IoTの導入で、製造業はどう変わる?
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工事現場で使われる建設機械は、現場ごとに異なる。そのため、自社で購入せず、レンタルで対応することが多いという。そうしたニーズに応え、建設機械のレンタル事業をおこなっているのが株式会社アクティオ(以下、アクティオ)だ。
同社は夜間や土日に工事をする顧客のニーズに応えるため、カーシェアリングサービスのように建設車両を無人で貸し出し、返却ができるアクティオカーシェアスポット「アクスポ」のサービスを開始。2024年1月より提供を開始し、業界内で大きな反響を呼んでいる。業界のDXの需要に応えるため、レンタルDX営業部も立ち上げた。「アクスポ」の開発に携わったレンタルDX営業部の田代勝也さん、「アクスポ」提供後から同サービスに携わる吉田詩乃さんに、業界の課題や「アクスポ」の反響について話を聞いた。
田代 勝也(たしろ かつや)さん プロフィール(写真左)
産業機械事業部へ所属し、おもにレンタル機器の広域営業を担当。2024年、レンタルDX営業部の発足に合わせて同部に異動。現在はおもに無人レンタカーサービス「アクスポ」やWEB注文サービスなど、お客さまへのDXサービスの営業に従事。
吉田 詩乃(よしだ しの)さん プロフィール(写真右)
RS事業推進部 IoT部で建設機械のIoTサービスの営業を経験。2024年にレンタルDX営業部へ異動し、おもに無人レンタカーサービス「アクスポ」を担当。
建設業界でレンタル×コンサル「レンサルティング®」サービスを長年提供
工場現場で使われる建設機械のレンタルを手掛けるアクティオは、「レンサルティング®」をコンセプトに掲げている。レンサルティング®とは、「レンタル」と「コンサルティング」を掛け合わせた同社による造語だ。
「工事現場はひとつとして同じものがないため、現場に応じた機械選びが重要です。当社には、さまざまな現場に機械をお貸しするなかで培ってきた知識・ノウハウがあります。それを活用し、現場ごとにレンサルティングをおこなっております」(広報担当)
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「夜間でも貸し出し車両の出し入れをしたい」顧客のニーズに応えるサービスを開発
顧客のニーズを受け、さまざまな提案をおこなってきた同社。そこから着想を得て開発されたのが、アクティオカーシェアスポット「アクスポ」だ。営業所の営業時間内でのみおこなわれてきた建設機械の貸し出しを、カーシェアリングサービスのように無人でできるようにするのが「アクスポ」の狙いだった。
「高速道路など、工事によっては夜間におこなわれるものも少なくありません。そのため、営業所がやっていない夜間に車両を取り出したいというニーズがあったのです」(田代さん)
営業時間内に貸し出し手続きを受け、工事に使う時間まで駐車場に停めておくのが、従来の対処法だ。しかし、建設車両に多いディーゼル車は駐車禁止とされている場所が多いうえ、そもそも都市部の駐車場は料金が高いという課題もあった。使うタイミングで取り出せれば、コスト削減にもつなげられる。「ゲートを付け、鍵の管理をシステム化できれば、無人貸し出しが可能となるのでは」と考え、田代さんは開発をスタートさせた。
システム自体は、開発会社に依頼することで実現の道筋をつくれたという。しかし、鍵の管理機の開発には壁が立ちはだかった。
「相応のセキュリティを担保する必要がありますが、屋外に置いておくものであるため、あまりに精密だと砂やほこり、錆びにより開かなくなってしまうおそれがあります。人による対応が難しい夜間に使うものですから、開閉できなくなってしまっては困る。鍵管理メーカーを探して相談し、試行錯誤しながら検討しました」(田代さん)
検討したものは20~30種類。金融機関が導入しているセキュリティメーカーの鍵管理機を採用した。あまりにも導入コストがかかってしまうと、サービス利用料を上げざるを得なくなり、結果、使われないサービスになってしまうおそれもあった。想定しているコスト内に開発費を収めることも苦労した点だと田代さんは語る。
また、泥がついたままの手でボタンを触ったり、力強く押した場合など、工事車両のレンタルだからこその使用シーンへの対処も必須だ。想定し得る条件下で耐久試験を繰り返しおこない、サービスを完成させた。
この開発を進めるなかで、同社は新たにレンタルDX営業部を設立。別の部署にいた田代さんは、開発途中の「アクスポ」と共に、レンタルDX営業部へと異動となった。
口コミで登録ユーザーが増加中
「アクスポ」で借りられる建設車両は、公道を自走できる工事車両だ。「アクスポ」の貸し出し拠点に置ける大きさの対象車両にはすべて対応しており、「とくに多いのは高所作業車や、夜間や土日に工事することの多い高速道路工事に使われる車両」だと吉田さんは説明する。
