アバターで人類を進化させる」というビジョンのもとに、アバターや生成AI を使ったオンライン接客サービス「AVACOM」の開発・販売などをおこなう企業だ。ビジョンのとおり、主役はあくまでも現実世界の私たち人間。「アバターというとメタバースやゲームなど、閉じられたエンタメ世界のものだと思われがちですが、そうではなくこの現実世界、なおかつビジネスシーンの DXツールとしてアバターを活用している会社です」と西口さんは語る。

 

AVACOMはリアルと Web、どちらのビジネスシーンにも使えるマルチプラットフォームであるため、リアル店舗にモニターを置き、アバターを投影して遠隔で接客することはもちろん、Webサイト上でもアプリインストール不要でアバターによるビデオ通話が可能だ。

 

また、簡単な内容の対応は ChatGPT などで自動化し、複雑な対応は人が対応するなど AI と有人のハイブリッドでの接客も可能だ。

 

他にも、「アバター」または「顔出し」の画面切り替えやボイスチェンジなど、多彩な機能が揃っているため、働くスタッフや事業スタイルにあわせて、自由度高くアバターをビジネスに活用できる。

アバターだから実現できる、あたたかみのある DX

ローソン店舗での AVACOM設置例(画像提供:AVITA株式会社)

コンビニエンスストア「ローソン」にも AVACOM が導入されている。東京や大阪、福岡の一部の店舗で導入され、セルフレジのサポートや商品の販促活動などを担っているという。

「コンビニエンスストアに限らず、小売業界では省人化・無人化が進められています。しかし、海外の多くの無人店舗はうまくいっていません。“ただモノが手に入ればいい”だけの無機質で殺風景な倉庫のようになってしまい、売上が下がったり、万引きが増えるといった事例もあります。。人手不足が社会課題になっていますが、テクノロジーを活用することによってコミュニケーションや人とのつながりを作りながら、あたたかみのあるDXを推進したいというローソンのご担当者さまの想いをうかがい、弊社の多様な人材が自らの可能性に挑戦できる世界を実現したいという AVITA のビジョンが合致し、協業を進めることになりました」

AVACOM導入企業のなかには、「お客さまがアバターとの会話を楽しみに 3日連続で来店する」「アバターと仲良くなった結果、お客様がお店の運営を手伝ってくれる」といった現象が見られることもあった。アバター導入によって新たなコミュニケーションが生まれ始めている。

一方で、アバターと初めて会話するときのハードルは少なからずある。まず「話しかける」というファーストアクションを生むために、アバターデザイン、筐体、テロップなど、AVACOM は細部まで徹底的に計算して作りこまれていた。「話しかけやすいイメージを作るために、眉毛の角度や口の開き方だけでも 2週間くらいの時間をかけて作り込むなど、徹底的にクリエイティブにこだわっています」と西口さんは語る。

AVITA受付で実際に設置されているアバター

昨今、DX といえばテクノロジーを使って自動化、無人化していくようなイメージがあるが、AVITA が重視するのはあくまで人と人とのコミュニケーションだ。「簡単な業務に関しては AI による自動化も必要ですが、たとえば、自動化を進めるために導入された自動チェックイン機やセルフレジをうまく使えない人も大勢います。そういった人を切り捨てるのではなく、誰もが新たなテクノロジーを嫌悪感なく使っていけるように、まだまだ人によるサポートは必要なのではないかと思います」。

売上アップに貢献! 広がる企業でのアバター導入

デジタル技術による効率化だけでなく、人によるきめ細やかなところまでサポートをおこなうAVACOM。企業がビジネスとして導入するメリットにはどんなものがあるのだろうか。コストカットと売上アップの 2つの面から聞いた。

 

コストカットの面では、5店舗を同時に 1人で対応することによって、人件費を 80%カットすることに成功した例がある。「スタッフを物理的に1箇所に配置していると、お客さまの有無に関わらずそれだけで大きなコストがかかります。アバターを使えば、東京にいながら全国各地、ひいては世界各国の複数の店舗で働くことができ、人手不足の解消と固定費削減につながります。もちろん、クビにしようという話ではなく、品出しなどアバターにできない業務を人間が集中的におこなうなど分業し、人間とAIが協働して作業効率化を実現しています」と、西口さんは話す。

