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外資系クラウドから国産クラウド開発へ。荒木靖宏に聞くさくらインターネットへの転職理由

転職組に聞く入社理由「なぜさくら?」

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さくらインターネットには、有名企業を何社も渡り歩いてきた経験豊富なエンジニアがいます。本シリーズでは『転職組に聞く入社理由「なぜ、さくら?」~エンジニア職編~』と題し、これまでのキャリアや入社理由を紐解きながら、他社を経験しているエンジニアだからこそわかる、さくらインターネットの魅力を探ります。

第5回は、アマゾンウェブサービスジャパン合同会社(AWS)からさくらインターネットに転職した、クラウド事業本部の荒木靖宏にインタビュー。転職を決心した理由やこれからのミッションなどについてくわしく聞きました。

荒木 靖宏(あらき やすひろ) プロフィール

さくらインターネット クラウド事業本部
株式会社インターネットイニシアティブ、ネットビレッジ株式会社(現:株式会社fonfun)を経て、ヒューレット・パッカード研究所でモバイルネットワークおよびサービス基盤の研究に従事。2010年、東京大学基盤情報学専攻 博士号取得(科学)。その後、DeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)を経て、2011年にアマゾンウェブサービスジャパン合同会社(AWS)へ入社し、13年間ソリューションアーキテクトとして活動。2024年9月、さくらインターネットに入社。@ar1

アマチュア無線で通信に興味を持ち、大学でインターネットと出会う

エンジニアになろうと思った理由を教えてください。

小学5年生のころからアマチュア無線にのめり込んで、機械や通信に興味を持ちました。初めてパソコンに触れたのはその少し前だったと思います。近所の電気屋さんがパソコンを売っていて、平日は誰でもいじれたんです。そこでパソコンを触るようになりました。あと、任天堂の「ファミコン」にキーボードをつないで、ちょっとしたプログラミングができる「ファミリーベーシック」という商品があったんですね。中学2年生のときにそれを友だちから譲り受けて、プログラミングの真似事を始めました。

そんなふうにコンピューターに親しんで、大学進学の際には工学部電子工学科に進みました。大学入学が1993年なので、Windows95によってインターネットが爆発的に広まる2年前ですね。

そしてインターネットに出会うんですね。

そうです。大学生になって、Windows3.1のコンピューターを買ってもらいました。アマチュア無線部に所属していたんですが、パソコンにくわしい部の友だちが、あるCD-ROMをくれたんです。それが当時出始めたばかりのLinuxで。それを開いたら、プログラミングを書くためのプログラミング言語や開発環境、通信関係のものなど、あらゆるものが入っていたんです。あまりにもおもしろくて感動しました。

さらに、アマチュア無線部の部室と先生の部屋をネットワークでつなげたら、それこそ世界中にアクセスできるようになって。「僕は何でもできる!」という万能感を得ましたね。

デジタルネイティブ世代にはできない経験をされているんですね。大学卒業後は、大学院に進んだそうですね。

はい。大学4年生になって、電子や半導体の研究室に所属しました。研究はおもしろかったんですが、インターネットのほうがもっとおもしろいと感じたんです。研究は3~5時間やっているとだんだん集中力が切れてくるけど、Linuxを動かしてインターネットをいじっていると、10時間なんてあっという間。だったらインターネットの勉強をしようと思い、当時新しくできた奈良先端科学技術大学院大学に進学しました。

大手からベンチャーまで、さまざまなIT企業を経験

大学院修了後は、新卒でインターネットサービスプロバイダに入社されたそうですね。

はい、IIJ(株式会社インターネットイニシアティブ)に入社しました。とても技術力の高い方たちがいる会社だったんですけど、当時の私はクソ生意気な新人で(笑)。「俺らしい設計をやらせてくれ!」みたいな気持ちがありました。先輩たちに「いや、そんな新しすぎる設計はダメでしょ」と言われても納得できなくて……。

それで転職したんですか?