工事車両を対象としたのは、当初寄せられていたニーズからだという。
「いずれは建設機械も無人貸し出しができたらとは思いますが、まずは工事車両の無人貸し出しの運用状況を確認するのが先ですね」(田代さん)
オーダーが入ったら、営業所にあるものは車両点検をおこない、「アクスポ」拠点に移動。ないものは工場から手配し、同じく点検を終えたのちに「アクスポ」拠点に移す。返却後は、再度点検をおこない、またオーダーが入ったら点検して移動といった具合に、都度対応している。
拠点に置ける車両数は敷地によって異なり、小規模なところでも5~6台は置いておけるという。
現在の拠点数は北海道、関東、関西、九州の計6店舗。さらにオープンが決まっている店舗もあり、現在準備をおこなっているところだという。今後もさらなる拠点が増える見込みだ(2024年10月時点)。
「社内に声をかけ、興味を抱いてくれた営業所で実証実験を始めました。その時点で好評でしたね」(田代さん)
会員数も順調に増加。紹介による新規登録も多く、建設会社だけではなく、夜間に工事車両を利用するニーズのある工場、電気会社といった企業の登録も増えているという。
ユーザーからの評価も上々だ。滋賀でアンケートを取った吉田さんが、こんな感想を紹介してくれた。
「営業時間ギリギリに借りて、仕事を終えたあと営業開始まで車両内で仮眠するというスタイルが、いつでも車両を返せるようになったことで変化したとお聞きしました。早く車両を返せれば、家に帰って休むことができます。また、お客さまからは、人件費削減や長時間労働の抑制につなげたいという目的で問い合わせを多くいただいています。これはあまり予想していなかったニーズでした」(吉田さん)
さらに、働き方改革の観点では、同社の社員同士での活用も活発にされているという。
「営業所間で車両の移動をおこなう際、これまでは鍵をやり取りするためにお互いの予定を合わせる必要がありました。『アクスポ』を利用することで、非対面で鍵を渡せるようになり、効率化が実現しました」(吉田さん)
今後もDXを進め、建設業界の省人化・業務効率化に貢献したい
サービスを開始したのは2024年1月。まずは1年、気候の変化など耐久性の確認が課題だ。
「暑さに関しては、直射日光が当たる場所だと不具合が出ることがわかったため、日差しを遮るものを設置する運用に変更しています」(田代さん)
サービスとして費用対効果がどれぐらいになるのかも見ていかなければならない。データを蓄積し、成果を発表することも今後の目標だ。拠点数の拡大に関しては、「ニーズのある営業所に設置を進める」のがレンタルDX営業部の方針だ。
最後に、今後の同社の展望について、それぞれにコメントをもらった。
「無人レンタルできる機械の種類を広げたいですね。機械が自動でトラックに乗せられる世界を実現したいですが、今後10年はかかるのではないかと思っています。あとは、現場の人が少なくなっても管理できるサービスの開発も検討しています。今後5年10年でさらに労働人口の減少が予測されています。AIで注文を完結できるようになれば、注文を受ける人が減っても対応できるでしょう。
あとは、当社のDXですね。DXの推進は省人化を進めることにも繋がりますが、DXサービスの提供には人手がいるため、拡大すればするほど、人員増が必要となるのです。サービス提供元として自社のDXを進めることも、会社としてやるべきことだと感じています」(田代さん)
「『DXを進めたいけれど、どんな手段があるのかわからない』とおっしゃるお客さまは多いです。当社は建設機械を貸し出すだけの会社だというイメージが根強いのですが、『アクスポ』をはじめ、お客さまの課題を解決するサービスを取り扱っている会社であることを、ぜひこの機会に知っていただけるとうれしいですね。今後も、お悩みに寄り添えるよう、さらなる利便性の向上に取り組んでいきたいと思っています」(吉田さん)
レンタル事業で多くの企業と関わりがあるからこそ見えてくるニーズを、サービスに落とし込んで課題解決に導く。「アクスポ」はもちろん、今後の取り組みにも期待だ。
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執筆
卯岡 若菜
さいたま市在住フリーライター。企業HP掲載用の社員インタビュー記事、顧客事例インタビュー記事を始めとしたWEB用の記事制作を多く手掛ける。取材先はベンチャー・大企業・自治体や教育機関など多岐に渡る。温泉・サウナ・岩盤浴好き。
※『さくマガ』に掲載の記事内容・情報は執筆時点のものです。
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