 

売上アップの面では、保険選びサイト「保険市場」での例がある。従来の電話相談と、アバターによるビデオ通話でのアポ獲得率を比較したところ、アバターのほうが 2倍以上高い結果になった。また、大勢いる保険コンサルタントのなかで、アバターが指名率 1位を獲得している。

アバターでのオンライン相談を取り入れた保険市場のサービスサイト(画像提供:AVITA株式会社)

「これまで『相手の顔が見えるから相談しやすい』と言われてきた保険業界ですが、リアルな顔が見えないアバターのほうが気軽に相談しやすい人たちもいます。初対面だとなおさら、病気や年収や家族のことなどを話しづらいと思います。アバターならそういう人でも心を開いて相談をしてもらいやすく、結果的に最適な保険プランの提案につながっていると考えています」

 

AVACOM によるアバター接客は業種、業態問わず導入されているが、店舗や受付などの無人化・省人化などの効率化を検討されていたり、人手不足の課題を抱える業態や、電話やチャットではフォローしきれず、資料を見せながら比較検討や相談をともなう業態で、とくに効果を発揮しやすい。

「人かアバターか」ではなく「人とアバター」でつくる新しい選択肢

西口さんは企業へ AVACOM の説明をする際、「結局は人を活かすための技術」であることをしっかりと伝えるようにしているという。

 

「アバター活用は、人間が TPO に合わせた化粧をしたり制服を着たりすることと同じようなものです。私たちは普段、化粧や服装などで相手に与える印象をコントロールしています。そこにデジタルの技術を使った印象コントロールの手段が加わったというだけです。生身で生きる以上、容姿が良い人が有利になりがちですが、アバターを活用すれば生身の見た目は関係なく、性格や知識やスキルなど中身だけで評価されるようになります。アバターや AI といったデジタル技術が人の仕事を奪っていくのではなく、人の生き方の新しい選択肢となるのだと考えています」

 

アバターを使った対人業務は、病気や障がいのある人にとっても新しい働き方になるのはもちろんのこと、「どんな人にとっても新しい働き方の選択肢になり得る」と西口さんは語る。

 

「『生身で活動をする』ことは大きなリスクをともないます。本名や顔を出した状態で、炎上したり失敗したりすると取り返しがつかなくなることも多い。そうしたリスクに不安を抱えながら生きている人も多いと思うんです。でも、アバターなら別の人格になることができる。そうすることで心理的なハードルが下がり、さまざまな自分の可能性にチャレンジできます。実際、アバターという働き方がかけがえのないものになってきている人たちも、私たちの周りにはたくさんいます。私たちはそういった方たちのためにも、アバターをさらに広めていきたいと思っています」

「DX で何を実現したいのか」悩む企業こそ相談を

多くの企業の DX を支援してきた AVITA だが、「実際のところ、企業の DX は非常に難しい」と西口さんは話す。

 

「DX自体が目的になってしまっていることが多くて、『それを通じて何をしたいのか』という部分があまり定まっていないケースがよくあるんです。私たちの場合、何を目的として DX をおこなうのか、専門のコンサル人材が一緒に設計することも可能です。まだ模索段階でも、気軽に声をかけてくださるとうれしいです」

 

いまは、飲食、小売、保険、不動産、警備……、さまざまな業種でアバター活用による結果が出始めているフェーズだ。「生成AI とかアバターとかよくわからないし、リスクがありそう。うちのビジネスで活用するのは時期尚早だ、と感じている企業こそ、まずは情報交換からでもご一緒したい」と西口さんは語る。

 

「少子高齢化や労働人口減少などの社会問題があるなかで、DX は日本の大きなミッションでもあると思います。IT導入補助金など中小企業の DX を支援する制度もあります。また自社での DX ではなく、AVACOM の販売代理店として他社の DX を支援することでビジネスを広げていくことも可能です。さまざまな形で協業ができると思います」

 

AVITA ではアバターや AI を活用することで、人を排除していく冷たい DX ではなく、人と社会の新たなつながりが生まれる温かみのある DX を推進していく。

 

AVITA株式会社