はい、知り合いがメールサービスを提供する会社をやっていたので転職しました。大学院でメールサーバーを作っていたので知識があったんです。携帯電話向けネットサービスだったんですけど、私が入社したときはユーザーが1万人くらい。社長に「100万人が使えるシステムを作ってくれよ」と言われて張り切って作り、右肩上がりでユーザー数が増えて、半年間で30万人になりました。

だけど、順風満帆も長くは続きませんでした。NTTドコモがある会社と提携してコンペ事業を始めて、広末涼子さんを起用したCMの影響もあってか、ユーザーが激増したんです。それによって私たちのサービスの成長が止まってしまって……。しかも私が設計したサーバーはまだ問題なく動いていたためやることがなくなってしまい、目標を見失いました。

挫折を経験したんですね。

そうですね。あらためて身の振り方を考えたとき、「インターネットにはまだまだ研究の余地があるな」と思い、ヒューレット・パッカードの研究所に入り、10年間在籍しました。そこではおもに、携帯キャリアなどの新サービスに向けた技術開発をしていましたね。

そこで働きながら、東京大学で博士号を取得したそうですね。

そうです。外資の研究所って、研究リーダーが「こういう研究をします」というプロポーザルを書いて提出することでお金がもらえるんですね。研究所では、基本的にドクター(博士号を持つ人)がプロポーザルを書きます。だから博士号を取りに行きました。

ヒューレット・パッカードから転職した理由は?

ざっくり言えば、リーマンショックによるリストラです。当時の私はドクターの3年になるタイミングだったので、すぐには転職活動をせず、博士号を取ることに専念しました。

その後、DeNA(株式会社ディー・エヌ・エー)を経て、AWSに転職したそうですね。AWSではどういう業務を担当していたのでしょうか?

ソリューションアーキテクトという、AWSについてお客さまに説明する仕事をしていました。さくらインターネットやAWSのようなシステムって、「どうぞご自由にお使いください」と言ったところで、お客さまはどうやって使えばよいのかわかりません。だけど、「こういうふうに使うとよいですよ」とガイドしてあげると、驚くほど使ってくれる人が増えるんです。また、使ってくれた人たちの技術的な相談に乗ると、自然と売上が増える。そのような仕事を13年間続けました。

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ガバメントクラウドへの想いが、さくらインターネットに転職したきっかけ

さくらインターネットに転職した理由を教えてください。

私は過去に2回、AWSのようなクラウドを作ろうとしたことがあるんですね。1度目はヒューレット・パッカードにいたときで、2度目はDeNAにいたとき。いずれも、作っている途中で「やっぱりAWSに勝てないからやめよう」「やっぱりいまのビジネスに専念しよう」ということになって挫折しました。

だけど、さくらインターネットのガバメントクラウドへのチャレンジ「AWSに勝つ」ことが目的ではないんですよね。そうではなく、ただ「世の中に必要なものを作ろう」という自分たちの使命感でやっているんです。そんな会社の一員として仕事ができたら、きっとおもしろいだろうなと思いました。

そんなとき、大学時代からの知り合いであるさくらインターネットの代表取締役社長である田中さんに「一緒にやりましょう」というお誘いを受けたんです。田中さんにガバメントクラウドについての私の考えを伝えたら、お互いの方向性が同じであることがわかったので、オファーを受けました。

現在の業務内容を教えてください。

ガバメントクラウド内部(さくらのクラウドに限らない)で動作している、さまざまなサービスを連携するためのネットワーク基盤「GMCN」を作るという、デジタル庁の案件を2024年12月に受注しました1。いつまでにどんな作業をするか、ロードマップはすでにできているので、いまはそれに従って仕事をしています。

あとはボトルネックの改善です。さくらインターネットのシステムは古いものだと15年以上前から動いているので、この先システムがもっと大きくなった場合、耐えきれる保証はありません。そういったシステムを改善する仕事を、何人かのチームでやっています。

荒木さんもそうですが、ここ数年、さくらインターネットでは経験や実力のある40代以降のエンジニアを集めている印象があります。そういう方々と仕事をすることで、刺激を受けることはありますか?

そうですね。たしかに、私から見ても技術力と発信力のあるエンジニアがたくさんいるなと思います。ISUCON2という、長野さん(クラウド事業本部 副本部長)が十数年前から開催しているサーバーイベントがあるんですけど、そこで活躍されている方もたくさんいますし。

キャリアを重ねてきたエンジニアって、会話の端々に並々ならぬ知識や経験が垣間見えるんですよ。本当に勉強になるし、この歳になってもまだまだ学べることはあるなとうれしく思います。

「さくらでいい」じゃなく「さくらがいい」

さくらインターネットに入ってから一番やりがいを感じたことはなんですか?

さきほどもご説明しましたが、一番はやはりGMCNの案件を受注できたことです。GMCNは、ガバメントクラウド上でSaaSサービスを展開する人たちのプラットフォームとなるサービス。なので、そのプラットフォームを使うソフトウェア開発ベンダーでも、もっとさくらのクラウドを使ってくれるようになる可能性が高まります。

だからこそ、デジタル庁から提示された要件のものをただ作るだけではなく、「GMCNをうまく使うとこんなふうに便利ですよ」と示すショーケースにしたい。そのショーケースを作るチャンスがもらえたことは、大きなやりがいですね。

さまざまな会社を見てきた荒木さんだからこそ思う、さくらインターネットの強みやおもしろさを教えてください。

さくらインターネットでは、さくらのクラウド以外にも、さまざまなサービスを提供しています。当社のサービスを使えば、複雑なネットワークルーティングをしなくてもソフトウェアとシステムをつなぐことができる。これは、ほかのサービスプロバイダーにはない強みだと思います。この強みを伸ばしていけば、「さくらでいい」じゃなく「さくらがいい」と選んでもらえるようになるはずです。

どういう人がさくらインターネットのエンジニアに向いていると思いますか?

自分からアイデアを出せる土壌がある会社なので、用意された仕事をするだけの人よりも、やりたいことがある人のほうが楽しめると思います。会社の規模もよい意味で大きすぎず、ほかのチームの仕事も見えるし、興味があればほかの社員とすぐにコミュニケーションが取れる規模感なんですよね。いまたくさんの人を採用していますが、現在の3倍の社員数になっても、この状態は維持できると思います。だから、好奇心旺盛で、興味があることにどんどん首を突っ込みたい人が向いているかもしれません。

とはいえ必ずしも、入社前からやりたいことが明確に決まっている必要はなくて。やりたいことは入社後に見つかるかもしれないし、同僚や先輩が見つけてくれることだってあります。だからまずは、「日本の情報技術の最先端で仕事してみたい!」という意欲が大切かなと思いますね。

今後、さくらインターネットでやりたいことはありますか?

さくらインターネットは、インターネットではない通信経路、安全性が保証されているいわゆる「閉域網」で使えるシステムも提供しています。これもガバメントクラウドのGMCNで私たちがショーケースを作るつもりです。作ったら、ぜひそれを活用するSaaSのお客さまに見ていただきたいし、お客さまのお困りごとをうかがいたい。そして、私たちがソリューションを用意します。

今後のさくらインターネットは「アプリケーションプロバイダーがほしいものは全部そろう会社」になるはずですので、どうか期待していてください!

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荒木さんのある日のスケジュール

4:00ニュースをチェック
朝4時前に起床しニュースをチェック
5:001時間ほど散歩
7:00子どもを送り出して、仕事の開始準備
8:00勤務開始
基本はリモートワーク。週一ぐらいで顧客訪問や、対面での会議のために出社することも。
9:00作業タイム
12:00休憩
13:00作業タイム
15:00社外ミーティング
16:00社内ミーティング
GMCNの定例ミーティングに参加し、メンバー間で進捗などを確認
18:00退勤
18時前には仕事を終えて、21時までに子どもと一緒に就寝

(撮影:ナカムラヨシノーブ)

  1. さくらインターネット、デジタル庁より「ガバメントマルチクラウドネットワーク(GMCN)の設計開発等業務」を受注 ↩︎
  2. LINEヤフー株式会社が運営窓口となって開催している、お題となるWebサービスを決められたレギュレーションの中で限界まで高速化を図るチューニングバトル(出典:ISUCON公式サイト↩︎

執筆

吉玉サキ

エッセイも取材記事も書くライター。 北アルプスの山小屋で10年間働いていた。著書に『山小屋ガールの癒されない日々(平凡社)』『方向音痴って、なおるんですか?(交通新聞社)』がある。

※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。

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